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国連事務総長、G7伊勢志摩サミット出席のため訪日 - 持続可能な開発目標(SDGs)推進を求める

 

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は5月26・27の両日、三重県志摩市で開かれたG7伊勢志摩サミットのアウトリーチ会合に出席するため訪日しました。今回のサミットは、持続可能な開発目標(SDGs)が2015年9月に国連総会で採択されてから初めて開かれたもので、主要な議題の一つとして取り上げられました。事務総長は、アウトリーチ会合で出席者にSDGsへの取り組みをさらに強化するよう求める一方、各国首脳と個別の会談も行いました。短い滞在ながらもSDGsを世界のリーダーにアピールする重要な機会となりました。

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G7サミットアウトリーチ会合出席のため、中部国際空港に到着し、出迎えた人たちに手を振る潘基文国連事務総長(2016年5月26日)

  

事務総長は、トルコのイスタンブールで開かれた「世界人道サミット」出席などを経て、26日夕方に中部国際空港に到着しました。夜には、アウトリーチ会合出席国と国際機関の代表が招かれた、愛知県と名古屋市主催の歓迎レセプションに出席。愛知県の魅力をアピールするパフォーマーの登場などでにぎやかな雰囲気の中、首脳らが壇上で紹介され、日本酒で乾杯しました。

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 愛知県の大村秀章知事と乾杯する事務総長 (5月26日)

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世界銀行のジム・ヨン・キム総裁と談笑する事務総長 (5月26日)

 

世界経済や国際テロ対策が議題となったサミット1日目に続き、27日は、事務総長も参加したアウトリーチ会合の二つのセッションも開かれました。アウトリーチ会合は、G7サミットに合わせ、G7以外の首脳や国際機関の長が招かれ開かれているもので、今回はベトナムなどアジアの国々とアフリカ連合(AU)議長国であるチャドの計7か国に加え、5つの国際機関が参加しました。

 

「アジアの安定と繁栄」が議題となったセッション1では、目覚ましい経済成長を続けているアジアがこれからも繁栄していくためには何が必要かが議論されました。

 

潘基文国連事務総長アウトリーチ会合1における発言はこちらです >>>http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/19098/

 

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アウトリーチ会合の前に安倍晋三首相の出迎えを受ける事務総長 (5月27日)

 

事務総長は、「持続的かつレジリエントな21世紀のインフラへのG7の投資は、持続可能な開発全般に対する重要な貢献」と指摘し、気候変動などに配慮しながらも、人口が急増する地域に早急なインフラ投資を行う必要性を訴えました。

 

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G7伊勢志摩サミットのアウトリーチ会合セッション1の様子 (5月27日)

 

また、建設されるインフラが、経済的、社会的、環境的に持続可能なものとなるように設計、実施され、経済の成長と公平性に寄与するものであること、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」をアカウンタビリティーのための共通の枠組みとして使うことなどを提案しました。

 

さらにアジアでの緊急の課題として、挑発的な行動を続けている朝鮮民主主義人民共和国DPRK)に対して、G7各国に関連する安保理決議や制裁措置を全面的に実施するよう求めました。6か国協議の参加国には、緊張緩和のため対話を進めるよう促しました。

 

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G7伊勢志摩サミットアウトリーチ会合に参加した首脳の集合写真 (5月27日)

 

ワーキングランチの形式で行われたセッション2は「開発、アフリカ」がテーマとなりました。事務総長は冒頭で会合出席者に、SDGs策定を実現したリーダーシップとSDGs関連措置の実施を感謝し、関連する次のような優先課題へ力を注ぐよう促しました。

 

潘基文国連事務総長アウトリーチ会合2における発言はこちらです >>>

 http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/19124/

 

1つ目は気候変動です。昨年採択された気候変動に関する新枠組み「パリ協定」の早期批准を訴えました。事務総長は、2016年末までに全世界の温室効果ガス排出量55%以上を占める55か国の批准を確保を目指しており、G7とEU加盟国に協力を呼びかけました。

 

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氷床の融解が進むグリーンランドイルリサット・アイスフィヨルド。事務総長も視察した(2014年)UN Photo/Mark Garten

 

 2つ目に訴えたのは人道対策です。開催されたばかりの「世界人道サミット」に言及しながら、近年、人道支援の必要性が劇的に高まり、対策費用も急増している中で、事務総長の報告書「人道への課題」への支持を訴えました。また、紛争予防やレジリエンス構築への投資増額も呼びかけました。

 

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5月23・24日にイスタンブールで開かれた世界人道サミット UN Photo/Eskinder Debebe

 

3点目は難民と移住者への対策の充実で、紛争や気候変動による難民や移住者の流入に対して、各国にグローバルな手法を採用するよう勧め、9月にニューヨークで開かれる移住者に関するサミットへの出席を求めました。

 

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故郷を離れ、トルコ国境に近いシリアの都市コバニに到着する難民 (2014年9月)UNHCR / I. Prickett 

 

4点目はグローバルな保健について、エボラ出血熱をはじめとする健康危機に対する各国の寛大な対応を称えました。国連は、エボラ出血熱の大流行から教訓を学び、今後に生かすため、国家元首経験者などによるハイレベルパネルを設置し、提言を行いました。

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エボラ出血熱が疑われる患者を搬送した後、消毒を行う救急隊員(2014年、シエラレオネ)UN Photo/Martine Perret

 

最後に、SDGsです。事務総長は、日本がSDGsを推進する首相直属の拠点を置いたことを称賛し、すべてのリーダーに、SDGs実施を監督する小規模のハイレベル機関の設置を促しました。

 

アウトリーチ会合出席の合間に、事務総長は各国首脳と個別会談も行いました。グエン・スアン・フック・ベトナム首相との会談では、国連との密接な協力を感謝し、国連平和維持活動(PKO)への貢献拡充の準備などに謝意を示しました。また、パプアニューギニアのピーター・オニール首相とは、ブーゲンビルの将来の地位に関する住民投票や、気候変動、災害リスク軽減などについて話し合いました。

 

・潘事務総長とグエン・スアン・フック・ベトナム首相との会談内容はこちらです >>http://www.unic.or.jp/activities/ban_ki-moon/sg_visit_to_japan/19089/

・潘事務総長とパプアニューギニアのピーター・オニール首相との会談内容はこちらです >>>http://www.unic.or.jp/activities/ban_ki-moon/sg_visit_to_japan/19116/

 

G7サミットをホストした日本政府は、サミット前にSDGs推進本部を設置するなど、積極的な姿勢を示してきました。サミット会合でも日本は、G7各国でSDGs実施をリードしていこうと呼びかけました。日本は、SDGsの重要な要素である国際保健や女性の活躍推進などの支援に力を入れていくことを表明しています。

   

一方、SDGs推進への機運を高めようと、市民社会もG7伊勢志摩サミットに合わせてイベントを開きました。国際メディアセンター(伊勢市)の隣には「NGOワーキングスペース」が置かれ、展示や会見などを行いました。25日には、当国連広報センターの根本かおる所長も参加して「17人18脚」のパフォーマンスを披露。各国にSDGsへの取り組みをアピールしました。

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SDGs推進への取り組みをアピールして行われた17人18脚(5月25日) ©2016年G7サミット市民社会プラットフォーム

 

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 サミット期間中、参加した市民社会の代表らがその日の議論を象徴する一文字を決め、書家の徳山尭浩さんが大書した。この日26日は「視」と決まり、多様性の中にも方向性は一つという期待をアピールした  ©2016年G7サミット市民社会プラットフォーム

 

27日夕方、潘事務総長は滞在を終え、日本を離れました。