国連広報センターの根本かおる所長は、2025年3月2日~9日に南スーダンを訪問し、同国に展開する国連PKOの「国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)」の活動を視察しました。現地で出会ったUNMISS司令部に派遣されている3人の自衛隊員の方々に任務の詳細ややりがいなどを寄稿していただきました。3人目は航空運用幕僚、新山
【略歴】2012年防衛大学校卒業。陸上自衛官。2012年に陸上自衛隊入隊以降、第1ヘリコプター団においてヘリコプターパイロット、陸上自衛隊航空学校にて教官等として勤務。2025年1月より国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に司令部要員(航空運用幕僚)として参加。
※写真はすべて著者からの提供
はじめに
私は2025年1月から南スーダン共和国でUNMISS司令部要員(航空運用幕僚)として勤務しています。業務では司令部内各部署からの要求に応じて、南スーダンにおいて主要輸送手段である航空機を日々どのように使用するかを具体的にした飛行計画の作成、航空機の運航状況の監督、また、事故や病気等により、緊急で航空輸送が必要な際の各所との調整を実施しております。
高校時代にパイロットに憧れて、防衛大学校に進学を決意して入学、陸上自衛隊に入隊し、卒業後から派遣前までの多くの時間を陸上自衛隊CH-47(愛称チヌーク)のパイロットとして勤務しておりました。元々、英語を通じて他国の文化に触れることに興味があったことから、様々な国際訓練の場で他国の軍人と多く接し、2019年にはオーストラリアでの訓練にも参加しました。その中で、現在の日本を取り巻く国際環境から日本の平和と安全を保つためには、日本と価値観を共有する国々とより深い関係を構築する必要性があることを肌で感じました。
国際社会への興味から南スーダン派遣へ
約10年近く操縦士としての経験を積み重ねると同時に、幹部自衛官としての他国軍人との交流や自衛隊内の様々な教育の中で、国際社会における日本の立場や役割を学ぶにつれ、日本国内だけでなく国際社会で日の丸を背負って挑戦してみたいという気持ちになりました。その想いがなければ、南スーダンへは派遣されていなかったと思います。
南スーダンにおいて航空機を運航するということ
南スーダンで勤務して約2ヶ月ですが、航空安全というキーワードは万国共通であると感じます。航空機を安全に運航するというのは簡単なことではありません。航空機の運航には一つのミスが大きな事故に直結する危険性が至る所に潜んでいます。それは日本においても同様で、私がパイロットの時は、他のパイロットのみならず整備士、管制員、通信員、気象予報士など多くの人のサポートを得て、航空安全に心掛けていました。
そして南スーダンにおいては、同国がいまだ国造りの途上にあるということもあり、航空機の安全確保により一層の注意を払っています。例えば、南スーダンでは過去に国連の航空機が射撃される事故がありました。それ以来、UNMISS内ではパイロットに対して各離着陸地域が安全かどうか情報を提供するようになっています。
このシステムを活用しつつ、航空に携わる各国からの軍人や民間人と共に勤務していると全員が航空機の安全確保に最大限努力していると日々感じます。
日本人として、国連の任務に如何に貢献するか
現在、UNMISS司令部内で勤務する陸上自衛官は6名です。部隊派遣されている国と比べると少ない人数の中で、南スーダンの平和と安全のために自らの立場・役職を全うすることは勿論のこと、数多くの国から参加する国連の場において、日の丸を多くの人に見てもらい、日本人とはこういう仕事をするんだと理解し、日本人を信頼してもらうことが最終的には日本の平和と安全に通ずると考えています。
そのため、日本では当たり前のことかもしれませんが、提出期限を守り、書類のミスは極力少なくすること、また、自分だけで一生懸命になることなく、周りへの気遣いを忘れないよう意識しています。加えて、職場のみでなくプライベートの時間を他国の軍人とともに過ごしたり、様々なイベントに積極的に参加したりすることは自らのリフレッシュになると同時に日本のことを多く知ってもらえる機会を付与出来ていると感じます。
最後に
派遣準備から派遣以降も様々な方からのご支援なくしては本任務は成り立たないと毎日感じております。その中で約1年間の派遣を遠い日本の地からサポートしてくれている妻と2人の息子達への感謝の気持ちは絶えません。少しでも家族の不安を払拭するために派遣前の準備期間の多くを家族とともに過ごし、子供達が容易に理解できるようにパワーポイントを用いて、南スーダンの概要や業務内容について説明しました。
出国時に、息子達からは「僕達も頑張るからパパも頑張って」と言われたことは今でも私の心の支えになってます。
残り約10ヶ月の派遣間、楽しいことばかりではないと思いますが、辛いときにこそ前向きに楽しく南スーダンの平和構築のために頑張りたいと思います。