国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

海の豊かさを守るためにわたしたちにできること

 

 

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プラスチック汚染の深刻さを受け、博報堂のクリエイティブ・ボランティアの皆さんが日本語のロゴを制作して下さいました。

 

 

「5兆枚」

 

皆さんがいま、手にしているその「ビニール袋」

毎年、世界ではなんと5兆枚も使用されているのです。

そして、わたしたちが日々、何気なく使用しているこのようなプラスチックの50%は

再利用されることなくその役目を終えていきます。

 

そのプラスチックが行き着く先はどこでしょう。

 

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インド最大の都市、西海岸のムンバイには「プラスチックの砂浜」が広がっています。©UNEP

 

 豊かな生態系を育む「海」です。

 

青々とした美しさでわたしたちを魅了する海。

しかし、その海の中には「ギョっ」とするような現実がありました。

 

「海の豊かさ」を守るために出来ることは何でしょうか?

 

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SDGsゴール14は「海の豊かさを守ろう」。プラスチック汚染をなくすことはそのゴール達成のカギでもあります。©UNIC Tokyo


 

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「海の豊かさ」を守るためにわたしたちにできることは何でしょうか。会場に集まった皆で考えました。©UNIC Tokyo

 

 

6月8日の世界海洋デーを記念して開催された

日本から考えるSDG14:海の豊かさを守ろうシンポジウム」は、

そんな「海の豊かさ」に思いを馳せる機会となりました。

 

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さかなクンがこの日のために素敵なイラストを用意して下さいました!豊かな海の様子がカラフルな色とともに表現されています。©UNIC Tokyo

 

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登壇者 / パネリストの皆さん

さかなクン 東京海洋大学名誉博士・客員准教授

イヴォーン・ユー UNU-IAS研究員

沖大幹 国連大学上級副学長

 

モデレーター

根本かおる 国連広報センター所長

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シンポジウムのタイトルにもあるSDG14では、

「海の豊かさを守ろう」をゴールとして定めています。

 

 

「海の恵みを得るためには、海が健全でなければならない。

 美しい海を守っていくだけではなく、持続可能にして利用していこう。」

沖上級副学長は、今後の海との付き合い方についてこのように話しました。

 

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「関心をもって海を利用しているほうが、少しの変化にも気が付きやすい」と話す沖副学長。©UNIC Tokyo

 

「魚一匹、一匹との出会いが、色々なことを考えるきっかけになっている」

というさかなクンからは、「一魚一会」というテーマで、日本の海の恵みが脅かされている現実を「お魚の目線」から話していただきました。

 

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魚をこよなく愛するさかなクン。年間の講演回数は100を超えるそうです。©UNIC Tokyo

 

海の中を様々に観察してきたさかなクンによると、

近年ゴミ、特にプラスチックが増加し、それらが海の生物たちを苦しめているようなのです。

 

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「海を中から見てはじめて気が付くことも多い」ご自身の経験をイラストを交えてお話をして下さいました。©UNIC Tokyo

 

漂っている容器をクラゲと間違えて食べてしまうこともあるミズウオを見てみると、以前は深海魚でいっぱいだったそのお腹からは、今ではゴミばかりが出てきてしまう状況であること。

 

また、頭の近くに輪っか状のプラスチックゴミが引っかかってしまい大きな傷を負うサメを目撃したこと。

 

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海を漂う大量のプラスチックごみ ©UNEP

 

こういった現実を目の当たりにし

自分が日々何気なく手にする使い捨てのプラスチックが

こんなにも多くの生き物を長い期間に渡って苦しめてしまうのだと心が痛みました。

  

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「 使い捨てプラスチックの利用は控える」ということ以外で

日本に住むわたしたちだからこそ出来る「海の豊かさ」を守るためのアクションがあることを、「里海 とSDGs」と題し、国連大学イヴォーン・ユー 研究員は伝えました。

 

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東日本大震災をきっかけに、海との付き合い方について真剣に考えていきたいと思うようになったと話すイヴォーン・ユー研究員。©UNIC Tokyo

 

海洋の生物多様性分布を見てみると、日本を含むアジア地域の周りが「赤」で囲まれていることが分かります。

日本はこのように海の生き物の種類に富んでおり、その沿岸の海は「魚のゆりかご」として、産卵場、生育場、餌場を提供しています。

 

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海洋の生物多様性分布図。日本を含めアジア周辺には多様な生態系があることを物語っています。©UNIC Tokyo

 

国内外で「里海(SATOUMI)」づくりの輪を広げるイヴォーン・ユー研究員は、

このような豊かな恵みを出来るだけ多く得ようとするのではなく

「必要以上に獲りすぎない」という意識が日本の伝統漁業に深く根付いており

そういった漁業法によって里海は守られていると言います。

 

わたしたちが普段の生活を通じて里海を守るために出来ることは何でしょうか。

 

それは、「正しく食べて応援すること」です。

 

皆さんはサステイナブル・シーフードをご存知ですか?

 

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©サステイナブル・シーフード

 

「魚の獲り過ぎや、自然を傷つけることが起こらない方法で獲られた魚から出来た食べ物」を指します。

 

わたし自身もそうでしたが、産地を見て生産物を購入することはあっても、

こうしたラベルを参考にして購入する消費者はまだまだ少ないと思います。

 

しかし、多くの海の豊かさを享受することが出来る日本で、

このようなサステイナブル・シーフードを選び、正しく食べることは

海を守ることにも繋がるのですね。

 

***

 

 後半は、「SDG14達成のために私たちができること」をテーマにパネリストの皆さんとモデレーターの根本所長によるパネルディスカッションが行われました。

 

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「なぜ海がこんな大変な状態になってしまったのでしょうか?」根本所長の問いにそれぞれの視点からパネリストの皆さんがプラスチック汚染の背景を話します。©UNIC Tokyo

 

シンポジウムがより盛り上がるように!

活きの良い質問がたくさん集まるように!

と願いを込めて国連広報センターのインターン5名で協力し、

魚のかたちの質問票を用意しました。

 

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手作り感満載の魚の質問票です!©UNIC Tokyo

 

会場から集まった「大漁」の質問も交えながら意見交換がなされました!

 

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質疑応答の時間ではギョギョギョ!と、新鮮な「質問」をつかみとって回答。©UNIC Tokyo

 

わたしたちが生活の中に便利さを求めすぎてしまった結果

プラスチックゴミが増え、海に多くの害を与えるようになってしまいました。 

 

現在のプラスチックの生産量は3.6億トン

2030年にはその倍量となるとも言われています。

 

http://www.unic.or.jp/files/beat_plastic_pollution_card.png

 

「90%以上のペットボトル飲料に、プラスチック粒子が混ざっている」

 

根本所長から共有された衝撃的な事実。

わたしたち参加者だけでなく、パネリストの皆さんも非常に驚かれていました。

 

 #やめようプラスチック汚染

 #BeatPlasticPollution

 

 先日、カナダ・シャルルボワでは、「健全な海」をテーマとしたG7アウトリーチ会合が開催され、アントニオ・グテーレス事務総長も出席しました。

この会合では、シンポジウムで広く取り上げられた「プラスチックごみによる海洋汚染問題」についても議論がなされ、具体的な対策を各国に促す合意文書がとりまとめられました。それを受け、「カナダと欧州各国首脳が『G7海洋プラスチック憲章』を承認する」ことがG7首脳宣言に盛り込まれました。この憲章をアントニオ・グテーレス事務総長は歓迎し、海洋汚染への警鐘となることを期待しましたが、残念ながら日本は、アメリカとともに憲章への署名を見送りました。

 

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©UN News, G7 Canada/Xavier Dachez



 わたしたちひとりひとりが、日々の小さな「選択」を変えることで

「海の豊かさ」を守る活動に貢献することが出来ます。

 

  •  ビニール袋の代わりにエコバックを使う
  • ペットボトルに入った飲み物を控え、マイボトルを持参する
  • プラスチック製のスプーンやフォークの代わりにマイ箸を使う

わたしも、使い捨てプラスチックとの別れ(Break-up)を決意しました。

 

 

"Are you ready for a break-up?"

次はあなたの番です。

 

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海の豊かさを守るために、今日からできることをはじめてみませんか? ©UNIC Tokyo

 

 

インターン 山田 怜)