国連広報センター ブログ

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医療で両国の架け橋に ~イゼルディン・アブエライシュ医師~

「人生というものは、難題や苦難であふれています。でも、不公平さによって感じる怒りを憎しみに変えてはいけません。だから、困難にぶつかっても、それを見事に乗り越える強さを備えておかなくてはいけないのです」

そう語り始めたアブエライシュ医師。パレスチナのジャバリアにある難民キャンプで生まれ育ったアブエライシュ医師は、幼いころから貧困や占領に苦しんできました。しかし彼は勉学に励み、イスラエルの病院で医学実習を修了した史上初のパレスチナ人医師となったのです。

アブエライシュ医師は、「医療」というかたちで思いを世界中に広めています。現在、カナダのトロント大学で国際保健の教授として、教え子たちを医療の専門家、それと同時にひとりの人間として育てたいという思いを胸に、全体論的アプローチの教育を実践しています。宗教や民族に関係なく、すべての患者を助ける任務がある医療は、忍耐や真の人間性の必要性について教えることができる分野だと考えています。

 

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落ち着いた口調で、これまでの自分史を振り返る
アブエライシュ医師

アブエライシュ医師は、教育や知識、信条そして人生で叶えたい目標や理想を深く理解することを通して、憎しみを乗り越えるべきだと強調しています。「最初にぶつかる困難に打ち負かされないでほしい」と、日本の若者にメッセージを送ります。

 

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力強い言葉で、講演会の参加者に語りかけました

 

彼の精神には、人生そのものが反映されています。2009年1月にガザの自宅をイスラエル軍に爆破され、娘3人と姪1人を失ったにもかかわらず、このパレスチナ出身の医師は決してイスラエルを憎みませんでした。それまでのように、イスラエルパレスチナの政府間和解に尽力し続けました。この悲劇が起こる以前から長きにわたって本を書き続けているという事実から、アブエライシュ医師は、どんな困難にぶつかっても“人を憎まない”という信条をぶれずに持ち続けていることがわかります。
「わたしたち人類はみな、平和への願いを胸に秘めています。それは、全世界の人々の希望なのです」
人々はみな、生まれた場所がどこであれ、自分自身が誰であれ、人生で様々な困難にぶつかります。しかし、どんなときも、人を憎む気持ちを鎮めることで、平和な世界を実現させることができるという、アブエライシュ医師からの強い意思を感じることができました。

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アブエライシュ医師の優しい人柄に、
取材後には思わず笑みがこぼれました

 

インターン:エミリー・クルーガー)