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現地に足を運び、パレスチナ難民への医療支援を続ける ~鎌田實医師~

長野県、茅野市に位置する諏訪中央病院を見事に再建させ、いまや長野県は長寿日本一。地域の人々から親しまれる病院に成長させた鎌田實医師。その後も医師として、作家として日々奮闘するかたわら、チェルノブイリイラク東日本大震災被災地支援にも献身的に取り組みます。実際に現場に足を運び、自分の目で確かめる医療支援。鎌田医師は国内外問わず様々な活動で人々に寄り添い続けています。

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患者さんに寄り添ってきた経験を語る鎌田医師

 

■元気の秘訣は好奇心

患者さんに寄り添い、支えてきた鎌田医師。そんな医師の元気の秘訣は「好奇心」。子どものころから本が大好きで、たくさんの本と出会ってきました。「本で見た世界を自分で見てみたい」という思いに突き動かされ、育まれた好奇心は、世界の人々に寄り添う原動力にもなっています。好奇心旺盛でも「不思議と疲れない」と話す鎌田医師からは、暖かな笑顔が溢れています。

 

■寄り添う医療でつながる優しさ

鎌田医師は長年、日本以外にも目をむけて支援活動を行っています。チェルノブイリ原子力発電所事故の深刻な被害にあったベラルーシをはじめ、イラクパレスチナイスラエルの医療現場を自分の目で見てきました。災害や戦争で荒れた地域や、宗教問題が残る世界に赴き、支援をするのは難しいことですが、諏訪中央病院でも大切にしてきた「地域に根付いた医療」は、そうした地域でも実践できると言います。

中でもパレスチナでは、限られた医療設備の中で、彼らにとって最善の方法・スタイルを探して医療を行っています。生活のしかたや食事を変えたり、十分な医療が提供できない中でも、その地域に適したものを模索しています。そうした点は非常に長年やってきた地域に根付いた医療に近いといいます。そんな中、現地の病院や診察をした患者さんの家に呼ばれてご飯をご馳走してもらったり、難民キャンプでも新聞紙の上で一緒にご飯を食べたりすることで、距離が縮まるのだそう。「つながる優しさ」を身に染みて感じています。

 

■現場にも足を運ぶ

イスラエル兵に誤射され脳死状態になった12歳のパレスチナの少年アハメドくん。彼の父はイスラエルの病気の女の子を救うために、臓器移植を決意しました。これは医師の著書「アハメドくんのいのちのリレー」のもとになった本当のお話です。医師は実際に現地で彼らを訪れ著書に記し、憎しみを越えたいのちのリレーを多くの人々に伝えています。

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ハメドくんが撃たれた場所で、鎌田医師自身が撮影した写真

 

■日本人として

支援地の9割が日本の「進んだ医療」に期待しています。進んだ技術、指導、機器、薬、治療法、すべてが支援地にとっては新鮮です。イラクでは、骨髄移植ができません。さらには基本的な感染症対策がしっかりと行われていないために、すぐに感染症にかかってしまいます。

しかし、将来的に骨髄移植が現地でできるようになるために、先ず感染対策の専門看護士を現地に派遣し、感染予防を指導しています。最初は「手洗い」の重要性を理解できずに、「もっと最先端のことを教えてほしい」と求められるそうですが、そうした基本的な対策から、健康へ繋がるということをまず教えています。

 

■もっと世界を見よう

「ほんのわずかな衝突でも、売り言葉に買い言葉で関係が崩れていく。しかしたとえ国同士がギスギスした関係であっても、国民同士、若者同士で相手の立場に立ってわかりあっていくことが大切だと思います。だから若者にはもっと世界を見て欲しい」と若い人々へメッセージを発信しました。

様々な道を開拓し、医療を支え、人々を支える前向きな姿勢に、今日も多くの人が勇気付けられています。好奇心を持って世界に目を向けることで、新たな世界が切り開かれる。そんな鎌田氏の、医師として、人間としての強さと優しさを感じることができました。

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温かいメッセージに励まされました



インターン:中村侑里香)