気候変動に対して、私たちに何ができるのか。考えるきっかけをくれた4月5日のFacebookライブ「スポーツで気候行動に取り組もう!」について国連広報センターのインターン、田代がお伝えします。
世界中に広がる気候行動の輪
気候変動による影響は、地球のあちこちで起きています。
日本も例外ではありません。夏の酷暑や突然の豪雨など、その変化を身近に感じる機会が多くなり、人々の生活を脅かしています。
このような地球規模の問題に対し、新しい切り口で行動を起こそうという動きが世界中で広まっています。
その切り口はなんとスポーツ。
気候変動がスポーツに与える影響と、逆にスポーツイベントが環境に与える影響、そしてスポーツに対する人々の関心の高さに着目し、スポーツと気候変動の関係性を再認識して皆で協力していこうという考えです。
この取り組みが立ち上がったのは、2018年12月にポーランドのカトヴィツェで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)。「スポーツを通じた気候行動枠組み」(Sports for Climate Action Framework) が決まり、世界のスポーツ・コミュニティーが気候変動に取り組むために具体的なアクションを行うこと、また気候変動について世界の意識を高めていくためにスポーツを活用していくことが目標として定められました。
世界中のスポーツ選手もこの考えに賛同し、行動を呼びかけています。
国連広報センターは「開発と平和のためのスポーツの国際デー」を記念し、4月5日に「スポーツで気候行動に取り組もう!」と題したFacebook ライブを開催。スポーツを通じて私たちができることを考える機会としました。プログラムの詳細はこちらをご覧ください。
Facebookライブを通じて気候行動を呼びかける
Facebookライブでは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の室伏 広治(むろふし こうじ)スポーツ・ディレクターとJOCアスリート委員会委員で元フィギュアスケート選手の高橋成美(たかはし なるみ)さんから、気候変動とスポーツとの関係についてお話いただくことから始まりました。
スポーツ界の第一線で活躍されてきたお二人からのメッセージの中で、「きれいな環境がなければスポーツはできない」、「温暖化が進むとウインタースポーツ選手の練習場所が狭まってしまう」という言葉は非常に重みがあり、人々に行動を促す力を感じました。
このライブ中、Facebookを通じて視聴者の方々から質問が寄せられました。「冬季スポーツ界ではエコフレンドリーな取り組みが進んでいますか」という質問に、高橋さんは「日本でも数年前から取り組みが広がっています。しかし一番大事なことは、選手自身がこのような幸せな環境でスポーツができることを実感し、行動することです」と答え、アスリート自身が気候変動への意識を高めるよう訴えかけました。
続いて一般社団法人グリーンスポーツアライアンスの澤田陽樹(さわだ はるき)代表理事は「スポーツを通じた気候行動枠組み」の骨子作成に一年かけて尽力した自身の経験から、スポーツが持つ「人を動かす力、人をつなぐ力」への期待がCOP24で決まったこの枠組みに込められていると強調。またスポーツ選手が気候行動を実施する際には、他国や他チームの真似ではなく、一個人選手として何をしたいのか、そしてチームや社会にどのようなポジティブな影響を与えられるかを考えるべきだと語りました。
地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の星野 智子(ほしの ともこ)運営委員は世界の気候変動のいまを解説。さらにスポーツを通じた気候行動に加え、新たにファッション業界が先導するキャンペーン、大規模音楽イベントにおける活動など分野を超えて世界中に広がる気候行動を紹介しました。
期待される東京2020大会での気候行動
大規模なスポーツイベントといえば、来年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)があります。東京2020大会組織委員会は気候変動に対する取り組みを進め、「スポーツを通じた気候行動枠組み」にも参加しています。
「オリンピック・パラリンピックは人々の意識と価値観を変えることができる」
とスポーツが持つ影響力を強調したのは、室伏 スポーツ・ディレクター。この世界的なスポーツの祭典を通じ、世界中の人に気候変動や持続可能性について考えてほしいという強い思いを語り、「地球規模で考え、足元から行動しよう」と呼びかけました。
室伏 スポーツ・ディレクターは組織委員会を代表して、ニューヨークの国連本部で開催された「開発と平和のためのスポーツの国際デー」のイベント(4月3日)にビデオメッセージで参加。要らなくなった小型家電からメダルを作る「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」についてもメッセージで触れています。
高校生も気候行動を実践
ポーランドのカトヴィツェで開催されたCOP24に参加した佐野高校ラグビー部キャプテンの渡耒遊夢(わたらい ゆうむ)さんはFacebookライブの直前まで緊張している様子でしたが、さすがスポーツ選手、マイクを握ると本番力を発揮し、とても堂々としたトークを行いました。「COP24に実際に参加したことで、世界とのつながり、新たな視点を得ることができました。自分たちが先頭となって若い世代の気候行動を引っ張っていきたいです」と意気込みを語り、参加した他の部員たちとイベントを盛り上げました。
「一人ではなく、みんなで取り組めば大きな力になる」
と述べたのは、佐野高校ラグビー部女子キャプテンの大川菜月(おおかわ なつき)さん。部員が毎日飲むペットボトルの数や使っていないスポーツウエアの枚数を数えるなど、環境に対して自分たちに何ができるのかを話し合って決め、毎日の生活の中にSDGsや気候行動の考えを反映しているとのことです。
またライブ視聴者から寄せられた「他の高校生に取り組んでほしいことは何ですか」という質問に「新しいアイデアを出し、私たちがまだやっていないようなことに挑戦してほしいです」と答えた大川さん。若い世代も積極的に意見を出し合って、お互いに刺激し合いながら行動することの大切さを訴えました。
地球規模の課題を自分ごととして真剣に考え、自らの生活の中でできることを積極的に実践している高校生をはじめ、東京2020大会やスポーツ界で発信を続けるアスリートの皆さん、専門家の皆さん。今回のFacebookライブでは一人ひとりが気候変動に向き合い、自分にできることを考えて実践する大切さを再認識しました。
気候変動の問題は他人事ではありません。
スポーツを切り口として考えるように、気候変動に対するアプローチは様々な方法があります。
皆さんも気候変動や環境のために、自分に何ができるか考えてみませんか。
(インターン 田代)