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国連のさまざまな活動を紹介します。 

国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本 【連載No. 1】

ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム

 

こんにちは。国連広報センターの千葉です。

 

7月15日(日)から19日(木)まで、4日間の日程で、ニューヨーク国連本部に出張してきました。

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ダグハマーショルド図書館側から臨む国連事務局ビル ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

その目的は、同月9日(月)―18日(水)に国連本部で開催されていたハイレベル政治フォーラム(HLPF)と日本関連のイベントやSDGs達成のために汗をかく日本人の方がたを取材して日本のみなさまにお伝えすることでした。

 

昨年のHLPFは岸田外務大臣(当時)が出席してSDGs達成をめざす日本の取り組みを報告したり、日本政府からSDGs推進大使に任命された「ピコ太郎」さんがその開催期間にあわせて国連本部を訪れてSDGs風にアレンジしたPPAPのパーフォマンスを披露したりするなどして、メディアにもかなり取り上げられたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに、昨年は、国連連広報センターが主催する「Spotlight SDGs展」が、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が始まる7月10日(月)から1カ月間開催され、「ピコ太郎」さんも見学に来られました(下写真)。

 

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でも、最近の電通の調査で、SDGsの認知度がわずかに15%前後であったことを考えれば、日本の全人口を分母とした場合、現時点で、政治という言葉を含み、すこし堅苦しさのある名称のイベントをよく知っているという方は決してそう多くはいらっしゃらないのではないかなと思います。

 

そこで今回はまず、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)そのものについて簡単にご説明し、その後、次回から数回にわたって、HLPFを起点とする日本関連のイベントと私が出会った素敵な日本人の方がたを政府、ビジネス、NGOなどセクターごとにご紹介してまいりたいと思います。

 

多くの方にHLPFに関心をもっていただくきっかけとしていただければ幸いです。

 

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ハイレベル政治フォーラム閣僚会合 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ハイレベル政治フォーラム(High-level Political Forum = HLPF)とは、一言で申し上げれば、グローバルなレベルで、2030アジェンダSDGsのレビューとフォローアップを行う場です。HLPFで、世界の国々がSDGsの達成をめざすべく、さまざまなステークホルダーの関与のもとに、進捗状況を報告して経験を共有したり、SDGsを目標ごとにレビューしたりするのです。

 

その開催期間中には、市民社会やビジネスなどから、たくさんの方々がニューヨークに参集します。

 

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冒頭セッションは参加者が限定され、信託統治理事会議場で傍聴 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ハイレベル政治フォーラムとは ー VNRs、MGoSって何?

 

ハイレベル政治フォーラム(HLPF)という名称からだけでは、SDGsとの連関を類推することは困難かもしれませんが、その前身は、国連経済社会理事会の機能委員会のひとつ、53か国構成の持続可能開発委員会(CSD)です。それは、1992年の地球サミットをフォローアップすべく、持続可能な開発という新しいコンセプトに関する初の画期的な国連機関として設置されたものでした。主要グループなどの幅広い参加を可能にしたことなど、目に見える成果をあげてきた委員会でしたが、そのうちに持続可能な開発の3側面を代表する人々が幅広く集まるというよりも、環境分野の人々が集う「環境委員会」として認識されるようになってしまったということなども指摘され、20年後の2012年には、CSDに代わって、全加盟国が参加する、より実効的でより高い政治レベルのフォーラムへと格上げして設置されました。その後、2015年には、前述のフォローアップとレビューのため、各国が自国の取り組みについて、グローバルな場で自発的に報告するVoluntary National Reviews =VNRsというしくみなどをつくるなどして今にいたっています。日本が昨年、自国の取り組みを報告したメカニズムこそ、このVNRsです。

 

HLPFは毎年、経済社会理事会のもとに開催されますが、4年に一度は、国連総会のもとに首脳レベルでも開催されます。そこが、HLPFがHLPFたる所以なのですが、HLPFは単に経済社会理事会のもとの機能委員会の一つとしてつくられたCSDとは違うのです。来年がこの4年に一度の年であり、経済社会理事会と総会という国連の2つの主要機関のもとで、それぞれ7月、9月に開催されることになります(会期はそれぞれ8日間と2日間)。来年は、日本は首脳級のHLPFを見据えて、自国の取り組み状況の確認と見直しを実施するということがSDGs推進本部の実施指針にも明記されており、世界と日本の取り組みにおいて、注目の年と言えるでしょう。

 

さて、今年のHLPFは、「持続可能でレジリエントな社会への変容」というテーマのもと、7月9日(月)~18日(水)に開催されました。参加者の総数は、市民社会やビジネス界、その他のステークホルダーからおよそ2,200人(政府首脳、閣僚が125人)に上りました。

 

前半の9日(月)~13日(金)はテーマ別レビュー。今年のテーマ別レビューで、フォーカスをあてて扱った目標は、6(安全な水とトイレを世界中に)、7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)、11(住み続けられるまちづくりを)、12(つくる責任つかう責任)、15(陸の豊かさも守ろう)、17(パートナーシップで目標を達成しよう)でした。

 

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エクアドルキリバスリトアニア、マリのVNR ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

私が出張した後半の16日(月)~18日(水)の3日間が閣僚レベル会合で、前述のVNRsが行われていました。VNRsについては毎年、次第に参加国が増えており、今年は46カ国がVNRsに臨みました。これは第1回(2016)の22カ国の約3倍。VNRsに臨んだ国は今年で110か国を超えました。2030アジェンダの基本的な原則はプロセスが参加型で包摂的であることですが、VNRsはまさにパートナーシップを体現する場で、MGoS(主要グループとその他のステークホルダー)も参加して、成功、課題、教訓といった経験を共有します。

**MGoSとは、Major Groups and other Stakeholdersの頭辞語です。1992年で採択された「Agenda 21」が、社会の9つのセクター(女性、子ども/若者、先住民、NGO地方自治体、労働者/労働組合、ビジネス/産業、科学技術界、農業従事者)を主要グループとして、持続可能な開発に関連する国連活動への広範な人々の参加の促進を謳いました。現在、その他のステークホルダーが加えられ、MGoSと呼ばれるようになっています。政府間プロセスにおけるMGoSの参加の様態を決めるのは加盟国です。

私がみたVNRs初日の16日(月)はエクアドルキリバスリトアニア、マリなどの国がパネル方式で、ギニアギリシャ、メキシコ、アラブ首長国連邦が個別方式で、報告を行い、他国やMGoSなどからのさまざまな質問に答えていました。
 

昨年に自主的な報告を行った日本は今年、このVNRに臨む国のなかに入っていませんでしたが、現地では、日本の政府、ビジネス、市民社会の方々がサイドイベントやレセプションを催したり、そこに登壇して、それぞれ情報発信し、あるいはそれらに参加して、各国の取り組みに学んだりされていました。

 

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SDGメディアゾーン  ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

フォーラム期間中を通じて開催されたスペシャル・イベントは全部で8つ、サイドイベントは昨年より4割増えて260件です。スペシャル・イベントは、世界の企業の代表たちが集まる「ビジネスフォーラム」や、世界の市長たちが集まる「地方・地域政府フォーラム」(今回初開催)など。サイドイベントは多種多様で、国連広報局もSDGメディアゾーンを設置して、16日(月)と17日(火)の二日間にわたって、NGOや企業の代表者、著名人などのインタビューを生中継していました。HLPFは、まさに年に1度のSDGsに関するグローバルな祭典といえるものだと感じました。

 

SDGsの達成に欠かせないビジネスの役割

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ビジネスフォーラム ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ハイレベル政治フォーラム(HLPF)の開催中、もっとも強く印象に残ったことのひとつは、ビジネスフォーラムとそこに参集していた多くの企業のプレゼンスでした。ビジネスフォーラムとは、SDGsのレビューを行うハイレベル政治フォーラム(HLPF)の期間中、同フォーラムと並行して開かれ、世界の企業や政府、国連などを代表する人々が登壇して、官民一緒になって、丸一日、2030アジェンダ/SDGsについて議論する場です。国際商工会議所(ICC)、国連経済社会局(UN-DESA)、国連グローバルコンパクトの共催です。2016年にはじまって今年が3回目。今年は7月17日(火)に開かれました。国連事務局から副事務総長、経済社会問題担当事務次長、経済社会理事会から議長がそろって出席していることからも重要な位置づけのイベントであることがわかります。ちなみに、ビジネスフォーラムが開催された会場は経済社会理事会議場でした。世界各地からビジネスフォーラムに集う企業の方々を見ていると、あらためてSDGsの達成においては企業の役割が死活的に重要であることを思うともに、企業にとっても今後の企業活動においてSDGsを本業に深く組み入れていくことが不可欠になっているのだということをつよく実感しました。

 

HLPFの最終日には、政治的に交渉された閣僚宣言が採択されましたが、採択の直前には、グテーレス事務総長が演説し、多国間主義こそが、私たちが直面している複雑で互いに絡み合った長期的課題に立ち向かうための唯一の方法である、と訴えていました。

 

日本を含めてHLPFに参加した国々による採決に付された閣僚宣言は、賛成164、反対2(米国、イスラエル)、棄権0という圧倒的な賛成多数で採択されました。私の座った傍聴席には、全会一致とならなかったことを残念に思っている人が多くいましたが、議長が壇上から閣僚宣言の採択を告げると、会場全体から大きな拍手が沸き起こりました。31のパラグラフで構成される宣言は、持続可能な開発のための2030アジェンダの実効的な履行に取り組んでいくことをあらためて確認していました。

 

今年の閣僚宣言全文

 

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ハイレベル政治フォーラム最終日、事務総長演説 ©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

"このままのペースでは間に合わない"

 

経済社会理事会の議長が今年のHLPF総括サマリーを発出していますが、それによれば、今年のHLPFでは、SDGsに対するコミットメントが強くなっていることが明確でした。多くの国々において、SDGsがその国の開発計画や戦略に組み込まれ、2030アジェンダ、パリ協定、仙台枠組み、アディスアベバ行動計画などとの一貫性を図る努力がなされ、SDGsのゴールとターゲットに関連する多くの分野で進展があったのです。しかし、同時にまた、数々の前向きな傾向にもかかわらず、SDGs達成に向けた道のりはまだ長いという、SDGs進捗状況に関する事務総長報告が発したメッセージはそのまま今年のHLPFの重要なメッセージともなったようです。誰一人として取り残さないための取り組みが順調に進んでいるとは決して言えず、とくに、極度の貧しさに喘ぐ人たちは、不平等の拡大、技術発展の負の影響、気候変動などによって、さらに取り残されているのです。

 

今回、私がハイレベル政治フォーラム(HLPF)に実際に参加して各所で強く感じたのも、SDGsの達成に向けてこのままのペースでは間に合わない、急がなければならない、という雰囲気でした。

 

次回は、HLPFにおける日本政府のイベントやインタビューをお届けします。

(参照)

→ 第3回ブログ ~HLPFでの日本企業、経団連の情報発信について

→ 第2回ブログ ~HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー