国連広報センターの根本です。
国連広報局を束ねるアリソン・スメイル事務次長が11月12日から16日の日程で日本を訪問しました。世界およそ60ヶ所にある国連広報センターをはじめ、国連広報局全体を統括するトップの事務次長の訪日は2014年以来4年ぶりのことです。
私たちは日頃多くの国連の高官の訪日を受け入れていますが、今回は直接のトップの訪日です。就任から1年あまりのスメイル事務次長にこの機会に会ってもらいたい日本の関係者も多く、分刻みのスケジュールでしたが、日本との関係を確かなものにする手応えのある訪日となりました。
訪日の最初のプロブラムとして、11月12・13日、スメイル事務次長の呼びかけで UN Communications Group (UNCG) Principal-Level Meeting が東京の国連大学本部で開催されました。
これは毎年秋に国連諸機関の広報部門のトップが集まって国連システム全体に関わる課題の広報戦略について話し合う場で、今回は2019年に4年ぶりに⾸脳レベルで点検が⾏われるSDGsや、急速なスピードで進む気候変動、そして2019年1月1日から新たなセットアップでの実施が始まる国連開発システムのもとでいかに一体感と独自性とを両立させながら広報発信するかが中⼼となりました。
会議では2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会(Tokyo 2020)のサステナビリティープランや、日本の学校現場でのSDGsの取り組みなど、日本ならではの事例について関係者から紹介してもらう機会もあり、世界中から集まった国連システムの広報責任者たちは日本でのSDGsの浸透に目を見張っていました。
UNCG会合後の14日から16日には、「SDGメディア・コンパクト」の創設メンバーである日本テレビ、朝日新聞、日刊工業新聞のトップと懇談しました。
インタビューも受けましたが、これらメディア各社との対話は、やはりジャーナリスト出身だけあってスメイル事務次長にスイッチが入り、大変活発な意見交換となりました。
また、2019年から2020年にかけてIPCC第49回総会、G20サミット、TICAD VII、コングレス、東京オリンピック・パラリンピック大会と世界の注目が集まる国際的な行事が相次いで日本で開催されるのを控え、スメイル事務次長は山田賢司外務大臣政務官を表敬し、地球規模の課題について国連として日本と連携して発信に努めたいとの意向を伝えました。
YouTuberとしてまるで伝道師のようにSDGsについて広めてくれているハロー・キティーとも、とても楽しいやり取りができました。
さらに、14日には国連とTokyo 2020 とのSDGsの推進協力について基本合意書をTokyo 2020の武藤敏郎事務総長と署名しました。
スメイル事務次長は「今回の基本合意書は、国連が東京2020と連携し、アスリートたちが残す記録だけでなく、大会をいかにして革新的な責任ある方法で運営するかという点についても光を当てることを可能にするものであり、私はこれに署名できることを誇りに思っています」と語るとともに、使わなくなったスマホを大会のメダル・プロジェクトに寄贈。
そして、「やめよう、プラスチック汚染」との願いを込めて、SDGsのロゴ入りのマイ・ボトルを武藤事務総長にプレゼントしました。
スメイル事務次長たっての希望で実現したのが、広島訪問でした。
国連のニューヨーク・ジュネーブ・ウィーン本部の見学コースには核軍縮を含む軍縮展示コーナーがあり、世界から集まるツアー参加者に説明を行う国連のガイドたちについて、広島市が昨年から広島の実地で研修を行っています。スメイル事務次長は松井広島市長、田辺広島県副知事らを表敬して直接謝意を伝えました。
さらに、平和資料館、追悼平和祈念館を訪問して被爆の実相に触れ、原爆慰霊碑で献花を行うとともに、被爆者の小倉桂子さんから英語で直接体験についてうかがう機会を得ることができました。
日帰りの強行軍での広島訪問でしたが、歴史学を専攻し、長くドイツでの取材に携わったスメイル事務次長にとって、忘れえない体験となりました。
国連広報センターのチームと意見交換し、チームを激励してもらうと同時に、過密スケジュールの間隙を突いて浅草や明治神宮に案内し、東京のトラディショナルな側面にも触れてもらうことができました。