国連広報センター所長の根本かおるです。
ウクライナやガザでの戦争で分断の深まる世界を一つにまとめるものがあるとすれば、それは私たち全員がますます暑さを感じているということでしょう。2023年7月に「地球温暖化の時代は終わり、私たちは地球沸騰化の時代に突入した」とアントニオ・グテーレス国連事務総長が評してから1年あまり、地球の平均気温は月ごとの最高気温を更新し続け、世界中の誰にとっても危険になっています。
国連本部での #世界気象機関 @WMO の最新の報告書の発表(7月27日)に際し、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した。」と記者団に語り、劇的かつ早急な気候アクションの必要性を訴えました。 pic.twitter.com/9VRMNr69Rp
— 国連広報センター (@UNIC_Tokyo) 2023年7月31日
今年、灼熱の気候で、ハッジ巡礼で1,300人もが命を落としました。熱波によって、年間約50万人が死亡していると推定されており、これは熱帯性低気圧による死者の約30倍にも相当します。そしてアジアとアフリカ全域で学校が閉鎖され、8,000万人以上の子どもたちに影響を与えました。国際労働機関(ILO)は、世界の労働者の70%以上、つまり24億人が現在、猛暑の危険にさらされていると警告しています。
過度の暑さは世界中で約 2,300 万件の職場での負傷の原因となっています。そして、毎日の気温が34°Cを超えると、労働生産性は50%も低下します。気候危機によって、より激しいハリケーン、洪水、干ばつ、山火事、海面上昇がより頻繁に引き起こされ、「○○年に一度の~」と評される気象現象に遭遇することも珍しくなくなりました。グテーレス事務総長が今年7月に世界的な高温について緊急対策を呼びかける記者会見で表現したように、これはまさに「新たなアブノーマル(非常態)」です。
朗報は、私たちには気候危機に歯止めをかけるソリューションがあるということです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の科学者たちは、生活者・消費者の選択や暮らし方を変えることで、温室効果ガスの排出量を2050年までに4割から7割削減することができると指摘しています。気候変動への危機意識はあるものの何をしたらいいのかわからないという人々が多い中、排出削減効果の大きな行動を示しつつ世の中に浸透させていくことが求められています。
例えば、日本ではもともと豆腐などの植物性たんぱく質を多く摂る食文化がありますが、それをさらに進めて、大豆ミートや植物由来のアイスクリームなどを日頃の食生活の選択肢に入れることもあるでしょう。日本を代表するビジネス街である大手町・丸の内・有楽町エリアの街おこしの取組である「大丸有SDGs ACT5」が主催したイベントで植物性のアイスクリームにトライする機会がありましたが、まろやかさが引き立ち、通常のアイスクリームとかわらないおいしさでした。イベントに集まった参加者の方々から質問やコメントが積極的に寄せられ、食を通じて気候変動対策を考える機会の強みを実感しました。
また、夏は暑く、冬は寒くてヒートショックを起こしかねない日本の住宅において、クオリティー・オブ・ライフを高めながら暑さ・寒さに対応して快適に暮らせる「断熱」は、エネルギー消費を抑えることで温室効果ガスの排出量の削減につながります。個人・地域レベルでの効果的な気候アクションとしても注目されています。学校の断熱化に関するメディア向け勉強会の開催で連携した気候政策シンクタンク「クライメート・インテグレート」では、地域と学校を巻き込んで行った「断熱ワークショップ」に関連する資料や動画を公開すると同時に、住宅・建築物における気候変動対策について自治体での先行事例と利用可能な補助金・支援制度をまとめて公表しています。
さらにより多くの方々に気候危機に歯止めをかけるアクションを知ってもらい、行動してもらおうという狙いから、国連広報センターでは、SDGメディア・コンパクトに加盟する日本メディア有志とともに、2022年から「1.5℃の約束 ― いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」キャンペーンを展開してきましたが、3年目の今年は、気候危機に意識が向かう猛暑の時期をとらえて、「何もしないともっと暑くなる」SNSムーブメントを立ち上げました。
8月1日から9月30日までの2カ月間、国連広報センターとこれらのメディア・団体は、#1.5℃の約束 #何もしないともっと暑くなる #10の行動 の3つのハッシュタグをつけて、それぞれのSNSアカウントから「野菜をもっと多く食べる」「環境に配慮した製品を選ぶ」「声を上げる」といった気候行動を紹介していきます。そして、個人に対してもこれらのハッシュタグを使って、「個人でできる10の行動」のうち、すでにとっている行動やこの機会に始めた行動をシェアすることを呼びかけます。そうして、行動を実践していることを共有し合う好循環を生み出すことを目指します。特に「声を上げる」は、個人の選択と行動を社会変革の力につなげるものとして重要です。
青森の @atv6ch_PR、#何もしないともっと暑くなる SNSムーブメントで、ステキなビデオを制作👇
— Kaoru Nemoto (@KaoruNemoto) 2024年8月8日
先日夏休みで行った青森県八戸で、イカ🦑があまりとれなくなったと聞きました。気候変動は地域の産業に影響
だから私は、自然の恵みである食べ物を残さず使い切り、食べ切ります#10の行動 #1.5°Cの約束 https://t.co/KjIM6gQPDA
#何もしないともっと暑くなる#個人でできる10の行動#action5#廃棄食品を減らす
— 井田寛子 (@KankoHiroko) 2024年8月6日
食品ロス問題に詳しいジャーナリトの井出留美さんによると、食品ロスの半分は家庭ゴミ。生ごみは80%が水分=燃やしにくいゴミ=多くのCO2を出す。井出さんのアドバイスで生ごみを乾かして捨てることに。数字が見えて快感 pic.twitter.com/PxuWgbNkk8
気象キャスターネットワーク理事長の井田寛子さんも、自身のアクションについての投稿
気候危機の流れの中で、ただ手をこまねいているだけでいるのか、それともソリューションの担い手として積極的に行動していくのかで、見えてくる景色もきっと違うはず、と思っています。