国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

シリーズ:モルディブで、サステナビリティーについて考えた(第1回)

国連広報センターの根本かおる所長は、2018年3月10日から16日、インド洋の島国モルディブを訪問し、気候変動対応の最前線での国連の活動などを視察しました。温暖化による異常気象や海面上昇が人々の暮らしに影響を及ぼしているモルディブで、サステナビリティーについて考えたことをシリーズでお伝えします。

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モルディブには26の環礁が UN Photo Shoko Noda

連載第1回 モルディブの離島での水事情 - きれいな水確保の最前線

 

白い砂浜、青い海、エメラルドグリーンのサンゴ礁に代表される「地上の楽園」というイメージの強いモルディブは、インド洋に「真珠の首飾り」の形状に1200もの島々が南北800キロメートルにわたって散らばる群島国家です。東京23区の半分程度の面積に人口40万人が暮らし、国の人口のおよそ3分の1が首都マレに集中していますが、一つ一つの島は100平方メートルから2平方キロメートルの大きさしかありません。一方、一年に人口の3倍に相当する120万から140万人もの観光客が訪れ(うち日本からの訪問者はおよそ4万人)、観光業は国の基幹産業となっています。

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マレ島には面積約2平方キロに10万人以上が暮らす。手前は空港島で、マレ島と結ぶ橋が建設中 UN Photo Shoko Noda

1週間の短い滞在でしたが、痛感したのはモルディブの人々が直面する「水」の課題です。私たちの身体の60パーセントは水から成り立っているものの、世界人口の36パーセントに相当する25億人が水不足の地域に暮らし、21億人が安全な水が飲めません。さらには水が関わる自然災害のリスクが世界的に高まっています。水はまさに私たちの生死を左右する問題になっていますが、モルディブの人々はその最前線にさらされています。

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マーメンドホー島 UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

離島の暮らしを知りたいと訪れたモルディブ南部のラーム環礁のマーメンドホ―島は、人口およそ1000人、長さ1キロ・幅330メートルで面積がわずか33万平方メートル、港から島の反対側までが見通せてしまうぐらいの小さな島です。首都マレから小型飛行機でラーム環礁の飛行場まで1時間弱。島々を形成する環礁は国内に大小合わせて26あり、これらは日本の都道府県に相当します。マーメンドホ―島は飛行場から車で10分の港からさらにスピードボートでおよそ30分と次々に乗り継いでようやくたどり着ける遠隔地です。水は基本的に地下水と雨水に頼っているため、民家には雨水をためる貯水タンクが備え付けられ、コミュニティー用の貯水タンクが 気候変動などのリスクへのコミュニティーのレジリエンスを促すための国連諸機関による統合型のの支援プログラム(Low Emission Climate Resilient Development Programme)を通じて設置されています。

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国連がコミュニティー用の雨水貯水システムを支援 UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

モルディブの離島では電気は基本的にディーゼルでジェネレーターをまわして発電していますが、国連からのサポート を受けてマーメンドホ―の学校の屋根にはソーラーパネルが、そして港にはソーラー街灯が備え付けられています。ラーム環礁に11ある学校にソーラーパネルを設置した結果、年間に電気代を5万3000ドル(およそ550万円)、ディーゼル消費を84万リットル削減できる見込みです。

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ソーラー街灯を国連の支援で離島の港に設置 UN Photo Shoko Noda

島民議会の副議長の案内で島をまわっていた時のこと。港の建設などの開発で潮の流れが変わったことや気候変動に端を発する地球温暖化で海面が上昇し、その影響を受けて海岸がどんどん浸食されています。国の海抜は平均で1-1.5メートル、最高でも2.4メートルですから、海面上昇や激しさを増す高潮は大きな脅威です。地面が大きくえぐられてヤシの木が倒れてしまった波打ち際のすぐそばで、2本の木の間にはられたハンモックに腰掛ける少女に何気なく「気候変動や異常気象の影響はありますか?」と尋ねてみると、「もちろん。子どものころは、もっと先まで砂浜が広がっていたわ。井戸の地下水を使っていたけれど、しょっぱくなって、使えなくなってしまいました」という答えが返ってきました。

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16歳のハスナさん UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

「それは心配ですね。水はどのように確保しているんですか?」と聞くと、島民議会の副議長が「国連の関わる支援プログラムの一環で島内の30家庭に淡水化浄水器を取り付けて、そのおかげできれいな水が飲めるようになりました。彼女の家もその恩恵を受けています」と説明してくれました。16歳のハスナさんに真新しい装置が設置された家の台所を見せてもらったのですが、地下水を淡水化浄水器に通して出てきた水は、私にも普通に飲めるものでした。台所にはエビアンのマークの入ったリユースのガラスのびんが多数置かれていました。「浄水器と一緒にガラスの水差しももらったんです。使い捨てペットボトルのミネラルウォーターは使わないようにしています」とハスナさんは少し得意そうです(プラスチックごみなどについては、次回以降に報告します!)。小さなステップかもしれませんが、プラスチック容器のポイ捨てが目立つモルディブで、若い人たちから意識が変わってきているのかもしれません。国連の支援が人々の暮らしを改善している実例を思いがけず見ることができましたが、これを組織的に行うのには政府や自治体の強いコミットメントが必要になるでしょう。

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淡水化浄水器とともに、ガラスのびんも配られた UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

 この質問は16歳には酷な質問かもしれないと思いつつ「この島にずっと住み続けられると思いますか?それともどこかほかの場所に移住することも考えていますか?」と尋ねると、「ここには住み続けられないと思っています。大人になったら、近くのもっと大きな島に移って、そこで仕事に就きたいと思っています」と冷静な言葉が返ってくるではありませんか。少しずつ、しかし着実に忍び寄る海面上昇の脅威を前に、達観した表情が印象的でした。 

ここにはかつて砂浜が。立ち退いた住居跡も 撮影:根本かおる

ハスナさんの家を出て、近所の海のすぐ脇の空き地には日用品の残骸が転がっていました。「この海岸線にあった家は、島の北部に移転したんですよ」国連開発計画(UNDP)モルディブ事務所 の常駐代表で、国連諸機関を取りまとめる国連常駐調整官(UN Resident Coordinator) を務める野田章子さんが説明してくれました。

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野田国連常駐代表は人々との直接の対話を欠かさない UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

マーメンドホー島には昨年10月、アメリカのテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」に出演するデンマーク人の俳優のニコライ・コスター=ワルド―さんがUNDP親善大使として訪問 し、様々なリスクにさらされながら生きる人々の実情に直接触れています。

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UNDP親善大使のニコライ・コスター=ワルドーさん UN Photo Shoko Noda

副議長によると、浸食がひどいし、波をかぶることもあるので、住民は先祖代々暮らしてきた家を泣く泣く手放し、島の反対側への移転を決めたというのです。「問題は、移転した先もかならずしも大丈夫とは限らないということです。こんな小さな島では、生活圏がどんどん狭められてしまって」

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海の上にコテージが並ぶ「シックスセンシズ ラーム」 UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

マーメンドホー島からスピードボートで15分のリゾートアイランドにある高級リゾート「シックスセンシズ ラーム」 にも足を運びました。このエコ・リゾートでは、サステナビリティー担当官や研究者チームを置き、海と陸の生態系の保全・周辺の島々のコミュニティーへの環境教育活動・漁師たちとの協力関係の構築(地域の漁師たちが獲った魚の直接買い入れや、生態系保護への協力の呼びかけ)・宿泊客に提供する野菜の自家栽培(モルディブでは通常野菜・肉類・卵などはほぼ全てにわたって輸入)、ごみのバイオマス化・ガラスやキャンドルのリサイクルなど、徹底してサステナビリティーに配慮したリゾート運営 を行っています。

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左:野菜をリゾート内の農園で栽培  中央:キャンドルを再利用  

右:宿泊客を対象にしたエコ体験プロジェクトも。古くなったタオルで植木鉢に UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

ここでは使い捨てのプラスチック容器は原則使用禁止で、宿泊客に提供する水にはすべてリユースのビンを使用しています。海水を淡水化してビン詰めが行われている作業場を視察すると、何と美しいクラシック音楽が流れているではありませんか。一体なぜ?「クラシック音楽の振動が水をおいしくすると日本人の研究者が発表して、それを取り入れているんですよ。私たちの身体の60パーセントが水でできているのですから、少しでも水にとっても『いいこと』ができれば、と考えてのことです」とサステナビリティー担当官のメガンさん。 いろいろな水に対する考え方があるものですね。

クラシック音楽で水にいいバイブレーションを 撮影:根本かおる

モルディブの水事情に触れて、水道の蛇口をひねればきれいな水が手に入れられることのありがたさを痛感しました。持続可能な開発目標(SDGs)  の17のゴールの中では、ゴール6 がきれいな水を掲げる個別目標ですが、水は貧困撲滅、健康、農業、気候変動、海と陸の生態系などの他のゴールとの関係性の強い重要な要素です。2050年までに、世界人口の過半数と、世界の穀物生産の半分が水ストレスによるリスクにさらされることになると見られ、まさに水こそ命の基本であり、繁栄の源と言えるでしょう。

今週、3月22日の国連の定めた水の記念日「世界水の日」 と時を同じくして、3月19日から23日まで国際機関や各国の代表、研究者らが出席する国際会議「第8回世界水フォーラム」 が、「水の共有」をテーマにブラジルの首都ブラジリアで開催されています。水問題をライフワークとされていらっしゃる皇太子殿下が世界水フォーラムにご出席になり、「水と災害」に関する会合で「繁栄・平和・幸福のための水」と題する基調講演に臨まれました。

「21世紀は水の世紀であるといわれていますが、その言葉が一つ進み、21世紀は繁栄、平和そして幸福の世紀であったと後世の人々に呼ばれることになるよう願っています」と述べられるとともに、「地球規模で発生する自然の脅威に対抗するため、国際社会は結束して対処していく必要があります」と呼び掛けられました。

現時点の推計では、2030年までに淡水資源が必要量の40パーセントも不足することが見込まれ、深刻な水不足で2030年までに7億人が避難民となる可能性があります。世界の人口が急増し続け、世界はグローバルな水危機への道を一直線に進んでいます。その直撃を受けるのは、モルディブの離島の人々のように脆弱な立場にある人たちです。課題がますます大きくなりつつある中、私たちの水管理方法の転換を支援するアクションが必要だと、2018年の「世界水の日」(3月22日)から2028年を「水の国際行動の10年(Water Action Decade)」 としてキックオフします。

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ラーム環礁での夕日 UNIC Tokyo Kaoru Nemoto

 水は豊かさを高めるとともに、貧困撲滅・生活改善・環境保護格差是正・健康や食料の安定確保、持続可能なエネルギーなどの面で、その付加価値は計り知れません。モルディブをはじめとする水不足の問題を抱える人々が、技術や意識改革で少しでも平穏に暮らしていけることを願っています。

 

 

持続可能な開発目標(SDGs)と初等教育

~八名川小学校をお訪ねしました~

こんにちは。

国連広報センターで教育関係を担当している、千葉です。

突然ですが、東京都江東区立八名川小学校という小学校をご存知でしょうか。

八名川小学校はユネスコスクール(2011年認定)(注1)として「持続可能な開発教育(ESD)」(注2)への取り組みを活発に続けてこられ、東京都教育委員会から持続可能な社会づくりに向けた教育推進校に指定された学校です。

「持続可能な開発目標(SDGs)」がスタートしてからは、それをESDに巧みに融合させた先駆的な取り組みを行い、昨年12月、その功績を認められて、第1回ジャパン SDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞」(注3)を受賞されています。ちなみに、SDGsアワードには当センター所長の根本が審査員の一人として携わりました。根本は、先月20日に全受賞団体によるプレゼンが行われたシンポジウムでもコメンテーターとして参加させていただいています。(注4)

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(注1)文科省ウェブページ参照
http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339976.htm

(注2) 文科省ウェブページ参照
www.mext.go.jp/unesco/004/1339957.htm

(注3)首相官邸ウェブページ参照

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201712/26sdgs_award.html

(注4)国連広報センターブログ参照
http://blog.unic.or.jp/entry/2018/01/23/173833
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上述のシンポジウムが開催されてから一週間後の1月27日(土)、八名川小学校で終日にわたって教育実践の共有や学び合い、交流の催しが開かれるということで、同校にお伺いしました。本ブログでは、そこで見たこと、感じたことをそのままにお伝えしながら、SDGsを教育に活かした同校の取り組みをご紹介できればと思います。

さて、八名川小学校での催しは、全児童による学習発表会(午前中)でスタートしました。この学習発表会はご父兄や地域の方々をはじめ教育関係者などに広く公開される年中行事で「八名川まつり」と呼ばれています。同校のご父兄や地域のみなさんにとっては、毎年恒例の楽しみな授業参観の機会であると同時に、外部の教員および教育関係者にとっても重要なイベントで、八名川小学校の教育実践を肌で感じ、学ぶ最良の機会となっています。

当日は数日前に降った大雪が所々にまだ白く残る寒い冬の日だったものの、午前9時前に到着してみると、もうすでに保護者や地域のみなさんがたくさん受付に並び、多くの教員や関係者のみなさんもまた全国各地から駆けつけていらっしゃいました。

校内に入ると、各教室や体育館では、1年生から6年生まで、それぞれ大きなテーマのもとに、(中級学年からは児童のみなさんが自ら課題を設定し)数か月にわたって主体的に取り組んだ学習の成果を発表しはじめています。

 

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                                         ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba


各学年の大きなテーマは以下の通り。
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おそらくは授業参観と聞くと、教室の後ろでお子さんの様子を静かにじっと観察している保護者のみなさんの姿を思い浮かべられる方が多いかもしれませんが、「八名川まつり」は違います。ご家庭、地域の方々も児童のみなさんと一緒になって、混じり合って、クラスのあちらこちらで小さなグループごとに分かれたお子さんの発表を聞き、質問したり、感想を述べあったりするのです。ユネスコスクールとしてESDへの取り組みを続ける同校において、学習発表会は単なる授業「参観」の機会ではなく、授業「参画」の場です。

 

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            © UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

この日、見学のつもりで伺ったはずの私も、いつの間にか、八名川小学校の授業「参画」にどっぷりつかっていました。

児童のみなさん一人ひとりが地域や自然、災害、脆弱な人々に思いを馳せ、また未来を生きる自分を思い描き、それぞれに主体的に学ぶことを通して深い喜びを得ていることが伝わってきました。その表現力はとても確かで、その顔は輝いていました。

「どんな準備をしたの?」
「たいへんではなかったですか?」
「楽しかった?」

お一人おひとりにお話を聞いてみました。

自然を取り入れたゲームの遊び方を元気に教えてくれた低学年のお子さんに…
障害者の直面する問題をやさしい笑顔で説明してくれた中級学年のお子さんに…
将来就きたいと思う職業の発表に真剣な表情で臨んだ最高学年のお子さんに…

 

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                                       ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

気がつけば、ずいぶん多くのお子さんにお話を聞きしていました。

「準備に3か月ぐらいかかりましたが、やりがいがありました」
「楽しかったです」
「ちょっと恥ずかしかったけど、とてもよかったです」

みなさん一人残さず、楽しんで取り組んだこと、来年の学習発表会を楽しみにしていることを話してくれました。

そして、お子さんたちの取り組みについて感想をお聞きしたご父兄や先生方のまなざしはみなやさしく愛情豊かでした。

 

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                                          ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba


温暖化、感染症、紛争、難民・移民、排外主義、テロ、貧困、格差、人口問題など、わたしたち人間が直面する多岐にわたり輻輳的に絡みあう諸問題を有機的につなげながら、みんなで考え抜き、持続可能な社会をつくって、この地球を未来の世代に引き継ぐ、そして「誰一人取り残さない」。―この持続可能な開発目標(SDGs)の精神が八名川小学校で確かに息づいていると感じました。

不覚にも涙がでそうになりました。

日本国内で、SDGsと聞いても、自分との関係性をあまり見出せない子供たちが多いと言われますが、八名川小学校では、そんなことはありませんでした。教室の廊下の壁には、自分たちの扱うテーマとともに、そのテーマに関連するSDGsの目標をデザイン化したアイコンが貼りだされ、児童のみなさんはSDGsを自分ごととして捉え、そのお子さんたちを通して、保護者、地域のみなさんもまた2030年の世界に思いを馳せていらっしゃいました。

 

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                                          ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

八名川小学校においてESDへの取り組みが始まったのは、7年前の2010年のことだそうです。それ以降、持続可能な社会の担い手となる子どもを育てるため、すべての教科を横断的につないで年間教育カリキュラムに落とし込んだESDカレンダーを活用して、「子どもの学びに火をつける」を合言葉に主体的・問題解決的な学習に取り組まれてきたのです。

決して狭量な偏差値アップのようなことを狙っていたわけではないのにもかかわらず、主体的・問題解決的な学習の積み重ねは、ふたを開けてみれば、児童のみなさんの学力を大きく伸ばすことにつながったそうです。

驚くべきことに、全国学力状況調査において、同校の児童のみなさんの国語、算数の点数がともに、A問題で6%程度、B問題で15~18%程度アップしたのです。

 

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文科省全国学力・学習状況調査結果―八名川小学校の推移グラフ 平成22年~28年)

 

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                                         ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

八名川小学校で子どもたち一人ひとりがそれぞれ見せる喜びと輝きの表情と、学力として目に見える成果は私を含めた大人たちに多くのことを示唆していると思いました。

さて、同校でのこの素晴らしい教育実践をご紹介する上でどうしても欠かせない方がいます。同校の取り組みをリーダーとして引っ張り、支えてこられた手島先生です。手島先生は2010年に八名川小学校に校長として着任し、その後すぐに同校のユネスコスクールとしての指定をユネスコに申請し、承認されるとともに、前任校で開発した「ESDカレンダー」をもとに、「New! ESDカレンダー」をつくって持続可能な社会に向けた教育に取り組まれました。最近ではさらにSDGsを融合させた実践を行い、昨年見事にSDGsアワードを受賞されたのです。

 

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                                      ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

手島先生は先生方、ご父兄、子供たちから深い信頼を寄せられています。

手島先生と直接お会いしてお話していると、理由がわかります。穏やかで謙虚なお人柄でありながら、教育に傾ける情熱は人一倍あつく、子供たち一人ひとりを大切に考え、また、ともに働く先生方お一人ひとりを大切に思うやさしい気持ちが伝わってくるのです。

「ありがとう」「ありがとうございます」

私がお伺いした日も、手島先生から児童や教員のみなさん、外部の方々に、分け隔てなく、惜しみなく発せられるていねいな感謝とねぎらいの言葉には温かみがありました。

そんな手島先生がESD教育のアドバイスを受け、師と仰ぐ方が多田孝志・金沢学院大学教授です。多田教授は長年にわたって国際理解教育などを研究し、日本国際理解教育学会会長や日本学校教育学会会長を歴任しておられます。

 

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                                        ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

八名川小学校での催しの最後を飾ったのが、多田教授と手島校長先生の対談「日本の教育とその未来を語る」でした。


対談をお聞きしていると、子供たちの教育と未来の展望を描き考える多田教授と手島先生のお二人の間の深い信頼関係が伝わってきました。

そして多田教授と手島先生の信頼関係がお二人の間のそれを超えて、手島先生と八名川小学校の教職員お一人ひとりとの深い信頼関係、また子供たち一人ひとりに寄り添う先生方と児童のみなさんとの信頼関係、そして学校と保護者、地域の方々との信頼関係へと重層的、多面的に広がっていることを思いました。

多田教授と手島先生の対談が終わり閉会してもなお、子供たちの未来のためにひとつでも多くのヒントを得ようとする先生方であふれた会場はしばらくの間、その冷めやらぬ熱気に包まれていました。

実は、同校を最後に、手島先生は2018年3月、ご退職の日を迎えられるそうです。

まだ現役で十分にご活躍いただけるはずなのにと残念に思えてなりませんが、今後はその活動の幅をさらに広げて、日本の小学校でのESD、SDGs普及にご活躍いただけることと願っております。

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             ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

私の拙いブログに最後までおつきあいいただいた皆様のなかで、ESD教育とSDGsを活かした教育実践にご興味がわいたという方におかれましては、手島先生が昨年12月30日、「学校発・ESDの学び」(教育出版)という本をご上梓されていますのでご紹介いたします。ESD教育実践とSDGsに関する興味深いご本です。お手にとってみてはいかがでしょうか。

―――

最後に卑近な話で恐縮ですが、私が7歳の頃に死別した父は小学校の教師でした。若干37歳の若い教師でまだこれからというときでしたが、次の転任先が決まってその学校の校長先生にご挨拶に伺って意気揚々と自宅に帰ってきたその日に脳溢血で倒れました。無念だったろうと思います。父の魂が存在するとしたら、自分の息子がこうして八名川小学校の教育実践について綴らせていただいていることをずいぶんと喜んでいるのではないかと思います。同校で教室を回りながら、不覚にも涙がでそうになったとき、一番感激していたのは私自身である以上に、半世紀のときを経て、先駆的な取り組みを行う小学校で子供たちが輝く姿を、私の目を通して見ることができた、若い小学校教師の父だったのかもしれません。八名川小学校を後にしながら、手島先生をはじめとする素晴らしい先生方にお会いできたご縁に感謝しつつ、心の中で亡き父にそっと手を合わせました。

(千葉のブログを読む)
「国連ガイドツアーでSDGsの啓発促進」
「SDGsを舞台裏で支える日本人国連職員たち」
「HLPFでの日本の市民社会の情報発信、そしてインタビュー」
「HLPFでの日本企業、経団連の情報発信について」
「HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー」
「ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム」
『子どものための2030アジェンダ:ソリューションズ・サミット』参加報告会 
「アウトリーチ拠点としての図書館と持続可能な開発目標(SDGs)」
「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)をご存知ですか」 
「佐藤純子さん・インタビュー~国連の図書館で垣間見た国際政治と時代の変化~」
「北海道にみた国連につながる歴史ー国際連盟と新渡戸稲造」
 「国連学会をご存知ですかー今年の研究大会に参加してきました」
「沖縄の国連寄託図書館を想う」
「国連資料ガイダンスを出前!」
「国連資料ガイダンスをご存知ですか」
「国連寄託図書館をご存知ですか」

 

 

島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭(2018年4月19日~22日)「JIMOT CM REPUBLIC 2018」CMアイディアの募集中!

昨年に引き続き、国連広報センターは「島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭」(2018年4月19日~22日)でのSDGsの取り組みを応援します! 

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                   今年のテーマはSDGs「みらいへつなぐ、じもとのちから。」

           JIMOT CM REPUBLIC 2018

                                    1月22日からCMアイディア募集開始

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島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭(2018年4月19日~22日)恒例の地域発信型プロジェクト「JIMOT CM COMPETITION」が今年は「JIMOT CM REPUBLIC 2018」と名称変更、装いも新たに実施され、1月22日からいよいよCMアイディアの募集が始まります。

このプロジェクトは海外を含む地元のアイディア発案者たちと、そこに住む“住みます芸人”、よしもとスタッフらが交流しながら、各地のCMを一緒につくりあげ、地方の魅力を伝えようという試みです。過去8回行われましたが、今回は、大切なものや気持ちの詰まった「じもとのちから」をさらに、みらいの子どもや人々に受け継いで欲しいという思いを込めて

(1)「SDGs」をテーマに設定(世界共通17の目標達成の実現にむけたきっかけ作りのために)

(2)SNSでの応募を実施(より多くの人が参加できるよう)

と2つの点を改良し、よりバージョンアップしたプロジェクトにしたいと考えています。

 

【本件についてのお問合せ】

島ぜんぶでおーきな祭 広報・宣伝チーム(株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー) 担当:永井・大竹(03-3209-8290)

 

「JIMOT CM REPUBLIC 2018 募集要項」

この企画は、一般の人から地元の魅力を盛り込んだCMのアイディアを募集し、各部門の優秀作については、よしもとスタッフらが実際のCMに仕上げるお手伝いをするものです。CMは、島ぜんぶでおーきな祭(4月19日~22日)のイベントで上映し、各部門のグランプリ作品が選ばれ賞金が授与されます。

 

実施部門

  • 全国46都道府県の作品(優秀作5作品をCM制作、グランプリ賞金47万円)
  • 沖縄県全41市町村の作品(優秀作41作品をCM制作、グランプリ賞金41万円)
  • アジア・ASEAN諸国の作品(優秀作10作品をCM制作、グランプリ賞金未定)

テーマ

CMアイディアのテーマは、吉本興業グループが普及に取り組むSDGs(持続可能な開発目標)にちなんで、

   SDGs「みらいへつなぐ、じもとのちから」

です。参加者の身近なところにある、みらいへ残したいものを映像に収めてCMをつくります。よしもとのSDGsへの取り組みについては、

コチラ→http://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/

応募方法

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参加者は、テーマに合った動画(30秒以内)をTwitterやインスタグラムに

「 #JIMOTCM 」のハッシュタグを付けて投稿します。

【スケジュール】

募集期間: 1月22日(月)~3月4日(日)/審査期間:3月5日(月)~

CM制作作品発表:3月中旬

 主催:沖縄国際映画祭実行委員会 ©沖縄国際映画祭/よしもとラフ&ピース

 

詳細は島ぜんぶでおーきな祭ホームページをご参照ください。http://oimf.jp/jimot/ 

 【本件についてのお問合せ】

島ぜんぶでおーきな祭 広報・宣伝チーム(株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー)担当:永井・大竹(03-3209-8290)

ホロコーストの生きた記億を残す - 若手デザイナーたちがポスターを作成

 ~1月27日は ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」

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ユダヤ強制収容所アウシュビッツが開放されたのが、1945年の1月27日。国連総会はこの1月27日を「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」と定めました(2005年11月1日)。ユダヤ人の3分の1、そして無数のマイノリティーの人々が殺害されたホロコーストを再確認し、憎悪、敵対感情、人種差別、偏見がもつ危険性を永遠に人々に警告することがこの国際デーの目的です。

今年の国際デーに向けて、ポスター・デザイン・コンテスト:「生きた記憶を残すために:私たちが共有する責任 (Keeping The Memory Alive – Our Shared Responsibility)」が開催されました。これは、国連広報局の「ホロコーストと国連アウトリーチ・プログラム」イスラエルホロコースト記念館(ヤド・ヴァシェム)の国際ホロコースト研究院が共同で企画したものです。世界から150点を越える作品が集まり、以下に入賞作品12点のポスターをご紹介します。

第一位  –  ジュリア・ブランカロニ・クリストフィ (ブラジル)

First Place - Julia Brancaglione Cristofi; Brazil

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作者のことば:

「生きた記憶」は、三部作からなる「ホロコースト – 命、記憶、そして抵抗」の一つ。これは、記憶を生かし続けることを目的としたコレクションである。 この作品は、ホロコーストで生き残った人々の肖像画を用いており、それは紛れもなく大虐殺の永遠なる証拠だ。人類の共同責任として、全ての人々によって長く留めるべき生きた記憶だ。命と自由の大切さが示されている。

第二位  –  ヤエル・ボヴェルマン (イスラエル

Second Place - Yael Boverman; Israel

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作者のことば:

子どもの頃にホロコーストを経験した私の祖母。彼女の家族写真を用いて殺伐で痛々しい印象を与える作品を描いた。

第三位  –  アデリーナ・シェイドリーナ (ロシア)

Third Place - Adelina Shaydullina; Russia

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作者のことば:

私たちの多くは、携帯電話で映画を観たりフィクションの本を読むことで、ホロコーストの犠牲者をしのんでいる。もちろん、何もしないよりは良いが、実際に起きた出来事と、こういった画面の中のストーリーに、一体なんの共通点があるのだろう?21世紀に生きる人間によって生みだされる写真や言葉が、一体どのようにホロコーストの犠牲者の苦しみを伝えられるというのだろう?それは不可能だと私は思う。だから時には、目で見える文字で表された情報から離れ、立ち止まって、黙祷の時間を持ちたい。

その他の入賞作品

べラ・ぺスコベット (ロシア)

Vera Peskovets; Russia

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作者のことば:

記憶を留めるということは、次世代の子どもたちにその記憶を伝えることだ。私はこの作品にホロコーストの記憶を未来の世代に伝えたい、という思いを込めた。黒い煙はホロコーストの暗い記憶を表し、ヘッドフォンは世代間のつながりを象徴している。

 ドラ・フェレンツィ (ハンガリー

Dora Ferenczy; Hungary

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作者のことば: 

私はユダヤ人家族に生まれた。このテーマに対し、慎重で、意義があり、あまり固定観念にとらわれない取り組みをすることは私にとってとても難しい。私は、叔父と父親と共に1つの長期プロジェクトに取り組んだ。集められる限りの写真や情報を用いて家計図を作成することだ。この図からみえる彼らの生誕地と人生の終焉の地が、一目で多くを物語っている。地名からも明らかだが、数多くの命に与えた戦争の影響を示すために写真を含めた。また、タイトルである「生きた記憶を残すために」にも見事にマッチしている。というのは、私たちの生きる今は、過去の世代と深く関わっているから。

エリック・フラヴィオインドネシア

Eric Flavio; Indonesia

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作者のことば:

タトゥーとは、ある出来事や物事の象徴的な記憶である。手首に傷(自殺未遂を示すもの)を負った少女の右腕にはダビデの星が「タトゥー」されている(ダビデの星とは、ユダヤ人であることを示すために腕章に縫い付けられたもの)。ホロコーストの恐怖は何年も前に終わったものではなく、今なお次世代の人々に付きまとう。彼らを取り巻く環境やその家族にさえ、ホロコーストの恐ろしい記憶は宿っている。タトゥーをした少女はその重さに潰されそうになっているのだが、隣には男性が寄り添い彼女を支えている。このように、心の支えによって今のユダヤ世代を支えることができる。

 ヒラー・ウィルチェック&ロテム・ゲズンテルマン(イスラエル

Hila Wilchek and Rotem Gezunterman; Israel

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作者のことば:

このポスターでは、ホロコーストの犠牲者による手書きのサインによって1つの肖像画が形作られている。各人はそれぞれ個人としての象徴となるサインを持っている - サインの向こう側にある人間の顔。

リロン・テヴェット(イスラエル

Liron Tevet; Israel

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作者のことば:

この作品は、ホロコーストを生きる一人ひとりについての物語を語っている。登場人物は、ヤド・ヴァシェムに保管されている資料や日記をもとに設定されており、ホロコーストが始まる前とその時代における生活を記録している。その日記は、実際にホロコーストを経験した人々の物語であり、彼らの世界がつまっている。ホロコーストによって彼らの人生は閉ざされ、まだ語られていない物語は数え切れないほど多い。この作品は、ホロコーストを生き延びた者、そして、資料や写真として記録されず語られないままの犠牲者を表している。今も健在の、ホロコーストを経験した人々から直接話を聞くことは、とても重要だ。ホロコーストが決して忘れ去られることなく、ヨーロッパのユダヤ人家族とコミュニティーについて私たちの記憶に留まるだろうから。

エンゲル・ベガ(ペルー)

Angel Vega; Peru

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作者のことば:

私たちは平和に暮らしている。それは、ホロコーストによって平和を奪われた人たちの記憶を、私たちは失うことがないから。この作品の中の足を鎖に繋がれた鳩は、子どもたちを表している。平和に生きることを願いつつもホロコーストの犠牲となった子どもたちや人々だ。2羽の鳩は、死後、苦しみや幽閉から解き放たれ自由になった人々を表している。

エカチェリーナ・カルジャナヤ(ロシア)

Ekaterina Kalujnaya; Russia

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作者のことば:

ホロコーストは、残酷さの極みである。そのようなことが起きた、ということを考えただけで恐ろしくなる。この「ダビデの星」は神から私たちへのかけがえのない贈り物だ。一体どうしたら囚人と決めつけて憎むことができるであろうか。すべての星には命があり、家族がいる…彼らはまさに、非人道的行為の犠牲者だ。ホロコーストユダヤ人にとっての惨事だ。全ての人々はその恐ろしい時代について知るべきであり、記憶に留めなければならない。 

ヨアブ・カハナ(ロシア)

Yoav Kahana; Russia

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作者のことば:

ダビデの星の穴は、ユダヤ人が地球上で迫害されてきた歴史の奥深さを表している。穴から伸びる根には、その記憶を残したいという願いが込められている。この星の上部の三角形は、砕けた墓碑として、今もなお起きている反ユダヤ主義行為を表している。

パンナ・ペトロ(ハンガリー

Panna Petro; Hungary

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作者のことば:

ホロコーストに関する多くの恐ろしい出来事の中で、誰もが身近に感じられるものを探してみた。ホロコーストは、ユダヤ人だけでなくユダヤ人以外の人々の日常生活においても起きたものだからだ。この作品には、ひっそりと隠れながら沈黙のなかで生活するという非人間的な状態と、他の家族から受ける善意が描かれている。暗やみの中で、まるで存在しないかのように振る舞うような生活。ナチスに占領された町における一般的だが隠れ家である住居。ホロコーストについて不毛で間接的な視点と、1940年代の市民が直面しなければならなかった突然の変化との対照が強調されている。

ホロコースト犠牲者を想起する国際デー(1月27日)に寄せるグテーレス国連事務総長のメッセージはこちら

 国連広報局「ホロコーストと国連アウトリーチ・プログラム」のウェブサイトはこちら>>>

http://www.un.org/en/holocaustremembrance/2018/calendar2018.html

 ポスター・コンテストに関するホロコースト記念館(ヤド・ヴァシェム)のウェブサイトはこちら>>>

http://www.yadvashem.org/education/international-projects/posters.html

ジャパンSDGsアワード受賞団体そろい踏みの会は、会場も巻き込んですごい熱気でした!

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国連広報センター所長の根本です。2018年もどうぞよろしくお願いいたします。

新しい年になってからも、様々なセクターからSDGsに関する企画のご提案が次々と弊センターに寄せられています。SDGsの実施3年目の今年はSDGsが日本社会に一層定着して広がっていくだろうと年初から手ごたえを感じている次第です。  

そんな中、先日個人的にも感慨深い会合がありました。日本政府はSDGsの推進について顕著な功績のあった団体を顕彰する「ジャパンSDGsアワード」を設け、その第一回の受賞者の発表が年末の12月26日にありました。内閣総理大臣賞1団体、内閣官房長官賞3団体、外務大臣賞2団体、SDGsパートナーシップ賞6団体の計12団体表彰されましたが、その全受賞団体の代表が全国各地から勢ぞろいしてプレゼンテーションするという政策分析ネットワーク主催のシンポジウムが1月20日に開催されたのです。私も外務省でSDGsを統括している地球規模課題総括課の甲木課長、朝日新聞SDGs取材チームの北郷記者とともにコメンテーターの一人として参加しました。 

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左から外務省国際協力局地球規模課題総括課 甲木 浩太郎 課長、国連広報センター 根本かおる所長、朝日新聞社 北郷 美由紀 報道局デスク

「ジャパンSDGsアワード」に関しては、審査員の一人として280余りの応募書類を読み込んで採点するという「産みの苦しみ」に携わってはいるものの、当事者によるプレゼンテーションに触れるのは初めてでしたから、大いに刺激を受けるとともに、苦労して審査した甲斐があったと感じ入った次第です。会場に補助椅子を多数用意するほどの満席で、3時間という長丁場ながら集中して聞き入ってほとんどの方がプログラムの最後まで残り、スピーカーの情熱と会場からの発表者に向けられる熱い視線との相乗効果で、会場は実に熱かったです!組織のトップが遠方から駆けつけてプレゼンテーションしてくださるケースも多く、トップの思いがチームに共有されてチームからの問題意識と共感に裏打ちされるという、トップ・ダウンとボトム・アップのバランスが取れていると感じられました。

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満席の会場

今回各審査員の審査を集計してみると、図らずも上位に企業、自治体、協同組合、NPO、大学、小学校と多様なアクターが選ばれ、また業態・文脈も化学製品、飲料メーカー、流通、エンターテインメント、国内での障害のある被災者支援、妊産婦支援の国際NGO、ESDを核にした大学、イノベーションを核にした大学、ユネスコスクールのネットワークを広げた小学校、公害を乗り越えた工業都市、山間地の自治体と、実に多岐にわたるものでした。まさにマルチ・ステークホルダーで取り組むSDGsの美しさと新しさを体現するような受賞結果となりました。

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第1回ジャパンSDGsアワード報告会に登壇した参加者とともに

さらに、MDGs、ESD、環境未来都市など、SDGsができる前からあった枠組みを活用して長年活動を蓄積してきた団体も多かったのも特徴です。SDGsという新たな武器・世界共通の物差しを得て、SDGsの新たな切り口、すなわち「誰も置き去りにしない」という包摂性の原則や「普遍性・統合性」という国内と国外、分野間を密接不可分につなぎながら取り組む姿勢や、様々なアクターを巻き込む「参画型」などを通じてそれまでの活動の積み重ねにさらに付加価値をつけて取り組もうという気概がビンビン伝わってきました。SDGsには、世界レベルの議論に政府の対応をまたずに民間や地方自治体が直接つながることのできる「窓」の役割もあり、やる気のある団体はどんどん行動を先に進めていることが見て取れました。さらに、それぞれの団体で核になる分野・ゴールをいかに有機的に総合力で推し進めているのかという点は、自分自身の日頃のマネージメントを考える上でも大いに参考になります。

発表してくださった受賞団体の代表の方々は以下の通りです。

ジャパンSDGsアワードは今後も続きますから、より多くの団体の方々にチャレンジしていただきたいと願っています!

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報告して下さった第1回ジャパンSDGsアワード受賞者のみなさん



 

国連広報センター(UNIC)インターンで学んだこと

 

こんにちは。国連広報センターで2017年9月から12月まで、3ヶ月インターンをしていた、山田奈菜実です。私は多摩美術大学を卒業後、アイルランドで留学をし、その後この国連広報センターのインターンとして働かせていただきました。国際機関の広報という立場に短い間ですが置かせてもらい、様々なことを学ばせていただきました。

 

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インターンは毎日、日本語6社、英語2社の新聞を読むことから始まります。国際関係のニュースをメインにクリッピングをすることで、自身の知識を莫大に増やすことができます。また、その際に他の様々なバッググラウンドを持ったインターンのと、国際問題についての各々の意見を交換し、時には議論することで、多角度から物事を考えることが出来ます。

 

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毎朝の新聞作業は、国連が扱う国際問題を正確に知るためにも大切な作業です

 

新聞が終わった後、インターンは各々自分の業務に移ります。例えばメディアモニタリングという、主に日本で国際的な出来事が起こった時に、紙の新聞だけではなくインターネットやテレビや共同通信社など様々な媒体から、ニュースを調べる作業です。報道の仕方の違いや取り上げられ方の違いを感じ、比較することは大変勉強になりました。

 

国連広報センターのインターンは学部生からも受け入れているので、他の国連機関のインターンより、バックグラウンドに多様性があります。時にはお互いの知識を共有しあいながら、国連に限らず様々なことを語り合います。いつも4、5人のメンバーで成り立つインターンたちは笑いが絶えません。

 

また、私は美術大学卒業ということで、国連広報センターにおける様々なグラフィックやアートといった観点からも物事を見させていただきました。TwitterFacebookの広報活動に携わらせていただいたり、広報活動の画像やヘッダーも制作させてただきました。

 

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SDGsクッキー。手書きで描かれた17の目標が美しいです。

また、国連広報センターには様々な配布物があります。国連の基本を教える「国連の働き」や「SDGsナマケモノにもできるアクションガイド」、国連の定期刊行誌「Dateline」…。1つ1つの資料に目を通すだけで、国連についてより深く知れます。職場のふとした所にも、知識が溢れているのです。

 

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国連広報センター発行の刊行物。国連大学1階でも手に入れることが出来ます。

深く学んだ物事の1つとして、国連が2020年までに掲げている目標「持続可能な開発目標~SDGs」があります。その目標について、企業の方や民間の方から毎日くる様々な質問に応対するのもインターンの仕事です。おかげでSDGsについて、国連の中の立場から深く知ることが出来ました。

  

 私がインターンとして携わった期間は、特にイベントやゲストが多い時期でした。国連NY本部から事務総長アントニオ•グテーレス氏がお見えになり実際に講演を聞き、加えてお会いする機会にも恵まれました。この機会を設けてくださった職員の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。 

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右手前、アントニオ・グテーレス国連事務総長インターン。日本記者クラブにて。

 

また、その他にもアミーナ・J・モハメッド国連副事務総長や、マーヘル・ナセル国連広報局アウトリーチ部長がおいでになって講演会とレセプションに参加させていただく機会もいただきました。

 

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アミーナ・J・モハメッド副事務総長とUNICの職員と

 

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マーヘル・ナセル国連広報局アウトリーチ部長とインターン

 

イベントでは、SDGsフォトコンテスト2017の運営をさせていただきました

フォトコンテストについて知りたい方はこちら。

http://www.unic.or.jp/news_press/info/26339/

 

国連ニューヨーク本部のニュースにも取り上げられました。

http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=57955#.WkNt5WK0OMl

bit.ly

 

このイベントは職員の方1人とインターンによって運営されました。

審査をはじめ、受賞者の連絡、受賞作品の翻訳作業、商品手配や当日のプレゼン資料もすべてインターンの仕事でした。

 

私はNikon様と一緒に、受賞作品を扱った大きなパネルを作らせていただきました。

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制作した作品パネル。ここで使われる日本語の翻訳作業もインターンが担当しました

このパネルは現在上智大学が所有しており、申し込みさえすれば無償で貸し出しもできます。興味のある方は是非上智大学の広報室に連絡をしてください。

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上智大学でのフォトコンテスト展示(2017年12月14日)


 

受賞後は朝日新聞をはじめ、Japan TImesなど多くのメディアに取り上げてもらいました。

 

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2017年12月31日 朝日新聞朝刊


 

また、大賞受賞者のルイスさんをブラジルからお呼びする機会を設けました。はじめは緊張していましたルイスさんは、授賞式を経て会話を重ねるうちに写真の話やコツなど様々なことを語ってくれるようになりました。

ルイスさんとインターンのインタビューはこちら。

http://blog.unic.or.jp/entry/2017/12/08/153326

 

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カメラをいじる著者

 

国連広報センターのインターンは、一言では書き表せないほど、様々な出来事に溢れた3ヶ月間でした。

またビジネスとして英語を使う職員の方々の語学力と専門性の高さに驚き、その仕事を拝見させていただくことで大変勉強になりました。

国連広報センターの職員のみなさん、そしてインターン仲間のみんな、本当に素晴らしい時間をありがとうございました。

 

2017年12月27日 インターン 山田奈菜実

 

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写真で綴る、国連事務総長の訪日 

今年1月1日に就任したアントニオ・グテーレス国連事務総長が、日本滞在時間24時間という短時間ではありましたが、就任1年目に日本を訪問。気候変動のパリ協定採択からちょうど2年にあたる12月12日にフランス政府・国連・世界銀行がパリで共催した「One Planet Summit」出席後、飛行機に飛び乗り、13日夜に東京に到着。14日は朝7時50分から夕方5時40分まで、多くの重要なステークホルダーに会うために、まさに分刻みの日程をこなしました。UHCフォーラムスピーチでは、UHCが単に健康だけでなくSDGs全体の推進の礎であることを強調するとともに、2019年に国連でUHCサミットを開くことを明らかにしました。さらに、様々な機会をとらえて日本への感謝と多国間主義への日本の貢献に対する期待を繰り返し伝えました。

 

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JICA(国際協力機構)北岡理事長の表敬

 

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中根外務副大臣主催の国会議員との懇談会 - ポルトガルの議員・首相を務めた事務総長は、日本の国会議員との懇談はこれが20回目、とのこと!

 

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UHC Forumハイレベル会合にてスピーチ

  

SDGs市民社会ネットワークとの対話

 

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官邸での儀じょう隊による栄誉礼

 

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安倍総理大臣と会談

 

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安倍総理大臣と共同記者発表

 

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安倍総理大臣主催昼食会

 

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上智大学にて「グローバル課題 ~ 人間の安全保障の役割」をテーマに講演

 

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外務省主催国連壁新聞コンテスト受賞者との記念撮影

 

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 上智大学学長・理事長と懇談

 

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 国連アカデミック・インパクト参加大学の学生たちとの対話

 

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日本記者クラブでの記者会見  ー 日本記者クラブによると、同クラブでの記者会見は8回目となります!

 

 

日本記者クラブに駆け付けた上川法務大臣と握手

 

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UNICチームと写真をパチリ

 

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空港の待合室でUNICチームとパチリ

 

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強行軍をこなしてニューヨークに戻ったのは現地時間の14日夜。翌15日には、日本の河野外務大臣が議長を務めた安全保障理事会朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)による核・ミサイル開発への対応を協議する閣僚級会合に出席しています。この閣僚会合は日本でも大きく報じられましたが、あの場に出席して発言した事務総長は日本からニューヨークに戻った直後で、事情を知る私は、映像を見て彼のスタミナに舌を巻いた次第です!事務総長は事務総長としては初めての訪日ですが、国連の立場では今回で15回目の日本訪問と語りました。今後定期的に日本を訪日してくれることを日本に拠点を持つ国連の事務所の立場から大いに期待しています。