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「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」とアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長の訪日を振り返って

皆さんは、11月6日の「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」を、そして戦争や武力紛争が環境に与える影響をご存知でしょうか?

この国際デーを機に、2019年10月に訪日したアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長が東京大学公共政策院で開催された講演会で紹介した、環境に配慮した国連ミッションの現場での施策や、こうした平和と安全を確保する活動で必要とされている人材についてご紹介します。

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講演会「国連平和維持活動: 今日と明日」で登壇するアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長 ©UNIC Tokyo

 

戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デーとは

 

戦争や武力紛争によって犠牲になるのは人だけではありません。あまり知られていませんが、環境も戦争の犠牲となります。軍事的優位性を確保するために、井戸水は汚染され、畑は焼かれ、森林は伐採され、土地には有害物質がまかれ、動物は殺されます。

他方で、平和と安全にかかわる国連の活動においても、環境に負荷がかかってしまうことがあります。国連環境計画(UNEP)の報告によると、2017年に国連平和維持活動や政治的ミッション政治活動、それらの支援活動によって100万トン以上の二酸化炭素が排出されました。そのうち、半分以上が施設から排出されていました。

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南スーダンにて紛争を調停するUNMISSの兵士たち ©UN Photo

 

平和と安全に関わる国連の現場における環境マネジメント

 

こうした負荷を軽減するため、国連は、環境に配慮しながら紛争防止、平和維持そして平和構築に取り組むことに重きを置いています。 

例えば、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は、本部内で太陽光発電を動力源とする電気自動車を使用しています。また、基地にも太陽光発電を導入し、特に情報通信技術サービスの施設ではエネルギーの70%を太陽光発電で補うことで、3か月で4,806キログラムの二酸化炭素の排出量を減らすことに成功しました。

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レバノンのナクーラ(Naqoura)にある太陽光発電を取り入れたUNIFILの施設 ©UN Photo/Pasqual Gorriz

また、水の消費量を削減する試みも積極的に行われています。

例えば、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)では、水が不足している南スーダンでの活動で水を効率的に使用し、水の使用量を減らすための取り組みを行っています。

低水量シャワーヘッド付きのトークン式シャワーを導入することで、シャワーに使われていた水量を50%も減らすことができるようになりました。さらに、太陽光発電で動いたり起動時間を制限したりと工夫がこなされた水処理施設、1万リットルの雨水を集めることができるタンクを導入しています。

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UNMISSによってジュバ(Juba)近くの地域に譲られた水処理施設。15時間のみ稼働させることで、設備の劣化を抑えることにつながる ©UNMISS

国連オペレーション支援局の前身の国連フィールド支援局は、2017年に、平和活動による天然資源利用効率を最大限に高め、人間や社会、生態系に対するそのリスクを最低限に抑えるための新たな戦略を発表しました。SDGsに沿った6か年戦略は、エネルギー、水と廃水、固形廃棄物、より幅広い影響、環境マネジメントシステムという5つの柱に基づき、課題と目標を定めています。詳しくは、こちら

 

カレ事務次長から日本の若者にむけてのメッセージ

 

アトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長は、10月16日に内閣府国際平和協力本部事務局と東京大学公共政策院が共催した「国連平和維持活動: 今日と明日」と題された講演会で、太陽光発電や他の再生可能エネルギーの活用に今後より力を入れていくと語りました。このような技術面でのイノベーションを進めるためには、エンジニアや環境の専門家といった人材が必要とされています。 

カレ事務次長は、日本の若者が国連の平和と安全に関する活動に直接携わるキャリアを形成する方法として、「国連では、私の部局が毎年運営している国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)というものがあり、32歳以下の日本の若者には是非このYPPに応募し、挑戦して欲しいと思います。また私は、日本の方々に2~4年間の短期で、国連ボランティアとして平和維持活動および平和活動における責任のあるポジションに就くことも検討して欲しいと思います。加えて、私は日本政府に対して、将来国連の一員になりうる優秀なジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)を派遣し続けることを推奨します。したがって、平和維持活動に直接的に携わるためには様々な方法があります」と述べました。

また、平和や安全の分野でジェンダー平等を実現する必要性を訴え、より多くの女性の活躍を望んでいることを強調しました。国連平和維持活動の報告によると、平和維持活動にあたる女性の割合は、2019年8月時点で軍事要員では約5%、警察では約15%に過ぎません。

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UNMISSの平和維持活動員 ©UN Photo

さらに、カレ事務次長は日本の若者に向けて、「間接的には、日本の若者は、倫理的なビジネスを実践することによって、国連の目的に貢献することもできます。男女平等問題に取り組んでいる日本の若者は、国連の原則にも貢献しています。直接的・間接的に関わらず、是非より良い世界のために何ができるのかを皆さん方なりに考え続けて頂きたいと思います」と述べました。

カレ事務次長は、1992年に自衛隊カンボジアPKO活動に派遣して以来27年にわたりPKOを通して平和へ貢献している日本人と日本政府へ感謝を繰り返し表明しました。