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ビジュアルで綴る、グテーレス国連事務総長の3年ぶりの日本訪問

日本では、折り鶴は核兵器のない未来への希望を象徴します。核の脅威に対する解決策はただ一つ、核兵器を一切持たないことです。」© UN Photo/Ichiro Mae

 

2022年8月5日から8日までの日程で、アントニオ・グテーレス国連事務総長が日本を訪問しました。2019年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)出席のために訪日して以来、3年ぶりです。8月6日の広島での平和記念式典への出席が今回の訪日の主な目的でした。

 

2018年8月9日の長崎の平和祈念式典に参列し、2020年の原爆投下から75年の節目での広島訪問を願っていましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に阻まれ、3年越しで叶った広島の式典への参列です。国連事務総長としては初めて、広島・長崎両市の式典に出席したことになります。

 

折しもニューヨークでは第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催されている中、ウクライナでの戦争を通じて核兵器の使用が抽象的ではなく現実的なリスクとして再認識され、さらには東アジア情勢が著しく緊迫する中での訪日となり、事務総長のメッセージに大きな関心が集まりました。

 

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8月6日の朝、グテーレス事務総長は広島平和記念式典に出席しました。

原爆の犠牲者を弔う花輪を手向けるグテーレス事務総長 © UN Photo/Ichiro Mae

77年前、瞬く間に何万人もの人々が殺されました。生き残った人々の揺るぎない証言は、核兵器の根本的な愚かさを思い起こさせます。」同式典に寄せた挨拶では、核兵器廃絶へ向けた力強いメッセージを世界に向けて発しました。

グテーレス国連事務総長は「核兵器保有国は、核兵器の『先制不使用』を約束しなければなりません。また、非核兵器保有国に対しては核兵器を使用しないこと、あるいは使用すると脅迫しないことを保証するべきです。さらに、核兵器保有国はあらゆる面において透明性を確保しなければなりません」と述べ、国連事務総長として初めて、核兵器保有国に対して透明性のある「核兵器の先制不使用」を約束するよう呼びかけました。

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平和記念式典の後は、岸田総理大臣と会談し、核兵器の無い世界に向けて国連と日本とが引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

© UN Photo/Ichiro Mae

 

さらに、会談の後は、岸田総理大臣と広島平和記念資料館を視察し、写真や展示物などから原爆がもたらした被害の実相に触れました。

原爆がもたらした中長期的な被害、被爆者と広島市の歩みに関する展示物の説明を受けた © UN Photo/Ichiro Mae

資料館視察の締めくくりに、岸田総理大臣とグテーレス事務総長は、それぞれ自らが折った折り鶴を寄贈し、芳名帳への記帳を行いました。

© UN Photo/Ichiro Mae

 

このあと、事務総長たっての希望で、広島・長崎出身の被爆者の方々と対話の機会を持ち、核兵器のない世界の実現に向けて取り組んでこられたこと、国連や国際社会に望むことなどについて意見交換しました。

グテーレス事務総長は、冒頭、「被爆による心身への痛みを乗り越え、勇気と回復力を持ち、自らの体験を語っていらっしゃる被爆者の皆さんは世界の人たちにとっての模範です」と語り、被爆者との連帯を強く示し、何度も日本語で「ありがとう」と感謝の意を表していました。 

© UN Photo/Ichiro Mae

 

その後、広島市の松井市長や長崎市の武田副市長らと会談を行い、会談後には、グテーレス事務総長が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた活動に貢献してきたことを称し、松井市長より広島市特別名誉市民称号が贈呈されました。

広島市の松井市長や長崎市の武田副市長らとの会談 © UN Photo/Ichiro Mae

広島市特別名誉市民称号をいただく事務総長 © UN Photo/Ichiro Mae

事務総長がポルトガルの首相になったばかりの1995年、フランスの核実験を非難する総会決議にポルトガルが初めて賛成票を投じた背景には、もう40年ほど前に自身が一市民として広島・長崎を訪れた際に受けた衝撃があった、と受諾のスピーチで語っていました。フランスに遠慮してNATO諸国が棄権する中、当時のポルトガル外相の強い反対を押し切って賛成票を投じることを指示したが、広島・長崎を見た者として棄権はあり得なかった、それを見た経験はその後の政治人生の基礎を作った、と語っていました。

 

また、記者会見を行い、核の脅威に立ち向かう決意を改めて表明しました。

© UN Photo/Ichiro Mae

「今日、世界は77年前に学んだはずの教訓を忘れ、危険にさらされています。赤信号が点滅しています。あらゆる対話、外交、交渉の道を活用して緊張を緩和し、核兵器の脅威を排除するための新しいグローバルなコンセンサスを築かなければなりません。」

日本語通訳を介した会見の様子をこちらからご覧ください。

 

ランチの後は広島県の湯﨑知事とも会談を行いました。今年開催された「Hiroshima Roundtableの議長サマリー」が湯﨑知事からグテーレス事務総長に手渡されました。

© UN Photo/Ichiro Mae

 

続いて、国連軍縮部(UNODA)国連広報センター国際連合訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所 広島県へいわ創造機構ひろしま (HOPe)共催のイベント「Power of Youth from Hiroshima」に参加しました。

若者と語らうことは、事務総長が大変力を入れていることの一つです。そこで事務総長は開口一番、こう強調しました。

「自分と同世代の人々を代表して、私たちがあなたがたに残すことになる世界について、謝りたいと思います。謝ると同時に、あなた方の懸念が私たちの世代に聞こえるように、あなた方が行動し声を上げること、場合によっては叫ぶことを、促します」と。

日本のユースとの刺激的な対話の全容をぜひご覧ください。

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多忙な1日を終え、この日の夜にグテーレス事務総長は広島を離れて東京へ向かいました。

 

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7日は公式行事はありませんでしたが、明治神宮まで足を伸ばし、絵馬に平和への祈りを綴りました。

 

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8日の朝、はじめに林外務大臣と会談を行いました。軍縮ウクライナ、東アジア情勢、人間の安全保障、気候変動、国連改革など幅広い課題について意見交換しました。

軍縮の必要性や気候変動などについて日本と国連の協力関係を確認した © UN Photo/Ichiro Mae

 

会談後、日本記者クラブにて記者会見を行い、日本の国連への長きにわたる協力に感謝を述べると共に、核兵器の廃絶や新型コロナウイルス感染症への対応、気候危機など、世界が解決すべき様々な課題への解決にむけた連携強化を訴えました。

今回の訪日を締めくくる会見の全容(英語)をこちらからご覧ください。

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会見を終え、最後に皇居の御所を訪問し、天皇陛下に拝謁しました。            

本日、光栄なことに天皇陛下に拝謁しました。日本は、多国間システムの柱であり、平和、人間の安全保障、軍縮の世界的な提唱者です。

 

分刻みのスケジュールを無事終えて、3年ぶりに訪れた日本をあとにしました。

 

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「この大切な日を、この聖なる場所で、広島の人々と連帯することを光栄に思います。広島と長崎の教訓と、77年前のあの恐ろしい日に命を落とされた方々の記憶は、決して忘れられることはありません。国連で働く女性たちと男性たちを代表し、私はその方々を忘れず、より平和で核兵器のない世界のために取り組み続けることを誓います。」(広島平和記念資料館に寄せられたメッセージ )

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