“世界の学生がSDGsに関して自分事として捉えるようになればと願っています”——国連広報センター根本所長の言葉です。
今年の国連デー(10月24日)に、国連広報センターと上智大学が主催する「撮ってみよう!身近で見つけた日本のSDGs」学生フォトコンテストの授賞式が行われました。
授賞式後に、私たち国連広報センターのインターン5名(王郁涵、倉島美保、河野賢太、Jeremy Luna、大上実)が受賞者12名にインタビューを行い、写真に込めたメッセージや選んだSDGsに対する思いなどを聞き取りました。第3回となるインタビューでは、優秀賞を受賞した千葉優一(ちば ゆういち)さん、入賞の武藤 有紀(むとう ゆき)さん、黒谷ケイト(くろたに けいと)さん、吉田真依(よしだ まい)さんの4名を紹介します。
SDGs学生フォトコンテスト2018 本シリーズ
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優秀賞「連鎖する海岸」 千葉 優一(Yuichi Chiba)
東京大学農学生命科学研究科修士2年
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千葉さん 栄誉ある優秀賞を受賞でき、光栄に思います。SDGsフォトコンテストに応募したきっかけは、大学院にあります。私は大学院で農学国際(地球規模で深刻化する食料や環境等の国際問題を農学の視点から総合的に考える専攻)を専攻しているため、SDGsやSDGsフォトコンテストを知る機会に恵まれています。フォトコンテストは単純に「面白そうだな」と思い応募しました。
ある日の早朝、趣味がサーフィンの母親と海に行きました。そこでは、様々なモノが海岸に漂流していました。漂流物の中にエイが上がっており、周囲にはカラスが群がっていました。その悲惨な光景に驚いたと同時に、環境問題は海の多様性だけでなく陸上の生物にも影響を与えていることに気づきました。
撮影で苦労したことは2点あります。1点目は、受け手にインパクトを与えられるような構図になるよう、アングルを調整したことです。2点目は色の調整です。朝にこの写真を撮ったのですが、朝のフレッシュさ・爽涼感を伝えられるように、色味の調整に気を配りました。
私の作品は海と大地の調和について焦点を当てていますが、また同時に、自然と開発の調和の必要性も示唆しています。私見ではありますが、私は自然を「ハード」、人間社会を「ソフト」と捉えています。人間はどちらの両極にも寄ってはならず、すなはち「自然(ハード)」と「人間社会(ソフト)」の間に立つ必要があるのかもしれません。私の作品を見た人に環境について改めて考えられるような機会を提供することができて嬉しく思います。
私は14番(海の豊かさを守ろう)や15番(陸の豊かさも守ろう)のほかに、5番(ジェンダー平等を実現しよう)のSDGsゴールに関心を寄せています。ジェンダーに関心を持ったきっかけはいくつかありますが、学部時代に所属していた国際基督教大学がLGBT教育に力を注いでいたことが大きかったと思います。このことに端を発して、「女は家で育児、男は外で仕事」といった考え方に疑問を抱くようになり、全ての人が多様な生き方を送っても良いのではないかと考えています。
入賞「過去と現在と未来と」 武藤 有紀 (Yuki Muto)
上智大学総合グローバル学部1年
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武藤さん 作品の場所は、日本橋です。家族と遊びに行ったときに写真を撮りました。あまり日本橋を訪れる機会はありませんでしたが、高層ビル・神社・訪日外国人との調和が美しく、思わずスマホのシャッターを切りました。写真を撮るとき、自分の目線と同じ高さでシャッターを切ることが一般的な方法ですが、この写真はあえて下から撮ることで目線を変え、いつもとは違う視点から見えるように撮ってみました。SDGsは日々の生活における多くの場面と繋がりを持っています。少し違った角度から日常の生活を見るだけでも、新しいものが沢山見えてきます。私たちが「今」を見直し、未来を創造する1つのツールになりうるのではないかと考えています。
私が関心を寄せているSDGsのゴールは4番(質の高い教育をみんなに)です。日本は豊かな国で教育の水準が高い一方、言語の問題があります。海外から日本へ移住した人々に対して、日本人と同様の教育を提供できているかという点について疑問を持っており、このゴールに関心を持ち続けています。
入賞「THE METRO ꞱƆⱯɹꞱSq∀ (都市の抽象画)」 黒谷ケイト( FORTALEZA KATE ANGELU)
[フィリピン] 東京都立国際高等学校2年
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黒谷さん 作品にある景色は明治神宮前の東急プラザ表参道・原宿の建物です。建物のデザインや構成に感動し、シャッターを切りました。原宿や表参道は本当に多くの人が歩いており、人混みの中で撮影するのに苦労しました。しかし、街を行き交う人、働いている人、ビルなどが建物に反射され、忙しい東京や充実した都市生活を写し出すことができて良かったです。来日した時、空が隠れてしまうほど超高層ビルが立ち並ぶ東京を見て、私が育った街とは全く異なっていることに気が付きました。私の作品を見る世界中の学生に、SDGsの大切さを知ってもらい、より持続可能な都市の実現に向けて一緒に取り組んでいけることを願っています。
SDGsを知ったきっかけは、群馬県で環境を学ぶイベントです。そのイベントでSDGsが紹介されていました。また、学校ではSDGsの勉強会が開催されることもあるので、SDGsを学ぶ機会は多いです。私はSDGsのゴール3番(すべての人に健康と福祉を)に関心があります。特に日本の医療制度に感動しており、医療費が3割で済む日本は素晴らしい国だなと思っています。また、私の作品にはゴール8番(働きがいも経済成長も)が含まれています。今後、労働環境や雇用問題への改善が更に求められる社会になっていくと思います。私がメッセージとして伝えたいことは、SDGsは具体的・特定的なものではなく、抽象的なものも多く含まれているのではないかということです。
入賞「どちらを選びますか」 吉田 真依 (Mai Yoshida)
岡山県立瀬戸高等学校2年
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吉田さん 雲一つないすっきりとした日に、再生可能エネルギーとそれを見つめる人の写真を撮りました。地球に優しいエネルギーの生産を謳いながら、山を削ることが果たして地球にとって良いことなのでしょうか。地球に優しいエネルギーの生産と環境保全の両方を実現できるために今後何ができるのかを考える機会になれば嬉しく思います。
私の住む岡山市は「SDGs未来都市」に選ばれており、所属する高校がSDGsの教育に力を入れて取り組んでいます。先生方から、「SDGsは『包括的』なものであり、様々な知識や技術を持った人が結集して、身近な問題を解決していく」ということを教わりました。私が関心を寄せているSDGsのゴールは、14番(海の豊かさを守ろう)です。海と私たちのつながりはとても強いと感じています。
以上、受賞者4名からのメッセージでした。
「今回は日本国内で撮った写真のみを対象としたにもかかわらず、これほど高いレベルの作品が数多く集ったことには驚きを隠せません。作品には、SDGs達成に向けた熱意が凝縮され、その意気込みに心を打たれました」と、審査委員長のレスリー・キー氏も評しています。
SDGsフォトコンテストを通して私たちインターンは、SDGsに対して熱い情熱を持った学生が多くいることに感銘を受け、フォトコンテスト運営に携われたことにやりがいを感じました。また、SDGsの認知度が向上し、地球規模の問題解決に向けてより多くの人たちが行動していける未来を期待しています。
2018年度SDGs学生フォトコンテスト概要
審査員
・ レスリー・キー (写真家 審査委員長)
・ 大野 明 (朝日新聞東京本社 映像報道部長)
・ 水島 宏明 (上智大学 文学部新聞学科教授)
・ 根本 かおる (国連広報センター所長)
特別協力
ゲッティイメージズジャパン、株式会社ニコン、株式会社ニコンイメージングジャパン
後援
外務省、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、独立行政法人 国際協力機構(JICA)、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク
協力
株式会社シグマ、吉本興業株式会社
メディアパートナー