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国連のさまざまな活動を紹介します。 

新たなデジタルの脅威に直面する国連PKO要員

オンライン上の誤情報や偽情報、ヘイトスピーチは、国連PKO要員にとって脅威となります。オンラインでの有害な言論は、現実世界の分断を深め、民族間の憎悪を煽ることを可能にし、多くのPKO活動の現場での暴力につながるからです。

こうした情報リスクに対処するために、国連平和活動局(DPO)に新たに設けられた「情報の誠実性ユニット」の宮下直美チームリーダーに、国連PKO活動が直面する現状と、対策のポイントなどについて、寄稿頂きました。

宮下直美(みやした・なおみ)
国連平和活動局(DPO)情報の誠実性ユニット・チームリーダー
【略歴】 国連平和活動局(DPO)で、平和維持環境における情報の誠実性に関する活動を率いる。ルワンダやコンゴ民主共和国(DRC)、チャド、スリランカ、ハイチで国連や人道支援機関の職員として経験。日本人とスペイン人を両親として日本に生まれ、3大陸で育った経験から、旅行や異文化体験にも高い関心を持つ。ロンドン大学で学士・修士号を取得。
*記事中の写真は筆者提供

「外国からヘイトスピーチが発信されています。カナダやオーストラリア、米国からです」通訳のマヤルさんは、ブルーヘルメットの下から流れ出る玉のような汗を拭いながら語りました。通訳しているのは、アビエイ特別行政区ミオコル・アレイ国内避難民居住地のコミュニティーリーダーの言葉です。岐阜県ほどの面積を有し、スーダンと南スーダンが領有権を争うこの地域には、国連アビエイ暫定治安部隊(UNISFA)が展開しています。

刺すような日差しを避け、アカシアの木陰に立つ、このコミュニティーリーダーは、アビエムノム出身のアロル・クル・クート系の威厳ある長身の女性で、2026年3月1日に南スーダンのルウェン行政区アビエムノム郡で発生した虐殺について私と同僚たちに語ってくれました。当日の早朝、武装した若者がこのコミュニティーを襲撃し、女性と子ども、男性、少なくとも200人が殺害されたと報告されているこの事件は、まだ短い南スーダンの歴史上でも最も多くの死者を出した虐殺事件の1つ。そこで生き残った人々の一部が、アビエイに避難してきたのです。

ミオルコル・アレイ国内避難民居住地にて、国内避難民居住地の代表(右)が国連の代表団(左)に説明。中央左が筆者。

彼女はヌエル族のことを指し、「彼らは、私たちの仲間が彼らの2人を殺害したからだと言っていました」と語ります。同じくコミュニティーリーダーを務める高齢の男性が「牛の放牧と関係しているのかもしれません。ヌエル族とミッセリーヤ族が私たちの農地で放牧するので、これが戦いを助長しているのです」と付け加えました。アビエムノムのアロル・クル・クート系ディンカ族と、ヌエル、ミッセリーヤの民族グループは、遊牧民と半農半牧民が共に暮らす、この乾燥したアフリカの貧困地域で長い間、土地と遊牧ルートを巡る紛争を繰り広げてきました。

インターネットがほとんど使えないこの遠隔地でさえ、はるか遠くの国で暮らす地元出身者(ディアスポラ)がFacebookやTikTokなどのSNSを通じ、世論に影響を与えたり、暴力を煽ることがあります。この虐殺事件を受けて、オンラインではヌエル族に対するヘイトや、これに対するカウンターがいずれも軽蔑的、差別的、人間性を否定するような言葉で一気に広がりました。特にオンラインでの有害な言論は、現実世界での行動にも影響して分断を深め、暴力を助長するおそれがあります。

アビエイ地区はスーダンと南スーダンの国境に位置し、領有権が争われている

私がチームとともにアビエイを訪れたのもそのためです。誤情報や偽情報、ヘイトスピーチにどう対処すべきか、UNISFAのPKO要員と現地のメディア関係者に研修を行うことが目的でした。アビエイでは、ほとんどの情報が口コミで伝わるものの、衛星インターネットサービスのStarlinkを通じてインターネット接続ができるカフェや企業も多くあります。私たちが話を聞いたジャーナリストやメディア関係者のほとんどは、FacebookやWhatsApp、YouTube、TikTokのアカウントを持っていて、これを利用して情報を共有していました。民族的な敵対を煽るヘイトスピーチは、アビエイの人々に関わるSNS環境の大きなかく乱要因となり、これに隣国スーダンの内戦や、南スーダンでの紛争激化が拍車をかけています。

アビエイ特別行政区トダチで実施された共同コミュニティ保護委員会(JCPC)メンバーの研修

誤情報や誤解を招く情報、操作された情報は現地のコミュニティーだけでなく、国連PKO要員にとっても脅威となります。事実、2025年には、要員の圧倒的多数にあたる76%が、誤情報や偽情報、ヘイトスピーチによって、自らの安全と安心に中程度から深刻な影響が生じていると回答しています。

残念なことに、同じ状況は多くのPKO活動で生じています。レバノン南部では2022年、偽情報から生じた誤解によって、アイルランドのPKO要員1名が殺害されました。また、コンゴ民主共和国(DRC)でも、誤情報で生じた暴動により、要員が殺害されたほか、国連の施設も略奪に遭い、破壊されました。報道官や政務または人権担当官など、最前線で活動する要員が個人的に、恐ろしい脅迫にさらされることもあります。また、SNSで写真や住所が公開されてしまうケースも見られます。

このような情報リスクは、国連が平和と安全を支援できる能力に深刻な悪影響を及ぼします。SNSは民族間の憎悪を煽ることを可能にし、それによって南スーダンやアビエイだけでなく、多くのPKO活動の現場で暴力を生んでいます。紛争当事者の中には、国連安全保障理事会がPKOミッションに与えたマンデートが気に入らず、情報戦を通じて国連の役割を損なおうとする向きもあります。その手段として、AIが生成した画像や動画など、高度なデジタル技術を活用し、オンラインで有害なコンテンツを一気に拡散させることもあります。

レバノン南部で、国連PKO要員の信頼を損なうAI生成画像の一例

ブルーヘルメット(国連PKO要員)を標的とするか、その保護対象となる現地コミュニティの民間人を標的とするかにかかわらず、こうした情報は現地の住民が要員に対して抱く信頼感を弱めかねません。人々が国連に対する信頼を無くせば、人命が失われるだけでなく、士気も損なわれ、ミッションのパフォーマンスと実効性にも影響します。

現地を巡回し、コミュニティーとの意思疎通を図ることは、PKO要員の重要任務の1つです。停戦違反を監視し、民間人を保護し、存在感を示し、治安状況に関する情報を収集することがその目的です。しかし、DRCでは2022年の暴動後、要員がリスクを回避する守りの姿勢に入っているため、コミュニティーを巻き込んで、保護するとともに、信頼を構築し、国連への反感に対処できる機会も少なくなっています。

より根本的な問題として、国連PKO要員と国連という組織自体が、信頼を柱に成り立っているという事情があります。国連は、加盟国が国連に対し、その決定を実施する権限を認めるという形で与えている正当性に立脚しています。国連のフィールド活動は、受入側の当局と住民全体の同意を受けて展開されます。情報操作によってこの同意が揺らげば、ミッション展開の基盤自体が損なわれてしまいます。

ニューヨーク国連本部の平和活動局はこうした理由から、ミッションによる情報リスク対策を支援しており、最近では私が責任者を務める「情報の誠実性ユニット」も創設しました。国連が財政危機に直面する中で、私たちの活動は日本をはじめ、誤情報や偽情報、ヘイトスピーチの拡散に対して同様の危惧を有する国々からの寛大な予算外の支援によって可能となっています。

これは、2024年に国連事務総長が発表した「情報の誠実性のための国連グローバル原則」に沿った取り組みです。この原則は、すべての人に選択、自由、プライバシー、安全を提供し、世界中の人々が自由に自己表現し、情報に基づいた独立した意思決定を行える情報エコシステムを構想しています。

国連PKOミッションは現在、誠実性のある情報、すなわち、すべての人々が入手できる正確で信頼できる情報の流れに対する支援を強化しているところです。それこそが誤情報や偽情報、ヘイトスピーチなど、有害な情報形態に対する最善の防御となるからです。日本を含め、国連加盟国はこの点で合意しています。その趣旨で採択された「グローバル・デジタル・コンパクト」には政府、テクノロジー・プラットフォーム企業、市民社会のメンバーがデジタル情報領域で、信頼や安全、説明責任、人権を強化するために何をすべきかを定める一章が設けられています。

私たちは多くのミッションで、対話と信頼構築のための空間を横断的に強化しています。その目的は、事実やエビデンス、検証済みの情報に基づき、受入国での平和実現に向けた課題と国連ミッションの役割について、共通の理解を得ることにあります。例えばアビエイ北部では、国連PKO要員が共同コミュニティ保護委員会(JCPC)と連携していますが、この委員会はンゴック・ディンカ、ミッセリーヤの両民族集団出身のメンバーで構成され、治安事件の調査と解決、社会的連帯の構築を任務とするものです。

趣意書に署名するJCPCミッセリーヤ側共同議長

兵器撲滅キャンペーンの発足式でUNISFA軍事司令官に挨拶するJCPCミッセリーヤ側共同議長

情報の誠実性の強化には、人々が正確で信頼できる情報を入手できるよう支援するという意味もあります。UNISFAなどのミッションは、現地のジャーナリストやメディア関係者を支援することにより、大きな成果を上げています。噂や憶測が広まりやすく、情報の乏しい環境の中で、UNISFAはコミュニティラジオ局「アビエイFM」の再建を支援しています。アビエイFMは地域初で、唯一のコミュニティラジオ局ですが、戦闘によって2023年11月に停波していました。私のチームも現地訪問中、あらゆる民族グループ出身の現地メディア関係者に責任ある報道倫理に関する研修を行うことで、UNISFAの取り組みに貢献しました。

アビエイFMのスタジオ

UNISFAのように、民間人を保護するというマンデートを担うPKOミッションは、情報の誠実性と効果的な保護との間に関連性を見出し始めています。紛争環境下のジャーナリストやメディア関係者は特に脆弱であり、その報道に対する報復や嫌がらせ、脅迫にさらされます。ジャーナリストを保護することは、表現の自由を擁護しつつ、安全保障理事会によって与えられたマンデートを履行する具体的な方法の1つです。

情報の誠実性と民間人保護との間の関連性は、早期警報という点でも見られます。誤情報や偽情報、ヘイトスピーチは、戦闘行為や暴力の予兆となるからです。私たちはこの理由から、PKO要員に対し、誤情報や誤解を招く情報、操作された情報、暴力の扇動を含め、懸念すべきナラティブを特定、追跡するよう要請しています。そうすることによって、ミッションは問題が生じる前に、民間人や要員自身に対する脅威を予期し、これに対処できるようになるからです。

いかにして情報の誠実性に貢献すべきか、すべてのPKO要員に周知徹底させるのは、決して容易なことではありません。117カ国から派遣された5万人を超える要員が定期的にミッションに出入りする中、私たちの活動では、情報リスクへの対処方法について、誰もが基礎的な研修を共有できるようにすることが重要となります。

日本政府からの財政支援のおかげで、私たちは国連ミッションで展開する軍司令官と警察指揮官向けの研修パッケージを作成しました。このパッケージは、有害なナラティブを集め、分析する方法について、実践的な指導を行うものとなっています。例えば、司令官は「現地住民は、国連ミッションが武装集団に弾薬を提供していると言っている」といった誤った噂話がどんな結果をもたらすかを考え、自らの部隊に対する影響を把握するよう求められます。それは移動の自由や部隊の保護、後方支援、現地住民と交流する能力に影響を与えるものか、といったことです。その狙いは、SNSを通じて拡散された、たった一言が、部隊に目に見える悪影響を及ぼし得ることを示すことにあります。

そして、この活動は実を結びつつあります。ミッションは情報リスクを定期的に特定し、報告するとともに、予防策と対応策も講じるようになりました。また、デジタルメディアの新しいインフルエンサーとの架け橋となり、連携することで、国連PKOミッションの活動を広く周知させています。例えば、以前はUNISFAの活動について、誤情報に基づく漫画を描いていた南スーダンのある人気コメンテーターは現在、アビエイの平和と安全に対するミッションの貢献を示す絵を描くようになっています。

その転機は驚くほど簡単に訪れました。UNISFAの報道官がこの漫画家をアビエイに招き、ミッションが現地で行っている活動を見学させたのです。活動を目の当たりにし、コミュニティとどのように関わり合っているかを理解する機会を得たことで、PKO要員の役割に関する彼の考え方は一変しました。

UNISFAによるアウトリーチと対話前後でコメンテーターによる漫画に変化が。左:2023年に制作された漫画で、市民を盾に陣地にこもったままの国連PKO要員を表している。右:2025年に制作されたUNISFA駐屯地内の壁画で、要員が市民の暮らしを守っている様子を表現。

今日のデジタル世界で起きている有害な情報の「津波」は、圧倒的に大きく、克服不可能に感じられることもあります。しかし、アビエイでは過酷な状況と苦難にもかかわらず、現地の人々や、これを支援するPKO要員の粘り強さと希望が、インスピレーションを与えてくれます。今後の進展はこれまで以上に、国連と加盟国、そして現地の関係者が緊密なパートナーシップによって連携し、信頼を構築し、レジリエンス(強靭性)を高め、平和に投資することができるかどうかにかかっているのです。

 

情報の誠実性に関するDPOの活動について、詳しくはこちら(英語)

UNISFAについて詳しくはこちら(英語)

法政大学で「国連ピース・サークル」開催~"誰一人取り残さない平和"を私たちはどう実践するのか?~

 若者が中心となり、平和や地球規模の課題について対話し、ともに考える国連の「ピース・サークル」が5月23日、法政大学で開催されました。高校生や大学生など約70人が参加し、「"誰一人取り残さない平和"を私たちはどう実践するのか?」をテーマに議論しました。対話の成果は、9月に発表予定の『若者の平和への貢献に関する国連事務総長の報告書』に盛り込まれます。

法政大学で開催された「国連ピース・サークル」ⒸUNIC Tokyo

 ピース・サークルは、若者・平和・安全保障に関する国連のキャンペーン「Hear Us. Act Now for a Peaceful World (私たちの声を聞いて。平和な世界のために今すぐ行動を)」 の中心として、国連が世界各地で展開するグローバルな取り組みです。2026年5月現在、60カ国以上で約200のピース・サークルが開催されています。

 日本にいると実感しにくいものの、世界では人口の半数以上が30歳未満とされ、若者が多数を占めています。国連が提唱する「若者・平和・安全保障(YPS)」アジェンダは、若者を平和の担い手として位置づけ、その声を政策や意思決定に反映させる仕組みづくりを重視しており、若者の「意味ある参加」が必要とされています。

 はじめに、今回のピース・サークルを後援した国連広報センターの根本かおる所長が登壇。その週に日本を訪問していたアントニオ・グテーレス国連事務総長がシンポジウムで中東危機に関する学生からの質問に対して、丁寧に回答した場面を紹介しながら、「事務総長をはじめ、国連全体にとって、若者との対話は非常に重要な課題です」と強調しました。

若者との対話の重要性について語る国連広報センターの根本かおる所長ⒸUNIC Tokyo

 また、5月22日に閉幕した核不拡散条約(NPT)再検討会議で、締約国間の対立が解けず、過去2回に続き、今回も成果文書を採択できなかったことにも言及しつつ、「国連史上最多の数の紛争が起きている中、自分の立場にあまり拘らずに、オープンな気持ちでしなやかに議論に参画できる若者の力が今こそ必要とされています」と話しました。

 ピース・サークルの展開にあたり、国連広報センターと連携する一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんは、この日の議論のきっかけとして、核兵器の脅威を感性で知るためのアクティビティを実施。参加者に目を閉じてもらい、世界の核兵器の数と同じ約1万2000発のBB弾が立てる音を流し、そこから何を感じたかを話し合ってもらいました。

約1万2000発のBB弾の音を通じて、世界の核兵器の状況について考えてもらうアクティビティ ⒸUNIC Tokyo

 過去には、このアクティビティに参加した中学生から「こんなに沢山あって安全に管理できるの?」という疑問が出たことも紹介。その疑問がAIと核兵器を巡る問題の議論につながったといいます。活動では、「どうやって問いを引き出すか」が重要だとして、続く議論への期待を込めました。

 この日の対話のルールとして、参加者の意見を最後まで聴き、異なる意見を尊重し、多様な意見を歓迎することを共有。また、年齢や所属に関係なく自由に発言でき、発表でも自由にできるが、誰がその意見を述べたかは明かさない「チャダムハウスルール」についても共有しました。

発表用紙にアイデアを書き込む参加者ら ⒸUNIC Tokyo

 議論ではまず、「わたしにとっての平和」がどんな状態かを話し合い、対話の土台づくりを行いました。次に、「誰一人取り残さない」とは、どんな状態を指すのか、誰が取り残されていると感じるのかを話し合うことで視点を共有し、「何故その状況が生まれているのか」という要因を深堀りしました。最後に、「日常でできる行動」について考えることで、明日からできる一歩について話し合いました。

お互いの意見に耳を傾け合う参加者ら ⒸUNIC Tokyo

 この日は、事前アンケートにより、参加者それぞれがSDGsのどのゴールに関心を持っているかをつかみ、その関心に合わせて、「貧困・飢餓」「ヘルス」「教育」「ジェンダー、不平等」「環境・産業・労働」「平和と公正」とそれぞれ数人のグループに分かれ、異なる分野から「平和」への道筋について、議論しました。約1時間にわたって、話し合いを重ね、各グループの発表用紙には、色とりどりのペンで記されたキーワードやイラストが加わり、それぞれのグループの特徴が出た発表につながりました。

教育をテーマに発表を行うグループ ⒸUNIC Tokyo

 様々な関心分野がある中、共通のキーワードとして挙げられたのは「知る」「気付く」です。不平等な貿易システム、水不足、教育格差など、異なる課題に対して、「まずは状況を知ってもらうことが重要だ」とする意見が挙げられました。そのための手段として、ピース・サークルで学んだことを家族や友人、周りの人と共有する、SNSを通じて発信するといったアイデアも多く寄せられました。「解決策を考える人が少しでも増えることが解決の一歩」という声もありました。

平和と公正をテーマに発表を行うグループ ⒸUNIC Tokyo

 また、「自分のバイアスと向き合う」という意見も上がりました。特にSNSで見ているコンテンツには、自分の好きなこと、関心に支配されている側面があるとして、その状況に自覚的になる重要性が指摘されました。 

 平和がどんな状態か、という点について、「平和でない状態は戦争がないことだけではない」として、平和には複数の側面があるという意見が挙げられました。誰も取り残されない状態について、「誰もが意見を言えること」「当事者の声が届く環境」という考え方も共有されました。

 2時間以上に及ぶピース・サークルの終了後、国連広報センターの根本かおる所長は、「女性が参画した和平交渉は15年もつ可能性が35%増加する」というデータなどを紹介し、「多くのグループの人たちに当事者として平和を考える場に関わってもらうことが、大きなインパクトをもたらします」と白熱した議論を称えました。

一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんⒸUNIC Tokyo

 一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんは、議論の成果を実現させるため、自身が多国間会合でその想いを伝えることができると話しました。そのうえで、『若者の平和への貢献に関する国連事務総長の報告書』が出た後には、大学や地方自治体などそれぞれのコミュニティに対して提示していくことが重要と呼びかけました。

 今回のピース・サークル開催に尽力された法政大学の本多美樹教授は、あっという間の3時間を振り返り、「問題意識はあっても一歩踏み出せない人も多い中、皆さんはアクションを取って参加されました」と強調。そのうえで、「明日からも問題意識を持ち続けて、個々人のコミュニティで平和のリーダーシップを取れるようになってほしい」と力を込めました。

ピース・サークル終了後の集合写真 ⒸUNIC Tokyo

2026年3月に行われた横浜ピース・サークルの記事はこちら

グテーレス国連事務総長「最後の訪日」を振り返って -日本と国連の70年

国連広報センター所長の根本かおるです。
2026年5月19・20日に「国連システム事務局長調整委員会」(CEB)と呼ばれる幹部会の年次会合がアジアで初めて、東京で開催されたのに合わせて、国連のトップ、アントニオ・グテーレス事務総長が5月17日から20日にかけて訪日しました。国連難民高等弁務官ならびに事務総長としての訪日は、20回以上になります。

「国連システム事務局長調整委員会」(CEB)のファミリーフォト ⒸUNU/Curtis Christophersen

26年末の退任を前に、今回が事務総長として最後の訪日となる見込みで、日本の国連加盟70周年記念ハイレベル・シンポジウムをはじめ発言の随所に、70年前に国連に加盟してから、核軍縮や平和構築、防災、人間の安全保障をはじめとするグローバル課題について、一貫して国連の場でリーダーシップを発揮してきた日本への感謝をにじませていました。

日本の国連加盟70周年記念ハイレベル・シンポジウムで登壇するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

高市早苗総理大臣とのバイ会談では、高市総理から国際情勢が不安定化する中、国連において、各国が分断されるのではなく、力を結集して課題に取り組むことは、これまで以上に重要となっていること、国連を中核とする多国間主義に対する日本の確固たる支持は不変であることについて発言があり、これに対して事務総長は、両者が共有する目標と、新たな形での効果的なマルチラテラリズム(多国間主義)を推進するため、高市総理および日本政府と引き続き緊密に協力していく用意があることを表明しました。

高市早苗総理大臣と握手するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

さらに、訪日中、様々な場で、事務総長として初めて長崎と広島双方の平和式典に出席し、被爆者の方々に敬意を表することができたことを誇りに思うと語り、核兵器のない世界を目指して連帯を示していました。

日本被団協代表委員の田中熙巳さん(左から2番目)、事務局長の濱住治郎さん(左)と言葉を交わすアントニオ・グテーレス国連事務総長(右)、国連広報センターの根本かおる所長(右から2番目) ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

訪日締めくくりの5月20日に行った記者会見では、事務総長として日本で行う最後の記者会見になることから、日本のメディアに向けていつにも増して踏み込んだ発言が目立ちました。

日本記者クラブで開催されたアントニオ・グテーレス国連事務総長の記者会見 ⒸUNIC Tokyo/Yudai Hiraka

冒頭の発言では、国連安全保障理事会について、
予定稿を離れて改革の必要性に強い表現で言及しました。

「必要とされる最も重要な改革は、国連安全保障理事会の改革に他なりません。
その構成は正当性も有効性も担保できていないからです。
事実、常任理事国のうち3カ国が欧州(の国)であるのに対し、
全世界の人口の半数以上を占めるアジア(の国)はわずか1カ国、残りの1カ国は
北米の国で、アフリカとラテンアメリカ(諸国)は全く含まれていません。
これは正当性と有効性という点で深刻な問題であり、
常任理事国の数を増やすとともに、非常任理事国も増やすことで、
安全保障理事会に今日の世界の現実を反映させることが絶対に欠かせません。」

 記者会見で超大国の振る舞いをこれまで以上に批判したアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Yudai Hiraka

質疑応答でも、国連を中心とする多国間主義が危機に直面していることに関してコメントを求められ、超大国の振る舞いを求められ、超大国の振る舞いをこれまで以上に激しく批判しました。

「危機に瀕しているのは多国間主義そのものではありません。
危機に瀕しているのは、国際法を侵害し、時には自ら紛争を引き起こし、
安全保障理事会における拒否権を行使して自らの免責を保証する超大国の行動です。
このような状況下では、国連事務局が世界中で劇的に増加する
紛争の数を抑えることは非常に困難です。
なぜなら、超大国が悪い手本を示すと、他の中規模国もそれに倣うからです。…
紛争国に恒常的に外部干渉を行う勢力が多数存在し、
紛争の予防や仲介が極めて困難になっていることは明らかです。
だからこそ、安全保障理事会の改革は非常に重要なのです。
私が事務総長に就任した当初、安全保障理事会の改革はタブーであり、
事務総長がそれについて語るべきではないとされていました。

しかし今では、私たちはその必要性を絶えず主張し続けています。」

www.youtube.comさらに、記者会見でこの10年間の事務総長在任中のレガシーについて
(早くも)問われて、事務総長は、

1)新型コロナウイルス感染症の世界的大流行への対応で国連が主導的な役割を示したこと、
2)ロシアによるウクライナ侵攻、ガザにおける悲劇的状況、そしてイスラエルおよびアメリカによる最近のイランへの爆撃などに対して、一貫して国際法に基づき、事務総長として声を上げてきたこと、
3)気候変動対策で国連が主導的な役割を果たしてきたこと、
4)人工知能(AI)について国連が関与する場を作ることができたこと、
を挙げていました。

大阪・関西万博の国連パビリオンのテーマ「人類は団結したとき最も強くなる。」が示すように、私たちが団結すれば、難局を切り抜け、成果を出し、人々の信頼が回復できます。それには、国連の身を切る改革努力である「UN80イニシアチブ」への支持も含め、日本の強力な支援は不可欠です。

レセプションで高市早苗総理大臣と言葉を交わすアントニオ・グテーレス国連事務総長  ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

「70年にわたり、日本が目指す目標と国連が目指す目標は強く整合してきました。
国連は数十年もの間、日本の寛大さと多国間システムへの貢献から
多大な恩恵を受けてきました。
そして日本は、国連での役割を効果的に活用し、
その外交上の影響力を高めるとともに、安定的、協調的な
グローバル・システムを通じて経済的な繁栄と平和を築いてきました。」

このように日本・国連双方にとっての恩恵に触れつつ、日本の政府と人々に対して、過去70年間の特別なパートナーシップへの感謝を、グテーレス国連事務総長は繰り返し述べていました。

「国連システム事務局長調整委員会」の年次会合がアジアで初めて、東京で開催されたことは、日本の国連への揺るぎないサポートを体現するものでした。今回の事務総長の訪日で高まった機運を、日本が国連加盟を果たした当日である12月18日に向けて、高めていきたいと願っています。

レセプション直前に撮影された高市早苗総理大臣と国連側参加者との集合写真 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

国連調達セミナー登壇を通じて考える、国連の役割と企業との協働の可能性

医療機器から、食料、ITサービスまで、「調達」は国連の多様な現場での活動を支える重要な役割を担っています。国連事務局活動支援局で勤務する望月美納子調達官に、3月に日本で開催され、多くの企業が参加した「国連調達セミナー」での経験や、日本企業が国連と連携する際のポイント、調達担当官としての経験などについて寄稿頂きました。

望月美納子(もちづき・みなこ)
【略歴】大学卒業後、民間企業勤務を経てフランスへ語学留学し、フランス語を習得。子育て期間を経て、1999年よりグローバル金融機関にて調達業務(Procurement)に従事する。約10年間の経験を積み、2006年8月ニューヨーク駐在員として2年間グローバルプロジェクトに携わった後、2008年9月に国連調達部へ採用される。国連調達部では多岐にわたる調達活動に従事し、エボラ危機における緊急調達業務にも対応。コロナ禍においては、国連ソマリア支援事務所(United Nations Support Office in Somalia)において、現地調達員と連携しながらリモートによる調達代行チームのリーダーを務め、緊急調達を支援した。現在は車両およびFLEET管理分野を担当し、国際連合事務局 活動支援局 サプライチェーンマネージメント部 調達部の調達官(Procurement Officer)として勤務。

2026年3月16日および17日に外務省主催で開催された「国連調達セミナー」に登壇する機会をいただきました。本セミナーは、日本企業に対して国連の調達活動や参入機会について理解を深めてもらうことを目的としており、今年は、全体セミナー参加企業数:63企業、総参加者数:76名が参加されていました。私自身、この場での経験を通じて、国連の現在の役割、調達の仕組み、そして企業との協働の重要性について改めて考える契機となりました。

近年、国連の役割は大きく広がっています。従来の平和維持活動や人道支援に加え、持続可能な開発目標(SDGs)の推進、気候変動対策、パンデミックへの対応など、国際社会が直面する複雑かつ多層的な課題に包括的に取り組んでいます。特に新型コロナウイルスの世界的大流行は、保健、経済、社会のあらゆる側面に影響を及ぼし、国連機関の役割をさらに重要なものとしました。このような状況下で、迅速かつ効率的に物資やサービスを提供する「調達」の重要性は一層高まっています。

国連システム全体での調達規模は年間数兆円にのぼり、医療機器、食料、インフラ、ITサービスなど対象分野は多岐にわたります。特徴的なのは、その多くが緊急性や不確実性の高い環境下で行われる点です。紛争地域や災害被災地など、通常のサプライチェーンが機能しにくい場所においても、必要な物資を確実に届ける必要があります。そのため、国連調達では単なる価格競争ではなく、品質、信頼性、持続可能性、そして倫理性が重視されています。

国連事務局調達額の推移(2021年~2025年)

ここで重要となるのがサプライチェーンの視点です。近年、グローバルサプライチェーンは効率性を追求する一方で、その脆弱性も露呈しています。パンデミックや地政学的リスクによる供給途絶も少なくありません。国連はこうしたリスクを踏まえ、多様な供給源の確保、現地調達の強化、デジタル技術の活用などを通じて、よりレジリエントな調達体制の構築を進めています。

また、環境や社会への配慮も欠かせない要素となっています。いわゆる「持続可能な調達(サステナブル・プロキュアメント)」の考え方に基づき、環境負荷の低減や人権の尊重、多様性への配慮などが調達基準に組み込まれています。近年では、女性が所有・経営に主導的役割を持つ企業や、障害者雇用を推進する企業への関心も高まっており、調達においても社会的価値を重視する流れが強まっています。これは企業にとっても重要なポイントであり、単に製品やサービスを提供するだけでなく、その背景にある生産プロセスや企業姿勢が問われる時代となっています。

車両・運送運輸分野は、日本からの輸出および提供サービスにおいて上位2分野を占める重要な分野です。 

この他にも、日本国内の国連関連機関の施設や運営にあたっては、オフィス業務サポート、国際会議やイベントの運営、広報活動支援、WEBサイトや動画制作、旅行手配など、多岐にわたる分野で日本企業にとって引き続き大きなビジネス機会があります。

また、セミナーで多くの関心が寄せられましたが、日本企業が国内外でどのように国連と関わり、連携していけるのかについて、いくつか重要なポイントがあると感じています。

第一に、国連のニーズを正確に理解することです。国連調達は一般市場とは異なる要件や手続きが存在するため、事前の情報収集と準備が不可欠です。例えば、ベンダー (UNGM)登録や入札プロセス、各機関ごとの調達方針などを理解することで、参入のハードルを下げることができます。

第二に、自社の強みを明確にし、それを国連の課題解決にどのように結びつけるかを考えることです。日本企業は品質の高さや技術力に強みを持つ一方で、それを国際的な文脈でどのように対応するか課題となる場合もあります。現場のニーズに即した形で提案する力が求められます。

第三に、パートナーシップの構築です。国連との協働は単発の取引にとどまらず、長期的な関係構築が重要となります。また、他企業やNGO、現地組織との連携を通じて、より効果的なソリューションを提供することも可能です。複雑な課題に対しては、単独での対応よりも協働によるアプローチが有効である場合が多いです。

一方で、日本企業が国連調達へ参入・拡大していく上では、いくつかの課題も存在します。日本企業は高品質で信頼性の高い製品・サービスを提供する力を有していますが、その強みを国際競争の中で十分に発信しきれていないケースも見受けられます。また、国連特有の調達制度や英語による入札対応、価格競争力、継続的な情報収集への対応が負担となる場合もあります。

国連調達の現場では、防災、医療、インフラ、環境配慮型技術、デジタル分野など、日本企業が強みを持つ領域への関心が高まっています。すべての案件に包括的に応札する必要はなく、一部の分野や専門性に特化して参加することも可能です。日本企業の皆様には、ぜひ積極的に国連のニーズを理解し、国際入札へ参加していただきたいと考えています。

私自身、日本出身の調達担当官として国連の現場に携わる中で、日本企業や日本の技術・品質に対する国際的な信頼の高さを実感する場面が数多くありました。一方で、その強みが十分に国連市場へ届いていないと感じることもあります。セミナーでは、日本企業の皆様が非常に真摯に国際貢献を考え、積極的に質問や意見交換をされていたことが印象的でした。

また、私自身、民間企業で調達業務に携わっていた頃は、積極的な市場調査や企業訪問を比較的自由に行うことができましたが、国連調達員は公的機関としての厳格な規則のもとで業務を行っているため、こちらから企業の皆様と直接意見交換できる機会は、セミナーや展示会など非常に限られています。その意味でも、今回のセミナーのように多くの企業の皆様から直接ご意見を伺い、製品や技術をご紹介いただける機会は大変貴重でした。こうした対話を今後も継続していくことが、私たちの活動の向上にもつながると感じています。

最後に、2025年、大阪・関西万博の国連パビリオンに調達の立場から携わり、構想段階から最終的な運営計画に至るまで、そのプロジェクトの一端を担当する機会をいただきました。しかし、実際に完成したパビリオンを自分の目で見る機会はこれまでなく、今回初めて家族とともに訪問することができました。

 

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(大阪・関西万博の国連パビリオンでは、国連のマーヘル・ナセル総代表ら国連チームが筆者家族を歓迎)

 

実際にパビリオンの中を歩き、形となったプロジェクトを目の前にしたときには、大きな感動を覚えました。特に、多くの関係者とともに積み重ねてきた努力が一つの形として実現していることを実感し、胸が熱くなりました。

また、日頃は家族に仕事内容を具体的に見せる機会が少ない中で、自分が携わった成果を家族と共有し、その喜びを分かち合えたことは、私にとって非常に特別で忘れがたい経験となりました。調達という仕事は表に見えにくい分野ではありますが、その先に実際の活動や人々の体験がつながっていることを改めて実感しました。

国連調達は、単なるビジネス機会にとどまらず、国際社会への貢献に直接つながる大きな可能性を持っています。今回の登壇経験を通じて得た学びを活かし、今後も日本企業と国連との橋渡し役として、双方の連携と相互理解に貢献していきたいと考えています。

国連PKOの現場から 揺らぐ国際協調の中で再考するPKOと日本の貢献

国連平和維持要員は、国連平和維持活動(PKO) で、平和のために奉仕し、過酷な状況の中で、人々を支援しています。日本は1992年に国連平和維持活動協力法を制定して以来、これまでに延べ11,500人以上を国連PKOに派遣してきました。国連PKOの現場と国連本部平和活動局の両面で活動経験がある荒木順子さんに、日本の自衛官の立場から寄稿頂きました。

【略歴】軍事計画官 1等陸佐 荒木 順子
2004年防衛大学校卒業。陸上自衛官。2004年陸上自衛隊入隊以来、第8高射特科大隊(北熊本)、国際活動教育隊(駒門)、陸上幕僚監部(市ヶ谷)等で勤務。2014年1月に国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)情報幕僚として国連平和維持活動(PKO)へ派遣。2022年から2025年までニューヨークの国連本部 平和活動局軍事部で軍事計画官を務め、2025年9月から防衛省防衛研究所で研修員として勤務。
※クレジットのない写真は筆者提供

 2014年1月、背中に日本の国旗が縫われた迷彩服を着て初めて南スーダンに降り立った。現地の厳しい情勢と、初めて経験する海外任務への緊張。それでも言いようのない大きな高揚感があった。あの経験が、PKOというものを自分自身の問題として考えるきっかけになった。

2014年 UNMISS JMAC勤務時代の同僚と

 陸上自衛官としてUNMISSに派遣された私は、UNMISS本部の統合ミッション分析センター(JMAC)で司令部要員として、情報管理や治安事象の統計作成を担った。どこまでも広く澄んだ青い空と照りつける太陽の下、時に滝のような大雨に打たれながら、各国から派遣された軍人・警察職員・文民の仲間たちとともに、内戦後の不安定な情勢の中で派遣期間を全うした。その経験は、PKOの現場が抱える現実を自分の肌に刻み込んでくれた。 

 あれから約10年。2023年2月、国連の航空機で再び南スーダンに降り立った瞬間、眼前に広がる青い空と緑の木々とともに迫ってきた熱風は、UNMISSで勤務していた頃の記憶を思い出させてくれた。このとき私はニューヨークの国連本部でDPO(国連平和活動局)軍事部の軍事計画官としてUNMISSを担当しており、軍事部のナンバー2である副軍事顧問の少将とともに、出張で再び南スーダンを訪れていた。役割も立場も変わったが、あの暑さと青い空は変わっていなかった。

2023年 副軍事顧問との南スーダンでの出張。前列の一番右が筆者。

 2023年の訪問は一つ一つのミッションは短期の出張だったが、副軍事顧問とともに複数のミッションの現地に赴き、実態を直接把握することには大きな意味があった。本部にいると見えにくいミッション横断的な課題も、現場に足を運ぶことで問題点が浮き彫りになる。現地訪問後に国連本部内での議論を経て改善につながった取り組みの中には、歩兵部隊が基地から離れてパトロールなどのために前方に展開する中隊レベルの作戦拠点の運用要領や生活環境の改善、軍司令部内の女性要員の比率向上などがあり、こうした取り組みを振り返ると、現地訪問という出張のもつインパクトの大きさを改めて感じる。

 南スーダンでは、自身の派遣から10年経ち、変わっている部分と変わっていない部分の両方を直接肌で感じた。歩兵大隊の数も増え、セクター司令部も整備され、文民保護を主体とするマンデートのもとで、一見すると軍の作戦は円滑に進んでいるように見えた。しかし、現地で丁寧に聞き取りを重ねると、女性司令部要員の生活環境、地方へのパトロール時のトイレなど衛生面での問題、歩兵部隊が臨時に展開する拠点の強度、河川部隊の夜間行動能力、訓練場と訓練予算の不足など思った以上に多くの課題が浮かび上がってきた。

2023年 副軍事顧問との出張時における派遣部隊要員との対話

 その後も、軍と警察の現地能力評価という2~3年に一度の大きな事業を担当し、2週間をかけてミッション全体をつぶさに見て回った。こうした一連の経験を通じて感じたのは、PKOの任務遂行には現場における地道な努力の積み重ねと試行錯誤があるということである。予算や作戦規模など、国内の任務とは大きく異なる制約の中で、目に見える即効性のある成果を出すことは難しい。それでも、平和維持要員一人一人の努力と貢献が現地の平和と安定の基盤を支えているという事実は、忘れてはならない。

 国連では毎年5月29日を平和維持要員の日として、世界のPKOの現場と国連本部でセレモニーを実施している。このセレモニーではその年にPKOの現場で殉職された仲間を称え追悼する意味がある。PKOは国連創設当時、想定されていなかった活動であるが、1988年にノーベル平和賞を受賞しており、武力によらない紛争解決と平和構築の重要性は現在も現実的かつ有効な選択肢である。ニューヨークの国連本部でも、事務総長の臨席の下、厳粛にセレモニーが行われ、献花の他にも、その年にPKOでジェンダーの観点から功績のあった女性軍人・警察要員の表彰や、半年以上勤務した軍人・警察職員へのメダル授与式が行われている。

2025年の平和維持要員の日に開かれたセレモニーで献花を行う国連事務総長
ⒸUN Photo/Manuel Elías

 日本は、1956年12月に国連に加盟しており、今年で70年が経つ。この70年にわたり、日本は国連加盟国の一員として、財政・人的両面から国連の様々な活動を支えてきた。特に国連事務局の通常予算とPKO予算に関する義務的に負担する分担金や任意拠出金においては主要拠出国としての地位を維持し、PKOだけでなく、開発や人道、保健衛生など幅広い分野で実質的な影響力を行使している。PKOへの貢献は、加盟当初から積極的だったわけではないが、1992年のPKO協力法を契機に、自衛隊をカンボジア、モザンビーク、東ティモール、ハイチ、南スーダンなどへ派遣し、施設、輸送、衛生など活動の幅も少しずつ広がっていき、国連や現地住民の他、PKOの部隊派遣国からも高い評価を受けてきた。

 グローバル化の進展により、世界各地で発生する紛争は、地理的な距離に関わらず、日本経済、エネルギー、社会生活にまで直接的な影響を及ぼしやすい時代になっている。こうした環境において、PKOの多くが展開する中東やアフリカの平和と安定に寄与することは、間接的に日本の安全保障の確保につながる。現在も自衛隊は南スーダンへ司令部要員を派遣しており、2026年5月からは新たにUNMISSの参謀長に日本から初めて自衛官を派遣することも決定した。国連本部でも平和活動局(DPO)やオペレーション支援局(DOS)で自衛官が勤務しているが、こうした関与を継続的かつ主体的に取り組む姿勢は不可欠である。

2024年2月 UNMISSに関するブリーフィングを行う筆者(国連軍事参謀委員会)

 近年では、国際秩序を巡る環境は複雑化し、大国間競争の激化や価値観の対立により、国連を中心とした国際協調の枠組みに一定の揺らぎが生じている。こうした状況において、日本は日米同盟を基軸とする安全保障環境を維持しつつも、多国間協力を補完する手段として、PKOを戦略的に活用していくことは、外交・安全保障の両面において有効であり、同時に国連の機能維持・強化の観点からも望ましい方向性である。国連という普遍的枠組みを軽視するのではなく、日本の安全保障に資する実務的な協力の場として再評価した上で、これまで日本が貢献してきた分野、枠組みにとらわれず、よりイノベーティブな方法で主体的に取り組むことが今まさに期待されている。

紛争勃発から3年:スーダンの復興・再建を支える地雷対策の現在

スーダンは現在、世界で最も深刻な人道危機の一つに直面しています。国内での紛争の勃発から、2026年4月15日で3年。爆発性兵器が広範に使用され、推定1400万人が地雷対策支援を必要としています。国連地雷対策サービス部(UNMAS)スーダン事務所で、最前線での人道支援活動を続けてきた本多麻純プログラム・オフィサーに、2026年1~2月にかけて再訪した首都ハルツームの現状について、寄稿頂きました。

出張中、ハルツームで実施した意見交換会にて。右が著者。

【略歴】本多麻純(ほんだ・ますみ) 大学卒業後民間企業での勤務を経て国際協力を行うNGOに入職。東北やハイチの地震被災者支援、シリアやミャンマーアフガニスタンスーダンにおける地雷対策を含む人道支援に従事。休職中、2017年から2019年までスウェーデン、ウプサラ大学にてロータリー平和フェローとして平和紛争修士号を取得し、卒業後一年間は同学部で研究助手およびロータリー平和センターのコーディネーターとして勤務。2021年10月より国連地雷対策サービス部(UNMAS)スーダン事務所プログラム・オフィサーとして勤務。

※クレジットのない写真は筆者提供

前回のブログを掲載していただいてから2年と6カ月、スーダンでの紛争開始およびそこからの退避劇からもうすぐ3年が経とうとしています。この間、世界は目まぐるしく動き、新たな紛争や暴力が巻き起こる中、スーダンでも闘いが続けられています。

広大な国土を持つスーダン。地域によって戦況は大きく異なり、国の西側にあるダルフール地域や南側のコルドファン地域では激しい戦闘が続き、大規模な虐殺や性暴力が繰り返される一方で、首都ハルツームについては、2025年1月に国軍(SAF)が準国軍(RSF)を追い出す形で、一旦地上戦が終わりました。その後も散発的なドローン攻撃はあったものの、SAF側は首都の奪還を祝い、人々に帰還を呼びかけました。

これを機に、数百万人という難民、国内避難民がハルツームに戻り始め、これに続いて、これらの帰還民へ支援を届けるため、国連組織やNGOもハルツームにオペレーションを戻す計画を立て始めました。

援助関係者のハルツーム事務所再開に先立ち、2025年4月に、UNMASは、国連安全保安局(UNDSS)と協力し、国連で最初のセキュリティ調査ミッションを遂行しました。UNMASから派遣された爆発物処理専門家の報告では、ハルツーム市内は夥しい数の不発弾と爆撃被害を受けた建物であふれていたそうです。7か所の国連施設を調査したところ、場所によっては不発弾が多すぎて危険であるため、入り口すらまたげず、より適切な機器とチームを携えて調査を改めることになったケースも。
これまでUNMASが力を入れてきたデータ分析による爆発物汚染レベルの予測をはるかに超える不発弾の数やその形跡を目視したとのことでした。また、7月にはハルツームの街中で、これまで確認されていなかった対人、対戦車両方の地雷が見つかり、その後も新たな地雷原の報告が続いています。

街中で見つかった地雷原(写真:UNMAS/DRC/JASMAR)

戦闘が収まった後も地雷や不発弾の脅威が残る中、増え続ける帰還民への支援を届けるため、2025年下半期には、多くの援助機関が徐々にハルツームに事務所を再開し、UNMASも世界食糧計画(WFP)の事務所に間借りする形で小さな事務所を設けました。こうしたなか、私は2026年1月下旬から2月上旬にかけ、私もハルツーム出張に行ってきました。

ハルツームへ

2023年の退避以来、一旦は日本に拠点を置き、2024年4月以降はケニア・ナイロビに移り、リモートでスーダンでのオペレーションをサポートしてきました。これまでもスーダンには何度か足を運んだことはあったものの、ハルツームまで行くのはこれが初めてです。

ハルツームへの移動は1月31日土曜日。ハルツーム国際空港がまだ再開していないため[1]、陸路での移動となります。また日が沈んでからの移動は禁止されているため早朝の出発です。2023年の退避経路を今度は遡る形で移動し、11時間かけて、ぎりぎり夕暮れ時にハルツーム州に到着しました。以前の事務所や自宅のあった中心街は、激戦地であったことから地雷・不発弾の被害が最も多く、まだ復興が遅れています。そのため、多くの帰還民や援助機関はハルツーム市からナイル川をはさんで西岸に位置するオムドゥルマンに戻っており、私たちもそこにある宿舎に泊まります。

[1] 2025年後半から始めたUNMASチームによる不発弾処理も手伝い、2月1日に空港は再開し、2月26日にはWFPが運航する人道支援専用機もハルツーム空港での発着を再開しました。

ナイル川沿いで夕暮れ時を楽しむ人々

オムドゥルマンの街中は、爆撃や銃弾の痕がまだ生々しく残っている建物が多い一方で、多くの人々が外を歩いており、お店やレストランなど、ビジネスも繁盛しているようでした。涼しくなってきた黄昏時、ナイル川沿いの通りには、堤防に腰を掛けて会話を楽しむ若者たちが目に入り、こんなに普通の生活が戻っているのかと、驚きました。

しかしながら、後日分かったことですが、ナイル川を渡ってオムドゥルマンへ入るための橋の一つにおいて、再建工事の最中に対戦車地雷が見つかりました。幸いにも被害者を出すことなくUNMASチームによって無事に除去されましたが、ようやく取り戻しつつある平穏な日常が、依然として紛争が残した負の遺産と隣り合わせであるという現実を改めて認識させられます。また、今後加速が求められる復興・再建の過程において、地雷や不発弾がいかに大きな制約となるかを強く示唆する出来事でもありました。

橋の再建工事現場で見つかった対戦車地雷(写真:UNMAS/DRC/JASMAR)

ハルツームの街中の被害状況

ハルツーム州での地雷対策

移動後初日、オムドゥルマンからハルツーム中心街に移動し、地雷対策の活動を視察します。白ナイル川にかかる橋を渡ると、人通りはみるみるうちに減り、かつてハルツームのランドマークだった歴史的または近代的な建造物も、オムドゥルマンの街並み以上に戦闘の爪痕の深さを印象付けます。

ハルツーム中心部のナイル川沿いに立つ高級ホテル。カダフィ大佐の支援で建設された近代化の象徴だったが、現在は紛争の被害が目立つ。

まず訪問したのは、紛争被害の激しいハルツーム大学の女子寮で不発弾除去にあたっているチームの活動。ほとんどが男性の中、このチームに紅一点、女性の除去員が作業をしています。地雷対策の分野では、もともと男性スタッフが多く、特に地雷・不発弾の除去には軍隊経験が有効であることや、その作業の危険性などから、長い間女性の除去員は皆無でした。スーダンでは、紛争前に女性の除去員を育成するための研修を行い、28人もの卒業生を輩出したにもかかわらず、紛争によって彼女たちの活躍はしばらく中断を余儀なくされ、また地方や国外に逃げた人もいることと想像します。

今回の視察中に出会ったサディアという女性除去員[2]は、南コルドファン州の出身。2023年以前から、国内で最も多くの地雷汚染に苦しむ州です。「被害が多かった分、その危険を取り除く仕事に貢献したいと思ってこの仕事を選んだ。危険な仕事だからと周りの人たちからは理解されにくいけど、私はこの仕事に誇りを持っているし、幸せに感じる」と、心強い言葉を聞くことができました。

[2] サディアのインタビュー動画(英語字幕)はこちら:

www.facebook.com

ハルツーム大学女子寮での不発弾除去作業。爆発物による損傷が目立つ。
後姿の除去員がサディア。

次に、地雷や不発弾の被害から身を守るための教育活動を実施しているチームを訪れます。住宅街の中で行われたセッションには老若男女30人を超える参加者が集まりました。子供と大人を分けて、それぞれに分かりやすいメッセージを伝えます。参加した子供たちの中には、最近拾った銃弾を開けようとして爆発し、指を失った男の子、不発弾のポスターを見て「それうちの庭で見た」と指さす女の子(今年10歳になる息子と同じくらいでしょうか)と、またしても、戦闘が収まった地域における地雷・不発弾の被害とその恐ろしさを再認識しました。

ハルツーム州に戻ってきた、あるいは留まり続けたスーダン人が直面する地雷・不発弾の脅威は、安全であるはずの家の中や学校、病院、近所の公園と、まさに生活空間にあるのです。また、その好奇心から、見慣れないもの、きらきら光る金属製のものなどを拾うことの多い子供たちは、残酷ながら、最も被害にあうリスクの高いグループとされています。

ハルツームで視察した子供向け爆発物回避教育セッション

すべての人に地雷対策を

このように、年齢や性別によって、行動パターンやその範囲は異なり、さらされる地雷や不発弾のリスクのレベルや種類も変わってきます。そのため、様々な違いを理解し、皆にとって意味のある地雷対策活動をデザインすることが重要です。

例えば、上記のような地雷・不発弾回避教育であれば、大人用に計画されたセッションは、子供にとっては分かりにくく、つまらないでしょう。そのため、子供たちは別に集め、子供にとって分かりやすい言葉を使い、集中力が続くように紙芝居を使うなどの工夫をこらします。四肢や視覚、聴覚に障害があり、健常者だけを想定したセッションには参加できない、参加してもわかりにくいという人たちへの配慮も必要です。地雷・不発弾の調査や除去活動であれば、コミュニティーのリーダー(大抵年配の男性)だけに話しを聞いて除去活動を行っていては、普段女性しか使わない道にある地雷や不発弾を把握しきれず、除去しそびれてしまうかもしれません。女性や若者、子供からも情報を集めることが重要なのです。

今回の出張では、活動視察のほか、私たちの実施する地雷対策においてジェンダーや多様性の視点を強化することが目的の一つです。ジェンダー専門家を迎え、UNMASスタッフやスーダンで地雷対策を実施している団体を対象に研修や意見交換会を行いました。

ディスカッションを通じて、スーダンが非常に多様であり、地域や民族、コミュニティ単位でジェンダー観やそれに基づく役割分担が異なることを再認識するとともに、紛争体験を通じて、様々な形で変化も生まれていると確認し合いました。

例えば、戦争で大黒柱を失い、家事や育児に加え、家計の責任も背負うことになった女性が増えたとのこと。彼女たちは、サディアがそうしたように、これまで男性ばかりだった空間に足を踏み入れているかもしれません。また、自ら家族とともに外国に逃れた男性からは、「ディアスポラになったスーダン人コミュニティの中で、異国において多様なジェンダーのあり方を目の当たりにすることで、これまで凝り固まっていた考え方が少しほぐれたように感じる」という意見まで出されました。

これらの変化は、地雷対策に関わるニーズやリスクも変わっていることを意味します。私たちは、これらの差異や変化に機微に対応していくことで、一つでも多くの地雷を取り除くことができ、一人でも多くの人の命を守ることができるのです。

最後の研修を終えて。左が著者

絶望から希望へ

今回の出張を通じ、強く心を動かされた変化がありました。地雷対策に長年関わりのある、また私も紛争前から面識のあるスーダン人女性についてです。退避後、初めてスーダンに戻った2024年11月に久しぶりに会った際、彼女は疲弊していました。いつもは明るく笑顔の絶えない彼女が、強く、長い抱擁を交わしながら、「戦争がすべてを壊し、すべてを奪っていった。許せない」と、涙を流しました。積み上げてきた生活すべてを失い、小さな子供たちを抱えての避難生活を続ける中、そのストレスやショックからしばらく精神疾患にも苦しんでいたとのこと。その彼女が、上述の研修や意見交換会に積極的に参加してくれました。

ある場面で、地雷対策含む人道・開発支援に従事する組織や関係者全員が、セクシャルハラスメントや性的搾取・虐待について意識を高め、予防・対策していかなければいけない、そして重要なのは制度の充実だけではなく皆の意識が変わること、という話し合いの中、彼女は「時間がかかっても、地道な努力を続ければ必ず変化は起きる」と確信をもってコメントしてくれました。

スーダンでもまだ多くの少女たちが被害を受け続けている女性器切除(Female Genital Mutilation: FGM)[3]の問題に触れ、「私の母親も私もFGMのサバイバー。でも私の娘はピアスの穴すら開けていない。彼女の体は彼女自身が決めることだから」と、誇らしげに語ってくれました。

スーダンでFGM撲滅に向けた草の根運動が始まった1940年代から、何世代にも亘る闘いはまだ続いていますが、少しずつ人々の意識や行動に変化が起き始めている証です。紛争と暴力の絶望が渦巻く中で、希望を感じさせてくれる力強い言葉でした。彼女のような女性が増え、平和で民主的なスーダンが実現しますように。

[3](FGMの説明についてUNICEF協会を参照ください)

www.unicef.or.jp

 

若者の声が未来を動かす:横浜市で「国連ピース・サークル」開催

 若者がリードする対話と行動のための国連の「ピース・サークル」が3月8日、日本の自治体が主催するものとしては初めて、横浜市によって開催されました。市内外から中高生や大学生など約70人が参加し、持続可能な社会と平和の実現に向けて、議論しました。対話の成果は、2026年9月に発表予定の『若者の平和への貢献に関する国連事務総長の報告書』に盛り込まれます。

日本の自治体が主催するものとしては初めて開催された「横浜ピース・サークル」
ⒸUNIC Tokyo

 ピース・サークルは、若者・平和・安全保障に関する国連のキャンペーン「Hear Us. Act Now for a Peaceful World (私たちの声を聞いて。平和な世界のために今すぐ行動を)」 の中心として、国連が世界各地で展開するグローバルな取り組みです。これまでに、米国、ヨルダン、メキシコ、ホンジュラス、コロンビア、シリア、タンザニアで実施。今後は、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、インドでも実施する予定です。

 議論の前には、「横浜ピース・サークル」を後援した国連広報センターの根本かおる所長が登壇。「世界で史上最多の数の紛争が起こり、イランをはじめ中東で戦火が広がる中、よりオープンなマインドセットでつながれる若者の力が必要です」と訴えました。

 ピース・サークルの展開にあたり、国連広報センターと連携する一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんは、核兵器廃絶に向けた自身の取り組みを紹介した後に、「環境と平和について話し合うことが、信頼を築く装置になります」と説明しました。国連本部でフェリペ・ポーリエ ユース担当国連事務次長補と言葉を交わす中で彼から伝えられた「若者には、硬直化した議論をかきまわすことができる」という言葉も紹介しました。

議論を進めるうえでのポイントを説明するNPO法人 Forum2050の戸田隆夫代表
ⒸUNIC Tokyo

 この日は、NPO法人 Forum2050の戸田隆夫代表がファシリテーターを務め、まず議論の前提として、必ずしも意見をまとめなくても良いということを共有しました。そのうえで、色々な人の立場に立って世界を想像し、自分の実際の行動にもつながる思いを声にしてほしい、と伝えました。また、様々な問題に共通する処方箋を考える際、希望を切り口とする方法もあること、「For all(皆のために)」に加えて、「By all(皆の力で)」問題を解決していくことが重要だと説明しました。

さまざまな視点からアイデアが集まる「ピースサークルボード」ⒸUNIC Tokyo

 議論のテーマは、「サステナブルなグリーン社会と平和の実現」。5~6人のグループに分かれ、SDGsのアイコンの円形の「ピースサークルボード」を5-6人のチームの膝の上にのせてアイデアを出し合いました。留学生も多く参加し、時には英語を交えながら、約1時間にわたって議論が進行。その後各グループが、アイデアの詰まった付箋でいっぱいになった円形ボードを持って、発表を行いました。

環境教育の重要性について説明をするグループ ⒸUNIC Tokyo

 そこで、キーワードとなった言葉の一つは、「教育」です。「知らないことは行動に移せない」と前置きをしたうえで、環境や平和に関する実践的な教育を早期から行うことの重要性が共有されました。海外の状況や事例を知るための留学に対する支援というアイデアや、「平和」と「日常の充実」の相互関係について考える意義なども挙げられました。

 「楽しむ」という言葉も、多くのグループから寄せられました。平和や環境など複雑な問題を解決するためには、それまで関心を持っていなかった人を巻き込むことが必要となり、ポジティブな気持ちで続けられる仕掛けづくりが重要だという意見です。ゴミをゴミ箱に捨てると音が鳴るといった技術の活用や、環境に関する取り組みにポイントに換算するシステムなど、様々な具体案が寄せられました。中には、平和や環境専用のネット掲示板をつくるなど、ユニークな意見もありました。

グループの一人ひとりの視点が紹介される発表の様子 ⒸUNIC Tokyo

 グローバルな視点での議論が進んだ一方で、地域に根差した取り組みについても多くの意見が寄せられました。「地域の人々の声に耳を傾けて意見を届ける」、「SNSで地域のために取り組んだことを発信する」など、前向きなアイデアが集まり、ピース・サークルも、身近なコミュニティで開いてみたいという声も聞かれました。

 この他にも、「熟議民主主義」「循環型経済」「話しやすい空気づくり」など様々な考えが挙げられました。全グループの発表が終了した後も、「まだ言い足りない意見がある」と次々と手が上がり、未来を担うユースの熱量の高さが感じられました。

ユースへの期待を伝える国連広報センターの根本かおる所長 ⒸUNIC Tokyo

 終了後、国連広報センターの根本かおる所長は、「世界人口の半分は30歳未満」だと説明したうえで、「皆さんこそが、世界を、そして社会を動かしていく原動力になります。この議論を今日だけのものにするのではなく、続けていってください」とエールを送りました。

一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんⒸUNIC Tokyo

 一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんは、「次は皆さんが主催者となってピース・サークルを是非やってほしいです。今日出てきたアイデアを皆さんと一緒に、本当に形にしていきましょう」と呼びかけました。

  横浜市は1987年に国連からピースメッセンジャー都市の称号を授与され、国際平和に寄与する取組を続けてきました。2027年には、横浜市内で GREEN×EXPO(国際園芸博覧会)が開催予定で、世界に向けた平和のメッセージの発信を推進しています。

市内外から約70人が参加した「横浜ピース・サークル」での集合写真 ⒸUNIC Tokyo

横浜ピース・サークルについてまとめた国連本部の記事はこちら(英語)

https://www.un.org/en/peaceandsecurity/hear-us/peace-circles/yokohama-peace-circle