国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

アウトリーチ拠点としての図書館と持続可能な開発目標(SDGs)

〜国連寄託図書館の研修会を開催しました〜

こんにちは。国連広報センターで国連寄託図書館を担当している千葉です。

3月1日‐2日、国連広報センターは国連大学ライブラリーとの共催のもと、国連寄託図書館の年次研修会を開催しました。

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一年に一度開いているこの研修会については、5年前にも綴らせていただいたことがあります。その際は、研修の内容に加えて、国連寄託図書館の成り立ちや歴史をご案内しました。そもそも国連寄託図書館とはどんなものなのか知りたいというみなさまにおかれましては、そちらのブログをあわせてお読みいただければ幸いです。

国連寄託図書館をご存知ですか?

今回は、国連広報センターが近年、図書館との関係で考えたり、取り組んだりしていることに話しを及ばせながら、ご報告したいと思います。

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国連大学ライブラリーで

(はじめに)
まずは国連寄託図書館をめぐる背景からご説明します。

情報のデジタル化が進む現代において、社会を形作るすべてのもの、人、組織がその影響を受け、変容しています。記憶の機関とも呼ばれ、情報資源を収集しアクセスを提供してきた図書館でもまさに深淵な変容が進行中です。

当然ながら、国連寄託図書館も時代の趨勢と無縁でなく、ニューヨーク国連本部から紙媒体の資料を収受し配架して閲覧に供することを中心にした活動はもはや過去のものです。もちろん途上国ではまだインターネットの普及が困難な地域も多くありますし、紙媒体の重要性が一概に否定されるものではありません。しかし、その他の組織や団体がそうであるように、国連も今、デジタル情報の発信をもっとも重視し、世界各地の国連寄託図書館に対しても、デジタル化への対応とともに、アウトリーチ活動の充実化を促しています。

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SDGs関連書籍陳列/各種お知らせ、北海道付属図書館で

デジタル化時代の国連寄託図書館の活動、国連との関係の在り方については、さまざまな課題もあって、現時点で、まだ国連本部から具体的な活動指針を示しきれているとは言えません。しかし、それぞれの国・地域において「知の宝庫」であり続けるとともに、最近ますます、人々の交流の拠点、アクティブラーニングの場としての存在感を増している図書館とのパートナーシップは、国連にとって大きな財産であり、今後の図書館のアウトリーチ拠点としての活動に国連は大きな期待をしています。

世界各地の国連寄託図書館もその方向性に概ね賛同しています。2014年4月から9月にかけて、国連が世界各地の国連寄託図書館から幅広く集めたコメントや意見をみると、国連寄託図書館の多くがその歴史や専門性に誇りを持ち、その活用をもとにした情報提供やアウトリーチ活動の展開に高い関心を示していることがわかります。

国連広報センターが図書館の皆さんに研修の場を提供している背景にはこうした状況があります。

<研修内容のご紹介> 

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国連大学ライブラリーの多目的スペースで

さて、今回の研修についてご案内してまいりたいと思います。

ご案内にあたっては、二日間のさまざまな研修プログラムを、「知識・理解の向上」と「つながり」という二つの観点から整理させていただきます。まず、「知識・理解の向上」として、研修の中心に組んだSDGsと人権に関する二つの講演を、その次に、「つながり」として、国連諸機関からの研修へのご協力や研修を通じたさまざまなつながりの広がりなどをご紹介します。

(知識・理解の向上)
今年は、「持続可能な開発目標(SDGs)」と「人権と国連」についての二つの講演をご用意し、国連にとって大切なこれらの課題の理解を確かにしていただくことに焦点をあてました。

-持続可能な開発目標(SDGs
国連が今、その推進にもっとも力を入れているSDGsは、地球的諸課題の解決に向けて、経済、社会、環境の3側面を統合し、さまざまなパートナーの間をつなぐ共通言語です。SDGsこそ、今回の図書館研修の柱となる「つながり」を体現するものといえるかもしれません。

国連広報センター所長の根本が自ら講演を行いました。

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国連広報センター所長 根本かおる

2015年9月に国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming Our World: the 2030 Agenda for Sustainable Development)」が私たち人間の直面する諸課題の解決の展望を描くとともに、その実現のための目標を「持続可能な目標(SDGs)」として提示したこと、その17の個別の目標はそれぞれ有機的なつながりがあること、その目標達成のためには、途上国、先進国を問わず、国家や企業、市民社会など、さまざまなステークホルダーがともに役割を果たしていくことが大切であること、地域コミュニティーが重要であることなど、国連制作の映像をお見せしながら、根本は包括的にご説明しました。 

また、国内の取り組みについて話を及ばせるなかで、根本は「未来を変える目標 SDGsイデアブック」という一冊の本をご紹介しました。この本は、SDGsの達成に向け、国内外の問題解決のためのさまざまなアイデアを紹介している教材(全176ページ)で、一般社団法人のThink the Earthが作成したものです。その中には、SDGsの目標をデザインしたアイコンのワークシートも付録としてついて、それを使った主体的・対話的な学び方なども提案されています。Think the Earthから研修会にご参加いただいた理事で編集ディレクターの上田壮一さんに根本からマイクをお渡しして、SDGs for Schoolプロジェクトのもとに、クラウドファンディングで集めた資金で本を作成された経緯などをご案内いただきました。入手を希望する学校に一クラス分の40冊を寄贈するプログラムについてもご説明いただきました。5月から一般販売も開始されるそうですが、今回の研修をご縁として、各図書館にも一冊ずつ寄贈していただけることになりました。

講演のおわりに、根本は図書館の皆さんにSDGsの啓発促進のためのアウトリーチ活動の協力をあらためて訴えました。

-人権と国連

根本によるSDGsに関する講演のあとに、「人権と国連」に関する講演が続きました。人権は、「誰一人取り残さない」というSDGsの合言葉にも通じ、そのすべての目標に共通するもっとも大切な課題です。とくに、今年は世界人権宣言70周年。この記念すべき年に、皆さんに理解しておいていただきたい重要なテーマでした。

講演は、桜美林大学の滝沢美佐子教授にお願いしました。滝沢教授は、「国際人権基準の法的性格(国際書院、2004年)」という書籍をはじめ、人権について多数の論文を執筆されている専門家です。

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滝沢美佐子教授

人権とは、人間がただ人間であることにより、固有な尊厳や生命に基づいて、誰も有する侵すことのできない永久の権利であること、人権の歴史、世界人権宣言の採択から現在にいたるまでの人権の歩みと国連の取り組みの歴史、そして、その課題などについて、わかりやすく解説していただきました。

ご講演の後半では、“A World Made NewEleanor Roosevelt and the Universal Declaration of Human Rights” (By MARY ANN GLENDON, Random House)、『“Can Human Rights Survive?“(By Conor Gearty, Cambridge University Press)』、『こどもの権利を買わないでープンとミーチャのものがたり(大久保真紀著、自由国民社)』、『無国籍(陳天璽著、新潮文庫)』、『重い障害を生きるということ(高谷清 著、岩波新書)』、『ルポ京都朝鮮学校襲撃事件-ヘイトクライムに抗して(中村一成著、岩波書店)』、『闘争のための権利(イェーリング岩波書店)』など、図書館の皆さんに人権に関係するいろいろな本を幅広くご紹介いただきました。

本を介して、人権と図書館がつながりました。

(つながりを大切に)
二日間の研修を通じて、国連広報センターと国連寄託図書館とのつながりを再確認・強化するとともに、国連寄託図書館のつながりの地平を大きく広げていくことをめざしました。研修全体に共通するキーワードが、つながり、でした。

-国連広報センターとのつながり
国連広報センターは毎年、この研修に所長の根本以下、職員全員で臨んでいます。

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国連広報センター所長 根本かおる

 

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国連情報の発信において大切なパートナーである図書館の皆さんにお集りいただく研修会は私どもにとって、一年に一度、その活動に感謝の気持ちを直接お伝えする良い機会でもあります。今年も職員から謝意をお伝えするとともに、それぞれ自分が担当する仕事の領域から、アウトリーチ展開にお役に立つと思われるポイントをご案内しました。

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 国連大学本部ビル内の会議室で、実践共有


国連寄託図書館の皆さんからは、この一年間を振り返って、それぞれ、どのような活動をされ、またどんな課題を感じてきたかなどについて、お話しを伺いました。普段、館員の皆さんと私たちのやりとりは電話やメールで行われていますが、お互いに息遣いの聞こえる距離で、つながりをつよく確認しあい、また一層の強化をはかることができました。

 

-国連諸機関とのつながり

今回の研修会では、国連大学(UNU)、ユニセフ、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金UNFPA)、国際労働機関(ILO)、国連工業開発機関(UNIDO)というさまざまな国連機関の日本の事務所や、日本の環境省との共同プロジェクトである地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)などのご協力を得て、その広報を担う職員の方々から、図書館の皆さんにそれぞれの機関の活動や旗艦刊行物を紹介していただきました。

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今回ご協力いただいた機関はすべてUNU本部ビルに事務所を構えておられ、「ひとつの国連(ONE UN)」を象徴する実践ともなりました。図書館の皆さんにとっては、異なるイシューを扱う国連諸機関の活動を知り、諸機関とつながりをつくっていただく良い機会となりました。それぞれの機関のブリーフィングが終わった後、講師を務めていただいた職員の皆さんの前にはつながりを求める館員の皆さんの名刺交換の行列ができました。

-国連寄託図書館同士のつながり
二日間にわたって密に組まれた研修プログラムでしたが、その合間を縫って、館員の皆さんの間では、自然発生的に情報交換が行われ、それぞれの地域の図書館の現状や計画などについて積極的に話し合う様子がみられました。こうして国連寄託図書館の館員の皆さん同士が気軽に経験共有できる関係ができたこともまた、この研修会の大切な成果の一つです。

-そのほかの図書館とのつながり
国連広報センターは以前から、少しずつではありますが、国連寄託図書館のネットワークを維持、強化するとともに、それを超えて、大学図書館公共図書館の区別なく、その他の図書館とのゆるやかなつながりを広げてきました。国連広報センターとのつながりは国連寄託図書館としての指定を意味するものではありませんが、今回、研修会をそうした図書館にも開放したところ、年度末の忙しい時期ではありながら、日比谷図書文化館、東洋大学武蔵野大学、玉川学園マルティメディアリソースセンター、ウィメンズプラザ図書資料室、人権教育啓発推進センター人権ライブラリーの6つの図書館/資料室からご参加いただきました。

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武蔵野プレイスで、斉藤館長(写真中央)の説明を聞く

国連寄託図書館の研修プログラムで毎年恒例となっていることの一つは、あらたなつながりと学びを求めて、国連寄託図書館の皆さんとご一緒に、その他のさまざまな図書館をお訪ねするということです。

今年訪れたのは、武蔵野市立「ひと・まち・情報創造館 武蔵野プレイス」でした。武蔵野プレイスは図書館を中核にしながら、生涯学習支援、市民活動支援、青少年活動支援の4つの機能を融合させたユニークな複合機能施設で、全国的にも有名な図書館です。さまざまな機能のつながり、まちづくり、福祉、教育などさまざまな分野の横断的な交流促進、各階のそれぞれのルームからルームへのつながりなどがよく考えられた図書館で、その取り組みに大いに学ばせていただきました。

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 武蔵野プレイスの取り組みに学ぶ

<研修会、閉会>
こうして、さまざまなパートナーの協力を得て、今回の研修は例年どおり、あるいはそれ以上に充実し、つながりが強化され、広がりました。二日間のプログラムがすべて終了すると、館員の皆さんは当日すぐにそれぞれの持ち場へと帰っていかれました。図書館の皆さんには、これからまた一年間、それぞれの地域で、SDGsをはじめとして、国連とその活動に関する情報提供にご尽力いただくことになります。次回の研修でまたお会いして、いろいろな活動の様子をお聞きすることが楽しみです。

最後になりますが、研修会の開催にあたっては、共催者である国連大学ライブラリーの勝美さんと近松さんのお二人にたいへんお世話になりました。あらためて、この場を借りて、深くお礼を申し上げたいと思います。

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国連大学ライブラリーの勝見道子さんと近松美幸さん、左から

~あとがき~ 

12年前、個人的に図書館に随分お世話になったことがあります。小学三年生になったばかりの娘が身体を悪くして、一年間以上、学校を長期欠席せざるを得なくなったときのことです。今まで通りクラスで友だちと一緒に勉強したり、遊んだりすることができなくなって、泣いてふさぎ込む我が子をみて、父親として、せめて何かしてやれることはないかと、学校生活を追体験してあまりあるような本を好きなときに好きなだけ読めるよう、とにかくたくさんの本を図書館から借りてくることにしました。週末になると、大きな袋を持って、地域の図書館に行って制限冊数ぎりぎりまで借りてきては、翌週、娘が読み終えると返却し、かわりにまた新しい本を借りてくるということを繰り返しました。それらの本のほとんどは児童書、児童文学でしたが、気がつくと、いつのまにか、一千冊近い本を借りていました。本たちは娘に国語力にとどまらない、生きる力を与えてくれました。

SDGsとは無縁の話だと思われるかもしれません。でも、振り返ってみると、子どもを対象にした本であっても、扱っているテーマは結構幅広く、そうした本の多くはSDGsの17目標のいずれかとつながるテーマをもって書かれていたように思います。

当時、もしもSDGsがすでに決まって、ロゴやアイコンもデザインされていて、本ブログでご紹介した「SDGsイデアブック」に付いたワークシートのカードなどが手元にあったとしたら、小学生の娘は興味をもって、借りてきた本の多くにそれを使って彩りを加えていたかもしれません。図書館への返却のたびに、それらを取り除くのにちょっと面倒な思いもしたかもしれませんが、その分だけ、地球と人間の現状と未来に視野を広げ、深い学びの喜びを感じていたのではないかなと思います。

今年成人式を迎え、今は東北被災地でのボランティア活動に励む元気な娘を少し眩しく感じながら、当時脆弱な立場にあった一人の小学生を取り残さずに支えてくれた図書館、そして、数々の良書へと誘っていただいた司書の方々への深い感謝をあらたにするとともに、国連寄託図書館、そのほかのさまざまな図書館、そして、そこに収蔵された多くの本とSDGsのつながりに想像をめぐらせました。

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(千葉のブログを読む)
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