国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本 【連載No. 3】

HLPFでの日本企業、経団連の情報発信について

 

みなさま、こんにちは。国連広報センターの千葉です。

 

今年7月にニューヨークの国連本部で取材したハイレベル政治フォーラム(HLPF)について、ブログを綴らせていただいています。

第1回 ~ ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム(HLPF)
第2回 ~ HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180827140701j:plain

国連本部の前で、はためく加盟国旗 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

今年のHLPFにおいて、日本の自発的国別報告(VNRs)はありませんでしたが、日本による情報発信がなかったということはなく、政府、ビジネス、NGOなど、いろいろなセクターで、日本人の方々がそれぞれSDGsに関する情報を発信していらっしゃいました。

 

前回は日本政府のイベントについての取材やインタビューをお届けしましたが、今回(第3回)は、HLPFにおける日本のビジネス界の情報発信についてご紹介したいと思います。

 

ビジネスフォーラムでの経団連

 

ハイレベル政治フォーラム(HLPF)の閣僚会合2日目の7月17日(火)、経済社会理事会議場で、スペシャル・イベントのひとつとしてビジネスフォーラムが開かれていました。このフォーラムは官民一緒になって、SDGs達成への取り組みについて話し合う場です。国際商工会議所(ICC)、国連経済社会局、国連グローバルコンパクトの共催で、今年が3回目でした。

 

午前9時15分、主催者の国連グローバルコンパクトのリザ・キンゴ事務局長(下写真・右)と国際商工会議所(ICC)のジョン・デントン事務総長(写真・左)が挨拶に立ちます。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824142739j:plain

©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

冒頭のセッションでは、国連事務局からアミーナ・モハメッド副事務総長とリュー・ジェンミン経済社会問題担当事務次長、そして経済社会理事会からマリー・チャタルドバ議長が出席して挨拶を述べ、それぞれ、世界の企業に対して、SDGsへの取り組みを訴えていました。壇上には、ビジネス界から、パラグアイとブラジルの両国共同出資会社のイタイプ―のCEO、ジェームズ・スポールディング氏も加わり、世界第2位の規模を誇るダムと水力発電を通じたSDGsへの貢献と取り組みを紹介していました。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824142745j:plain

冒頭挨拶する副事務総長 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

冒頭のセッションに続いたのは、「ビジネスの力を善のための力として解放する:マルティステークホルダーによるSDGsの実施とビジネスの役割(“Unlocking the power of business as a force for good: Multi-stakeholder implantation of the SDGs and the role of business)」と題するワークショップでした。パネル討論形式で行われ、フィンランド農林・環境大臣のキンモ・ティーリカイネン氏、ラドル(Ladol)のCEO、エイミー・ジェデシミ氏、シュナイダー・エレクトリック・南アメリカゾーン社長のタニア・コセンティーノ氏、ソルベイのCEOジャン・ピエール・クラマデュー氏、国際労働機関(ILO)事務局長のガイ・ライダー氏がパネリストとして参加し、SDGs実施におけるビジネスの役割を活発に議論していました。

 

日本からは経団連の二宮雅也・企業行動・CSR委員長 (損害保険ジャパン日本興亜会長)が参加して、会場から日本企業の取り組みについて発言し、その議論に加わりました。二宮委員長の隣には、スイスのドリス・ロイトハルト連邦参事(現在、環境運輸エネルギー担当大臣で、2017年の大統領)が座り、二宮委員長に続いて発言していました。

f:id:UNIC_Tokyo:20180824142750j:plain

前方のスクリーンに映る二宮委員長 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

二宮委員長はその発言のなかで、日本の代表的な企業約1,370社と、主要な業種別全国団体、地方別経済団体から構成される経団連SDGsの達成に全面的にコミットしていることを紹介し、革新技術を最大限活用することによる経済発展と社会的課題の解決の両立をコンセプトとする「Society 5.0」を通じて、経団連SDGsの達成をめざしていることを説明されました。

 

“Dash to the Goals”と題した英語のブローシャ―を会場に配布。Society5.0とは、人類社会発展の歴史における5番目の新しい社会の姿であり、経団連はSociety5.0の実現を企業の社会的使命であると考えていることを述べておられました。

 

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180827164215p:plain

経団連作成のブローシャー表紙



f:id:UNIC_Tokyo:20180827164217p:plain

経団連作成のブローシャーから


 

また、二宮委員長は、2017年11月に経団連が企業行動憲章を改定し、経団連に加盟するすべての企業がこれに遵守することに合意し、日本政府、学界、NGOsなどが広くSociety 5.0の実現に協力していることを紹介されました。

 

そして、経団連がつくった企業実践の事例集をウェブ化し、ビジネスフォーラムが開催されたまさにこの日にローンチしたことを発表しておられました。

⇒ URL:https://www.keidanrensdgs.com/

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180827165143p:plain

経団連SDGsウェブサイト

 

経団連の二宮委員長、経済社会問題担当事務次長と懇談

 

17日(火)のビジネスフォーラムで会場から発言した経団連の二宮委員長は、翌18日(水)の午前中、国連事務局のリュウ・ジェンミン経済社会問題担当事務次長を表敬訪問されました。

 

二宮委員長は、同事務次長に対して、あらためて経団連の取り組みを説明し、今後の協力について意見交換されていらっしゃいました。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824143038j:plain

©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ジェンミン事務次長からは、経団連の取り組みへの歓迎の言葉がありました。経団連の会員企業はみな影響力のある企業であり、より活発にSDGsの達成に向けて取り組みを進めてもらいたい、他国の取り組みを支援してほしいと日本企業への期待を述べました。

 

昨年のビジネスフォーラムにも出席された二宮委員長はそれ以降、国連の多くの幹部職員と会って、詳しく話しを聞いてきたことによって、経団連SDGsへの理解を深め、それが企業行動憲章の改定にもつながったと述べられました。日本の企業も中長期計画のなかにSDGsを組み込み、その推進の動きがでてきているとし、日本の企業の取り組みの事例を掲載した小冊子を手渡して説明され、来年再会するときには、さらに事例をもって増やしてお見せできるようにしたい、民間の活発な取り組みへの事務次長の期待に応えたいと述べられました。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824143044j:plain

©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ビジネスとSDGs -日本企業の情報発信

 

18日(水)には、“Business and SDGs ―Insights from Chief Sustainability Officers & sustainable champions”をタイトルに冠したスペシャル・イベントが開催されていました。このイベントは、WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)と国連経済社会局の共催です。

 

**WBCSDとは、持続可能な開発を目指す企業約200社のCEO主導の組織で、持続可能な世界への移行を加速化するために協働しています。参加企業はすべてのビジネスセクター、すべての主要な国にまたがり、収益を合計すると、8.5兆ドル、社員は1900万人に及びます。

 

このスペシャル・イベントでは、日本語の同時通訳も提供されていました。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824143124j:plain

サイドイベント“Business and SDGs” ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

同イベントにおいては、朝9時から10時20分まで、「SDGソリューションズ・ワークショップ」と題するセッションで、WBCSDのマネジング・ディレクターのフィリッポ・ベグリオ氏が司会進行し、UPMキュンメネのエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントのピルコ・ハレラ氏、ネスレのシニア・マネージャーのヘレン・メディナ氏、ヴァーレ・インターナショナルのエグゼクティブマネージャーのグローザ・ジェズエ氏、DSM ヴァイス・プレジデントのジェフ・ターナー氏、そして富士通総研から生田孝史主席研究員がパネリストとして参加し、それぞれの企業内の取り組みを共有し、SDGsの統合に関して課題と解決の模索を議論していました。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20180824143859j:plain

生田主席研究員 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

生田主席研究員は、富士通の理念・指針である「FUJITSU Way」はSDGsの精神に合致するものであることを述べました。富士通グループは以前から人間を中心に置いた「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現を目指して、テクノロジーを活用するとともに新たなイノベーションを創造しており、その活動とSDGsの方向性は一致していることを強調しておられました。また、2017年3月、国連開発計画(UNDP)と東北大学・災害科学国際研究所が設置した災害統計グローバルセンター(GCDS)に新たに設置される、「グローバルデータベース」の構築・運営に関するパートナーシップを締結したこと、このパートナーシップを通じて、世界の自然災害に伴う損害の削減に取り組んでいることなどを紹介されていました。

 

前日のビジネスフォーラムと同様、同イベントの会場にも、経団連の二宮委員長をはじめ、日本の企業の方々が足を運び、熱心に聴講しておられました。SDGsをどのように企業活動に根付かせていくのかを学ぼうとする企業の皆さんの熱心さがつよく伝わってきました。

 

次回は、HLPFにおける市民社会の情報発信とインタビューをお届けします。

(連載ブログ 国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本)
第6回 ~ 国連ガイドツアーでSDGsの啓発促進
第5回 ~ SDGsを舞台裏で支える日本人国連職員たち 
第4回 ~ HLPFでの日本の市民社会の情報発信、そしてインタビュー
第2回 ~ HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー
第1回 ~ ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム