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SDGs実施のハーフタイム:後半戦での反転攻勢を目指して

SDGsのこれからを決する国連総会ハイレベルウィークの開幕を前に、9月16日、ニューヨークの夜空がドローン・アートで彩られた。国連本部のXアカウントより

国連広報センター所長の根本かおるです。

今年は、持続可能な開発目標(SDGs)にとって、2016年から2030年までの15年間にわたる実施の中間点という重要な節目です。9月18日からの国連総会ハイレベルウィークでは、4年に一度のSDGサミットが開催されます。いまSDGsの進捗は、窮地に立たされています。

 

前回のSDGサミットが開催された2019年の時点で、SDGsの進捗は2030年までの達成の軌道から大きく外れていたのですが、その翌年に新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が始まり、さらに気候変動が加速度的に進んで「地球沸騰化」の時代に突入し、大きな気候災害が世界中でドミノのように発生しています。さらには2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の始まりに端を発するウクライナ戦争とそれに伴う食料危機や物価の高騰によるダメ押しがありました。はっきり言って、「赤信号」がともっているのです。

7月に国連が発表した「SDGs報告2023・特別版」のグラフを示しながら、いかにピンチにあるのかについてお話したところ、シンポジウムに関わっているメディア企業の方から、「今日の話を聞くまで、ここまで窮地にあるとは知らなかった」とのコメントをいただきました。

SDGs17のゴールの最新の進捗を示すグラフ 緑色が順調に推移している部分

 

SDGsのターゲット全体の中からデータに裏打ちされた140ターゲットについて分析したところ、順調に進捗しているのは15パーセントにとどまり、48パーセントは進捗が不十分、そして37パーセントは停滞あるいは後退しているのです。17つの目標のうち6つについては、順調に進んでいるものは一つもありません。しかしながら、SDGsの認知度が90パーセントを超え、関心も高い日本において、「SDGsが窮地にある」ということがあまり知られていないのでは、と感じています。

2018年9月にローンチされた国連とメディアとの連携の枠組み「SDGメディア・コンパクト」は、加盟メディアの数は400を超え、そのうち200を超えるメンバーは日本のメディアです。これらSDGsに熱心なメディアが、日本でのSDGsの認知度向上に大きく貢献したと感じていますが、後半戦に向けたSDGサミットの機会に、SDGsを取り巻く厳しい現状についてより積極的に取り上げるとともに、2030年までの実施の後半戦における変革の動きを太い運河のような流れにすべく、提案型・課題解決型の発信を強めていただきたいと願っています。

先日更新したブログ記事「『地球沸騰化』時代の気候アクション」でも多くの意識調査の結果を取り上げましたが、危機感を持ってもらうことは大切ではある一方で、終末論的な発信ばかりにさらされると、人は感覚がマヒし、ニュースに心を閉ざしてしまいがちです。同時に、ニュースを避けがちな人々が、明るいニュース、解決策を伝えるニュース、複雑な出来事を理解するのに役立つ解説などを求めていることも浮かび上がっています。

 

 

人類の存亡を左右する脅威であり、ほぼすべてのSDGsのゴールを台無しにしてしまう影響をもたらす気候変動についても、今年3月に公表された「気候変動に関する政府間パネルIPCC)」第6次評価報告の統合報告書は、「私たちがこの10年に行う選択と行動が数千年にわたり影響を与える」と指摘し、私たちが地球をつないでいけるかどうかの分岐点にあることを示しています。そのような重要な分岐点にあって、人々の諦めや無関心が勝ってしまうような事態は何としても避けなければなりません。

 

 

そのような中、国連総会ハイレベルウィークに合わせてニューヨークの国連本部で開催されるライブ配信イベント「SDGメディア・ゾーン」(9月18日―22日)に、ナタリー・ポートマン氏やテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」にも出演していたニコライ・コスター=ワルドー国連開発計画(UNDP)親善大使をはじめとする著名人、国連機関の長、グローバル企業や研究機関、市民社会団体の役員等が登壇します。登壇者には、日本の研究者やメディア関係者、国連の邦人幹部職員も含まれ、窮地にあるSDGsの救済策や地球沸騰化時代の気候アクションなどをテーマに、議論を展開します。

 

 

SDGsの実施期間の中間点にある今年は、試合に例えればまさにハーフタイム。この重要な節目に、日本からの登壇者らは日本と世界の人々にSDGsの達成や気候危機への対応に有効なアイディアや視点を提供しながら、白熱する議論や成果を受けて緊急報告を行います。

SDGサミット(9月18日-19日)の初日には、4年ぶりとなるグローバル・サステナブル・デベロップメント・レポート2023(Global Sustainable Development Report 2023)の執筆に関わった世界15人の独立科学者の一人である、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授から、SDGs達成に向けた変革において科学の果たす役割を中心に、私がお話を伺います。さらに、SDGメディア・ゾーンを舞台に、「1.5℃の約束」気候アクションキャンペーンに関して、日本のメディア関係者からの発表も行われる予定です。

 

国連本部のSDGメディア・ゾーンには日本からの登壇者も複数出演

 

「SDGメディア・ゾーン」のプログラムは、日本関係者のセッションも含め、国連本部のウェブサイトに順次公開されていきます。すべてのセッションが国連のオンライン・プラットフォーム「UN WebTV」から世界にライブ配信され、同プラットフォームにアーカイブされます。国連広報センターは日本からの登壇者が参加するセッションについてSNSで情報を発信する予定ですので、どうぞご注目ください。

2023年の国連総会ハイレベルウィーク中には、世界の首脳が集結する一般討論(9月19-23日および26日)に加え、SDGサミット(9月18日-19日)、開発のための資金調達に関するハイレベル対話(9月20日)、気候野心サミット(9月20日)、パンデミック予防・備え・対応(PPR)に関するハイレベル会合(9月20日)、「未来サミット」のための閣僚級準備会合(9月21日)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するハイレベル会合(9月21日)、結核との闘いに関するハイレベル会合(9月22日)といった重要な会合が開かれます。

国連総会ハイレベル・ウィークを前に9月13日に記者会見したアントニオ・グテーレス国連事務総長は、ハイレベル・ウィークでの最優先課題について質問され、次のように答えています。

SDGsの実施を突破する上で、国際社会のキャパシティーが飛躍的に前進するよう、確かなものにすることこそが、私たちにとって最も重要な目的です」

 

 

飛躍的に大きな進展につながる成果を見守っていただきますよう、どうぞよろしくお願いします!