図書館はどのようにSDGsに取り組んでいるのか
こんにちは、国連寄託図書館を担当している千葉です。
2020年1月23日―24日、国連広報センターの主催で、国連寄託図書館の年次研修会を開催しました。その内容をご紹介いたします。
毎年開催しているこの研修会には、国連寄託図書館に指定された全国各地の14の図書館と、その他にゆるやかにつながる図書館のみなさんが参集します。
今年は、二日間の会期中、あわせて30近い図書館から40人ほどの参加がありました。
この研修会については、2年前にもブログで綴らせていただき、国連広報センターが図書館のみなさんに対して、どのようにSDGsをはじめとする国連の優先課題や諸活動をご案内したり、今後一年間の取り組みのヒントをご提供したりしているのか、そしてまた、その研修会の場をどのように使って、図書館のネットワークを拡大・強化しているのかをご案内しました。
今回のブログは少し趣向を変えて前編・後編の二部構成とし、まずは前編で、図書館のみなさんが研修で共有した過去1、2年間の取り組みについて、写真をお見せしながらご紹介したいと思います。
図書館における取り組みは必ずしも大きなお金やマンパワーを投入したものではありません。その多くは、ちょっとした工夫やアイデアで、でも確実に、たくさんの利用者のみなさんをSDGsへと誘い、ゴール達成のための行動へとうながしています。
ここにご紹介する図書館のさまざまな取り組みが良き参考事例あるいは後押しとなり、全国各地の街の図書館、あるいは学校の図書館でのSDGsへの取り組みが広まることを願っています。
それでは早速、図書館でのSDGsへの取り組みをご紹介してまいります。
〇日本十進分類法ならぬ“17分類”で選書を展示
日本の図書館では総記からはじまる日本十進分類法で図書が並べられていますが、みなさんの多くが持ち寄った事例は、それとは別にSDGsのゴールの17分類で特別選書し、閲覧室などに目立つように別置しているというものです。図書館によっては、さらにSDGsのアイコンの色にあわせた本の帯をつくり選書の表紙に巻いて陳列したところもあります。
千代田区立日比谷図書文化館は、広い閲覧室に据え付けられた大きな半円形の陳列棚を「SDGs+ESD持続可能な未来をつくる本棚」と名付けて、そこにSDGsのゴールにあわせて選んだ、さまざまな書籍を並べています。閲覧室の壁にはSDGsのロゴを一面に貼っています。
那須塩原市黒磯図書館は、閲覧室にある書架の一つの2列5段ほどを「世界を変えるための17の目標、SDGsコーナー」として使い、SDGsのアイコンと一緒に本を並べています。並べた本は面出しばかりでなく、棚差し(背差し)のものもあります。(同図書館は4月に移転予定)
西南学院大学図書館はSDGsの各ゴールのアイコンを大きく貼った書架に、ゆったりとした余白をつくって、ゴールごとに本を一冊ずつ選び、お洒落なインテリア風に並べています。
武蔵野大学有明キャンパス図書館は2018年11月、一か月間にわたって、カウンター近くに、「図書館で学ぶ 国連とSDGs」というタイトルのコーナーを設置し、カラーボックスを重ねて作った本棚に国連とSDGsをテーマにした選書を置きました。それらの本にはSDGsのアイコンの色にあわせた帯を巻きました。また、図書館を訪れるすべての人の関心を惹く導線を考えて、図書館入口近くの広いスペースには、同じタイトルの大きなパネルを置きました。このパネルに描かれたSDGsのアイコンの脇にはゴールについての説明も一言添えました。
関西大学図書館は昨年9月から今年1月まで、“KU Library thinks SDGs”と名付けた取り組みを行い、その期間中、カウンター前に机を3つほど並べて、教員推薦図書などを展示していました。カウンターは入口から近く、図書館を訪れるすべての人の目に触れ、多くの学生が足を止めて手に取っていました。また壁面を上手に有効活用し、SDGsのアイコンを貼りだしていました。
昭和女子大学附属中学校・高等学校図書館は、書架側面の分類番号表示の下にSDGsのゴールのアイコンを大きく貼って、そこに小さな2段組みのラック棚を置いて選書の数冊を面出し、背差しで並べ、スペースを有効活用しています。
〇写真展を開催
金沢市立泉野図書館(写真上)や中央大学図書館(写真下)は写真展を催しました。写真パネルには、国連広報センターが上智大学などの協力を得て行ったSDGsフォトコンテストの受賞作品などが使われています。
〇クイズやゲームを利用したイベントを開催
図書館によっては、SDGsに関するクイズやすごろくなどのゲーム体験の場を提供し、利用者をSDGs関連図書へといざなっています。
東北大学附属図書館は昨年前半、 1か月にわたって、館内各所にSDGs17ロゴポスターを配置し、利用者がそれらを探し、回答用紙の空欄を埋めるというポスターラリーを行いました。
三田国際学園中学・高等学校図書館は、中学生が授業でつくった図書室脱出ゲームと題したクロスワードパズルを活用して、楽しい図書館となるよう工夫しています。
昭和女子大学附属中学校・高等学校図書館は昨年、SDGsすごろく“Go Goals“で遊びながらSDGsを学ぶイベントを催して、生徒たちを図書館へと誘いました。その際、SDGsのゴールに関係する図書をたくさん展示して、本との出会いを演出しました。”Go Goals”は、ブリュッセルの国連地域広報センター(UNRIC)がElyxの創作者ヤシン・アイトゥ・カシ(YAK)の協力を得て作成し、国連広報センターが日本語化したものです。
港区立麻布図書館でも昨年、”Go Goals”を使ったSDGs講座を催し、SDGs関連本を展示。こちらの参加者は成人でしたが、盛況でした 。
〇SDGsを調べる方法を案内
北海道大学附属図書館は学生たちに対して、SDGsに関する国連情報をウェブから入手する仕方を案内する講座を開いています。
〇講演やイベントなどで、関連図書を展示
さまざまなイベントや展示を企画する際に、図書館はSDGsとの連動性を考えています。たとえば、千代田区立日比谷図書文化館は、「絵本を手にした子どもたちの今」という講演会を企画した際に、それに関連する複数のゴールを自分たちで考えて、そのアイコンをイベントのチラシに掲載したり、そのゴールにふさわしい関連図書の展示を行ったりしました。
〇学生がイベント支援・取り組みに参加
北海道大学附属図書館は、留学生日本語科目「コミュニケーション・スタディ」との連携で、SDGsに関連する成果物の展示を催しました。図書館での催しは北海道新聞にも取り上げられました。
東北大学附属図書館には、東北大学附属図書には、留学生向けの図書館利用・学習支援サービスを行う大学院生スタッフ”留学生コンシェルジュ”がいます。その学生たちの取り組みで、「留学生コンシェルジュXSDGs」という企画を実施し、SDGsをテーマに、留学生たちのコメントを集め、デジタルサイネージにしました。
国際教養大学図書館は、国連ユースボランティア(UN Youth Volunteer)に参加した学生たちが特設展示で大型ディスプレイを据え付けたり、パソコンのディスプレイ画面の壁紙にSDGsのロゴを採用したりするのを手伝いました。そのあと、学生たちの座談会を設けました。
〇デジタルサイネージを活用
日本大学国際関係学部国際機関資料室(写真上)や三田国際学園中学・高等学校(写真下)は、展示物とともにテーブルにタブレットを置いたり、モニタースクリーンを壁に掛けたりして国連広報センターのYouTube動画を繰り返し再生しています。
〇SDGsを電子書籍で紹介
大阪市立中央図書館は、SDGsに関連する選書をインターネット上で読めるようにしています。
〇ソーシャルメディアで発信
神戸大学経済経営研究所図書館、日本大学国際関係学部国際機関資料室、千代田区立日比谷図書文化館などはツイッターなどのソーシャルメディアで国連情報を投稿しています。国連広報センターのつぶやきもリツイートしています。
〇国連広報センター発行の広報資料を活用
中央区日本橋図書館など、それぞれの図書館がそれぞれの形で、国連広報センターの発行するニュースレター“Dateline UN”やその他の広報資料を目立つように配架・配布しています。
〇図書館発行の広報誌でSDGsを紹介
福岡市総合図書館は、九州国連寄託図書館(Kyushu United Nations Depository Library)として、その名前の頭字語を冠したクンドル(KUNDL)ニュースを独自に隔月発行し、そのなかでSDGsや国連に関する図書情報を掲載しています。
千代田区立日比谷図書文化館は月刊広報誌を発行しています。そのなかに、「SDGs x 〇〇」 と題したコラム(不定期)を設けました。たとえば、SDGs xつながり、SDGs x出会う、SDGs x語り継ぐなどのテーマで連想されるおススメ本などを紹介しています。
〇SDGsの栞(しおり)を無料配布
SDGsのデザインを施して手作りした栞(しおり)を無料で配るなどしている事例も共有されました。この栞は、国立女性教育会館のアイデアを採用しています。今回、同会館の許諾を得て、ご紹介させていただきます。同会館のウェブページにはその作り方も掲載してあります。
〇館内でSDGsのロゴが目立つように装飾
多くの図書館がSDGsのロゴやアイコンを館内で目立つように工夫しています。
日本大学国際関係学部国際機関資料室は、図書館の壁や窓、パソコンの画面など、様々な場所にSDGsのゴールのアイコンを貼っています。
京都外国語大学図書館は、館内受付にSDGsのパネルを目立つように貼っています。同図書館は2019年4月から、あらたに国連寄託図書館としてのサービスを開始しています。
〇SDGsバッジを身に着けて
広島市立中央図書館は、司書の方々がSDGsバッジを身につけて、SDGsへのコミットメントの姿勢を示し、普及促進しています。
〇パートナーと協力
多くの図書館はイベントや図書展示を企画するうえで、さまざまなパートナーと協力しています。
大阪市立中央図書館は昨年、「こどもをとりまく世界」展を開催し、子どもの虐待、貧困、人権など、SDGsのゴール4に関する図書を展示しましたが、その際、大阪市こども青少年局と連携しました。
関西大学図書館は昨年、地元の吹田市で活動するアジェンダ21すいた(市民・企業・行政の三者協働組織)が行う地球温暖化防止に向けた取組「すいたクールアースウイーク」とコラボレーションしたブースを館内に設置しました。
〇図書館も持続可能な未来のために行動
図書館もSDGsや気候行動への貢献を行っていることをご紹介したいと思います。
西南学院大学図書館は、屋上にソーラーパネルを設置して館内の一部電力を賄ったり、ソーラー発電モニタリング画面を館内に設置したり、トイレ洗浄水に市の再生水を利用しています。
福岡市総合図書館は、電力消費量の削減のため館内の照明をLEDに交換し、空調設備の温度設定に気をつけています。また、職員の間の約束事として、洗面所でハンドドライヤーは使わない、ゴミの分別は徹底する、忘年会や歓送迎会の宴会を行うときははじめの30分間をおいしくモリモリ食べる時間、終わりの10分を間食タイムとして食べ残しをしないようにしています。
那須塩原市黒磯図書館は、古本市を開催する際に来館者にマイバッグを持参してもらうように呼びかけています。 実践女子学園中学校・高等学校図書館は、「裏紙BOX」という箱を設置して、図書館で廃棄する紙で裏が白いものをメモ用紙として中高生たちに提供し、計算や漢字練習、単語の暗記などに利用されています。
また、千葉市男女共同参画センター情報資料センターは、誰ひとり取り残さないという観点から、建物内をオールバリアフリーにして書架を車椅子で手が届く高さにしたり、書架と書架の間も車椅子での方向転換が容易な広さにしたり、車いす優先席を設けたりして、障害をもつ人に配慮したサービスを心がけています。
こうして、SDGsを合言葉にしてつながる図書館は持続可能な社会づくりに直接に寄与するための管理運営や自主的な取り組みも積極的に行っているのです。
〇そして、お互いに学びあう研修に
さて、お気づきになったでしょうか。
勝手ながら、図書館のさまざまな取り組みを17に分類してご紹介してきました。
そして、17番目にご紹介するものが、国連広報センターが実施する研修会参加ということになります。
研修会については、次回のブログで、くわしくご案内いたします。