国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

小国の地球環境問題-ツバルで見た変化-

国連広報センター、インターンの藤田香澄です。

 

皆さんの故郷はどんなところですか?

真っ青な空、透き通る海、ゆっくりと流れる時間、陽気な人々の笑顔。

太平洋に浮かぶ小国「ツバル」が、私が育った故郷です。

では、その故郷が数十年後には住めなくなってしまうかもしれないと言われたらどうしますか?

そうなるはずがない、と思う人もいるかもしれません。

しかし、現にツバルは地球温暖化による海面上昇や、気候変動による干ばつの深刻化によって国家存亡の危機に直面しており、そこに住む人々は住み慣れた環境を失うかもしれないのです。

 

南太平洋に浮かぶ9つのサンゴ礁の島からなるツバルは、総面積がわずか26kmしかなく、これは東京都品川区ぐらいの大きさです。メディアで度々、海面上昇によって真っ先に消えてしまう国の一つだと取り上げられています。

私は2011年の夏、14年ぶりにその地を訪れました。

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首都フナフチのあるフォンガファレ島。中心部に伸びているのが島唯一の滑走路。細長くなっている部分が下図のような光景になっている。(2011年8月筆者撮影)

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環礁島であるため、左側がラグーンで右側が太平洋になっている。大潮の際に道路が浸水してしまうことがあったため、護岸工事が行われた。(2011年8月筆者撮影)

 

太平洋では海面上昇の影響が懸念されていますが、それよりも緊急で深刻なのが異常気象による干ばつです。

ツバルでは、生活用水を、環礁島の特徴であるレンズウォーターという地下水に頼ってきました。しかし近年、海水の流入によりその水の塩化被害が頻発し、飲み水としての利用が難しくなってきました。代わりに雨水に頼るようになり、各家庭には、ニュージーランド政府より雨水タンクが寄贈されています。 しかし、近年の異常気象で、その雨水が十分に確保できない状況が起きています。 2011年にはラニーニャ現象により、半年間雨が降らない記録的な干ばつが起き、同年9月28日、ツバル政府はついに非常事態宣言を発令しました。私が高校生のときにツバルを再訪したのが丁度この年で、断水の影響でシャワーをバケツ一杯の水で済まさなければなりませんでした。

 

ツバルでの問題は、気候変動による影響のみではありません。

人間活動が活発化したことにより、20世紀にはまだ見られなかった、食料問題、人口増加、環境汚染など国連が取り上げている諸問題がツバルという小国に集約しています。それらの問題が気候変動と複雑に絡み合い、私が幼い頃に育った際には感じられなかった環境の変化が、ゴミの増加や水質汚染といった形で2011年には至るところで見られるようになってしまいました。

 

このままだとツバルは、数十年後に水没する以前に、近い将来、人間が住めない国になってしまうかもしれません。

 

そういった危機的な状況を改善しようと、ツバル国内のみならず、各国政府も動き始めています。

2011年の干ばつの際に、日本の外務省はツバル政府の要請を受け、JICAを通じて海水淡水化装置の修理部品などを提供しました(以前から装置はあったが、老朽化により機能していなかった)。ニュージーランドも雨水タンクの支援を強化しています。

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日本政府より支援された海水淡水化装置(2011年8月筆者撮影)

 

2011年のツバル滞在中に、元首相であるApisai Ielemia氏にインタビューをする機会がありました。ツバルの将来について、彼は次のように述べていました。「ツバルのような小国には資源はないが、人材がある。私たちにできることは、国際社会に向けて、ツバルの現状をより多くの人に伝えることである。」

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元ツバル首相Apisai Ielemia氏との対談(2011年8月筆者撮影)

 

数十年後、人が住めなくなることによって、私にとっても思い入れのある家や滑走路(夕方の遊び場だった)を二度と見ることができなくなるかもしれないと考えると、非常に悲しい気持ちでいっぱいです。

 

「ツバルを忘れないで」

 

ツバルの中学生にアンケートをとった際に、彼らが記してくれた言葉です。私たちが今できることは、私たちの何気ない行動や資源の無駄遣いが、ツバルに限らず地球上のどこかで、国家存亡の危機を招いているという認識を持ち、一人ひとりが自分の生活を見つめ直すことではないでしょうか。

COP21の開催によって、より多くの人がツバルのような小国に目を向けるきっかけとなってくれることを祈っています。

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幼馴染のタウランガ(黒いシャツ)と彼女の家族。首都フナフチにて(2011年8月筆者撮影)

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ツバルの日常風景。島内はバイクで移動することが多い(2011年8月筆者撮影)