~1月27日は 「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」~
ユダヤ人強制収容所のアウシュビッツが開放されたのが、1945年の1月27日。国連総会はこの1月27日を「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」と定めました(2005年11月1日)。ユダヤ人の3分の1、そして無数のマイノリティーの人々が殺害されたホロコーストを再確認し、憎悪、敵対感情、人種差別、偏見がもつ危険性を永遠に人々に警告することがこの国際デーの目的です。
今年の国際デーに向けて、ポスター・デザイン・コンテスト:「生きた記憶を残すために:私たちが共有する責任 (Keeping The Memory Alive – Our Shared Responsibility)」が開催されました。これは、国連広報局の「ホロコーストと国連アウトリーチ・プログラム」とイスラエルのホロコースト記念館(ヤド・ヴァシェム)の国際ホロコースト研究院が共同で企画したものです。世界から150点を越える作品が集まり、以下に入賞作品12点のポスターをご紹介します。
第一位 – ジュリア・ブランカロニ・クリストフィ (ブラジル)
First Place - Julia Brancaglione Cristofi; Brazil
作者のことば:
「生きた記憶」は、三部作からなる「ホロコースト – 命、記憶、そして抵抗」の一つ。これは、記憶を生かし続けることを目的としたコレクションである。 この作品は、ホロコーストで生き残った人々の肖像画を用いており、それは紛れもなく大虐殺の永遠なる証拠だ。人類の共同責任として、全ての人々によって長く留めるべき生きた記憶だ。命と自由の大切さが示されている。
第二位 – ヤエル・ボヴェルマン (イスラエル)
Second Place - Yael Boverman; Israel
作者のことば:
子どもの頃にホロコーストを経験した私の祖母。彼女の家族写真を用いて殺伐で痛々しい印象を与える作品を描いた。
第三位 – アデリーナ・シェイドリーナ (ロシア)
Third Place - Adelina Shaydullina; Russia
作者のことば:
私たちの多くは、携帯電話で映画を観たりフィクションの本を読むことで、ホロコーストの犠牲者をしのんでいる。もちろん、何もしないよりは良いが、実際に起きた出来事と、こういった画面の中のストーリーに、一体なんの共通点があるのだろう?21世紀に生きる人間によって生みだされる写真や言葉が、一体どのようにホロコーストの犠牲者の苦しみを伝えられるというのだろう?それは不可能だと私は思う。だから時には、目で見える文字で表された情報から離れ、立ち止まって、黙祷の時間を持ちたい。
その他の入賞作品
べラ・ぺスコベット (ロシア)
Vera Peskovets; Russia
作者のことば:
記憶を留めるということは、次世代の子どもたちにその記憶を伝えることだ。私はこの作品にホロコーストの記憶を未来の世代に伝えたい、という思いを込めた。黒い煙はホロコーストの暗い記憶を表し、ヘッドフォンは世代間のつながりを象徴している。
Dora Ferenczy; Hungary
作者のことば:
私はユダヤ人家族に生まれた。このテーマに対し、慎重で、意義があり、あまり固定観念にとらわれない取り組みをすることは私にとってとても難しい。私は、叔父と父親と共に1つの長期プロジェクトに取り組んだ。集められる限りの写真や情報を用いて家計図を作成することだ。この図からみえる彼らの生誕地と人生の終焉の地が、一目で多くを物語っている。地名からも明らかだが、数多くの命に与えた戦争の影響を示すために写真を含めた。また、タイトルである「生きた記憶を残すために」にも見事にマッチしている。というのは、私たちの生きる今は、過去の世代と深く関わっているから。
Eric Flavio; Indonesia
作者のことば:
タトゥーとは、ある出来事や物事の象徴的な記憶である。手首に傷(自殺未遂を示すもの)を負った少女の右腕にはダビデの星が「タトゥー」されている(ダビデの星とは、ユダヤ人であることを示すために腕章に縫い付けられたもの)。ホロコーストの恐怖は何年も前に終わったものではなく、今なお次世代の人々に付きまとう。彼らを取り巻く環境やその家族にさえ、ホロコーストの恐ろしい記憶は宿っている。タトゥーをした少女はその重さに潰されそうになっているのだが、隣には男性が寄り添い彼女を支えている。このように、心の支えによって今のユダヤ世代を支えることができる。
ヒラー・ウィルチェック&ロテム・ゲズンテルマン(イスラエル)
Hila Wilchek and Rotem Gezunterman; Israel
作者のことば:
このポスターでは、ホロコーストの犠牲者による手書きのサインによって1つの肖像画が形作られている。各人はそれぞれ個人としての象徴となるサインを持っている - サインの向こう側にある人間の顔。
リロン・テヴェット(イスラエル)
Liron Tevet; Israel
作者のことば:
この作品は、ホロコーストを生きる一人ひとりについての物語を語っている。登場人物は、ヤド・ヴァシェムに保管されている資料や日記をもとに設定されており、ホロコーストが始まる前とその時代における生活を記録している。その日記は、実際にホロコーストを経験した人々の物語であり、彼らの世界がつまっている。ホロコーストによって彼らの人生は閉ざされ、まだ語られていない物語は数え切れないほど多い。この作品は、ホロコーストを生き延びた者、そして、資料や写真として記録されず語られないままの犠牲者を表している。今も健在の、ホロコーストを経験した人々から直接話を聞くことは、とても重要だ。ホロコーストが決して忘れ去られることなく、ヨーロッパのユダヤ人家族とコミュニティーについて私たちの記憶に留まるだろうから。
エンゲル・ベガ(ペルー)
Angel Vega; Peru
作者のことば:
私たちは平和に暮らしている。それは、ホロコーストによって平和を奪われた人たちの記憶を、私たちは失うことがないから。この作品の中の足を鎖に繋がれた鳩は、子どもたちを表している。平和に生きることを願いつつもホロコーストの犠牲となった子どもたちや人々だ。2羽の鳩は、死後、苦しみや幽閉から解き放たれ自由になった人々を表している。
エカチェリーナ・カルジャナヤ(ロシア)
Ekaterina Kalujnaya; Russia
作者のことば:
ホロコーストは、残酷さの極みである。そのようなことが起きた、ということを考えただけで恐ろしくなる。この「ダビデの星」は神から私たちへのかけがえのない贈り物だ。一体どうしたら囚人と決めつけて憎むことができるであろうか。すべての星には命があり、家族がいる…彼らはまさに、非人道的行為の犠牲者だ。ホロコーストはユダヤ人にとっての惨事だ。全ての人々はその恐ろしい時代について知るべきであり、記憶に留めなければならない。
ヨアブ・カハナ(ロシア)
Yoav Kahana; Russia
作者のことば:
ダビデの星の穴は、ユダヤ人が地球上で迫害されてきた歴史の奥深さを表している。穴から伸びる根には、その記憶を残したいという願いが込められている。この星の上部の三角形は、砕けた墓碑として、今もなお起きている反ユダヤ主義行為を表している。
パンナ・ペトロ(ハンガリー)
Panna Petro; Hungary
作者のことば:
ホロコーストに関する多くの恐ろしい出来事の中で、誰もが身近に感じられるものを探してみた。ホロコーストは、ユダヤ人だけでなくユダヤ人以外の人々の日常生活においても起きたものだからだ。この作品には、ひっそりと隠れながら沈黙のなかで生活するという非人間的な状態と、他の家族から受ける善意が描かれている。暗やみの中で、まるで存在しないかのように振る舞うような生活。ナチスに占領された町における一般的だが隠れ家である住居。ホロコーストについて不毛で間接的な視点と、1940年代の市民が直面しなければならなかった突然の変化との対照が強調されている。
ホロコースト犠牲者を想起する国際デー(1月27日)に寄せるグテーレス国連事務総長のメッセージはこちら
国連広報局「ホロコーストと国連アウトリーチ・プログラム」のウェブサイトはこちら>>>
http://www.un.org/en/holocaustremembrance/2018/calendar2018.html
ポスター・コンテストに関するホロコースト記念館(ヤド・ヴァシェム)のウェブサイトはこちら>>>
http://www.yadvashem.org/education/international-projects/posters.html