国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

日本の国連加盟60周年記念シリーズ「国連を自分事に」(2)

回  京都大学宇宙総合学研究ユニット教授 土井隆雄さん

~人生のチャレンジャー~

 

1985年に日本人で初めて宇宙飛行士に選ばれ、1997年に日本人として初めて船外活動をし、2008年には日本初の有人実験施設「きぼう」を国際宇宙ステーションに取り付けた土井隆雄(どい たかお)さんに、「初めて」という言葉は切っても切れません。2009年9月から2016年初めまでの6年半の間、オーストリアのウィーンにある国連宇宙部の宇宙応用専門官として、世界で初めての宇宙飛行士出身の国連宇宙部の職員として活躍したのち、2016年4月京都大学の「宇宙総合学研究ユニット」(宇宙ユニット)の教授に就任しました。「宇宙ユニット」は宇宙理工学に限定されない、部局の枠を超えた幅広い分野にわたる学際的な科学の展開を目指し、こうした研究ユニットを持つのは世界でほかに例がない、とのこと。大学の研究室に土井さんを訪ね、国連での経験やチャレンジを続けるスピリットについてお話をうかがいました。

 

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 STS-123ミッションクルー集合写真: 国際宇宙ステーションに取り付けられた「きぼう」日本実験棟船内保管室を背景に浮かぶ(前列右端) 提供:NASA

 

                    土井 隆雄 さん

【宇宙工学・天文学専攻、工学・理学博士。 1997年、スペースシャトル「コロンビア号」に搭乗し、日本人として初めての船外活動を行なった。2008年、スペースシャトル「エンデバー号」に搭乗。ロボットアームを操作し、日本初の有人宇宙施設「きぼう」日本実験棟船内保管室を国際宇宙ステーションに取り付けた。2009年から2016年にかけて、国連宇宙部で国連宇宙応用専門官として宇宙科学技術の啓蒙普及活動に取り組む。2016年4月より京都大学宇宙総合学研究ユニット特定教授に就任。2002年と2007年には超新星を発見する。】

                       

 

根本: 2016年1月にまだ国連在任中に休暇で一時帰国なさった時にお目にかかりましたが、その頃よりも何だか若返りましたね! 

 

土井: まだ慣れないことも多いですけれど、若い人たちに教えるのは楽しいですから。こちらがエネルギーをもらっています(笑)。大学には運動も兼ねて、自転車で通っていますよ。京都をエンジョイしています。

 

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京都大学総合生存学館(思修館)で行われた山崎直子宇宙飛行士の特別講義に参加した時の集合写真(前列左から4番目:土井さん) 提供:京都大学

 

 

根本: 6年半国連で働いた経験は、土井さんの人生にとってどんな意味を持ちますか?

 

土井: 非常に大きな新しい経験をさせてもらった6年半だったと思っています。それまで僕は宇宙開発の最前線で、人間世界を宇宙に広げていく前線で20年以上仕事をしてきて、言ってみれば「宇宙バカ」だった。2回目の宇宙飛行から帰ってきた時に、「宇宙から見た地球は素晴らしいけれども、自分は地球のこと、地球に暮らしている人々の生活や文化や言語については知らない、と思ったんです。世界のことをもっと知りたい、そう考えて国連で働くことを選びました。国連宇宙部は、宇宙空間の平和利用のための重要な委員会の事務局を務め、開発途上国が自国の開発のために宇宙科学技術を利用できるように支援するプログラムを持っています。国連宇宙部で、自分の専門性を活かしながら人生経験を広げることができたと感じています。

 

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国連宇宙部時代、 ウィーン市役所で開かれた国連と市民の交流会にて、国連宇宙部の宣伝に駆けつける(筆者提供)

 

 

根本: 宇宙開発も多国籍ではありますが、参加しているのは先進国中心ですね。国連開発途上国も重要な加盟国で、関わる国がもっと多いですね。

 

土井: 宇宙ステーションに参加しているのは確かに先進国中心の15ヶ国ですが、国連の仕事で訪れた国々では、開発途上国も含めてすべての国が宇宙開発に興味を持っているんですね。宇宙を利用してリモートセンシングによって自国の衛星写真を撮って農業や災害対応に役立てたり、地図を作ったりする訳ですね。同時に、人が宇宙に行くということにも関心を持っています。もちろん人が宇宙に行くためにはお金がかかるので、限られた国しか有人宇宙開発をやっていませんが、一人ひとり、特に若い人たちと話をしていると、「宇宙に行きたい!」という人たちがいっぱいいます。非常に印象に残っているのは、ナイジェリアの大学で宇宙の話をした時のことです。私の話が終わってから、一人のナイジェリアの女子学生が来て、「私はどうやったら宇宙に行けますか?宇宙飛行士になるには、どうしたらいいですか?」という質問をしたんですよ。これは素晴らしいと思いました。ナイジェリアはアフリカの中で宇宙に最も投資している国のひとつですが、その中で学生の皆さんが「宇宙に行きたい」という強い意欲を持っている。宇宙というものをもっと世界に開いて、オープンに参加してもらって、誰でも宇宙の恩恵を受けられるようにしたいと思い、そういう活動を心掛けてきました。

 

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有人宇宙技術のための国連/コスタリカワークショップ(2016年3月7日−11日)中に開かれたInternational Astronaut Forumが、現地の新聞に取り上げられた。サンホセの国立競技場に8500人の少年少女達が集い、世界の7カ国からやってきた宇宙飛行士と宇宙への夢を語り合った。(筆者提供)

 

 

根本: どの国でも宇宙の恩恵を受けられるようにということでは、土井さんは国連と日本との連携で素晴らしいプロジェクトを手掛けられましたね。

 

土井: 「KiboCUBE」です。宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟には大変優れた機能があるんですね。「きぼう」のモジュールにはエアロックがあって、このエアロックとロボットアームとを駆使して超小型の衛星を宇宙に放出できるという、国際宇宙ステーションで唯一のユニークな能力を持っています。低コストでできる超小型衛星は地球観測や災害対応などの目的に活用できますから、これを「きぼう」から宇宙に放出できれば、お金を掛けて衛星を打ち上げることのできない国々にも宇宙空間の利用の機会を提供できるのではないか、と。日本独自の宇宙技術を世界にアピールする機会にもなります。関係者を説得してまわって、2015年9月に国連宇宙部とJAXAとで協定を締結することができました。

 

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STS−87ミッション中に行われた船外活動。宇宙ステーションで使われる予定の宇宙クレーンの操作試験を実施している。背景にサハラ砂漠が写っている。 提供:NASA

 

 

根本: 4月に教授に就任なさって、6月から授業をスタートしていらっしゃる京都大学の宇宙ユニットのパンフレットを拝見して、宇宙の研究は、理工学はもちろん、医学、農業、通信、環境、エネルギー、気象、法律、心理学など大変幅広い分野を総合して成り立っているんだなあと感じました。このような総合的な研究は他でも行っていることなんですか?

 

土井: いえ、日本で例がありませんし、世界でも常設の研究ユニットとしては京大が初めてですね。理工学の専門家ばかりではなくて、人文社会科学の専門家、そして芸術家たちも集ってもらって、新しい宇宙総合学を作ろうとしています。1000年の歴史を持つ京都だからこそ、1000年先の未来を見る先見性と京都という場の力を感じます。宇宙ユニットでは、平成28年度後半から、新しいプログラム:有人宇宙活動のための総合科学教育プログラムの開発と実践を始める予定です。これは、有人宇宙活動に必要な新しい学問体系を創り上げ、学生の皆さんに有人宇宙活動、言い換えれば、人間が宇宙空間で行う活動のための基礎知識を教え、新しい事にチャレンジしていく強い心を育てようという教育プログラムです。この教育プログラムを受けた学生の皆さんの中から、将来、日本の宇宙開発を牽引していく人材が育ってくれればと思います。

 

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STS−87ミッション: スペースシャトルコロンビア号のミッドデッキで、宇宙で初めての日の丸弁当を食べる。ストローの付いている容器に入っているのはワカメの味噌汁。 提供:NASA

 

 

根本: マット・デイモン主演の映画『オデッセイ(原題:The Martian)』でも、火星で農業をしていましたね。

 

土井: 現実はあそこまで進んでいるわけではありませんが、もちろん宇宙空間に人間が住もうとすると農業は大切な分野です。農学部や他の学部の先生たちにも僕たちのユニットに関わってもらっています。

 

根本: いろいろなアクターを巻き込むという点では国連で随分と鍛えられたのでは?

 

土井: 宇宙の現場では目標は一つですが、国連の場では国益のぶつかりあいもあるし、必ずしも見ている方向が同じとは言えません(笑)。苦労もありましたが、その分いろいろと鍛えられた。京都では、若い人を育てる今の仕事に新たなやりがいを感じています!若い皆さんは、全員が素晴らしい力を内蔵して、あらゆる事が可能です。ただ、自分の力に気付いていない人が多いようです。その力を全力で何かに注ぐことができたら、素晴らしい仕事をすることができる。そのためには、自分で全身全霊をかけることができる事、自分の大好きな事を見つける手伝いをしたいと思っています。若い皆さんには、世界で自分だけしかできない事をしろ、と言っています(笑)。

 

 以下より、土井さんを含む世界各国の宇宙飛行士から若者に向けてのメッセージがご覧いただけます。

Messages from Space Explorers to future generations

 

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京都大学の土井さんの研究室で ©UNIC Tokyo