国連広報センターの根本かおるです。8月22・23日にニューヨークの国連本部で開催された「第67回 国連広報局/NGO会議」の場で、吉本興業・電通・SDGs市民社会ネットワークの方々と一緒に、日本で様々な分野のアクターが連携してSDGsの発信に協働で取り組んでいる事例について発表する機会がありました。世界から集まった聴衆から多くの反響があり、自分たちが日本で行っていることが世界でも通用するということに手ごたえを感じた次第です。
あまたある国連の会議の中でも、この国連広報局/NGO会議は市民社会の代表や若者らが主役で、参加者のみならず、会議の企画・運営やスピーカーも非政府の人々が中心に担っています。
それだけに会議の雰囲気も柔らかく、好感が持てました。朝のウォーミングアップとしてヒップホップのセッションもあったほどです!
最初の発表は会議2日目の午前の全体会合。定員700名程度の部屋は満席、かつ会議の模様がストリーミング中継され、アーカイブにも残るという場でした。
登壇者左から国連広報局アウトリーチ部 ジェフリー・ブレース課長、吉本興業 羽根田みやび執行役員、電通 國枝礼子ディレクター、国連広報センター 根本かおる所長
電通は吉本とのパートナーシップに加えて、社としてこの春実施したSDGsに関する生活者意識調査をもとに、現況と今後の課題と可能性を浮き彫りにするとともに、職員や役員、社を越えてクライアントに対して行っているSDGs研修・ワークショップについて紹介しました。会場に大きなインパクトを残し、終了後も多くの方々が感想を伝えたり、コンタクト先の交換などのために私たちに駆け寄ってくれました。
そして2日目午後には、吉本興業・電通にSDGsに取り組むNGO・NPOの中間支援組織である「SDGs市民社会ネットワーク」の黒田かをり代表理事を加え、エンターテインメント企業・広告会社・市民社会によるワークショップを私の司会進行で行いました。
全体会合では10分でしか紹介できなかった内容をさらに深く掘り下げ、吉本のSDGsに関する地方自治体との連携や「アジアに住みます芸人プロジェクト」を通じたアジア展開、カンヌ広告賞での「SDG Lions」部門新設など最近の広告業界の動向などに言及。
さらに、「誰一人取り残さない」というSDGsの大原則を重視して活動を行うNGO・NPOが発信や人々の巻き込みの面で感じている課題をメディアや広告企業との連携でいかに克服しているか、また、広告ガイドラインの策定の過程で市民社会の立場から緊張感を持ってどのような注意喚起を行ってきたかなどについて、最近の事例を交えて発表を行いました。(会場での発表資料(プレゼンテーション)はこちら)
このワークショップでは、日本国内でSDGs実施に奔走する市民社会や地域のリーダーたちを取り上げたフジテレビの番組シリーズ『フューチャーランナーズ~17の未来~』の英語版も上映され、大きな拍手が巻き起こり、国境を越えて共感を喚起することのできる映像の力をあらためて感じた次第です。スクリーンを観ながらうなずく参加者の姿が印象的でした。
吉本興業・電通・SDGs市民社会ネットワークの方々はいずれも、今回の会議での発表についてそれぞれに手ごたえを感じていらっしゃいました。吉本興業の羽根田さんは「私たちの抱える芸人たちの取り組みが世界にも受けた、評価していただけたことはとても嬉しい」、電通の國枝さんは「国連で民間企業がこのように発表できること自体が驚きだったし、自分たちの取り組みを世界と共有できた意義は大きい」、SDGs市民社会ネットワークの黒田さんは「日本の市民社会として国連の会議のサイドイベントを企画しても、今回のように国連本部の中の大きな会議室で多くの方々を対象に話せることはまずない。国連広報局/NGO会議の存在を日本の市民社会に広く伝えたい」と語っています。
実を言うとこの私にとっても、ニューヨークの国連本部の会議で発表するのは初めてのことで、パートナー団体の方々をお連れしていることもあって、緊張の伴うものでもありましたが、結果として大きな成果につながる会議出席となり、努力した甲斐を感じると同時にほっとしています。会議全体の内容も、国連憲章の前文の最初にある「われら人民」にふさわしく、市民一人ひとりの力に訴えかける、大変力強い内容でした。2019年の第68回国連広報局/NGO会議はアメリカ・ユタ州の州都ソルトレイクシティーでの開催になります。いつか日本開催が実現できれば、と小さな野望を抱きました。