国連広報センターが所属する国連グローバル・コミュニケーション局のトップ、メリッサ・フレミング国連事務次長が5月末に訪日しました。2年半ぶりとなった訪問の間、フレミング事務次長は朝から晩まで精力的にさまざまな日本の関係者と対話し、協力関係を深めました。
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フレミング事務次長が日本に到着してまず向かったのが、大阪です。
開催中の大阪・関西万博における国連パビリオンおよび他の国や政府、企業などが手がけるパビリオンの視察が主な目的でした。初日に真っ先に向かったのはもちろん、「人類は団結したとき最も強くなる。」がテーマの国連パビリオン。アテンダントたちの連日の頑張りに感謝と激励を送ったのち、マーヘル・ナセル国連事務次長補兼陳列区域代表の案内でパビリオン内の展示を一巡しました。
同日午後には、国連パビリオンと株式会社サンリオとの共催で実施された#HelloGlobalGoalsのグリーティングイベントに参加し、世界中で人気のキャラクターであるハローキティと一緒に、来館者にSDGsと「よりよい未来のために団結する」ことの重要性を伝えました。2日間を通してアメリカ合衆国、国際赤十字・赤新月運動、サウジアラビア、中国といった海外パビリオンに訪問したほか、バチカンパビリオン主催のイベントに参加。ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier、大阪ヘルスケアパビリオン、日本館にも足を運びました。また、大阪府の渡邉繁樹副知事などの万博関係者や各館代表者と意見交換も行いました。
マーヘル・ナセル国連事務次長補兼陳列区域代表(右端)と株式会社サンリオの辻友子常務執行役員、グローバルサステナビリティ推進室 室長(左端)も加わり、ハローキティと国連パビリオンの来場者をお出迎え。SDGsの認知度の高さを実感した。
阪急阪神ホールディングスでは、嶋田泰夫社長への表敬訪問を行ったほか、各目標のデザインをあしらったSDGsトレイン「未来のゆめ・まち号」を試乗し、電車全体が丸ごとSDGsの発信につながっているSDGsトレインを体感しました。
大阪での2日間の滞在の後に東京に移動し、3日間みっちり日本政府をはじめ幅広い関係者と対話を持ちました。国連創設80周年という節目に国連と日本が連携する重要性を改めて共有するとともに、紛争や気候変動、国際社会の分断などの危機にどう対応すべきか話し合うためです。
藤井比早之外務副大臣への表敬では、日本政府の長年の国連への支援に謝意を述べるとともに、安保理改革をはじめとする国連改革と多国間協調、国連と日本の連携の強化について認識を共有しました。
In Japan, I met with the State Minister of Foreign Affairs, Mr. Hisayuki Fujii @MOFAJapan_en. We discussed the importance of strengthening multilateralism, UN reform & UN-Japan cooperation. 🙏 Japan for your generous support to the 🇺🇳, + our UN Information Centre @unic_tokyo. pic.twitter.com/cRrcgANGcx
— Melissa Fleming 🇺🇳 (@MelissaFleming) 2025年5月30日
総務省の玉田康人総括審議官からは、オンライン上の誤情報・偽情報に対する日本政府の施策について伺い、啓発活動から法制度の整備に至るまで幅広い取り組みの重要性について意見を交わしました。
また、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員と和田征子事務局次長に2年半ぶりに面会し、ノーベル平和賞受賞を祝うとともに核兵器廃絶にむけたたゆまない活動に改めて敬意を表しました。
With Nihon Hidankyo - a grass-roots movement of survivors from Hiroshima & Nagasaki.
— Melissa Fleming 🇺🇳 (@MelissaFleming) 2025年5月29日
It was a privilege to see Mr. Terumi Tanaka and Ms. Masako Wada of Nihon Hidankyo again. pic.twitter.com/lNe4nbE8IJ
今回の訪日では4つものイベントに登壇し、それぞれ異なるオーディエンスに対して語り掛けました。気候変動に関する誤・偽情報への対策というテーマについて、一般社団法人Media is Hope主催の気候変動メディアシンポジウムでメディアへの期待を、東京大学グローバル教育センター主催のDialogue at UTokyo GlobEで若者への期待を語りました。この分野での誤・偽情報は、科学に対する信頼を損なわせ気候変動対策を阻害させようとするだけでなく、気候行動を支持する人々への危害につながっています。しかし、フレミング事務次長は80%以上の人々は気候変動に対する政策の強化を求めていると示し、解決提案型の報道など人々に希望をもたらす発信の有効性を強調しました。
国際文化会館主催の会員特別講演会でも誤・偽情報が社会にもたらす影響を解説し、AIなどの新技術の危険性と可能性や、広告代理店やテック企業の責任について参加者と意見を交わしました。
読売新聞社とYIES(読売国際経済懇話会)共催の読売国際会議2025の5月フォーラムでは、研究者や元大使らとなぜ今日も国連が必要なのかを議論。国連が人道支援や医療保健分野の現場で人々の命を支えるとともに、国際的な協力の枠組みや規範をつくってきたことなど、多面的な国連の役割を解きほぐしました。そして、国連が創設80年を経てこれからも効果的に活動するために必要な国連システムの改革の重要性について話し合われました。
その他、企業、メディア、国連機関らとも会談を行いました。
NHKでは、公共メディアとしての誤・偽情報に対する取り組みの意義や気候変動に関する報道について意見交換しました。
また、SDGsのアイコンの日本語化や気候キャンペーン「1.5℃の約束」、そして国連パビリオンのロゴの日本語化でご協力いただいている、博報堂DYホールディングスのクリエイティブ・ボランティアの皆さんとも面会。フレミング事務次長は、人々に情報を伝えるうえでクリエイティビティが果たす役割の大きさを語り、これまでの協力に感謝の意を伝えました。
日本の国連ファミリーとも意見交換の場をもらい、資金をめぐる影響を鑑みた効果的なパートナーシップの強化と拡大について、日本からの視点や経験を学びました。
あっという間の1週間の滞在中に、フレミング事務次長が何度も口にした言葉は「希望」でした。紛争、分断、気候変動、誤・偽情報の蔓延といった幾多の困難があってもなお、世界はこれらを解決する手段を持っており、希望を広めなければならない。フレミング事務次長は、このメッセージを分かりやすく的確に伝えるために、会議の合間にスピーチ原稿や発表資料を自ら何度もギリギリまで修正していました。
今回の訪日で、フレミング事務次長は国連が取り組む課題について日本の多くの人々もともに取り組んでいることを肌で感じたようでした。日本の関係者からいただいた意見やアイディア、そして平和とよりよい世界に向けた力強い想いを携えて、フレミング事務次長は帰国の途に就きました。