国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

2016 Spring Interns

今年3月末から国連広報センターで働いた5人のインターンが6月末に卒業しました。

UNICでの体験を振り返った5つのストーリーをお読みください。

 

 【宮内栄 / Ei Miyauchi】

 こんにちは!2016年春インターンの宮内栄です。現在国際基督教大学4年で、卒論執筆の真っ最中です。

 私が国連広報センター(UNIC)のインターンに応募したのは、将来働きたい国連という場所の実際の姿を知りたかったから、というのが一番大きな理由です。私は今後開発学を専門にしたいので、国際政治や国際関係学、国際法を専門にして広報官として国連に入ることを考えているわけではありません。しかし、どんな分野を専門にするにせよ国連で働くのなら、国連という組織自体についての理解は必要だろうと思います。結果的にUNICは、国連の活動や内部の日常の動き方について知る上で、とてもよい場所でした。

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        上智大学でのSDGsフォトコンテストのプロモーションの様子(白いボードを持っているのが筆者)

 

まず、UNICのオフィスも入っている国連大学本部ビルを訪問する中高生に実施する、「国連訪問」というプログラムを担当することで、必然的に国連の活動一般を説明できるようになります。あるいは日々国連関係文書の翻訳をする中で、「この文書はどういう文脈で、何の目的で作成されたものなのか」と考えます。背景知識がなければ正しい翻訳はできないので必然的にリサーチをすることになり、知識が雪だるま式に増えていくのです。

 その他にも大型イベントの一連のロジスティクス(ロジ)をオフィスの中で体感すると、国連という組織の官僚的な動き方を実感できます。私のインターン期間中には潘基文(パン・ギムン)事務総長の訪日・G7伊勢志摩サミットアウトリーチ会合への出席に関わる大型ロジがありました。インターンオリエンテーションでUNICが「国連の在日本大使館」と形容されているのを耳にしましたが、まさにそういった印象をこのロジを通じて持つようになりました。こういった話は通常"confidential"とされ、外部に公開されることはありません。内部から実際を見たり、また部分的に関わる機会に恵まれたことはとても幸運でした。                

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 スウェーデン大使館主催のセミナー「第2代国連事務総長ダグ・ハマーショルド国連」にて。(June撮影)

 また、おそらくみなさんが思っている以上に、UNICでの仕事は「広報」のよい経験となります。特に私は「国際関係学専攻で将来国連で働きたいと思っている」といういわば「ステレオタイプ」であったため、広報関係の仕事のインパクトは予想以上で、とても新鮮でした。

例えば、日常的に様々な国連関係文書の翻訳、要約、記者会見への出席(カメラもインターンが担当します!)、記事作成などの業務があります。文章を書くことについてはそれなりに慣れていると思っていた自分でしたが、反省しきりでした。要点をもらさずシンプルで読みやすい文章を作るということは、案外手間がかかるものなのです。加えて校正作業も広報では必須ですが、仕事の丁寧さについて自分の甘さを感じる局面が多々ありました。UNICのオフィスは10人にも満たない職員とインターン数名によって、まわっています。それは、職員一人ひとりが自分の責任分野の仕事を高い精密度をもって日々こなしているからこそ成立するサイクルです。「プロじゃないからわからない」と言う暇があるなら、「自分で学んでプロになれ」。そんな意識を持つようになったインターン生活でもありました。 f:id:UNIC_Tokyo:20160614115256j:plain

     オフィスの日常。インターンの机が集まる「インターン島」は笑いが絶えない (Christina撮影)

 そして最後に、個性豊かな「現実主義的理想主義者たち」との出会いこそ、UNICインターンを通して得た最大の宝です。国連が掲げるのは、人類共通の普遍的な理想。しかしその実現には多様な利害関心が絡み、様々な障害が立ち塞がっています。このインターンで出会った全ての方々は、冷静にその現実的難しさを認識した上で、それでも理想を夢見ることを止めない人たちでした。もちろん私が覗いたのは巨大なUNファミリーのたった一部にすぎません。それでも「現実主義的理想主義」こそ、国連という場所に通底するプリンシプルなのだと確信しました。そんな人たちが集まる場所が国連なら、それは確かに目指す価値のある場所だと、インターンを終える今、私は自信を持ってそう言えます。

 この3ヶ月は日々学びであったことはもちろん、自分の中の国連についてのモヤモヤと向き合い、自分なりに整理をする時間でした。大学4年で就活に勤しむ同期を余所目に、フルタイムでインターンをやるということに不安がなかった訳ではありません。ただ結局は、自分の直感に従ったほうがよい結果になるのだと私自身は思います。3年の秋、思い切ってインターンに応募したあの時の判断は、私にとっての「正解」でした。

私にこの貴重な機会を与えて下さり、インターン期間中厳しくご指導下さり、そしてまた優しい気遣いもして下さったUNIC職員の皆様。

常に明るい笑い声の絶えない「インターン島」でチームワークを共にした、尊敬すべき個性豊かな4人のインターンメイト。

 UNICインターンを通じて関わった全ての皆様に、今、心から感謝しています。

 そして願わくば、この文章が未来のUNICインターンの方々の背中を、少しでも押すことが出来ますように。

 

【王盈文(オウ エイブン)/ June Wang】

 こんにちは!2016年4月から3ヶ月間、UNICでインターンとして働いた台湾人のJuneです。 日本留学中で、今は東京大学法学政治学研究科修士2年生です。

台湾の大学では法学部に所属し、法律全般について勉強しました。4年生の国際法の授業で初めて国連の決議や国連の枠の下で作られた条約などに触れる機会がありました。それをきっかけに、国連に興味をもつようになり、「将来国連で働きたい」という考えも自分の中で萌芽しました。この夢に少しでも近づくために、まず自分の専門知識を磨かなくてはならないと思い、国際法を専攻として日本の大学院に進学することを決めました。       

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                                       UNICの入り口で写真を撮ってもらいました(Ei撮影)

 台湾は国連の加盟国ではないため、日本のようにいろいろな国連諸機関の事務所があるわけではありません。せっかく日本に留学しているので、ぜひこの地の利を無駄にせず、インターンを通じて「国連で働く」というイメージをより具体化させたいと思いました。そこで、私は国連の活動に全面的に関わっているUNICのインターンに応募させていただきました。

 UNICでの日々は、私にとって「冒険」であり、大変有益な時間になりました。

業務の内容は多岐にわたりますが、まず何よりも、国連の活動や優先課題をさまざまなイベントのサポートと参加を通じて、身近に感じることができました。2016年は国連の持続可能な開発目標(SDGs)実施元年なので、私のインターン期間中、SDGsの広報活動はUNICの活動の中心でした。その他、日本国連加盟60周年記念事業、気候変動に関するパリ協定の宣伝、G7のアウトリーチ合会に参加するための国連事務総長来日訪問、中高生の国連訪問といったイベントの企画・実施に携りました。 f:id:UNIC_Tokyo:20160531121250j:plain

                          UNICオフィスの様子(左上Kento、左下Christina、右Machiko、筆者撮影)

 また、国連とは直接に関係しませんが、ハードウェア・ソフトウェアのスキルもインターンの仕事を通じて向上しました。例えば、UNICは「広報センター」であるため、写真や動画の撮影の機会は多くありました。しかし良い作品を撮るのは想像以上に難しいことでした。毎回の撮影の仕事で職員にアドバイスをいただきながら、どのようにインパクトのある写真を撮れるのかが徐々にわかりました。また、去年UNIC主催のイベントで実施した721件のアンケート結果を統計処理するために、エクセルの「ピボットテーブル」という機能を自分で調べ、初めて使用しました。 

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                                          4月13日の国連訪問を担当したEiです(筆者撮影)

 インターンの同期4人からもいろいろ学びました。皆それぞれ違う国籍、バックグラウンドをもっており、関心分野も異なっています。だからこそ一緒に仕事をしている間に、それぞれの人生経験、希望、悩みを話し合い、私にとってとても刺激になる話をたくさん聞けて、心の栄養になりました。また、各自のタスクで忙しい中でも、いつも私の日本語と英語のネイティヴチェックをしてくれて、本当に感謝します。

UNICのスタッフたち、同期のインターン4人、この3カ月間、誠にありがとうございました。

これからもUNICで得た経験を生かして、努力していきたいと思います!

  哈囉!我是王盈文,台灣人,25歲。22歲以前都在台灣土生土長,23歲時來日本念研究所。因為對聯合國有興趣,希望未來能到聯合國工作,便利用在日留學的期間申請了United Nations Information Centre東京辦公室的實習生,很幸運地能被錄取。在這裡的三個月,我除了更認識聯合國,也遇到了很好的實習生夥伴,並和他們成為了一生的朋友。

台灣雖非聯合國加盟國,但並不代表台灣人不能在聯合國相關機構實習,擴展自己的人生經驗與國際意識(至於如何才能成為聯合國的正式職員,我也還在摸索),如果你是台灣人且對聯合國有興趣,不妨考慮申請實習生,我相信一定會成為你人生中無可取代的一堂課!

 

【大谷 眞智子 / Machiko Otani】 f:id:UNIC_Tokyo:20160629151453j:plain

                    左から二番目が筆者

 4月より3ヶ月間インターンとして働かせていただきました、大谷眞智子です。

 私は医学部を卒業後、4年間臨床医として働きました。将来は国連をはじめとする国際機関で医学・公衆衛生の専門家として主に感染症対策に携わりたいと考えており、秋からイギリスの公衆衛生大学院に進学する間の期間を使って、インターンとしてお世話になりました。

将来国際機関で働くことを目指すのであれば、実際にその中で働くことによって将来のビジョンがより明確になるのではないか、という理由と、これまで職業柄、自分の専門分野のことしか触れてこなかったのですが、世界で起きている様々な問題は一方向からのアプローチのみでは解決できないということを、医師として働いた経験からも強く感じたので医療・保健とは関係のない新たな経験を積みたいと思っていたという理由から、国連広報センターのインターンに応募しました。

 想像していたとおり、医師としての社会経験しかない私にとって、国連のオフィスでの仕事はとても新鮮で学ぶことが多く、社会人としての自分を今一度見つめなおすきっかけになりました。そして、いままでは単にイメージしかなかった国連の中で実際に働くことによって新たな視点から国連を捉えることができました。

 一緒にインターンを行った仲間たちは皆それぞれにビジョンがあり、それぞれの目標や葛藤、将来について話すことも多く、とても刺激になりました。どのようにしたら世界全体がより良い方向に向かえるのか、自分ができること・すべきことは何なのか?

そういった問いに真剣に向き合っている人たちとの出会いはとても貴重で、分野やアプローチを越えて同じ目標を共有できる機会はなかなか得られないものではないかと思います。このような出会いは特定の専門分野に特化した機関でなくUNICのような国連全般にかかわる機関でインターンをする醍醐味でもあると思いました。

UNICのインターンに、「こうであるべき」だとか、「こうでなければいけない」といった概念はありません。むしろ、私が医師であるけれども受け入れてもらったように、どんな経歴の人にもチャンスはありますし、多様性や個性が尊重される場所です。それなので、もし迷われている方がいたら飛び込んでみることをお勧めします。きっと他では味わえない経験と、一生の仲間が見つかるはずです!

 私自身、今回得た貴重な経験を、これからの大学院生活、そしてその先の未来に活かし、一人の人間として国際社会に貢献できるようこれからも邁進していきます。

お世話になったUNIC職員の皆さん、同期のインターンの4人、本当にありがとうございました!

 

藍原健豊 / Kento Aihara】

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 日本人インターンの藍原です。私は今年の3月に栃木県小山市にある白鴎大学を卒業し、夏からタイの大学院に進学する予定です。その間の期間を利用し、国連広報センター(UNIC)にてインターンシップを行いました。私は幼少期から日本の外の世界に興味があり、漠然と世界に関わる仕事がしたいと考えていましたが、国連もその夢の一つでした。私は学部生のときに経営学、特に観光産業にフォーカスして学びましたが、その自分が得意とする分野が国連でどのように貢献できるかを知る上でも実際に国連インターンをするのは大変有益だと考えていました。そして今回“百聞は一見に如かず“をモットーに、ここUNICに携わることで国連の現場を肌で感じることができました。UNIC 国連のあらゆる部署の活動や情報を管理、発信する組織ですので、インターンを通して国連の仕組みを包括的に理解を深めることができたと思います。

私がインターンをした時期はまさに、2015年に国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)を推進していく活動の最中でした。UNICも日本社会にSDGsを知ってもらうために様々な広報活動を行っていますが、私が微力ながらそのお手伝いをできたことを嬉しく思います。SDGs2030年までの持続可能な開発目標であり、プロジェクトはまだ始まったばかりです。大々的なことではなく、我々一個人が日常生活で今すぐにできることが沢山あります。世界はもちろんのこと、身近な生活自体ももっと良くなるはずです。15年後、世界はどう変わっているのでしょうか。私のインターンは終わりますが、これからもSDGs推進活動に協力できればと思います。

地元の栃木県から毎日電車でUNICへ通勤するハードな生活でしたが、この経験が大学院進学、ひいては自分の将来において必ず役に立つものだと確信しています。職員の皆さんにも沢山お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。最後に、同期のインターンのメンバーに恵まれたと感じています。5人全員がバラバラのバックグラウンド、専門分野だったので一緒に仕事をする毎日が非常に新鮮でした。和気あいあいと楽しい3ヶ月間をありがとう!

 Hi, my name is Kento. I worked for the United Nations Information Centre in Tokyo as an intern for the last couple of months. I have been interested in overseas and international organizations such as the UN since I was little (I lived in Japan for over 20 years). I just graduated from university majoring in business, especially focusing on travel industry management, and used to wonder how I could contribute to the UN with my field of study. Therefore I decided to apply for this internship and fortunately got accepted. As a result, this experience at UNIC turned out to be fruitful for me as I had countless opportunities to learn how the UN works, which is composed of various departments. Likewise, I am glad that I was able to participate in promoting the project of SDGs (Sustainable Development Goals), which were officially adopted in 2015. This project lasts until 2030, and I truly hope that our world becomes better and better, contributing to some goals of SDGs.

Through the internship, not only have I learned about the roles of the UN, but I was also able to interact with many people who have distinctly different backgrounds including career, which without doubt would lead me to the next step in my life. To the prospective interns, if you are interested in this internship, DO NOT HESITATE, JUST ASK THE OFFICE! I hope you guys will seize the chance and have a great experience here at, UNIC! f:id:UNIC_Tokyo:20160629151347j:plain  誕生日が同じ根本かおる国連広報センター所長と一緒に。似顔絵はChristinaが描いてくれました(617)

  

【Christina Mihoko Deakin】 f:id:UNIC_Tokyo:20160614115201j:plain

 Ei will be graduating from ICU (International Christian University), June is finishing up her master’s thesis in law at University of Tokyo, Kento is preparing to complete a masters course in Thailand, and Machiko is a HIV/AIDS specialised doctor. Machiko and I will both return to our studies in the UK this September. All five of us were UNIC interns, however, we were all in such different stages of our lives.

I joined the UNIC internship programme for three months after experiencing internships around other offices in the United Nations University, however, I found this internship to be unique. I became increasingly aware that it was difficult to disconnect from the office after hours. From morning to night, my phone would buzz with little updates  and messages of encouragement from the other interns, from important messages relating to train delays and sick leaves to funny photos and uplifting remarks. We have a growing chat history that reflects teamwork.

Despite joining the internship programme for different reasons, we were working and communicating together to compete tasks and projects. I think teamwork was one of the most valuable lessons I learned in the UNIC Tokyo office. My world also expanded. I recall many significant moments, such as listening to the director practice her speech in the back of a taxi, going to press events, and being involved with the Secretary-General’s visit to Japan.

However, I also treasure the quiet moments when friends and staff exchanged their experience and stories with one another, or when the office supported me in picking up my first phone call in Japanese. In full retrospect, my internship experience with UNIC Tokyo was extremely positive, and I am very lucky and glad to have been apart of this office.

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                  ~ Fin.~

 

女性のエンパワーメントが世界を変える(4)

 より良いジェンダー平等を日本から

~福香代子 UN Women 日本事務所所長のインタビュ~

 UN Women 駐日事務所の開所式が、8月30日に安倍晋三首相ら出席のもと東京で行われました。UN Womenの連絡事務所の開設は世界で4番目、アジアでは初めてです。世界のジェンダー平等推進において要となることが期待されます。これに先立ち、福嶌香代子所長にお話を伺いました。

(このインタビューは7月8日に行われました。)

 

【 聞き手:国連広報センター 所長 根本かおる】

 

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                 8月30日の開所式

 

福嶌香代子UN Women日本事務所長

 

上智大学国語学部卒。外務省に入省後、米国での研修(フレッチャー法律外交学院で修士号を取得)を経て国連,広報文化,開発,環境,科学技術などの分野での外交に携わる。外務省で国連教育科学文化機関(UNESCO),国連貿易開発会議(UNCTAD),国連宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)などを担当し、2003~06年、国連大学でプログラム・オフィサーを務める。海外では、アイルランドとタイの日本大使館、ニューヨークの日本総領事館で広報文化を担当。2015年4月から現職。

 

 

新事務所開設にあたって

 

Q新事務所開設というのは、大変エネルギーが必要な作業ではないですか?

 

A. 本当に一からのスタートでしたが、NY本部のサポートを得ながら普通では携わることのできないような経験をすることが出来ました。UN Womenと日本は非常に良好な関係を築いており、日本事務所の開設によって、さらなる発展が期待されています。

 

Q 国連でのお仕事は初めてですか?

 

A 国連の仕事は2回目です。私は外務省の出身ですが、一度国連大学で働いたことがありまして、そこでは日本の大学で勉強している開発途上国からの留学生を支援するための育英資金貸与プログラムの立ち上げを担当しました。今回の国連でも立ち上げの仕事を担当することになりました。 

 

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            香代子UN Women 日本事務所長

 

 日本における女性のエンパワーメントと男女共同参画への課題

 

Q 女性の社会進出、権利向上などが日本で大変注目を浴びる中で東京に事務所が開設になりますが、その点においてはどのような抱負を持って臨んでいますか?

 

A 日本政府が力を入れている政策に連携して、UN Womenのこれまでの取り組みや経験を活かせるようにしていきたいと思います。また、色々な活動を進めていく上で、一般の方にもUN Women がどのような機関であるかを知って頂きたいので、様々な方たちと連携して色々な協力やアウトリーチを進めたいと思っております。

 

Q 日本で安倍政権が女性活用を呼びかけている反面、日本での女性をとりまく地位は国際的に見て高くはありません。どのような点に着目して、日本の取り組みを支援していきたいと思っていらっしゃいますか?

 

A 一つには、安倍総理が力を入れられている女性の経済面での自立ですね。これはUN Women も優先分野として活動しております。また、日本が国連の場でも貢献している平和維持活動や防災への取り組みなどについても、ジェンダーの配慮はこれからますます重要になっていくと思います。 

 日本では東日本大震災など、色々な災害で女性が被害を受けるということはとても多いと思うのですが、それらの復興に向けて女性の力を活かすことが非常に大切です。その点についてUN Womenは、復興計画の中にジェンダーの配慮をする形などでの復興支援の活動をしているので、そのようなところを連携していければと思っております。

これらの分野に限るということではありませんが、特に日本が優先課題として取り組んでいるところを含めて、UN Womenが連携して取り組んでいければと思っております。

 

 Q 被災地の女性から漁業組合の組合員資格が女性は事実上排除されているとうかがい、驚いたことがあります。

 

A. 実は、これはどこにでも存在する問題です。世界的に見て、4分の3の男性が労働市場にいるのに対し、女性の数は半数程度です。UN Womenが最近発表した、「世界の女性の進歩(副題:経済を変える権利を実現する)」という報告書によると、発展途上地域において働く女性のうち最大で95%が非正規雇用であり、労働法や社会保護に守られていないという状況が見受けられます。全ての労働市場や産業における女性のリーダーシップの発揮や参加は考慮されるべき事項です。漁業とは少し違うのですが、世界でも例えば農地の所有権が女性には与えられていないにも関わらず、実際に農地を耕し作物を育てているのは女性であるという現実がありますね。そういった場合、UN Womenでは、農業でしたらFAOなどど連携して活動するわけですが、その中で例えば女性がある村で新しい農業の取り組みをする際に、女性が意思決定の場においても参画するようになってからその取り組みが成功したという例も報告されています。そのような形で、女性の参画やリーダーシップを発揮する機会を増やすことが全体の利益につながると認識するなど、そういった思索が続くと非常に良いと思っております。

         

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    ネパールの地震被災者の女性のために緊急支援物資を袋詰めするUN Womenのパートナー達

 

UN Womenが行っている取り組み

 

Q女性に目配りした制度が女性を含む形を作るには、政治の場での女性の参画が大変重要になると思いますが、下院における女性議員の割合を見ると、日本は10%未満で、世界で114位ですね。女性の政治参画を促進する上で、日本ではどのような取り組みが必要だと思われますか?

 

A ご存知の通り、日本だけでなく世界各国においても、女性のリーダーシップと政地参画の機会は限られています。選挙権を持つ女性の数が少ないだけでなく、議員、公務員、民間部門、または学界であれ、リーダーの地位に立つ女性は少ないのが現状です。こうしたことは、リーダーや変革の担い手としての女性の能力が証明され、民主政治に平等に参画する権利があるにもかかわらず起きています。UN Womenのリーダーシップと参画に関するプログラムは、女性の参画に対する国際的な公約の歴史に基づいています。女子差別撤廃条約(CEDAW)は公的な場に女性が参加する権利を認めており、北京行動綱領は平等な参画への障壁を取り除くことを求めています。また、ミレニアム開発目標MDGs)は、議席に占める女性の割合がジェンダー平等への進歩をはかる一つのものさしになるとしています。こうした目標に向けて、私たちは女性の政治候補者の能力構築を支援し、投票者にジェンダー平等についての市民教育を提供しています。また、ジェンダー平等の提唱者が政党や政府などに女性をエンパワーする上で役割を果たすよう求める支援もしています。さらに、ジェンダー平等を公共政策策定の中心に据えるために若い男性や女性に活動を促すイニシアティブもあります。UN Womenは、女性が投票者として、候補者として、議員として、さらには市民社会の一員として政治の場に公正にアクセスできるように、法や憲法の改正を行うことを提唱しています。また、国連の国別チームと協力し、市民社会と協働して選挙管理プログラムに取り組み、選挙に伴う暴力のない投票やキャンペーンができるなど、女性の権利を支援する選挙ができるように努めています。

 

また、UN Women 昨年の9月から行っている「HeForShe」というキャンペーンをご存知でしょうか?女性の参画・平等を進めるためには男性の理解と協力が必要ということで、女性の平等とジェンダーのエンパワーメントに賛同いただける男性を中心に署名を頂いて、その活動が今世界中で広がりを見せています。このキャンペーンを促進するために、今年の3月の世界経済会議ダボス会議でUN Womenが、10の国の元首、10の大学指導者、10のビジネス指導者、に参画を頂いて更に取り組みを進めていく「IMPACT 10×10×10(インパクト・テン・バイ・テン・バイ・テン)」というイニシアティブを発表しました。この取り組みに安倍総理に署名、参画いただいたという例がございますので、こういうところからさらに活動が広がっていけばいいと思っております。

また、政治関係とは別になるのですが、IMPACT 10×10×10に名古屋大学に参加いただきました。名古屋大学では学内だけではなく、政府ですとか民間の色々な関係者の方々と連携して女性の参画、エンパワーメントを進めてくださるとういことですので、非常に心強く感じておりますし、連携していければと思っております。

              

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   (左)UN Women 親善大使 エマ・ワトソン (右)HeforShe ロゴ

 

Q ビジネス界では、日本は女性のエンパワーメント原則(WEPs)に署名している企業の数はもっとも多い国ですね。企業トップのコミットメントが社内での施策であったり、女性の採用・昇進の等々につながればいいのですが。

 

A そうですね。WEPsは世界中のビジネスリーダーからも大きくご支持をいただいているツールです。2010年6月時点では署名数が39であったのに対し、2015年6月時点では全世界1,000を越える企業のトップの方からの署名が集まっています。これは企業活動やバリューチェーンにおいて女性の活躍を推進することが、企業にとっての利益となることを実感していただいていることの表れです。また、最近では、6月8日に開かれた2015年G7サミットの首脳宣言で、G7の元首がWEPsへの支持を表明し、7つの原則を企業活動に取り入れるよう要請しました。日本においても、UN WomenはWEPsに署名いただいた企業と協力し、関係をさらに強固なものにしていきたいと思っております。

 

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              根本かおる国連広報センター所長

 

今後の展望への意気込み

 

Q ジェンダーの問題は本当に各人一人ひとり意見を持っていて、様々な議論が巻き起こる問題だとは思いますけれども、国連という立場でそういったものを一手に引き受けられるということでどのような意気込みをもっていますか?

 

A 今まで外務省の中で色々な国の色々な人の考え方を聞いて、交渉・相談をして、できるだけ折り合えるところで合意していくような経験がありましたので、そういうものが活かせればといいと思います。

 

Q 福嶌さんが個人的な思いもあって、ぜひこれは力を入れてやりたい分野や取り組みはありますか?

 

A やはり日本にとってUN Women事務所が役立つ、つまりできてよかったと思って頂けるようにするのが一番なんですけれども、一つには、私自身も子どもを育てながら仕事を続けてきたこともありますし、たまたま二人とも娘ですので、そういう若い世代、若い女性にとって将来がより良いもの、つまり機会がある輝かしいものであってほしいなという個人的な願いもございます。

 

 

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オレンジ色にライトアップされる国際連合本部ビル(左)とエンパイア・ステート・ビルディング(右)

 

Q 今後企画・計画していらっしゃるイベントや取り組みはありますか?

 

A 8月30日に、文京シビックセンターにおいて、事務所の開所式を予定しております。これは、「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム World Assembly for Women in Tokyo: WAW! 2015」の会議が8月28日・29日に行われるのに続き、8月30日に予定しています。ムランボ=ヌクカUN Women事務局長はWAW!に加え、この開所式に出席します。秋は大学と共同してのシンポジウムですとか、女性に関する会議に出席させて頂いて、UN Womenの活動について報告させて頂くことを計画しております。そして、11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」はUN Womenにとって非常に重要な記念日です。毎年オレンジをテーマカラーに、12月10日の「人権デー」までの16日間を「性差別による暴力をなくすためのキャンペーン期間」(16 Days of Activism against Gender Violence)として、世界中でオレンジのライトアップイベントなど、様々なキャンペーンを行います。日本でもそれに倣って、女性に対する暴力撤廃について人々の関心を高めるために、何か企画できればと思っております。

                  

         

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2015年春季インターンを終えて

今年の3月末から国連広報センターで働いた3名のインターンが6月末に卒業しました。

UNICでの体験を振り返り、今後の抱負を語ってもらいました。

 

インターンとして参加したイベント

 

 

国連70周年記念講義 @ 明治大学 (3月27日)

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国連Weeks @ 上智大学(6月8日)

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100万人のキャンドルナイト(6月21日)

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国連訪問

 

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江川温子(えがわ あつこ)

 

私は開発途上国の教育の普及に取り組むため、今秋イギリスの大学院で開発学を学びます。

大学卒業後、民間企業で勤めていた私にとって、UNICでのインターンは毎日が勉強でした…国際外交の第一線で活躍されている方々や国連の高官と直接お話しをさせていただく中で、地球規模の課題に取り組む姿勢や手法を間近で学ぶことができたのも、国連を統括する事務局に属し、広報という多角的な仕事をしているUNICだからこそだと思います。

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相沢育哉 (あいざわ いくや)

 

今年の9月から英国の大学院でカリキュラム開発の勉強をします。同時期にインターンとして業務に取り組んだ江川さんと同様で、私も大学卒業後に民間企業での勤務を経験した後にUNICでのインターンを開始しました。日々の業務は大変に刺激や学びが多く、大いにやりがいのある仕事ばかりでした。国連という枠組みで働くからこそ関わることのできるダイナミックのある業務にも職員の方々の指導を受けながら、携わることができました。

私にとって、日々の業務や参加するイベントを通して最も印象深かったことは、国連職員や外交官の方々が日本の若者に対して抱いていらっしゃる大きな期待や想いでした。アンダーレプと表現される、分担金の割合に応じた国連職員全体に占める日本人職員の割合の低さが訴えられる今日、日本の若者が国連に入り、グローバルな課題の解決に取り組んでいくことの重要性を身をもって感じました。今後の世界規模での平和構築は、チャレンジ精神にあふれる可能性に満ちた若者に託されていると思います。このUNICでのインターンを通して、学んだ事柄は将来のキャリア形成において非常に有意義なものでした。このように素晴らしい機会を与えて下さったUNICの職員さん、そして共に業務に取り組んだインターンの皆様、本当にどうも有難うございました。

 

仲本真理子 (なかもと まりこ)

 

日本人インターンとして活動させて頂きました仲本真理子です。今年3月に慶應義塾大学文学部を卒業し、9月からロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでメディアと開発学の修士号を取得予定です。私は大学在学中の留学以外は20年以上日本に暮らしていたため、国際色豊かな顔ぶれに大変刺激を受けました。国際機関の広報活動という実務に携わることで国際情勢を生活の一部として身近に感じられただけでなく、持続可能な開発や地球温暖化など地球規模の課題を扱い第一線で活躍する人々と関わることができ、日本人としてグローバルなキャリアを考える大変貴重な機会を頂きました。また、同期のインターンが偶然にも全員英国へ進学予定だったため、同じ境遇の友人に出会い語り合うことができたのはこの3ヶ月の貴重な財産でした。

インターンに応募して下さる方々にとって、あっという間だけれど濃いこの3ヶ月間が、世界を舞台に働く将来を考える一助になればと思います。

 

キム・ガウォン

 

こんにちは。3ヶ月間UNICでインターンした韓国出身のキム・ガウォンです。小学時代と高校時代を海外で過ごしたことから国際情勢、特に東アジアの問題に興味を持つことになりました。今年の9月に早稲田大学国際教養学部を卒業し、来年、ロンドンの大学院に進学して国際関係学の修士号を取得する予定です。国際機関でのキャリアを夢見ていて、UNICでインターンすることにしました。UNICでのインターンシップを通じて国連の仕事に接することができて、この経験は今後のキャリアの勉強になると思います。国際的な職場で働きたいと思う方なら、UNICでインターンとして働いてみませんか?

 

My name is Gawon Kim and I have been an intern at UNIC Tokyo for the past three months. As a Korean growing up with international experiences, I have always been interested in international affairs, especially East Asian issues. I am due to graduate from School of International Liberal Studies at Waseda University this September, and commence my postgraduate studies in international relations in LSE next year. Since I am highly interested in working at an international organisation, I decided to participate in the UNIC Tokyo internship programme.

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My internship at UNIC Tokyo was an excellent introduction to the work of the UN and I am confident that the experience will greatly help me in my further pursuit of the organization. I would recommend this internship to any young person interested in an international career, student or professional, Japanese or non-Japanese.

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「異文化理解とメディア」

国連広報センターインターンの仲本真理子・大和愛采・飯干ノアです。

NHK日本賞国連アカデミック・インパクトのメンバー大学である上智大学が主催する、国連広報センター後援の特別シンポジウム「異文化理解とメディア」が6月19日に開催されました。本シンポジウムは、上智大学国連Weeksの一環として、国連創設70周年とNHK日本賞50周年を記念して行われました。上智大学の学生のみならず、一般の高校生から教職員まで来場し、盛況を納めました。

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                 パネルディスカッションの様子

日本賞は、教育・教養番組作品を世界各地の放送機関から募集し、その作品の内容や教育性を審査するNHK主催の国際番組コンテストです。本シンポジウムは、2013年日本賞グランプリ受賞作品「Cultural Shock」の上映から始まりました。本作品は、ジプシーと呼ばれてきた移動民族のロマの血を引く大道芸人ラシードと、イタリア人の大学生アニェーゼが、ラシードのルーツとアイデンティティを探しにバルカン半島を10日間旅をする姿を追った、ドキュメンタリー映画です。

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                  橋本 典明日本賞事務局長

作品上映に続き、モデレーターとして音 好宏上智大学メディア・ジャーナリズム研究所長を迎え、パネリストとして根本 かおる国連広報センター所長、竹中 千春立教大学教授・2013年NHK日本賞審査委員、廣里 恭史上智大学グローバル教育センター長・総合グローバル学科教授、阿部 るり上智大学新聞学科准教授が、異文化理解に果たすメディアの役割について、議論しました。パネリストそれぞれ、、国境を越えて異国の人々と繋がることのできるSNS、メディアが人々に異文化のイメージをもたらすこと、そして異文化理解において少数派(マイノリティ)の立場に置かれた人々の気持ちをイメージすることの大切さなどについて言及しました。

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                根本 かおる国連広報センター所長

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(左)竹中 千春立教大学教授・2013年NHK日本賞審査委員、(中央左)根本 かおる国連広報センター所長、(中央右)廣里 恭史上智大学グローバル教育センター長・総合グローバル学科教授、(右)阿部 るり上智大学新聞学科准教授

今回のシンポジウムは、国際関係、メディア研究、そして開発教育の分野で活躍している方々のお話を聞くことができ、メディアが良い意味で異文化への理解を深めること、そして悪い意味で偏見や先入観を人々にもたらすことについて、深く考えさせられました。インターンとして、国連の広報活動に日々携わる者として、身が引き締まる思いがしました。

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           シンポジウム後に高校生と話す根本 かおる国連広報センター所長

 

「21世紀の国連‐創設70周年を振り返り、未来を構想する」

国連広報センターインターンの飯干ノアと江川温子です。

国連アカデミック・インパクト(UNAI)のメンバー大学である上智大学が主催する国連Weeksの初日、6月8日にアンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表を迎えて、特別シンポジウム「21世紀の国連‐創設70周年を振り返り、未来を構想する」が開催されました。私たちインターンも参加した当日は、上智大学の学生だけでなく、教職員や一般の高校生で会場は満席となりました!

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アンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表

ケイン上級代表は、国連が世界の平和に多大なる貢献を行ってきた一方で、国連平和維持活動(PKO)に当てられる予算に対して世界の軍事費用が約200倍にもなることに触れ、国連の費用対効果の高さを強調しながら、国連平和維持活動への国際理解と協力の重要性を訴えました。

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明石 康元国連事務次長(左)、植木 安弘上智大学総合グローバル学部教授(中央)、春原 剛日本経済新聞編集委員・上智大学客員教授(右)

続く、春原 剛日本経済新聞編集委員・上智大学客員教授の進行のもと行われたパネルディスカッションで明石 康元国連事務次長は、「国連は、様々な制約がある中で、長期的にみて国際社会を良い方向へ向わせるため、かなりの成果を収めてきた」と述べました。また、元国連広報官の植木 安弘上智大学総合グローバル学部教授も、国連で平和への権利を世界人権宣言のように国際法典化しようと促す決議が採択されたことを評価しました。

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パネルディスカッションの様子

最後に、将来国際機関で働くことを目指す若者たちへのアドバイスを求められたケイン上級代表は、「国連で働くということは、世界中の人種や文化と向き合うということであり、容易なことではない。けれど、大きな変化でなくとも、世界を良くするための小さな変化を起こせていることを実感できる。これこそが、国連で働く醍醐味だ」と会場の若者たちを激励しました。 

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国連平和維持活動に従事する隊員たち ©UN Photo/JC McIlwaine

今回のシンポジウムは、冷静かつ説得力のあるプレゼンテーションをされたケイン上級代表をはじめ、日本を代表して国際外交の第一線でご活躍されてきた方々のお話を間近で聞く事ができ、国際社会の一員として、個人がどのように国際平和に貢献できるかを考える、貴重な機会となりました。   

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高祖敏明 上智学院理事長、早下隆士 上智大学学長とともに

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ケイン上級代表、根本国連広報センター所長、国連公報センター インターンとともに

 

関連リンク:

あなたにとって国連とは:ひとりの日本人女性として考える過去、現在、未来について

 

国連広報センターインターンの仲本真理子です。

4月20日、国連創設70周年記念「いま、日本から国連を考える」セミナー・シリーズの第2回目が、明治大学で開催されました。今回のテーマは、「Your United Nations: past, present, and future from a Japanese woman’s point of view(あなたにとって国連とは:ひとりの日本人女性として考える過去、現在、未来について)」。

根本かおる国連広報センター所長が講演しました。

 

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 「なぜ国連が創設されたのでしょう、それも1945年に。皆さん分かりますか?」(根本所長)

「戦争が終わったとき、世界中の国々が平和をつくろうとしたからです」(学生)

 

国連の掲げる三本の柱、国際平和および安全、人権、開発。根本所長は「Human Rights(人権)」について、世界人権宣言を手に学生と対話しました。

人権や男女平等という考えがまだ世の中に浸透していなかったころ、女性に対するあらゆる差別をなくそうという国際社会の動きがあり、1979年の国連総会で女子差別撤廃条約(CEDAW)が採択、1981年に発効されました。日本がこの条約に批准したのは1985年のことです。これを受けて日本では、1986年に男女雇用機会均等法が施行されます。この頃、根本所長はテレビ局のアナウンサーから日本で女性初の政治記者として報道に関わる転機を迎えました。

 

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難民支援の現場で女性の言葉に寄り添う根本所長。

 

休職中に留学した米国の大学院で出会った人々について、「They were not just my classmates, they were also activists and practitioners. (ただのクラスメートではなく、彼らは行動家そして実践家でもあった)」と根本所長は振り返ります。

また、その後JPO派遣制度で勤務することとなった国連難民高等弁務官事務所UNHCR)では、命からがら避難してきた難民の女性たちが過酷な環境の中でも女手一つで家族を養うなど、支えあって生きる人々の姿を目の当たりにしたといいます。

社会的に弱い立場にある人々も含め共生するために、意思決定に女性が主体的に参画することが重要であり、同時に女性のエンパワーメントには男性が関心を持って参加することが必要不可欠であると強調し、講演を締めくくりました。

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UN Women親善大使のエマ・ワトソンさんは、世界中の男性たちにジェンダー平等に向けた運動への参加を呼びかけています。ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー役で世界中に絶大なファンを持つ彼女は、「He For She」キャンペーンを広め、女性の権利と完全な男女平等を支援する世界規模の男女連帯運動を推進しています。   

 

講演後には多くの学生が手を挙げ、根本所長に質問を寄せました。記者や国連でのキャリアを選択した理由を「The starting point is the same: getting interested in the challenges or difficulties of people, and listening to them.(始まりは同じです。それは、人々の困難に関心を持ち、耳を傾けることです。)」と語った根本所長の言葉が心に響きます。「国際協力」、「支援活動」というと大それた言葉に聞こえ遠い存在に感じてしまいがちですが、人々の気持ちを思いやり、寄り添う心が国際社会における平和構築につながる本質なのだと感じました。根本所長のお話は、将来の選択をするうえで国連の活動を身近に感じる貴重な機会となりました。

 

来年は、日本が国連に加盟してから60年を記念する年です。

今年の国連創設70周年から続く節目の年に、今年度新たに枠を拡大したJPO制度や、新しく東京に設置されるUN Womenのオフィスについての説明もありました。

今後の国連と日本の動きに注目し、広く伝えていきたいと改めて感じました。

 

次回は5月25日、赤阪清隆元国連事務次長を迎え「Post-2015 Development Agenda」についてご講演いただきます。

 

※ 本セミナーの第2回目から第5回目までは国連アカデミック・インパクト参加大学を対象に英語で開催されています。メンバー校の大学生ならびに教職員のみなさまは奮ってご参加ください。

 

プログラム詳細や会場については、国連広報センターの下記ウェブページをご覧ください。  http://bit.ly/1FQ96WU

 

関連ビデオ:

70 years of archive treasures

すぐ分かる女子差別撤廃条約(CEDAW):非差別

グーグル・オートコンプリートの真実 - 当たり前は当たり前じゃない -- ここから対話が始まる

エマ・ワトソン UN Women 親善大使 国連でのスピーチ

マララ・デー:すべての子どもに教育を (2013年7月12日)

国連で働く女性たち

 

国連のこれまでとこれから  ~日本の抱負を活かした外交を探る~

国連広報センターインターンの江川温子と相沢育哉です。3月27日、国連広報センターは明石康国連事務次長をお迎えして国連創設70周年記念「いま、日本から国連を考える」セミナー・シリーズ(全6回)のキックオフ・シンポジウムを、明治大学で開催しました。(明治・立教・国際の3大学による大学間連携共同教育推進事業「国際協力人材」育成プログラム)との共催)シリーズ第一回目の本シンポジウムは明石康国連事務次長のお話を直接聞ける貴重な機会とあり、事前に約200名の参加申し込みがありました。

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明石康 氏

1954年東京大学卒。バージニア大学大学院、フレッチャー・スクール大学院に留学後、1957年国連入り。1970年代には日本政府国連代表部で参事官、公使、大使を務める。1979年から1997年、国連の広報担当事務次長、軍縮担当事務次長、カンボジア暫定統治機横(UNTAC)の国連事務総長特別代表、旧ユーゴスラビア問題担当国連事務総長特別代表。人道問題担当事務次長を後に退官。現在、公益財団法人国際文化会館理事長、スリランカ平和構築及び復旧・復興担当日本政府代表、神戸大学特別教授等。

 

国連との出会い」

「太平洋戦争に敗れた日本が、1956年12月18日、国連の加盟国として承認された日、ニューヨークの国連本部で歴史的な瞬間を垣間見た」 明石氏は日本が国連に加盟することが決定した瞬間、重光外相の使命感に満ちた演説を間近に聞き、その経験がその後の人生に大変大きな影響を及ぼしたと言います。フルブライト留学生としてフレッチャー・スクールで学んでいた当時に、たまたまその日国連を訪問し、その感動的な場面に立ち会ったことから、翌年、日本人として初めての国連職員になることを決心されました。以後、明石氏が国際社会でご活躍を続けてこられたことは周知の通りです。私たちインターンも直接明石氏の国連との出会いの瞬間やその背後にある強い想いを聞く中で、若い世代にも、国連職員になることを目指し、国際社会の平和構築に将来貢献出来るチャンスがあるのだと強く感じました。

 

「地に足をつけたオプティミズム

戦後の国際情勢のめまぐるしい変化とそれを受けた国連の働きについて、明石氏は実体験を踏まえ歴史的な大局観をもって語られました。特に印象的だったのは、日本の平和主義を正しいとしながらも、国として軍を一切保持しないという考え方は楽観的過ぎるのではないかと述べられたことです。日本が平和構築のビジョンと夢を持って再スタートしてから、戦後の70年が経ち、国際情勢が急変する今、憲法第9条第2項の「戦力の不保持」について改めて議論することは、国の重要なプロセスであるということを学びました。

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また、明石氏はベルリンの壁崩壊までの冷戦時代に、植民地になっていた国々が独立し、国連に加盟する国の数が創設当時の51カ国から現在の193カ国にまで増えたことは国連の最も大きな功績のひとつだと称えられました。この国連加盟国数の増加は、環境・貧困・開発等の地球規模の問題解決に向けて共に行動していきたいと世界が切実に願っている証拠であると感じました。

 

基調講演の最後には、日本が国際社会の一員として、大切にしてほしいことは「地に足をつけたオプティミズム」と唱え、「日本が国連の一員として今後冷静な分析を行い、綿密な作戦を立てる必要がある。さもなければドンキホーテのような現実離れした存在になる」と強いメッセージを残されました。そして、日本が常任理事国になることだけではなく、人材育成、インフラ整備、軍縮、平和構築、人口政策など、「日本らしく、長期的な相手のことをきちんと考えた、創造的な取り組みをしていくことが国際社会から期待されている」と熱い想いを伝えられました。

 

「交渉術/上辺はソフトに、内には強い芯を」

基調講演に続いて、国連が取り組む課題解決のため、今、若者たちに何ができるのかをテーマに、根本所長の進行のもと、3大学の学生代表5名と明石氏による世代間クロストークが行われました。登壇された学生代表は、明治大学のPham Anh Quocさん、伏見美保さん、立教大学の畑中昴淳さん、黒田真歩さん、国際大学の保坂早紀さんです。

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根本かおる国連広報センター所長が聞き手を務める世代間クロストーク

 

学生代表からは平和、気候変動、教育についての質問や意見が投げかけられ、明石氏は、ご自身の経験談を交えながら、国連の活動範囲の限界、組織的な制約、そして、国家間の交渉は1対1の対話が非常に有効である等、率直かつオープンに話してくださいました。また、「日本の将来にとって一番危険なことは、外に目を向けず、平和で安全な環境に安住してしまうことだ」とし、私たち一人一人が経験を蓄えて、視野を広げることで、国連に限らず企業やNGOなどを通じても、世界的な世論を作る活動に関わることができると参加した学生たちを激励されました。

 

さらに、国際問題の解決のため日本人としてどう貢献できるかという会場からの質問には、日本が得意とする分野で積極的に関わるべきだとして、国連PKO活動において、日本が医療、輸送、土木等の後方支援で貢献している例を紹介されました。一方で、「日本人であることを誇りに思うが、日本人だけが享受できる隠れ蓑に隠れることは好きではない。自分の国籍を考えて行動することはなかった」と述べ、「重要なのは国境、文化、宗教を越えて、仲間を作ること。日本人であることを意識しなくなったその時こそ、国連のため、世界のための活動ができるだろう」と締めくくり、まだまだ多くの質問が寄せられる中、惜しまれながらクロストークは終了しました。

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明治・立教・国際大学の学生代表とともに

 

「未来のバトンはあなた達の手の中にある!」

明治大学立教大学国際大学は、世界の高等教育機関国連をつなぐ国連アカデミック・インパクト(UNAI)の参加大学であり、今回のセミナー・シリーズも三大学と国連広報センターの連携により実現することができました。

 

開会・閉会の挨拶をいただいた長尾進 明治大学副学長、白石典義 立教大学副総長、信田智人 国際大学副学長は、「未来を信じる希望をもって国際課題に取り組む姿勢を、明石 元国連事務次長と若い世代の意見交換を交えて学ぶことができ、今回のセミナーは大変有意義だった」と、今後の国際協力活動に若い世代が関わることへの期待を寄せられました。

 

本ブログ記事を担当して

「国際社会の場で日本の強みを活かす場面はたくさんある。しかし、国籍を意識しすぎることなく、素直に相手を慮る姿勢こそ文化的価値観の違いを超える鍵である」この明石 元国連事務次長の言葉に強く感銘を受けました。また、同世代の若者が世界規模の課題について自分の意見を述べる姿に大変刺激を受け、国際課題へ取り組むモチベーションをより一層あげる貴重な機会となりました。

 

今回のキックオフ・シンポジウムを皮切りに、全6回のセミナー・シリーズが開催されます。次回は4月20日、今回モデレーターを務めた根本かおる国連広報センター所長が、”Your United Nations: past, present, and future”をテーマに、国連アカデミック・インパクト校の学生を対象に英語でセミナーを行います。

プログラム詳細や会場については、国連広報センターの下記ウェブページをご覧ください。 → http://bit.ly/1FQ96WU