国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

SDGsを合言葉に広がる図書館ネットワーク (後編)

― 図書館研修会はどのように行われたか -

 

こんにちは、国連寄託図書館を担当している千葉です。

 

2020年1月23日―24日に国連寄託図書館の年次研修会を開催しました。

 

その内容を二部構成でお届けしています。

 

前編では、研修会に図書館のみなさんが持ち寄った、さまざまな取り組み事例をご紹介しました。

 

後編では、研修会の実際の様子をお伝えします。 

 

今年の研修会に参加したのは、国連寄託図書館と、その他のゆるやかにつながる図書館をあわせて、全部で25の図書館、40人近くの司書のみなさんです。

 

ゆるやかにつながる図書館からは4つの学校図書館にご参加いただきました。昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校、実践女子学園中学校・高等学校、長野県上田染谷丘高等学校、三田国際学園中学校・高等学校のそれぞれの図書館です。

 

さらに三田国際学園中学校・高等学校図書館からは、司書の藤松先生と一緒に、生徒会の図書委員として活動する15歳の少女、小池日和(ひより)さんが学校の授業の合間を縫って、研修初日に参加してくれました。

 

10代の若者の参加は初めてのことで、今年の研修会を特徴づけるものとなりました。 

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それでは早速、研修会の様子をご案内してまいります。

 

(研修スタート)

 

〇国連からのご挨拶

さあいよいよ、研修会がスタート。

 

まずは、弊センター所長の根本かおるがご挨拶しました。 

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数日前にインフルエンザから快復し、医師から外出の許しがでたばかりでしたが、研修会でみなさんと再会できるのを心待ちにしていた根本は満面の笑顔で、全国から集まった参加者のみなさんをあたたかくお迎えしました。

 

続いて、ニューヨーク国連本部から届いた参加者へのビデオメッセージが紹介されました。

 

メッセージを寄せてくれたのは、世界各地の国連広報センターを統括する国連グローバル・コミュニケーション局(DGC)のトップ、メリッサ・フレミング事務次長でした。

 

“A warm welcome to all of you on the other side of the world”

 

レミング事務次長ははっきりとした声で、図書館のみなさんの国連に対する支援に心よりの謝意を表するとともに、グローバルな諸課題の解決とよりよい世界の構築にむけて、人々の共感と行動を呼び起こすための一層の協力を求めました。

 

そして、学校図書館がこの研修に参加していることに勇気づけられているとしたうえで、学校図書館で図書委員を務める10代の少女も一緒にこの研修に参加していることを紹介すると、やわらかい笑顔で、小池さんの名前を呼びました。

 

“Hello, Hiyori, Are you here?”

 

「えっ?!」 

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会場の一番前に座ってメッセージを聴いていた小池さんは、いきなり自分の名前が呼ばれたことにびっくりして、思わず口に手を当てました。

 

“I have been told that you are now planning to promote the SDGs through your school’s library. I would like to salute you for that.” (訳:「学校図書館SDGs(持続可能な開発目標)を促進しようとしていると聞きましたよ。そのことに敬意を表したいと思います」)

 

緊張気味だった小池さんの表情は緩み、大きな喜びの表情に変わりました。

 

小池さんは、その後のセッションで、図書委員としての役割や活動、一冊の本のもつ力、図書館の重要性などについて、積極的に力強くたくましく発言し、研修会場にいる私たちみんなに若い新鮮な刺激と勇気を与えてくれました。 

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国連広報センターのブリーフィング)


〇今後1年間のアウトリーチ活動のヒントを提供

さて、初日の研修ではまず国連広報センターがアウトリーチに関するブリーフィングを行いました。

 

センターの全職員が参加し、それぞれの職域から、今後一年間の行事活動予定や優先課題、ニュースレターや冊子などの広報資料、ソーシャルメディアによる情報発信、パートナーとの協働事業など、国連広報センターの活動をご案内するとともに、図書館のみなさんのアウトリーチ活動に役立つ情報をご提供しました。 

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学校図書館での取り組みに活かそうと、さまざまな図書館から参加している司書のみなさんと一緒に、一所懸命にメモをとっている小池さんの姿が印象的でした。

 

(図書館におススメの体験型イベント)


SDGsブックトークを体験

続いて、体験型イベント「SDGsブックトーク」を実施しました。それぞれが他の人に推薦したい本を持ち寄って、SDGsのいずれかのゴールに関連づけて紹介するイベントです。小池さんも参加しました。

 

一番初めに、小池さんにおススメ本をみなさんに紹介してもらいました。そのあとは参加者のみなさんが2人ずつのグループをつくって紹介しあいました。2人ずつというのが一つのポイントです。前に出て発表するのが苦手な人も相手が1人なら恥ずかしがらずにできます。そして相手を変えながら繰り返すのです。研修参加者のみなさんも好きな本を紹介しあい、繰り返せば繰り返すほどに盛り上がっていきました。

 

一冊の本とSDGsのゴールを関連させて、地球に生きる人間が直面する諸課題と持続可能な未来へと思考を柔軟かつ豊かに広げ、それを言葉にして共有し、相手を変えながら繰り返す。子どもたちの主体的・対話的で深い学びの実現(「アクティブ・ラーニング」)に最適で、学校図書館などにおススメです。  

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SDGsブックトークが終わると、小池さんはこの日の最後の研修会場となった国連大学本部ビルをあとにしました。

 

小池さんは帰り際、学校図書館に戻ったら、研修会で学んだこと、気づいたことをもとに、いろいろな取り組みを考えてみたいと言ってくれました。その言葉には若い力強さがありました。

  

(3つの講演)

今年の研修は、「国連と地球的諸課題」、「女性差別撤廃条約女性差別撤廃委員会」、「高校生の模擬国連」の三つのテーマについて講演が行われました。

 

〇国連と地球的諸課題 - 国連広報センター所長が講演

 

まずは、国連広報センター所長の根本が、今年創設75周年(UN75)を迎える国連とその活動について、大局的な観点から、お話ししました。

 

私たち人間がいま立ち向かわなければならない地球的諸課題とはどんなものなのか。根本は、それら課題を解決するためのSDGsやパリ協定のもつ意義をあらためて強調したうえで、その実施状況や国連の活動などについて具体的な事例を示して説明しました。

 

そして、UN75に関しては、国連が世界の人々に耳を傾けるグローバル対話(Global conversation)のキャンペーンが始まっていること、そしてSDGsに関しては、2030年に向け、今年から「行動の10年」がはじまっていることをご案内し、図書館のみなさんに啓発・周知のための一層の協力を促しました。  

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女性差別撤廃委員会委員の秋月教授による講演

 

今年、外部からお招きしたメインのスピーカーは、女性差別撤廃条約のもとに設置された女性差別撤廃委員会(CEDAW)メンバーを務める秋月弘子氏(亜細亜大学教授)です。

 

北京女性会議で北京宣言が採択されてから25年を迎える今年、SDGsのゴール5「ジェンダー平等を達成しよう」にさらに取り組むうえでも、女性差別撤廃条約と委員会のことは図書館のみなさんにぜひ理解しておいていただきたいことでした。

 

秋月先生は、現在の委員会のことを内側から知る方です。女性差別撤廃委員会とは何か、どんな仕組みなのか、そもそも、女性差別撤廃条約とはどんな条約なのかということについて、わかりやすくご案内いただきました。また、ジェンダー問題の現在および今後の課題についても、示唆に富むお話をしていただきました。  

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〇「高校生の模擬国連」共同執筆者の後藤先生による講演

 

今年の研修全体に通底するテーマの一つは、小池さんの参加が象徴するように、子ども・若者でした。その一環として、もう一つの講演のテーマを「高校生の模擬国連」としました。

 

スピーカーとしてお招きしたのは、玉川学園中学部・高校部(国語科)の後藤芳文先生です。後藤先生は、日本の高校で模擬国連を導入した教育活動に尽力されている全国中高教育模擬国連研究会の中心メンバーであり、昨夏には、その他の先生方と一緒に『高校生の模擬国連―世界平和につながる教育プログラム―』(山川出版社)を執筆した方です。後藤先生には、高校への模擬国連の導入のしかたをご案内いただくとともに、図書館のみなさんにこの本を一冊ずつご寄贈いただきました。

 

**国連の日本人職員には中満泉事務次長をはじめ模擬国連経験者が大勢います。 

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(いろいろな施設を訪問)

 

毎年、研修では図書館のみなさんとさまざまな施設を訪れています。これまで、大学図書館国立国会図書館公共図書館、さらに東京・市ヶ谷のJICA地球ひろばやOECD東京センターなどのイベント施設や国際機関などを訪ね歩いて、その取り組みを学ぶとともに、ゆるやかなつながりを築いてきました。今年もいくつかの施設を訪問し、人と人のつながりができました。

 

 〇地球環境パートナーシッププラザを訪問 

今年お訪ねした施設の一つは地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)でした。GEOCは持続可能な社会の実現のために、多様な主体間のパートナーシップを育むことをミッションとしている組織です。

 

参加者のみなさんはGEOCを訪れ、施設内展示を見学するとともに、日本の各地域でのパートナーシップ実践について、職員の指澤佳代さんからお話を伺いました。

 

ちなみに今年は、耐震工事中の国連大学本部ビルの会議室が使えず、同ビル敷地内の別棟にあるGEOCで、研修の一部を実施させていただきました。 

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国連大学を訪問 

研修会は毎年、国連大学(UNU)図書館と協力して開催しています。初日に同図書館を訪れ、司書の勝美道子さんから、同図書館と国連大学サステナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の活動に関するブリーフィングを受けました。また、2日目には、同じくUNU-IASのプログラムコーディネーター荒木舞子さんからUNUの大学院プログラムについてくわしい説明を聞きました。 

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国立国会図書館国際子ども図書館を訪問 

今年の訪問先の目玉は国立国会図書館国際子ども図書館でした。国立初の児童書専門図書館です。テーマの一つを子どもと若者とした今回の研修会にまさにふさわしい訪問先でした。この訪問は初日に行われ、小池さんも一緒に参加しました。

 

同図書館の建物は1906(明治39)年に日本で最初の国立図書館帝国図書館)として建てられたもので、図書館のみなさんのなかにはこの図書館のことを書いた小説の『夢見る帝国図書館』(中島京子著)を読んだという方も多く、今回の訪問を楽しみにされていました。

 

ご案内は同図書館企画協力課の白井京さんと山上慶さんが担当してくださいました。

 

ご案内いただいたものの一つは世界の国や地域で出版された絵本。その中にはパレスチナの子どもたちのための絵本もありました。また、世界で読まれている日本の児童書のコーナーもありましたが、外国語に翻訳されたものはその国の文化にあわせて表紙の絵などが微妙に変えられていることがみなさんの興味を惹きました。また、子どもの読書活動推進を支援するコーナーもあり、そこにはブックトークビブリオバトルのやり方を説明した本も置かれていました。

 

今回の訪問を通じて、子どもたちのための図書館のつながりが生まれたことは大きな成果でした。

 

国連広報センターと同図書館もゆるやかなパートナーシップを構築しました。 

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(研修全体を通してネットワーキング)


〇つながりを確かめあうとともに、ネットワークを拡大

 

講演やブリーフィングの合間に、図書館のみなさんは講師の先生がたやその他の図書館の方々と活発に名刺交換や交流をしています。図書館のみなさんのネットワークを広げていただく場を提供することもこの研修会の大切な目的の一つです。今年の研修会でも、多くのつながりができました。 

 

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 (おわりに)

 

今年の研修に向けて、この一年間、東京や地方の公共図書館大学図書館学校図書館を訪ね歩かせていただきました。幅広い分野にまたがる本が収蔵されているのは当然ですが、図書館だからこそ、新しい本ばかりでなく古い本も、また安価な本ばかりでなく高価な本も、そして〇〇賞を受賞した本ばかりでなく、そうした賞は受賞していなくとも輝きを放ち人の記憶に残る本も置かれています。閲覧室でそれらの本を読むこともできるし、何よりも図書館だったら無償で借りることもできます。図書館を訪れるたびに、あらためてそのことを思います。 

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そしてまた、訪ねた先で司書の方々にお会いしていつも感じるのは、みなさんの本の力を信じる思い、そして信じるからこそ、図書館に収蔵する本を利用者の人に読んでもらいたいという思いです。とにかく本を読んでもらいたい、良い本を知ってほしい、触れてもらいたい、そして普段、本とは縁遠い人にこそ本との出会いを楽しんでほしい、という図書館のみなさんの思いに触れるたびに背筋が伸びました。1月の研修会では、そうしたみなさんの思いが、国連広報センターの職員をはじめ、講師の先生方や訪問先の方がたにも深く伝わっていました。 

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研修後、図書委員として参加してくれた小池日和さんを訪ねて、三田国際学園中学校・高等学校に伺いました。小池さんはいま研修で学んだことを参考に、先生方や図書委員の仲間たちと相談しながら、少しずつSDGs啓発のための取り組みを考えて実践していることを嬉しそうに話してくれました。この日、司書の藤松先生のほかに、国語科や数学科の先生がたが図書館に集まってくださり、小池さんと一緒に、それぞれの心に残る一冊の本について語り合いました。図書委員の小池さんの本への思いは、全国各地で私が出会った司書のみなさんに負けていませんでした。図書委員として頑張る中学生を見守る先生方の目はやさしくあたたかでした。


今後、新学習指導要領が小学校、中学校、高校で順次、全面実施され、SDGsがすべての生徒に教えられるようになります。そうした中で、さまざまな本を収蔵する知の拠点たる学校図書館こそ、学校における持続可能な社会の担い手の育成にあたって、異なる教科と生徒たちを横断的につなぐ主要アクターとしての活躍が期待できるのではないかと思います。学校図書館へと私たちのネットワークが今後さらに広がり、10代の図書委員のみなさんとの出会いもたくさん生まれてくることを想像すると、ワクワクします。

(了) 

*** *

SDGsすごろくで遊びませんか

ご自宅で楽しみながらSDGsを学べます

 

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『ゴー・ゴールズ』を楽しむ八王子市在住の柴田さんご一家 ー左から、悠生くん(中学3年生)、忍さん(お母さん)、愛歩さん(高校2年生)

 

都知事から外出自粛が要請された週末、知人に勧められて、ウェブページからダウンロードしたすごろくで、子どもたちと遊んでみたら、楽しい、勉強になるーって、子どもたちが歓喜の声をあげるんです。子どもたちにとっては、楽しくSDGsを学べる最高の教材だと思います。それに親の私たちも子どもたちと一緒に楽しい時間を共有しながら世界のことに視野を広げられて、我が家は、『ゴー・ゴールズ』に完全にハマってしまいました」

 

東京の八王子市にお住まいの柴田忍さんがSDGsすごろく『ゴー・ゴールズ』を体験し、嬉しい感想を寄せてくださいました。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で自宅学習する生徒の皆さんや、学びに楽しさを求めるご家庭にと、国連広報センターでSDGsすごろく「ゴー•ゴールズ」を3月13日から紹介したところ、ゲームを無料でダウンロードできるウェブページへのアクセスが増えました。

 

「ゴー・ゴールズ」はとても人気のあるコンテンツページで、いつも高いアクセスを誇っていますが、全国一斉休校が要請された3月には、半月ごとの統計で、そのアクセスがさらに高くなりました。そして、このページをひろく紹介しはじめてから3日後には今年に入ってから最多のページビューを記録しています。

 

日本各地で楽しんでいただいているご家族もすでに多いと思いますが、もっともっとたくさんのご家庭でお試しいただきたいと願っています。

 

遊び方は簡単。日本のすごろくとほぼ同じです。

 

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まずは遊戯盤、クイズを国連広報センターからダウンロード。すごろくの盤上には63個のマス目があり。サイコロを振って出た数だけコマを前に進め、SDGsの17の目標のいずれかのマス目で止まったら、クイズのカードを引きます。正解を答えれば、もう一度サイコロ を振ることができます。「2030」のゴールに最初にたどり 着いたプレイヤーが勝ち。サイコ ロを振って、ゴールまでピッタリの目をだしたら上がりです。

 

「ゴー・ゴールズ」は、ブリュッセルの国連地域広報サービスが Elyx の創作者ヤシン・アイトゥ・カシさんの協力を得て作成したすごろくで、英語、フランス語、中国語、アラビア語など20カ国語で提供されています。 https://go-goals.org/

 

日本語版は一年前に国連広報センターが作成しました。

 

ゴー・ゴールズ! すごろくでSDGsを学ぼう
www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/go-goals/

 

日本では、小学校で2020年度から、中学校で2021年度から、持続可能な社会構築の観点が盛り込まれた学習指導要領が実施され、お子さんたちが誰一人取り残されず、SDGsについて学ぶことになっています。

 

そうした中で、お子さんたちが自分たちで遊びながら楽しめる良い教材として、『ゴー・ゴールズ』をお勧めします。

 

また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、ご家族がご自宅で一緒に過ごす時間が長くなる今だからこそ、冒頭でご紹介した柴田さんご一家のように、ご家族で、SDGsすごろく「ゴー・ゴールズ」をお子さんたちと楽しみながら、人間社会が直面する諸課題と未来へとじっくり思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

SDGsを合言葉に広がる図書館ネットワーク(前編)

図書館はどのようにSDGsに取り組んでいるのか

 

こんにちは、国連寄託図書館を担当している千葉です。

2020年1月23日―24日、国連広報センターの主催で、国連寄託図書館の年次研修会を開催しました。その内容をご紹介いたします。   

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国連寄託図書館研修会議、2020年1月

毎年開催しているこの研修会には、国連寄託図書館に指定された全国各地の14の図書館と、その他にゆるやかにつながる図書館のみなさんが参集します。 

今年は、二日間の会期中、あわせて30近い図書館から40人ほどの参加がありました。 

この研修会については、2年前にもブログで綴らせていただき、国連広報センターが図書館のみなさんに対して、どのようにSDGsをはじめとする国連の優先課題や諸活動をご案内したり、今後一年間の取り組みのヒントをご提供したりしているのか、そしてまた、その研修会の場をどのように使って、図書館のネットワークを拡大・強化しているのかをご案内しました。 

今回のブログは少し趣向を変えて前編・後編の二部構成とし、まずは前編で、図書館のみなさんが研修で共有した過去1、2年間の取り組みについて、写真をお見せしながらご紹介したいと思います。 

図書館における取り組みは必ずしも大きなお金やマンパワーを投入したものではありません。その多くは、ちょっとした工夫やアイデアで、でも確実に、たくさんの利用者のみなさんをSDGsへと誘い、ゴール達成のための行動へとうながしています。

ここにご紹介する図書館のさまざまな取り組みが良き参考事例あるいは後押しとなり、全国各地の街の図書館、あるいは学校の図書館でのSDGsへの取り組みが広まることを願っています。

 

それでは早速、図書館でのSDGsへの取り組みをご紹介してまいります。

 

 日本十進分類法ならぬ“17分類”で選書を展示

日本の図書館では総記からはじまる日本十進分類法で図書が並べられていますが、みなさんの多くが持ち寄った事例は、それとは別にSDGsのゴールの17分類で特別選書し、閲覧室などに目立つように別置しているというものです。図書館によっては、さらにSDGsのアイコンの色にあわせた本の帯をつくり選書の表紙に巻いて陳列したところもあります。

 

千代田区立日比谷図書文化館は、広い閲覧室に据え付けられた大きな半円形の陳列棚を「SDGs+ESD持続可能な未来をつくる本棚」と名付けて、そこにSDGsのゴールにあわせて選んだ、さまざまな書籍を並べています。閲覧室の壁にはSDGsのロゴを一面に貼っています。 

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那須塩原市黒磯図書館は、閲覧室にある書架の一つの2列5段ほどを「世界を変えるための17の目標、SDGsコーナー」として使い、SDGsのアイコンと一緒に本を並べています。並べた本は面出しばかりでなく、棚差し(背差し)のものもあります。(同図書館は4月に移転予定)  

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西南学院大学図書館SDGsの各ゴールのアイコンを大きく貼った書架に、ゆったりとした余白をつくって、ゴールごとに本を一冊ずつ選び、お洒落なインテリア風に並べています。  

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武蔵野大学有明キャンパス図書館は2018年11月、一か月間にわたって、カウンター近くに、「図書館で学ぶ 国連とSDGs」というタイトルのコーナーを設置し、カラーボックスを重ねて作った本棚に国連とSDGsをテーマにした選書を置きました。それらの本にはSDGsのアイコンの色にあわせた帯を巻きました。また、図書館を訪れるすべての人の関心を惹く導線を考えて、図書館入口近くの広いスペースには、同じタイトルの大きなパネルを置きました。このパネルに描かれたSDGsのアイコンの脇にはゴールについての説明も一言添えました。  

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関西大学図書館は昨年9月から今年1月まで、“KU Library thinks SDGs”と名付けた取り組みを行い、その期間中、カウンター前に机を3つほど並べて、教員推薦図書などを展示していました。カウンターは入口から近く、図書館を訪れるすべての人の目に触れ、多くの学生が足を止めて手に取っていました。また壁面を上手に有効活用し、SDGsのアイコンを貼りだしていました。 

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昭和女子大学附属中学校・高等学校図書館は、書架側面の分類番号表示の下にSDGsのゴールのアイコンを大きく貼って、そこに小さな2段組みのラック棚を置いて選書の数冊を面出し、背差しで並べ、スペースを有効活用しています。  

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〇写真展を開催

金沢市立泉野図書館(写真上)中央大学図書館(写真下)は写真展を催しました。写真パネルには、国連広報センターが上智大学などの協力を得て行ったSDGsフォトコンテストの受賞作品などが使われています。 

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〇クイズやゲームを利用したイベントを開催

図書館によっては、SDGsに関するクイズやすごろくなどのゲーム体験の場を提供し、利用者をSDGs関連図書へといざなっています。


東北大学附属図書館は昨年前半、 1か月にわたって、館内各所にSDGs17ロゴポスターを配置し、利用者がそれらを探し、回答用紙の空欄を埋めるというポスターラリーを行いました。 

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 三田国際学園中学・高等学校図書館は、中学生が授業でつくった図書室脱出ゲームと題したクロスワードパズルを活用して、楽しい図書館となるよう工夫しています。 

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昭和女子大学附属中学校・高等学校図書館は昨年、SDGsすごろくGo Goals“で遊びながらSDGsを学ぶイベントを催して、生徒たちを図書館へと誘いました。その際、SDGsのゴールに関係する図書をたくさん展示して、本との出会いを演出しました。”Go Goals”は、ブリュッセルの国連地域広報センター(UNRIC)がElyxの創作者ヤシン・アイトゥ・カシ(YAK)の協力を得て作成し、国連広報センターが日本語化したものです。 

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港区立麻布図書館でも昨年、”Go Goals”を使ったSDGs講座を催し、SDGs関連本を展示。こちらの参加者は成人でしたが、盛況でした 。 

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SDGsを調べる方法を案内

 北海道大学附属図書館は学生たちに対して、SDGsに関する国連情報をウェブから入手する仕方を案内する講座を開いています。 

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〇講演やイベントなどで、関連図書を展示

さまざまなイベントや展示を企画する際に、図書館はSDGsとの連動性を考えています。たとえば、千代田区立日比谷図書文化館は、「絵本を手にした子どもたちの今」という講演会を企画した際に、それに関連する複数のゴールを自分たちで考えて、そのアイコンをイベントのチラシに掲載したり、そのゴールにふさわしい関連図書の展示を行ったりしました。 

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〇学生がイベント支援・取り組みに参加

北海道大学附属図書館は、留学生日本語科目「コミュニケーション・スタディ」との連携で、SDGsに関連する成果物の展示を催しました。図書館での催しは北海道新聞にも取り上げられました。  

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  東北大学附属図書館には、東北大学附属図書には、留学生向けの図書館利用・学習支援サービスを行う大学院生スタッフ”留学生コンシェルジュ”がいます。その学生たちの取り組みで、「留学生コンシェルジュXSDGs」という企画を実施し、SDGsをテーマに、留学生たちのコメントを集め、デジタルサイネージにしました。 

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 国際教養大学図書館は、国連ユースボランティア(UN Youth Volunteer)に参加した学生たちが特設展示で大型ディスプレイを据え付けたり、パソコンのディスプレイ画面の壁紙にSDGsのロゴを採用したりするのを手伝いました。そのあと、学生たちの座談会を設けました。 

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 デジタルサイネージを活用

 日本大学国際関係学部国際機関資料室(写真上)三田国際学園中学・高等学校(写真下)は、展示物とともにテーブルにタブレットを置いたり、モニタースクリーンを壁に掛けたりして国連広報センターのYouTube動画を繰り返し再生しています。 

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SDGs電子書籍で紹介

大阪市立中央図書館は、SDGsに関連する選書をインターネット上で読めるようにしています。

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ソーシャルメディアで発信

  神戸大学経済経営研究所図書館日本大学国際関係学部国際機関資料室千代田区立日比谷図書文化館などはツイッターなどのソーシャルメディアで国連情報を投稿しています。国連広報センターのつぶやきもリツイートしています。 

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〇国連広報センター発行の広報資料を活用

中央区日本橋図書館など、それぞれの図書館がそれぞれの形で、国連広報センターの発行するニュースレター“Dateline UN”やその他の広報資料を目立つように配架・配布しています。 

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〇図書館発行の広報誌でSDGsを紹介

福岡市総合図書館は、九州国連寄託図書館(Kyushu United Nations Depository Library)として、その名前の頭字語を冠したクンドル(KUNDL)ニュースを独自に隔月発行し、そのなかでSDGsや国連に関する図書情報を掲載しています。 

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千代田区立日比谷図書文化館は月刊広報誌を発行しています。そのなかに、「SDGs x 〇〇」 と題したコラム(不定期)を設けました。たとえば、SDGs xつながり、SDGs x出会う、SDGs x語り継ぐなどのテーマで連想されるおススメ本などを紹介しています。  

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SDGsの栞(しおり)を無料配布

 SDGsのデザインを施して手作りした栞(しおり)を無料で配るなどしている事例も共有されました。この栞は、国立女性教育会館のアイデアを採用しています。今回、同会館の許諾を得て、ご紹介させていただきます。同会館のウェブページにはその作り方も掲載してあります。 

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〇館内でSDGsのロゴが目立つように装飾

多くの図書館がSDGsのロゴやアイコンを館内で目立つように工夫しています。


日本大学国際関係学部国際機関資料室は、図書館の壁や窓、パソコンの画面など、様々な場所にSDGsのゴールのアイコンを貼っています。 

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京都外国語大学図書館は、館内受付にSDGsのパネルを目立つように貼っています。同図書館は2019年4月から、あらたに国連寄託図書館としてのサービスを開始しています。 

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SDGsバッジを身に着けて

 広島市立中央図書館は、司書の方々がSDGsバッジを身につけて、SDGsへのコミットメントの姿勢を示し、普及促進しています。 

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〇パートナーと協力

多くの図書館はイベントや図書展示を企画するうえで、さまざまなパートナーと協力しています。


大阪市立中央図書館は昨年、「こどもをとりまく世界」展を開催し、子どもの虐待、貧困、人権など、SDGsのゴール4に関する図書を展示しましたが、その際、大阪市こども青少年局と連携しました。 

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関西大学図書館は昨年、地元の吹田市で活動するアジェンダ21すいた(市民・企業・行政の三者協働組織)が行う地球温暖化防止に向けた取組「すいたクールアースウイーク」とコラボレーションしたブースを館内に設置しました。  f:id:UNIC_Tokyo:20200319144451p:plain

 

〇図書館も持続可能な未来のために行動

図書館もSDGsや気候行動への貢献を行っていることをご紹介したいと思います。
西南学院大学図書館は、屋上にソーラーパネルを設置して館内の一部電力を賄ったり、ソーラー発電モニタリング画面を館内に設置したり、トイレ洗浄水に市の再生水を利用しています。


福岡市総合図書館は、電力消費量の削減のため館内の照明をLEDに交換し、空調設備の温度設定に気をつけています。また、職員の間の約束事として、洗面所でハンドドライヤーは使わない、ゴミの分別は徹底する、忘年会や歓送迎会の宴会を行うときははじめの30分間をおいしくモリモリ食べる時間、終わりの10分を間食タイムとして食べ残しをしないようにしています。 

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那須塩原市黒磯図書館は、古本市を開催する際に来館者にマイバッグを持参してもらうように呼びかけています。 実践女子学園中学校・高等学校図書館は、「裏紙BOX」という箱を設置して、図書館で廃棄する紙で裏が白いものをメモ用紙として中高生たちに提供し、計算や漢字練習、単語の暗記などに利用されています。

 

また、千葉市男女共同参画センター情報資料センターは、誰ひとり取り残さないという観点から、建物内をオールバリアフリーにして書架を車椅子で手が届く高さにしたり、書架と書架の間も車椅子での方向転換が容易な広さにしたり、車いす優先席を設けたりして、障害をもつ人に配慮したサービスを心がけています。 

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こうして、SDGsを合言葉にしてつながる図書館は持続可能な社会づくりに直接に寄与するための管理運営や自主的な取り組みも積極的に行っているのです。 

〇そして、お互いに学びあう研修に

さて、お気づきになったでしょうか。

勝手ながら、図書館のさまざまな取り組みを17に分類してご紹介してきました。

そして、17番目にご紹介するものが、国連広報センターが実施する研修会参加ということになります。

研修会については、次回のブログで、くわしくご案内いたします。

 

 

国連創設75周年(UN75)私たちの未来について「対話」をしよう!! ~若者たちよ、自分たちの声を発信しよう!~

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キャサリン・ポラード事務次長(写真中央)と国連広報センタースタッフ  🄫UNIC Tokyo

皆さんは、今年で国連が創設されて75年になることをご存じでしょうか?

国連は、2つの世界大戦を経て、国際平和と経済・社会発展の実現を誓った国々によって1945年に生まれました。

 創設75周年の節目を、世界中の人々の声に耳を傾ける機会にしたいというアントニオ・グテーレス事務総長のたっての希望から、国連が立ち上げたのが「UN75」です!

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21世紀の国連における若者の役割について講演するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ©UN Photo

UN75とはシンプルに説明すると、

国連が創設100周年を迎える2045年までに全ての人にとってより明るい未来を構築するために、私たちが今取るべき行動や国際協力の重要性について考えよう!という対話の促進を目指したイニシアティブです。

 

未来を見据えた国際的な対話をするなかで、UN75は以下の問いを投げかけています。

  1. 私たちはどのような未来をつくりたいのか?
  2. それを実現できる目途は立っているか?
  3. そのギャップを埋めるためには、どのような行動が必要か?

 

UN75は、グローバルな課題の解決に熱い思いをもっている人にも、それほど興味がなかった人にも、全ての人に「対話」への参加を呼びかけています。そして、こうした議論を通して、気候危機やデジタル技術による人権侵害といった深刻な課題の解決に様々な組織や人々と取り組んでいこうとしています。

国連広報センターは、このUN75を日本の皆様に知っていただくイベントとして、2月17日(月)に「国連創設75周年記念講演~一緒につくろう、私たちの未来~」を国連大学本部ビルにて開催しました。

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イベントにて参加者より質問を受けるポラード事務次長 ©UNIC Tokyo

本イベントでは、国連本部のキャサリン・ポラード管理戦略・政策・コンプライアンス担当事務次長が、日本を含む世界中の人々が共に2045年までによりよい世界を形づくるために、UN75の対話へ参加するよう、日本の人々に呼びかけました。

 今日の、新しい類の紛争や暴力、環境問題といった多くの深刻な問題は世界的に起こっています。このような問題は日本にとっても決して他人事ではなく、むしろステークホルダーの一員として積極的に取り組むべきであると語りました。

参加者からも「テクノロジーの進歩は社会の分断を繋ぐ役割を果たすのか、それとも社会の脅威となってしまうのか?」と、テクノロジーが諸刃の剣となる可能性を指摘する声がありました。ポラード事務次長は、「テクノロジーの分野では、まだガバナンスのシステムが出来ていないことが課題。国連は加盟国とこのシステムの構築を目指している」と答え、グローバル協力の必要性を強調しました。

そして、将来、社会の中枢的な存在となる若者を中心に、積極的にUN75の対話に参加してほしいと繰り返しました。

 

国連におけるキャリアについて

ポラード事務次長は、約30年にわたる自身の国連でのキャリアを振り返り、「国連以外の組織で働いていたとしても、自分はおそらく実績を作ることが出来たと思う。ただ、物事を多角的な視点から分析する力を培えたのは、国連で働いてきたからだ」と思いを熱く語りました。

国連で働くということは、グローバルな課題解決への貢献の具体的なアクションの一つでもあります。

同じくニューヨークの国連本部から訪日した人事担当のホンソク・クォン氏も自身の経歴に触れながら、国連における幅広い職務から選考法、そして国連が求める人材について話しました。また国連は、ジェンダー、出身国、障がいなどのバックグラウンドが多様な人々が働く職場を目指していることを紹介しました。

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国連におけるキャリアについてプレゼンテーションを行うクォン氏 ©UNIC Tokyo

冒頭で挨拶された外務省総合外交政策局の山中修参事官も、日本政府としての支援策について語った国際機関人事センターの村林弘文室長も、より多くの日本人に国連職員として世界中で活躍してほしいと呼びかけました。

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冒頭の挨拶を行う外務省総合外交政策局の山中参事官(左)、国連でのキャリアを紹介する外務省国際機関人事センターの村林室長(右)©UNIC Tokyo

参加者からは、国連でのキャリアに関する具体的な質問が多く寄せられました。将来国連で働きたいと思いつつも、なかなかイメージが湧かなかった参加者にとっては、自分のキャリアを考え、具現化するためのヒントを得る機会となったのではないでしょうか。

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イベント会場はほぼ満席!学生など若い参加者が多く見られました ©UNIC Tokyo

 

グローバルな対話に参加する方法

国連創設75周年を記念して立ち上げられたUN75。独力では解決出来ない深刻な課題に向き合い、明るい未来を築き上げていくには、全ての人がこのUN75の対話に参加する必要があります。

皆さんの声は様々な方法によって国連に届けることが出来ます。

国連広報センターのウェブサイトにはUN75の特集ページが設けられており、誰でも簡単にグローバルな対話に参加できる方法を紹介しています。

わずか1分で出来るアンケートや、ツールキットなど様々な情報を掲載しています。

また、インスタグラムツイッターフェイスブックそしてユーチューブには特設アカウントがあります!

ソーシャルメディアにおいて#UN75ハッシュタグを使用することで、皆様の声を世界に発信するとともにUN75の対話に参加することが出来ます!

ぜひ、この機会に皆さんもグローバルな対話に参加して、より良い未来を構築するために一歩動き出してみませんか?

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東京オリンピック・パラリンピックとSDGs ”日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアに込められた、人々の想いと循環型社会への願い”

東京2020オリンピック・パラリンピック東京2020大会)の開幕を7月に控え、夏季五輪として初めて「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を掲げる東京2020大会に向けて、立場の異なる様々な人々がすでに日本各地で動き出しています。

国連広報センターは、こうした人々がどのような想いをもってオリンピック・パラリンピックを通して持続可能な社会の実現に取り組んでいるかをお届けしていきます。第1回は株式会社アシックスの若手社員による、スポーツ用品業界を含むアパレル業界の持続可能性を実現するための挑戦を紹介します。

 


 第1回 アシックス 〜スポーツ用品×持続可能性〜

株式会社アシックスのCSR統括部に所属する増田堅介さんは、入社5年目の2017年に、衣服をリサイクルして新しい製品を作るというプロジェクトを提案し、担当することになりました。製作するのは、同社がゴールドパートナーを務める東京2020オリンピック・パラリンピック東京2020大会)で日本代表選手団が着用するオフィシャルスポーツウェア。巻き込むのは全社、ビジネスパートナーだけではありませんでした。  

「品質の良いものを作るだけではなく、全国の皆さまの応援する気持ちと日本代表選手団の皆さまをお繋ぎして日本を一つにしていく、そういったモノづくりができないかと考えました」 

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テレビ局からの取材で本プロジェクトを熱く語る増田さん © UNIC Tokyo

アシックスは、スポーツ用品カテゴリーで唯一の東京2020大会のゴールドパートナーとして、大会成功への貢献とサステナビリティの推進を同時に達成することが、同社にしか実現できない大きな役割であると考えていました。そうして、人々の思い出が詰まったスポーツウェアを回収し、日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアとして再生する、日本を一つにするモノづくりに挑戦することを決めました。プロジェクトの名前は、ASICS REBORN WEAR PROJECT。衣服を、そして人々の想いを再生し、つなげるという意味が込められています。

アシックスは、以前より、スポーツ用品業界を含むアパレル業界全体の課題として、製品のリサイクルが進んでいない現状がある点を認識し、衣服のリサイクルに取り組もうとしていました。しかし、今回のモノづくりには大きなチャレンジがありました。

まず、衣服のリサイクルは世界的に見てもまだ非常に難しいのが現状です。衣服は一つの素材、一つの色だけで作られていないことが多いため、混在した素材や色を選別、除去するところから始めなければなりませんでした。試作品として、衣服をリサイクルして製造したポリエステル樹脂から糸を製作しましたが、最初は不純物の除去がうまくいかず、糸が切れてしまったり細い糸が引けなかったり課題がたくさんありました。

これまでアシックスでは、樹脂の製造工程にまで遡って製品を作る経験がなかったので、リサイクルパートナー、糸や生地サプライヤーと一丸となって、高い品質を実現するために何度も試作を行いました。 

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数々のハードルを乗り越えて紡がれた糸とジャケット ©️UNIC Tokyo

プロジェクトを担当する増田さんは、同時に社内のマーケティングや店舗、営業の部門と連携して、多くの人々に衣服を提供してもらう仕組みづくりを実現しなければなりませんでした。しかし、衣服のリサイクルの難しさから、モノづくりが可能かどうかの確認が度々遅れてしまいました。

「(東京2020大会を目標に)製品の納品時期とか開発のスケジュールが決まっているなかで、社内の関連部門には、こんなにスケジュールが後ろ倒しになって本当に間に合うのかと、かなり不安にさせてしまいました。ビジネスパートナーと、ほぼ毎日お電話を通じてスケジュールや品質の確認などを密に協議して、それをまた製品開発部門の方々に説明して、一緒にやりましょうと働きかけをさせていただきました。コミュニケーションを重ねていきながら試作を重ねて、ものが徐々に出来てくると少しずつ信頼をいただけるようになりました」

 

衣服の回収は、2019年1月に開始。衣服の回収ボックスは、アシックス直営店やスポーツ用品店東京2020大会のパートナー企業、提携大学、将来のアスリートが練習しているトレーニングセンターなど、全国250箇所程度に設置されました。

4か月ほどの回収期間で集まった衣服は、実に約4トンにも及びました。

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多くの人が思いのこもった衣服を回収ボックスに投入していた ©️ASICS

東京2020大会オフィシャルパートナーである東京ガス株式会社では、750枚以上の衣服が回収されました。同社の東京2020オリンピック・パラリンピック推進部の川﨑由香さんは、次のように振り返ります。

「初めて参加したフルマラソンの時のウェア、子供が小さいころに試合で使ったユニフォームなど、社員が提供した衣服の一枚一枚に思い出が詰まっていました。『オリンピック・パラリンピックは夢みるだけでしたが、時を超えてウェアだけでも2020へ行ってこい!!』と送り出しました。このプロジェクトを通して、物理的な資源リサイクルの観点だけでなく、大切にしていた思い出の洋服を誰かのために役立てるという、心の豊かさの気づきにも繋がったと思います」

 

多くのアスリートも思いの詰まったウェアを寄付しました。東京ガス所属のパラ水泳木村敬一選手は、小学校4年生で水泳を始めた時のウェアを提供。元レスリング選手の吉田沙保里さんもリオデジャネイロ2016大会前の練習できていたウェアを寄付し、「私も日本代表選手としてオフィシャルスポーツウェアを着たときは本当に嬉しくて、いよいよ(大会が)始まるんだなと気持ちが高ぶったことを思い出しました」と語りました。そして、東京2020大会の日本代表選手団に向けて「みんなの思いがつまったウェアを着て、気持ちを強く持って、最高のパフォーマンスを出せるように頑張ってほしいです。応援しています!」とエールを送りました。

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オフィシャルスポーツウェア発表会にて、選手たちに力強いメッセージを送る吉田沙保里さん(画像中央) ©️UNIC Tokyo

2019年1月に本プロジェクトを発表した時は、日本のメディアに加えて約40か国のメディアが、特にサステナビリティの観点から非常に高い共感を持って報じました。SNS上でも世界中から好意的なコメントが多数寄せられました。

2020年2月にオフィシャルスポーツウェアがお披露目になった発表会でも、多くのメディアからウェアの機能性やデザインだけでなく、本プロジェクトの経緯や効果、今後の展開などサステナビリティに関する質問が寄せられました。

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自身が寄付した服が生まれ変わった喜びを話す山本篤選手(画像中央) ©️UNIC Tokyo

衣服の製造は、気候変動に大きく影響します。繊維産業は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占めており、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によると、航空業界と海運業界の合計を上回るエネルギーを使用しています。また、繊維素材のほとんどは再利用可能であるにもかかわらず、その85%は最終的に埋め立て産業または焼却処分されています。

 

こうした現状に対し、衣服や繊維製品にかかわる企業はすでに対策を取り始めています。アシックスも、気候変動への対策と循環型社会の実現に積極的に取り組んでいます。例えば、同社は2019年に、UNFCCCのもとでファッションに関わる様々な企業がバリューチェーン全体を通じ、ファッション部門の気候への影響に一致団結した取り組みを行うことを合意する「ファッション業界気候行動憲章」に、日本に本社をおく企業として初めて署名しました。また、2050年に向けて温室効果ガスを実質排出量ゼロにするという目標も掲げています。2030年までにシューズのアッパー(甲被)部分やウェアのポリエステル材を100%再生ポリエステル材に切り替えることも表明しています。

 

増田さんは、今回の挑戦は、循環型社会をつくる一つのスタートだと話します。

「循環型社会の形成を達成していくためには、メーカーが資源を無駄にしないモノづくりを推進することが必要であると思います。それを達成していくために、東京2020大会などの大舞台を活用させて頂きながら、日本から世界に対してこの重要性を発信していきたい。そして今夏には、本取り組みをレガシーとすべく、ASICS REBORN WEAR PROJECTと同様にウェアをリサイクルしたシューズを一般のお客様に提供していきたいと考えており、製品を買ったお客様がこの循環型社会の形成に貢献していただくという輪をどんどん広げていきたいと考えております」

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パートナーやお客様と一丸になってサステナビリティ貢献への展望を見据える増田さん ©️UNIC Tokyo

 

『天気の子』新海誠監督に聞く~天気をモチーフにした大ヒット作品、気候変動から受けた衝撃とエンタメにできること~

 

2019年夏に日本で劇場公開され、その後世界各地で上映中の映画『天気の子』は、天気が大きなモチーフになっています。この作品に命を吹き込んだ新海誠(しんかい・まこと)監督は、自分自身の実感や時代の気分としての「天気」が出発点だったと振り返ります。

 

「映画を作るにあたって、今の観客が何を見たいかをまず考えます。そして今、日本人が気にしているのは何かと考えたときに、天気かな、と。気候変動のこともあるけれど、それ以前に天気は僕たちにものすごく密接に関わっていて、気分を左右する大きな要因ですよね。天気は万人に関係していると考え始めたのが作品づくりの起点でした」

 

あらすじ

天候の調和が狂っていく時代に、離島から東京に家出してきた男子高校生の帆高(ほだか)。しかし、生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事はオカルト雑誌のライター業だった。連日雨が降り続ける中、祈るだけで晴れにすることができる不思議な力を持つ少女・陽菜(ひな)と出会う。ある事情を抱えて弟とふたりだけで暮らす陽菜に惹かれていく帆高。2人は運命に翻弄されながらも、自らの生き方を選択する。

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祈るだけで天気を晴れにすることができる不思議な力を持つ少女・陽菜 ©2019「天気の子」製作委員会

 

新海監督は『天気の子』が気候危機そのものをテーマにした作品ではなく、あくまでも本質的には“ボーイ・ミーツ・ガール”の物語だと断りながらも、気候は非常に重要なインスピレーションの源だと強調します。

 

「現実の実感として、夏が来るたびに雨量は確実に増えている、豪雨災害が増えていることを日本の観客は共有しているはずだという認識で、世界設定を作っています。でもその中に啓発的な意図は込めていませんし、むしろ『気候変動』や『温暖化』という言葉は注意深く取り除いていきました。『啓蒙してやろう』『正しい思想を教えてやろう』というような説教的な態度は、観客には敏感に察知されてしまうものです。それによって映画が避けられてしまうような事態は防ぎたかったんです。それでも気候危機や温暖化に関する何らかのメッセージは読み取ることが可能なようには作っていますが、人によって読み取る人もいれば気づかない人もいると思います」

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帆高と陽菜は天候の調和が狂っていく時代の中で運命に翻弄されていく ©2019「天気の子」製作委員会

 

日本国内、そして海外で観客やマスコミと接する機会の多かった新海監督にとって、国によって反応が鮮やかに異なることは印象的なことの一つです。

 

「日本の観客について言うと、気候変動を連想する人はほとんどいなかったような気がします。上映後のティーチインでも、日本の観客から環境問題について聞かれることはほとんどありませんでした。日本のメディアもそういう場ではないと思っているのか、(気候変動について)聞いてきませんね。ところが、アメリカ、イギリスやフランスなどのヨーロッパ、そしてインドでは、ジャーナリストが尋ねることのメインはほぼ気候変動。観客の感想も、ジャーナリストの態度とある程度比例しているように感じました。例えばヨーロッパでは、エココンシャス(環境配慮型)ではない企業の製品は消費者から選んでもらえなくなってきているという現状があると思います。そういう国では、観客が映画から読み取るメッセージも必然的に変わってきますよね。日本の観客はこの映画と温暖化を結び付けて考える人はほとんどいなかったようで、そこはやはり国ごとの事情を反映しているのだと思います」

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新海監督は公開に合わせて世界各地を精力的に飛び回ってきた ©UNIC Tokyo

 

それはなぜなのか。新海監督なりに分析していただきました。

 

「今の温暖化がこれほどはっきりと目に見える形で危機的状況を及ぼす以前から、日本は他の国と比べて自然災害がとても多い国でした。だから良くも悪くも、環境の変化に過剰適応してしまっていると感じます。人間にはとても自然をコントロールできない、自然にはかなわないという感覚が、僕たち日本人のベースにはあるのではないでしょうか。それはある種の逞しさやしなやかさであると同時に、どこか諦念のようにも感じます。日本人の謙虚さでもあるかもしれません。しかしその感覚は、気候危機への明確なアクションが求められている現状では、マイナスに作用してしまっているのかもしれませんね」

 

「昨年の夏から秋にかけての台風は日本に大きな被害をもたらし、一部の観客からは “『天気の子』はまるで現状を予言していたかのようだ” という反応もありました。でも台風の報道はあっても、そもそもなぜこれほど台風が巨大化しているのかという報道はあまりされません。日本の観客の多くがこの映画から温暖化を連想しないということと、台風の原因に温暖化があることに思いが至らないということは、根本は同じだと思います」

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作品では大雨のシーンの迫力に圧倒される ©2019「天気の子」製作委員会

 

新海監督の話は、10代の気候活動家であるスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん、そして日本の若者が置かれている状況にも及びました。

 

「気候変動はそもそも世代(間)の問題を浮き彫りにする課題ですよね。グレタさんが怒っているのもそこ。グレタさんの行動を見て、気候危機に対して10代が運動を起こすというのは、彼らにできる唯一の政治参加がそれなのだという印象を受けています。自分たちの行く末を真剣に考えたときに、今これをやらないと自分に跳ね返ってくるという実感があるからこそのアクション。なんて冷静で合理的な行動ができるんだろうと思います。同時に、日本の観客の意識が気候変動にほとんど向かないのも、無理もないことなのではないかと思います。彼らも僕たちも、余裕がないんです。ほとんどの普通の人は目の前の日々をクリアすることで精一杯で、10年・20年後の滅びが約束されていたとしても、そこに立ち向かうことはなかなかできない。人間の持っているお金とか余暇は限られていて、特に若い世代の人たちの持ち分が減っていっているというのが実情だと思います」

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話は比較文化論にまで発展。時間を忘れて盛り上がった ©UNIC Tokyo

 

メインのテーマにこそしてはいませんが、『天気の子』は若年層の貧困や閉塞感というものがモチーフに描き込まれています。

 

「例えば昨年公開されて大ヒットした『ジョーカー』など、最近は社会階層の二分化をテーマにした映画が増えています。『天気の子』も、主人公2人は『貧困層』です。今みんなに共感を持ってもらえるキャラクターを考えたら自然とそうなりました。(昨年カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した)韓国の『パラサイト』も同じ。同じ時代に同様のテーマが扱われるのはある意味で当然のことです。今自分が気になっていることをテーマにしようとすると、時代は自ずと作品に写るものだと思っています」

 

『天気の子』の英語タイトルは『Weathering With You』。Weatherには天気と並んで「乗り越える」という意味があります。迫りくる気候危機に代表される不透明な時代をともに乗り越えるために、エンターテインメントには何ができるのでしょうか?

 

「時間やお金が限られた中で映画館に来てもらうためには、相応の戦略と努力が必要です。ち密な画を描いてスクリーン映えする映像を作り、深く感情を揺さぶる音楽を生み出し、誰にどう届けるべきかという広報のあり方をひたすらに考えて、何とか形にしていきます」

 

「映画を作ることは経済活動ではありますが、それによって少しだけでも世界が良くなってほしいという願いを、僕たち作り手は共有していると思います。でも、大上段に正義を説くような作品では観客には届きません。それでも、観客は単純に楽しみたいだけではなくて、何らかの衝撃を受けたい、人生や世界観が変えられてしまうような何かを観たいはずだと思うんです。人々の時間とお金と関心は限られていて、映画も環境問題(への取り組み)も、ソーシャルゲームSNSも、皆でその限られたものを取り合っているわけです。ですからそれら全てに、せめて善良なもの、人々を幸せにするものが少しでも含まれているといいなと願っています。僕たちも、そういう気持ちで映画を作っています。(『天気の子』の)根底には気候危機から受けた衝撃もあることを観客に知ってもらえたら、とても嬉しいです」

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エンタメと社会課題の接点について熱く語り合った新海誠監督(左)と国連広報センターの根本かおる所長(右) ©UNIC Tokyo

 

静岡の高校生たちのSDGs達成にむけたアクション:若者たちこそが世界を変える

2018年にSDGs未来都市に選定され、「SDGsを自分事に」と市民巻き込み型の啓発活動を推進してきた静岡市。今年1月を通して「SDGs Month」との名のもとに様々な啓発活動をラインアップ。1月11日には「SDGs Collection」としてステージあり、地元団体・企業・大学・高校のブースあり、サステナビリティに配慮した地元物産の販売あり、という大規模なイベントが開催され、国連広報センターの所長の根本と広報官の佐藤も足を運びました。

特に地元の高校生たちが学校の授業で、生徒会で、部活動を通じてSDGsを深く学び、自分たちが地域の課題の解決にどう貢献できるか積極的に関わり、ブース展示などでエネルギッシュに発表する様子に励まされました。

 

「タケアカリ」で竹林を守り、地元を盛り上げる

 

城南静岡高等学校・地域貢献部の生徒たちは、山間部の竹林が手入れがなされず地滑りなどを起こしやすくなっている問題に対して、「放任竹林」の竹を切り出してスタイリッシュな「タケアカリ」を作るプロジェクトを「アカリノワ」と連携して進めています。生徒たちが作った竹灯篭は、久能山東照宮や伊東温泉のイルミネーション・イベントに使われ、地元の活性化につながっています。

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城南静岡高等学校・地域貢献部の生徒から説明を受ける根本所長(左) ©UNIC Tokyo

 生徒たちは、活動のやりがいについて「厄介者になっている竹が美しいアート作品に生まれ変わり、作品を見ていただいた方の笑顔を見ると頑張ってよかったと感じます」と語ります。

 

また、活動とSGDsを結びつけることで、活動に対して新たな見方ができるようになったといいます。

「私たちが行ってきた活動は放任竹林という環境問題に対する取り組みだけだと思っていました。今回、SDGsについて学び、SGDsの視点から自分たちの活動を考えると環境問題だけでなくタケアカリを展示することで地域経済の活性化を促すことができ、これにより地域住民の方々に貢献できることを理解しました」

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城南静岡高等学校の文化祭にてタケアカリを展示 提供:城南静岡高等学校・地域貢献部

 

地域の人々と連携してオリジナル商品を開発

 

「『つながる』ことで人は元気になる」。これは静岡県立藤枝北高等学校の食品サイエンス部の生徒たちのモットーです。農家や食品会社と連携して、「米の花を紡ぐ物語」つまり糀(こうじ)にこだわって商品開発を進めてきました。静岡県浜松市北部の山間の町・水窪町と連携して、発酵・雑穀・ジビエを活かした食などを開発すると同時に、高校生たちが先生役となって醤油・酢・糀化粧水・発酵料理づくりなどの「発酵体験フルコース」を提供しています。

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生徒が作ったこだわりの糀を使用した試食品 ©UNIC Tokyo

 生徒たちは顔を輝かせながら自分たちの「天然糀菌」について愛情たっぷりの解説をしてくれました。食品サイエンス部の部長の望月香里さんは、活動のやりがいの1つとして「多くの人との出会いです。この活動をしていなければ、出会っていない方ばかりです。町を歩いていて声を掛けてもらったりすると、とても嬉しいです」と語ります。SDGsについては「将来のことを考えると、誰もがやらなくてはいけないことですので、多くの方にSDGsに対しての行動をとってほしいと思います」と話しました。

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藤枝北高等学校の生徒たちと話す国連広報センターの根本所長(右) ©UNIC Tokyo

 

今回お伺いした「SDGs Collection」では、生徒たちがSDGsを知ることにとどまらず、課題解決のアクションに乗り出している姿に、SDGsを広く一般に普及浸透する活動をしてきた者として大きな手ごたえを感じました。