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「国際青少年デー」に考える、循環型社会の構築に向けてなぜ若者の声が必要なのか?

8月12日の「国際青少年デー」にあわせて、国連広報センターの元インターンで、現在合作株式会社 企業連携を担当している藤田香澄さんが、リサイクル率日本一の鹿児島県大崎町から、循環型社会の構築に向けてなぜ若者の声が必要不可欠なのかを紹介します。

略歴1995年長野県安曇野市生まれ。南太平洋の島国ツバル、キリバス、フィジーで幼少期を過ごし12歳で帰国。早稲田大学国際教養学部で国際関係を学んだ後、東京大学公共政策大学院で外交政策、地域政策、行政学等を学ぶ。卒業後は鎌倉にある面白法人カヤックというITの会社に就職をし、地域通貨サービスなどの企画・導入を担当する。地域と関わるうちに自分もプレーヤーになりたい気持ちと、兼ねてから興味のあった環境問題に関わる仕事がしたい気持ちが高まり、2021年4月にリサイクル率日本一の鹿児島県大崎町へ移住。現在は合作株式会社で企業連携担当として、大崎町のリサイクルの取り組みをベースに他の自治体の資源循環率を上げるプロジェクトなどを進めている。(中央が筆者 ©︎ Misaki Tachibana

 

世界全体の資源循環率はわずか9.1%と言われており、地球では多くの資源が止まることなく採掘されています*1

私は今、鹿児島県大崎町という人口12,000人程の小さな町に住んでいます。大崎町は養殖うなぎ、ブロイラー(鶏肉)、パッションフルーツ、マンゴーをはじめとする様々な農産品の生産が盛んで、地域資源に溢れるとても豊かな町です。

鹿児島県大崎町の風景 © Kohei Shikama

 

そして大崎町は、ごみのリサイクル率日本一の町でもあります。リサイクル率が全国平均20.0%のところ、大崎町では83.1%を達成しています*2もともと、焼却処理施設が無い大崎町では、最終処分場の延命化を図るために、20年ほど前から住民・行政・民間の連携によるごみの分別とリサイクルに取り組んでいます。

 

「リサイクル率」と冒頭に記載した「資源循環率」とは定義が異なりますが、資源循環率を上げるためには、まずは廃棄物をしっかりと回収し適切にリサイクルを行うことが重要です。資源循環率を高め、国連が目指す持続可能な社会を実現するための重要なヒントがたくさんあるのではないかと思い、私は大崎町に来ました。大崎町の取り組みを是非動画でご覧いただければと思います。

 

youtu.be

 

私が環境問題に興味を持ったきっかけ

私がごみ問題などの環境課題を意識するようになったきっかけは、気候変動による海面上昇の影響で沈みゆくと言われているツバルをはじめとする、太平洋の島国で幼少期を過ごしたことにあります。

ツバルでの幼少期 ©︎ Kasumi Fujita

 

その後、国際的な枠組みで環境課題を解決することに興味があり、大学時代は国連広報センターでもインターンをしていました。当時書かせていただいたツバルに関する記事はこちらです。

 

そして今、途上国のごみ問題解決には、大崎町の分別リサイクルの仕組みが有効的ではないかと考え、他の自治体や海外でも大崎リサイクルシステムを実践できるプロジェクトを進めています。

 

なぜ青少年が声を上げることが重要なのか

さて、「国連青少年デー」である8月12日は、若者の声やユースにまつわる社会課題に、より着目してもらう日として国連が制定しています。気候変動や環境問題の解決に向けて、なぜ若者の声に耳を傾けることが重要なのか、私も少し考えてみました。

 

私たちは世代ごとに異なる当たり前を生きてきており、今の若者が持つ価値観は環境問題の解決にとって無くてはならないものだと感じています。

 

例えば、廃棄物処理に関する歴史を振り返ると、それぞれが異なる当たり前の中で生きてきたことが良くわかります。今の50代〜70代の方々は、1960年代〜70年代の高度経済成長に伴う「公害」を経験しています。1970年代からは廃棄物の適正処理の推進が図られ、焼却処理施設建設などに対して国の補助金が充てられるようになりました。それ以降、日本において廃棄物は、焼却処理をすることが前提となっています。今の20代後半〜40代の方々は、1980年代〜2000年代の消費増大を経験した世代です。廃棄物の増加と最終処分場の不足及び残余年数の逼迫が顕著となりました。最終処分場が埋まってしまう危機感から、1990年代に入ると、ごみの排出量そのものの抑制に向けてリサイクルなどの3Rの推進が図られました。

 

1995年になると容器包装リサイクル法が制定され、リサイクル可能な品目数が少しずつ増えていきます。大崎町でも1998年頃から分別が始まりました。これ以降に生まれた子どもたちはリサイクルが当たり前という意味で、大崎町では「リサイクルネイティブ」とも呼んでいます。

大崎町のリサイクルの取り組みも、最終処分場の延命化を目的として始まった
© Kohei Shikama

 

そして今の10〜20代前半は、学校のカリキュラムにSDGs関連の探究学習が組み込まれ、サーキュラーエコノミーに関する施設が街中に存在するような、環境配慮型行動が当たり前の時代を生きています。

 

異なる当たり前を生きてきたそれぞれの世代は、「心地よい」と感じること、「馴染み深い」と思うこと、「良い」「悪い」と思うことが少しずつ異なるはずです。

 

地球温暖化や気候変動が紛れもない事実となっている今、環境配慮型行動を当たり前のように実践する若い世代の参画を促したり、意見に耳を傾けたりすることは必要不可欠ではないでしょうか?

 

国連事務局が定義する「ユース」とは15歳から24歳までの人々で、世界で18億人以上にのぼるそうです。日本ではどこの自治体でも高齢化率が非常に高いですが、大崎町が生ごみ堆肥化の技術協力を行っているインドネシアの平均年齢は29歳です。日本と周辺国との人口構造の違いや若い世代が持つエネルギー量の違いに改めて驚かされます。

 

大崎町は若者が少なくなってはいますが、その一方で、リサイクル率日本一の町の責務として、世界の循環型社会をつくることを目指しています。他の地域より少し早く世界の未来を実践している大崎町に暮らす若者として、世界の資源循環率を上げて持続可能な社会をつくるために、これからも声を上げ続けていきたいと思います。

大崎町の分別は資源循環だけでなく、地域のコミュニティ形成にも繋がっている
© Kohei Shikama

*1:平成30年度、蘭サーキュラーエコノミー推進シンクタンクCircle Economy発表

*2:令和2年度時点、環境省発表