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国連のさまざまな活動を紹介します。 

インターンが参加しました。「国連デー記念ドキュメンタリー映画『闘うセレブ~U2ボノの叫び~』特別上映会~ドキュメンタリーから開発アジェンダを考える~」

 国連広報センターは、国連アカデミック・インパクト参加大学である中央大学と、ドキュメンタリー映画を通して国際的な課題について考えるイベントを3回シリーズで開催しています。参加したインターンが、11月2日に行われた第2回目のイベントの模様をお伝えします。

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「闘うセレブ~U2ボノの叫び~」とは?
 第2回目の上映作は、貧困問題に取り組むセレブを描いた力作ドキュメンタリー「闘うセレブ~U2ボノの叫び~」です。ロックバンドU2リードボーカルのボノは、過去30年間「バンド・エイド」「ライブ・エイド」などのイベントを通じて、貧困撲滅のチャリティ活動に熱心に取り組んできました。1980年代のエチオピアへの支援以降、賞賛の声の一方で、現地の状況を把握していない資金だけの援助との批判も湧き上がります。批判を受けながらも、「ロック・スター」の知名度を活かした、独自の支援の方法を模索するボノの姿を描きます。

現地の人々を主体に様々なアクターの協力が必要
 ドキュメンタリー上映後、国際協力のあり方、日本の現状についてパネルディスカッションが行われました。登壇したのは、横浜市立大学の上村雄彦 教授、外務省の田村政美 国際協力局地球規模課題総括課長、世界銀行の塚越保祐 駐日特別代表、中央大学学生の北見さんと本田さんです。司会は根本かおる 国連広報センター所長が務めました。
 パネリストからは、国際的課題解決には様々なアクターの協力が必要という意見が多く聞かれました。例えば、資金や経済の観点からは、「国際協力には莫大な資金が必要なため、政策を考える政治家、世論を形成するマスメディア、広告塔になるセレブ等の様々なアクター達の協力が不可欠です。また、ODA(政府開発援助)、国際協力の拠出金を増やすためには先進国の経済成長を促す必要もあります」と、世界銀行の塚越駐日特別代表は述べました。それを受けて、横浜市立大学上村教授は「寄付だけでは問題は解決されず、弱者が不利になるグローバル経済の構造を国際連帯税によって是正する必要がある」と、国際連帯税の必要性を示しました。国際連帯税とは、国境を越えて経済行為をする主体の活動に課税し、世界課題に取り組む際の資金としようとする構想です。
 一方で、支援をする側と支援の対象となる人々に着目する観点からは、「ODAを増やすには世論の支持がなくてはならず、支援をする国の一般の国民をも巻き込んでいかなくてはならない」と、外務省の田村課長は強調しました。在日インド人のコミュニティとの交流に関わり、南米での支援事業に関心のある中央大学学生の北見さんは、「現地の人々が援助に依存してしまわないように、彼らが主体的に動く必要がある」と言います。同じく中央大学学生の本田さんは、ガーナでのサッカー交流プロジェクト運営経験から「当初、活動の中心は自分であったが、後から現地の人がプロジェクトの意思決定に参加するようになった」と、現地の人のオーナーシップの大切さを語りました。

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イベントを終えて~インターンの感想~
 私は以前から、国際協力について抱いている疑問があります。それは、様々なアクターや専門家がいる中で、どのように協力して問題に取り組むのかという疑問です。国際協力のバリエーションが増えることに繋がりますが、競争や混乱を招くのではないかと思うからです。今回の上映会は、その疑問の糸口として、「役割」「協力」というキーワードを与えてくれました。
 国際協力におけるボノの最大の存在意義は、「ロック・ミュージシャン」の「セレブ」であることなのです。「ロックが生まれた当時、その本質は歌やパフォーマンスを披露して人々を楽しませることにあったのではなく、差別の撤廃や自らの地位向上を謳い、行動することにある」という言葉を聞いたことがあります。ロックは、社会問題に対する人々の姿勢を変えるための音楽として発展したそうで、ボノが掲げる貧困撲滅に通じるところがあります。パネルディスカッションでは、国際協力には様々なアクターが必要という声が多く聞かれました。それを踏まえると、ボノは、「ロック・ミュージシャン」としての支援のあり方を全うしているのではないでしょうか。また、広告塔として政治家に働きかけて資金を集めることができるのも、ボノが「セレブ」の力を知っているからではないでしょうか。アクター達が互いに批判し合うのでななく、歩み寄って問題解決に向けて協力すべきだと感じました。
 実際にどのように多くのアクターが協力していくのかという答えを見つけることはとても難しいことです。しかし、私にとって一歩さらに踏み込んでこの問いに答えるため、これからも行動し学び続けたい、と改めて意気込む機会となったことは間違いありません。(インターン 石川尚志)

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