国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

2020年国連デーを振り返る「一緒につくろう、私たちの未来」

国連の誕生日は、国連憲章が発効して国連が正式に創設された10月24日。2020年はその75周年でした。新型コロナウイルス感染症の影響で物理的なイベントを開催できない中、いかにこの国連の75歳の誕生日を日本の皆さんと共有したか、国連広報センターの佐藤桃子広報官が年の瀬に振り返ります。 

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これまでの周年事業が国連の軌跡という過去を振り返ることが多かったのに対し、国連事務総長は2019年末から、国連創設75周年のキャンペーン「UN75」は未来を見つめて将来を思い描くことだと明確に述べてきました。グローバル対話を呼びかけた「UN75」のテーマは「一緒につくろう、私たちの未来」。しかし、このメッセージが2020年にこれほど切実な願いとなるとは、年が明けたときには誰も想像していませんでした。

 

国連広報センターが、キャサリン・ポラード国連事務次長の訪日にあわせて2月に開催したUN75キックオフ・イベントには100名近くの方が参加してくださいましたが、これほどの規模で人が一堂に会したUN75関連イベントを日本で開催したのは、これが最後となりました。その後は、6月に国連広報センターがハフポスト日本版と共催で、元ブルゾンちえみの藤原しおりさんとEXITの兼近大樹さんを招いてオンライン・イベントを開催し、8月には広島と長崎での平和式典にあわせて訪日した中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表を交えて広島県が主催した「UN75 in Hiroshima」など、対話はオンラインの場に移りました。オンライン・イベントは参加している方々の表情や反応がすぐには分かりません。他方でウェブやSNSを通して発信されるイベントには、地理的に離れている方が参加したり、気軽にイベントに立ち寄る方が増えたり、また意見や感想を文字や絵文字で見えたりと、多くの皆さんの反応を手ごたえとして感じることもできました。

 
参加者からの反応として感じられたこととして、人々は自分だけでなく他者や社会のことを気にかけており、社会のために少しでも何かしたいと思っているということがあります。新型コロナウイルス感染症で、会いたい人に会えなくなり、計画がとん挫し、家族や学校や職場の環境が変わる中、それでも社会がこのパンデミックを乗り越えて、その先も良い社会となるように協力することが必要だと考える人がたくさんいることに、私たちも勇気づけられました。それは、UN75アンケートを通して日本から通年で6万を超える方々が声を寄せてくださったことにも表れています。

 

そうして迎えた国連の誕生日である10月24日は、あらためて「一緒につくろう、私たちの未来」を共有する機会となりました。まずアントニオ・グテーレス国連事務総長が世界へビデオ・メッセージを発信し、国連広報センターの根本かおる所長も日英でこの危機をただ乗り越えるのではなく、よりグリーンで包摂的で持続可能な社会を作るための「より良い復興」を遂げようとビデオ・メッセージでで呼びかけました。

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グテーレス国連事務総長が国連デーに寄せたビデオ・メッセージ ©︎ UNIC Tokyo

 

メディアでは、ジャパンタイムズが国連デーを特集し、事務総長のメッセージとデイビッド・マローン国連大学長/国連事務次長の寄稿とともに、世界保健機関(WHO)のユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)親善大使を務める武見敬三参議院議員と根本かおる所長による、国連が直面する課題、マルチラテラリズムの再活性化には何が必要かを議論した対談記事が掲載されました。また、読売新聞に中満国連事務次長が寄稿を寄せ、マルチ(多国間)協力の重要性を改めて訴えるとともに、世界がコロナ禍に直面する今こそ「分断を乗り越え、連帯して復興を成し遂げる」ため、日本がマルチ協力へのリーダーシップを発揮してほしいと期待を寄ました。 

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武見敬三参議院議員 (左)と根本かおる所長(右)はマルチラテラリズムの再活性化に向けて何が必要かを議論した ©︎ YOSHIAKI MIURA


上智大学はこの日、女性として初の国連難民高等弁務官に就任し2019年に逝去された緒方貞子氏のメモリアルシンポジウムをオンラインで開催。パネルディスカッションにはマローン国連大学長や山本忠通元アフガニスタン担当国連事務総長特別代表兼国連アフガニスタン支援ミッション代表に加え、フィリッポ・グランディ現国連難民高等弁務官がスイス・ジュネーヴからオンラインで参加し、緒方氏が重視していた「人間の安全保障」や「現場主義」が今なぜ必要か、あらためて議論しました。グテーレス事務総長中満国連事務次長もビデオ・メッセージを届けました。
 

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国連にゆかりのある様々な登壇者が緒方氏の功績を振り返り、国連の未来について意見を交わした © 上智大学

 

 そして、日が落ちてから、東京スカイツリー®が持続可能な開発目標(SDGs)の17色に点灯されました。国連デーに、SDGs羅針盤にこのパンデミックを乗り越え、SDGs達成の目標年である2030年に向けた取り組みを強化・加速化する重要性を日本の人々と再確認することを目的に、東武タワースカイツリーの協力のもと実現しました。微妙な色の違いを見事に表現し、一色ずつ東京スカイツリーの色が変わっていく様子はただただ美しく、10月28日までの5日間、多くの人の心に灯りをともしました。

SDGsの17色に点灯された東京スカイツリーの様子 ©︎ UNIC Tokyo

 
国連職員にとって国連デーは、喜びに溢れるお祝いというよりも国連が創設された目的に立ち返ってこれからすべきことを見つめなおし、政府・企業・研究機関・非営利組織・市民社会・そしてあらゆる人々とより良い今と未来をつくることを目指し続ける決意を新たにする日です。今年国連がSDGs推進の機運を高めるためにマララ・ユサフザイさんらの協力を得て制作したドキュメンタリー『NATIONS UNITED ともにこの危機に立ち向かう』の予告編を東京スカイツリーの大型ビジョンで観ながら、気候変動や格差、ジェンダー不平等など、よりよい「私たちの未来」の実現を阻むものは山積している、この道のりは長い、と改めて思いました。それでも、日本の多くの皆さんとこの歩みをともにしていることに非常に勇気づけられ、だからこそ、その期待に応えなければならないと強く感じた2020年の国連の誕生日でした。

 

最後に、日本に拠点を置く国連機関が展開したSNSキャンペーンを紹介します。9月に開かれた第75回国連総会の正式な国連75周年記念式典で公表されたUN75グローバル対話の中間報告で、100万人の回答者の多くが、今日の課題に取り組むためにはグローバルな協力が不可欠であり、パンデミックによって国際協力はさらに急務となっていると考えていることが明らかになりました。そのほか、コロナ禍が続く中で、医療や安全な水、衛生、教育など、基本的サービスへのアクセス改善を緊急の対応が必要な優先課題であり、より長期的には気候危機と自然環境の破壊が圧倒的な懸念事項となっているといった結果も発表されました。では、こうした課題に対して日本に拠点を置く国連機関がどう対応しているのか、またSDGsの推進にどのように貢献しているのか?その姿をSNSキャンペーンとして紹介しました。国連諸機関がいかに日本のパートナーと連携しながら、地球規模の課題に立ち向かっているのか、ご覧いただければ幸いです。

 

 国連広報センターは2021年をCOVID-19からの「より良い復興」の年とすべく、全力を挙げてまいります。皆様、良いお年をお迎えください。