インドネシア・ジャカルタの国連広報センターによる、「三角パートナーシップ・プログラム(TPP)」
「自信に満ちている」、それこそが、ジャカルタに近い故郷から1万キロ以上も離れた中央アフリカ共和国で、重機を巧みに操作するライアン・ハーディカ士長を表現するのに、最もふさわしい言葉でしょう。その自信を支えている原動力とは何でしょうか。それは、昨年日本の自衛官による訓練を通じて得られた、知識と専門技能なのです。
ハーディカ氏は、国連平和維持軍の誇り高き一員であり、国連中央アフリカ多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)に派遣されたインドネシア軍部隊に加わっています。派遣に先立ち、ハーディカ氏ら19名は昨年、補給路やキャンプ地を含めたインフラ建設、修繕の手助けや、派遣地域で想定される自然災害後の国の復興活動の支援を目的とした、国連による「三角パートナーシップ・プログラム(TPP)」の訓練を完了しました。
「重機をうまく操作できるようになることは、このコースのほんの一部に過ぎません。重機の整備をより厳格に行うこと、作業や安全管理の手順により注意を払うことなど、他にも多くの知識を得ることができました」と氏は話しています。
昨年実施されたコースの成功を受けて、日本の陸上自衛隊(JGSDF)は先月、インドネシアのセントゥールにあるインドネシア平和安全保障センターを再訪し、今度は将来の教官や機材指導員の候補たちを指導しました。この訓練には、国際協力の精神の下、カンボジアとモンゴルの兵士たちも参加しました。
重機操作教官養成訓練は、兵士が自国の軍隊で教官を務められるよう準備と装備を整えることを目的としています。3カ月にわたるこのコースは、重機操作技能、教育方法、建設プロジェクト管理の3つの技能を向上できるように設定されています。
「平和維持活動は、多様で流動的な環境下で行われており、それぞれが固有の課題を抱えています」と日本からの訓練部隊を率いる竹本憲介2等陸佐は話しています。「これら3つの技能を習得することで、平和維持要員たちは、パトロール中の重機の操作から地元コミュニティーに重要な技能を教えることや、復興作業の管理に至るまで、さまざまな業務に対処する適応性と多才さを身に付けられるようになります」
インドネシアの東ジャワ州から参加したエンガ・パーマディ大尉は、コースで学んだことを次のように説明しています。「掘削機、積み込み機、地ならし機、ブルドーザーといった機器や重機の操作を学ぶだけでなく、教え方についての知識や経験も得られます。それによって、その知識を多くの国に展開している部隊にも伝えることができるのです」
カンボジアのヴァンナ・ネン中佐は、自国の軍隊で約300人の平和維持要員候補者を育成する予定で、このように話しています。「しかしもちろん、この訓練によって最も恩恵を受けるのは、派遣先の地域に暮らす人々です。それは特に、道路に損傷が多く、移動が困難になっている中央アフリカ共和国の人々です」
世界平和を構築するためには、世界規模の解決策を
インドネシアには、平和維持活動に参加してきた長い歴史があり、世界中のさまざまな国連ミッションに向けた部隊や人員の派遣に積極的に関与してきました。すでにグローバルな平和維持活動において世界第8位の貢献国となっているインドネシアでは、さらなる関与を視野に入れており、インドネシア軍が今回の訓練の開催を申し出たのはそのためだと、インドネシア平和安全保障センターの司令官であるレティオノ少将は述べています。「わが軍の兵士は、この訓練で重機や機械類の操作経験が豊富な人たちから学ぶことができ、その恩恵を受けています。来年もインドネシアでのコースが続くよう期待しています」
現在、インドネシアは、派遣が必要とされる地域に2,700人を超える国連平和維持要員を派遣しています。中でも、中央アフリカ共和国とコンゴ民主共和国(国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO))の2つの地域は重機の運用を必要としています。2022年以降、インドネシアはこれらのミッションに350人を超える平和維持要員を派遣しており、重機操作の専門知識を持つ平和維持要員の増員が引き続き求められています。
国連三角パートナーシップ・プログラムは、平和維持要員の能力を高め、包括的な訓練と能力開発を提供すべく創設されました。このプログラムでは、協働による取り組みを通じて世界平和を達成するという共通のビジョンを持つ参加者が、複数の国から一堂に会します。
「国連の平和維持要員たちが世界の変動や不安定さの高まりに直面している中、世界各国から派遣される、十分に訓練された部隊に対する需要は、依然として高いままです」とアトゥール・カレ国連オペレーション支援担当事務次長は述べています。「この訓練の真の成功は、世界的な平和活動のパフォーマンスを高めることだけでなく、国際協力における強い絆を育むことでもあります。そしてこれらは、世界の調和と永続的な平和を実現する上で有益なのです」