国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

【第7回アフリカ開発会議(TICAD7) 】国連事務総長訪日とTICADを振り返る

 

日本政府、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)が共同で開催する第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に出席するため、アントニオ・グテーレス事務総長が2019年8月27日から30日まで訪日しました。

横浜市で開催されたTICAD7のテーマは「人材、技術そしてイノベーションによるアフリカ開発の促進」。グテーレス事務総長は世界中から集まったリーダーやイノベーターとともに、アフリカの平和と安全、持続可能な開発に関わる様々な議論に参加しました。

TICAD7開会にあたり「私はアフリカを、チャンスにあふれた活力ある大陸として捉えています。そこでは 希望という風がかつてなく強まっています」と述べた事務総長の訪日を振り返ります。

 

日本の重要性を強調

 

TICAD7開会に先立ち、事務総長は日本の安倍晋三総理大臣と会談しました。その中で事務総長は9月の気候行動サミット開催に向けて、アフリカが持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上で、日本のTICAD7開催への深い感謝を表明するとともに、日本の役割の重要性についても述べました。

f:id:UNIC_Tokyo:20191021142338p:plain

安倍晋三総理大臣とアントニオ・グテーレス事務総長 ©UN Photo/Ichiro Mae

 

気候変動問題を強調

 

事務総長は会議2日目の8月29日に「気候変動・防災」をテーマとした会合に出席し、「常にそうですが、気候変動の影響で最初に、最も大きな打撃を被るのは貧困・弱者層です。気候変動の原因に取り組むだけでなく、その影響に対処する際に誰一人取り残してはならない理由も、そこにあります。」と語りました。さらに「災害ほど開発を損なうものはありません。数十年かけて達成された持続可能な開発に向けた前進が、一瞬にして水泡に帰してしまいかねないからです。」と警鐘を鳴らしました(セッションでの発言の全文はこちら)。

f:id:UNIC_Tokyo:20191018174444j:plain

テーマ別会合「気候変動・防災」で挨拶するアントニオ・グテーレス事務総長 ©UN Photo/Ichiro Mae

また、事務総長はメディア取材を通して、広く日本と世界の人々に向けても気候変動対策の必要性を訴えました。

テーマ別会合「気候変動・防災」終了後には、ぶらさがり取材で事務総長は「アフリカにとって、気候変動は将来のありうる見通しなどではなく、今まさに起きている危機だということです。私自身、モザンビークを訪問し、サイクロン・イダイによる大きな被害を目撃しました。サヘル地方を訪問した際は、干ばつの広がりと、それに伴う人々の生計手段の消滅、移動を強いられる人々、そして、気候変動が紛争やテロの蔓延を一気に加速させているという事実を目の当たりにしました。」と述べ、アフリカ開発においても気候変動問題の深刻さを重ねて強調しました(発言の全文はこちら)。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20191018174838j:plain

記者からの囲み取材に答えるアントニオ・グテーレス事務総長 ©UN Photo/Ichiro Mae

 

さらにNHKによるインタビューにも答え、気候変動の影響が自然災害や強制移住などの人道的問題を悪化させていると強い危機感を表しました。また、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんら若者の活動に触れ、気候変動問題に取り組む上での若者の重要性を強調しました

         NHKによる単独インタビューに応じるアントニオ・グテーレス事務総長

 

アフリカの開発と将来を会談

 

今回の訪日中に、事務総長は、アフリカ各国首脳などとの会談に臨みました。

f:id:UNIC_Tokyo:20191021144635j:plain

ニジェールのマハマドゥ・イスフ大統領(左上)、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領(左中段)、ブルキナファソのロック・マルク・クリスチャン・カボレ大統領(左下)、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領(右上)、モーリシャスのプラビンド・ジュグノート首相(右中段)、アルジェリアのヌールディン・ベドウィ首相(右下)、とそれぞれ会談するアントニオ・グテーレス事務総長 © UNIC/Ichiro Mae

 

そのほか、国連諸機関の長やアフリカの平和と安全や開発に積極的に関わっている著名人など、訪日中に大勢の人たちとも意見交換を行いました。

f:id:UNIC_Tokyo:20191021154419j:plain

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使のアーティストMIYAVIさん(左上)、JICAの北岡伸一理事長(左下)、TICAD出席者(右上)、国連関係者(右下)とそれぞれ談笑・会談するアントニオ・グテーレス事務総長 ©UNIC/Ichiro Mae

 

様々な角度から見たTICAD

 

国連広報センターのインターンたちは27日から開催されていた様々なサイドイベントやブースも回りました。医療と保健衛生、環境、ジェンダーといった様々な分野で、アフリカの潜在的可能性やアフリカ開発における日本の各個人・団体の取り組みについて、理解を深める機会となりました。参加したサイドイベントについての詳細は広報センターの各種TwitterFacebookInstagramでご覧ください!

f:id:UNIC_Tokyo:20191018175619p:plain

TICAD期間中に開かれた、NPO法人Afrimedico によるサイドイベント「日本発祥の置き薬モデルで、タンザニア農産部のUHC実現をめざす」(上段)と多分野融合型のアプ ローチで鉛汚染問題を解決に導く取り組みを行っている「北海道大学ザンビア大学 KAMPAIプロジェクト」のブース(下段)©UNIC

 

事務総長訪日のTICADを振り返って

 

今回のTICADでは、国連としてアフリカの潜在的な可能性およびその妨げとなっている諸問題について、政府とのハイレベルな会談・会議で議論するとともに、NGOや民間企業、政府関連組織といった様々な組織によるサイドイベントやブースを通して一般の方々にも考えていただく良い機会となりました。安倍晋三総理大臣も、2019年9月に開かれた国連総会における一般討論演説の中で、TICAD7の成果を強調しています。

事務総長はアフリカにおける開発も重要ですが、同時にアフリカ諸国がほとんど助長していないにもかかわらずその影響をまともに受けている気候変動問題にも取り組まなければならないと重ねて訴えました。そして、アフリカにとっても気候変動問題が現実となっている今日、適応とレジリエンスのための投資の増大を呼び掛けました。

アフリカ大陸と日本は地理的には距離がありますが、今回のTICADをきっかけに皆さんもアフリカに対する関心と理解を深めましょう! ⇒TICAD7の詳細はこちら

f:id:UNIC_Tokyo:20191018175714j:plain

TICAD参加国・地域の首脳とアントニオ・グテーレス事務総長(下段左から3番目) ©UNIC/Ichiro Mae