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グテーレス国連事務総長「最後の訪日」を振り返って -日本と国連の70年

国連広報センター所長の根本かおるです。
2026年5月19・20日に「国連システム事務局長調整委員会」(CEB)と呼ばれる幹部会の年次会合がアジアで初めて、東京で開催されたのに合わせて、国連のトップ、アントニオ・グテーレス事務総長が5月17日から20日にかけて訪日しました。国連難民高等弁務官ならびに事務総長としての訪日は、20回以上になります。

「国連システム事務局長調整委員会」(CEB)のファミリーフォト ⒸUNU/Curtis Christophersen

26年末の退任を前に、今回が事務総長として最後の訪日となる見込みで、日本の国連加盟70周年記念ハイレベル・シンポジウムをはじめ発言の随所に、70年前に国連に加盟してから、核軍縮や平和構築、防災、人間の安全保障をはじめとするグローバル課題について、一貫して国連の場でリーダーシップを発揮してきた日本への感謝をにじませていました。

日本の国連加盟70周年記念ハイレベル・シンポジウムで登壇するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

高市早苗総理大臣とのバイ会談では、高市総理から国際情勢が不安定化する中、国連において、各国が分断されるのではなく、力を結集して課題に取り組むことは、これまで以上に重要となっていること、国連を中核とする多国間主義に対する日本の確固たる支持は不変であることについて発言があり、これに対して事務総長は、両者が共有する目標と、新たな形での効果的なマルチラテラリズム(多国間主義)を推進するため、高市総理および日本政府と引き続き緊密に協力していく用意があることを表明しました。

高市早苗総理大臣と握手するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

さらに、訪日中、様々な場で、事務総長として初めて長崎と広島双方の平和式典に出席し、被爆者の方々に敬意を表することができたことを誇りに思うと語り、核兵器のない世界を目指して連帯を示していました。

日本被団協代表委員の田中熙巳さん(左から2番目)、事務局長の濱住治郎さん(左)と言葉を交わすアントニオ・グテーレス国連事務総長(右)、国連広報センターの根本かおる所長(右から2番目) ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

訪日締めくくりの5月20日に行った記者会見では、事務総長として日本で行う最後の記者会見になることから、日本のメディアに向けていつにも増して踏み込んだ発言が目立ちました。

日本記者クラブで開催されたアントニオ・グテーレス国連事務総長の記者会見 ⒸUNIC Tokyo/Yudai Hiraka

冒頭の発言では、国連安全保障理事会について、
予定稿を離れて改革の必要性に強い表現で言及しました。

「必要とされる最も重要な改革は、国連安全保障理事会の改革に他なりません。
その構成は正当性も有効性も担保できていないからです。
事実、常任理事国のうち3カ国が欧州(の国)であるのに対し、
全世界の人口の半数以上を占めるアジア(の国)はわずか1カ国、残りの1カ国は
北米の国で、アフリカとラテンアメリカ(諸国)は全く含まれていません。
これは正当性と有効性という点で深刻な問題であり、
常任理事国の数を増やすとともに、非常任理事国も増やすことで、
安全保障理事会に今日の世界の現実を反映させることが絶対に欠かせません。」

 記者会見で超大国の振る舞いをこれまで以上に批判したアントニオ・グテーレス国連事務総長 ⒸUNIC Tokyo/Yudai Hiraka

質疑応答でも、国連を中心とする多国間主義が危機に直面していることに関してコメントを求められ、超大国の振る舞いを求められ、超大国の振る舞いをこれまで以上に激しく批判しました。

「危機に瀕しているのは多国間主義そのものではありません。
危機に瀕しているのは、国際法を侵害し、時には自ら紛争を引き起こし、
安全保障理事会における拒否権を行使して自らの免責を保証する超大国の行動です。
このような状況下では、国連事務局が世界中で劇的に増加する
紛争の数を抑えることは非常に困難です。
なぜなら、超大国が悪い手本を示すと、他の中規模国もそれに倣うからです。…
紛争国に恒常的に外部干渉を行う勢力が多数存在し、
紛争の予防や仲介が極めて困難になっていることは明らかです。
だからこそ、安全保障理事会の改革は非常に重要なのです。
私が事務総長に就任した当初、安全保障理事会の改革はタブーであり、
事務総長がそれについて語るべきではないとされていました。

しかし今では、私たちはその必要性を絶えず主張し続けています。」

www.youtube.comさらに、記者会見でこの10年間の事務総長在任中のレガシーについて
(早くも)問われて、事務総長は、

1)新型コロナウイルス感染症の世界的大流行への対応で国連が主導的な役割を示したこと、
2)ロシアによるウクライナ侵攻、ガザにおける悲劇的状況、そしてイスラエルおよびアメリカによる最近のイランへの爆撃などに対して、一貫して国際法に基づき、事務総長として声を上げてきたこと、
3)気候変動対策で国連が主導的な役割を果たしてきたこと、
4)人工知能(AI)について国連が関与する場を作ることができたこと、
を挙げていました。

大阪・関西万博の国連パビリオンのテーマ「人類は団結したとき最も強くなる。」が示すように、私たちが団結すれば、難局を切り抜け、成果を出し、人々の信頼が回復できます。それには、国連の身を切る改革努力である「UN80イニシアチブ」への支持も含め、日本の強力な支援は不可欠です。

レセプションで高市早苗総理大臣と言葉を交わすアントニオ・グテーレス国連事務総長  ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae

「70年にわたり、日本が目指す目標と国連が目指す目標は強く整合してきました。
国連は数十年もの間、日本の寛大さと多国間システムへの貢献から
多大な恩恵を受けてきました。
そして日本は、国連での役割を効果的に活用し、
その外交上の影響力を高めるとともに、安定的、協調的な
グローバル・システムを通じて経済的な繁栄と平和を築いてきました。」

このように日本・国連双方にとっての恩恵に触れつつ、日本の政府と人々に対して、過去70年間の特別なパートナーシップへの感謝を、グテーレス国連事務総長は繰り返し述べていました。

「国連システム事務局長調整委員会」の年次会合がアジアで初めて、東京で開催されたことは、日本の国連への揺るぎないサポートを体現するものでした。今回の事務総長の訪日で高まった機運を、日本が国連加盟を果たした当日である12月18日に向けて、高めていきたいと願っています。

レセプション直前に撮影された高市早苗総理大臣と国連側参加者との集合写真 ⒸUNIC Tokyo/Ichiro Mae