国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

国連創設75周年(UN75)私たちの未来について「対話」をしよう!! ~若者たちよ、自分たちの声を発信しよう!~

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キャサリン・ポラード事務次長(写真中央)と国連広報センタースタッフ  🄫UNIC Tokyo

皆さんは、今年で国連が創設されて75年になることをご存じでしょうか?

国連は、2つの世界大戦を経て、国際平和と経済・社会発展の実現を誓った国々によって1945年に生まれました。

 創設75周年の節目を、世界中の人々の声に耳を傾ける機会にしたいというアントニオ・グテーレス事務総長のたっての希望から、国連が立ち上げたのが「UN75」です!

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21世紀の国連における若者の役割について講演するアントニオ・グテーレス国連事務総長 ©UN Photo

UN75とはシンプルに説明すると、

国連が創設100周年を迎える2045年までに全ての人にとってより明るい未来を構築するために、私たちが今取るべき行動や国際協力の重要性について考えよう!という対話の促進を目指したイニシアティブです。

 

未来を見据えた国際的な対話をするなかで、UN75は以下の問いを投げかけています。

  1. 私たちはどのような未来をつくりたいのか?
  2. それを実現できる目途は立っているか?
  3. そのギャップを埋めるためには、どのような行動が必要か?

 

UN75は、グローバルな課題の解決に熱い思いをもっている人にも、それほど興味がなかった人にも、全ての人に「対話」への参加を呼びかけています。そして、こうした議論を通して、気候危機やデジタル技術による人権侵害といった深刻な課題の解決に様々な組織や人々と取り組んでいこうとしています。

国連広報センターは、このUN75を日本の皆様に知っていただくイベントとして、2月17日(月)に「国連創設75周年記念講演~一緒につくろう、私たちの未来~」を国連大学本部ビルにて開催しました。

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イベントにて参加者より質問を受けるポラード事務次長 ©UNIC Tokyo

本イベントでは、国連本部のキャサリン・ポラード管理戦略・政策・コンプライアンス担当事務次長が、日本を含む世界中の人々が共に2045年までによりよい世界を形づくるために、UN75の対話へ参加するよう、日本の人々に呼びかけました。

 今日の、新しい類の紛争や暴力、環境問題といった多くの深刻な問題は世界的に起こっています。このような問題は日本にとっても決して他人事ではなく、むしろステークホルダーの一員として積極的に取り組むべきであると語りました。

参加者からも「テクノロジーの進歩は社会の分断を繋ぐ役割を果たすのか、それとも社会の脅威となってしまうのか?」と、テクノロジーが諸刃の剣となる可能性を指摘する声がありました。ポラード事務次長は、「テクノロジーの分野では、まだガバナンスのシステムが出来ていないことが課題。国連は加盟国とこのシステムの構築を目指している」と答え、グローバル協力の必要性を強調しました。

そして、将来、社会の中枢的な存在となる若者を中心に、積極的にUN75の対話に参加してほしいと繰り返しました。

 

国連におけるキャリアについて

ポラード事務次長は、約30年にわたる自身の国連でのキャリアを振り返り、「国連以外の組織で働いていたとしても、自分はおそらく実績を作ることが出来たと思う。ただ、物事を多角的な視点から分析する力を培えたのは、国連で働いてきたからだ」と思いを熱く語りました。

国連で働くということは、グローバルな課題解決への貢献の具体的なアクションの一つでもあります。

同じくニューヨークの国連本部から訪日した人事担当のホンソク・クォン氏も自身の経歴に触れながら、国連における幅広い職務から選考法、そして国連が求める人材について話しました。また国連は、ジェンダー、出身国、障がいなどのバックグラウンドが多様な人々が働く職場を目指していることを紹介しました。

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国連におけるキャリアについてプレゼンテーションを行うクォン氏 ©UNIC Tokyo

冒頭で挨拶された外務省総合外交政策局の山中修参事官も、日本政府としての支援策について語った国際機関人事センターの村林弘文室長も、より多くの日本人に国連職員として世界中で活躍してほしいと呼びかけました。

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冒頭の挨拶を行う外務省総合外交政策局の山中参事官(左)、国連でのキャリアを紹介する外務省国際機関人事センターの村林室長(右)©UNIC Tokyo

参加者からは、国連でのキャリアに関する具体的な質問が多く寄せられました。将来国連で働きたいと思いつつも、なかなかイメージが湧かなかった参加者にとっては、自分のキャリアを考え、具現化するためのヒントを得る機会となったのではないでしょうか。

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イベント会場はほぼ満席!学生など若い参加者が多く見られました ©UNIC Tokyo

 

グローバルな対話に参加する方法

国連創設75周年を記念して立ち上げられたUN75。独力では解決出来ない深刻な課題に向き合い、明るい未来を築き上げていくには、全ての人がこのUN75の対話に参加する必要があります。

皆さんの声は様々な方法によって国連に届けることが出来ます。

国連広報センターのウェブサイトにはUN75の特集ページが設けられており、誰でも簡単にグローバルな対話に参加できる方法を紹介しています。

わずか1分で出来るアンケートや、ツールキットなど様々な情報を掲載しています。

また、インスタグラムツイッターフェイスブックそしてユーチューブには特設アカウントがあります!

ソーシャルメディアにおいて#UN75ハッシュタグを使用することで、皆様の声を世界に発信するとともにUN75の対話に参加することが出来ます!

ぜひ、この機会に皆さんもグローバルな対話に参加して、より良い未来を構築するために一歩動き出してみませんか?

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東京オリンピック・パラリンピックとSDGs ”日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアに込められた、人々の想いと循環型社会への願い”

東京2020オリンピック・パラリンピック東京2020大会)の開幕を7月に控え、夏季五輪として初めて「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を掲げる東京2020大会に向けて、立場の異なる様々な人々がすでに日本各地で動き出しています。

国連広報センターは、こうした人々がどのような想いをもってオリンピック・パラリンピックを通して持続可能な社会の実現に取り組んでいるかをお届けしていきます。第1回は株式会社アシックスの若手社員による、スポーツ用品業界を含むアパレル業界の持続可能性を実現するための挑戦を紹介します。

 


 第1回 アシックス 〜スポーツ用品×持続可能性〜

株式会社アシックスのCSR統括部に所属する増田堅介さんは、入社5年目の2017年に、衣服をリサイクルして新しい製品を作るというプロジェクトを提案し、担当することになりました。製作するのは、同社がゴールドパートナーを務める東京2020オリンピック・パラリンピック東京2020大会)で日本代表選手団が着用するオフィシャルスポーツウェア。巻き込むのは全社、ビジネスパートナーだけではありませんでした。  

「品質の良いものを作るだけではなく、全国の皆さまの応援する気持ちと日本代表選手団の皆さまをお繋ぎして日本を一つにしていく、そういったモノづくりができないかと考えました」 

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テレビ局からの取材で本プロジェクトを熱く語る増田さん © UNIC Tokyo

アシックスは、スポーツ用品カテゴリーで唯一の東京2020大会のゴールドパートナーとして、大会成功への貢献とサステナビリティの推進を同時に達成することが、同社にしか実現できない大きな役割であると考えていました。そうして、人々の思い出が詰まったスポーツウェアを回収し、日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアとして再生する、日本を一つにするモノづくりに挑戦することを決めました。プロジェクトの名前は、ASICS REBORN WEAR PROJECT。衣服を、そして人々の想いを再生し、つなげるという意味が込められています。

アシックスは、以前より、スポーツ用品業界を含むアパレル業界全体の課題として、製品のリサイクルが進んでいない現状がある点を認識し、衣服のリサイクルに取り組もうとしていました。しかし、今回のモノづくりには大きなチャレンジがありました。

まず、衣服のリサイクルは世界的に見てもまだ非常に難しいのが現状です。衣服は一つの素材、一つの色だけで作られていないことが多いため、混在した素材や色を選別、除去するところから始めなければなりませんでした。試作品として、衣服をリサイクルして製造したポリエステル樹脂から糸を製作しましたが、最初は不純物の除去がうまくいかず、糸が切れてしまったり細い糸が引けなかったり課題がたくさんありました。

これまでアシックスでは、樹脂の製造工程にまで遡って製品を作る経験がなかったので、リサイクルパートナー、糸や生地サプライヤーと一丸となって、高い品質を実現するために何度も試作を行いました。 

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数々のハードルを乗り越えて紡がれた糸とジャケット ©️UNIC Tokyo

プロジェクトを担当する増田さんは、同時に社内のマーケティングや店舗、営業の部門と連携して、多くの人々に衣服を提供してもらう仕組みづくりを実現しなければなりませんでした。しかし、衣服のリサイクルの難しさから、モノづくりが可能かどうかの確認が度々遅れてしまいました。

「(東京2020大会を目標に)製品の納品時期とか開発のスケジュールが決まっているなかで、社内の関連部門には、こんなにスケジュールが後ろ倒しになって本当に間に合うのかと、かなり不安にさせてしまいました。ビジネスパートナーと、ほぼ毎日お電話を通じてスケジュールや品質の確認などを密に協議して、それをまた製品開発部門の方々に説明して、一緒にやりましょうと働きかけをさせていただきました。コミュニケーションを重ねていきながら試作を重ねて、ものが徐々に出来てくると少しずつ信頼をいただけるようになりました」

 

衣服の回収は、2019年1月に開始。衣服の回収ボックスは、アシックス直営店やスポーツ用品店東京2020大会のパートナー企業、提携大学、将来のアスリートが練習しているトレーニングセンターなど、全国250箇所程度に設置されました。

4か月ほどの回収期間で集まった衣服は、実に約4トンにも及びました。

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多くの人が思いのこもった衣服を回収ボックスに投入していた ©️ASICS

東京2020大会オフィシャルパートナーである東京ガス株式会社では、750枚以上の衣服が回収されました。同社の東京2020オリンピック・パラリンピック推進部の川﨑由香さんは、次のように振り返ります。

「初めて参加したフルマラソンの時のウェア、子供が小さいころに試合で使ったユニフォームなど、社員が提供した衣服の一枚一枚に思い出が詰まっていました。『オリンピック・パラリンピックは夢みるだけでしたが、時を超えてウェアだけでも2020へ行ってこい!!』と送り出しました。このプロジェクトを通して、物理的な資源リサイクルの観点だけでなく、大切にしていた思い出の洋服を誰かのために役立てるという、心の豊かさの気づきにも繋がったと思います」

 

多くのアスリートも思いの詰まったウェアを寄付しました。東京ガス所属のパラ水泳木村敬一選手は、小学校4年生で水泳を始めた時のウェアを提供。元レスリング選手の吉田沙保里さんもリオデジャネイロ2016大会前の練習できていたウェアを寄付し、「私も日本代表選手としてオフィシャルスポーツウェアを着たときは本当に嬉しくて、いよいよ(大会が)始まるんだなと気持ちが高ぶったことを思い出しました」と語りました。そして、東京2020大会の日本代表選手団に向けて「みんなの思いがつまったウェアを着て、気持ちを強く持って、最高のパフォーマンスを出せるように頑張ってほしいです。応援しています!」とエールを送りました。

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オフィシャルスポーツウェア発表会にて、選手たちに力強いメッセージを送る吉田沙保里さん(画像中央) ©️UNIC Tokyo

2019年1月に本プロジェクトを発表した時は、日本のメディアに加えて約40か国のメディアが、特にサステナビリティの観点から非常に高い共感を持って報じました。SNS上でも世界中から好意的なコメントが多数寄せられました。

2020年2月にオフィシャルスポーツウェアがお披露目になった発表会でも、多くのメディアからウェアの機能性やデザインだけでなく、本プロジェクトの経緯や効果、今後の展開などサステナビリティに関する質問が寄せられました。

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自身が寄付した服が生まれ変わった喜びを話す山本篤選手(画像中央) ©️UNIC Tokyo

衣服の製造は、気候変動に大きく影響します。繊維産業は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占めており、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によると、航空業界と海運業界の合計を上回るエネルギーを使用しています。また、繊維素材のほとんどは再利用可能であるにもかかわらず、その85%は最終的に埋め立て産業または焼却処分されています。

 

こうした現状に対し、衣服や繊維製品にかかわる企業はすでに対策を取り始めています。アシックスも、気候変動への対策と循環型社会の実現に積極的に取り組んでいます。例えば、同社は2019年に、UNFCCCのもとでファッションに関わる様々な企業がバリューチェーン全体を通じ、ファッション部門の気候への影響に一致団結した取り組みを行うことを合意する「ファッション業界気候行動憲章」に、日本に本社をおく企業として初めて署名しました。また、2050年に向けて温室効果ガスを実質排出量ゼロにするという目標も掲げています。2030年までにシューズのアッパー(甲被)部分やウェアのポリエステル材を100%再生ポリエステル材に切り替えることも表明しています。

 

増田さんは、今回の挑戦は、循環型社会をつくる一つのスタートだと話します。

「循環型社会の形成を達成していくためには、メーカーが資源を無駄にしないモノづくりを推進することが必要であると思います。それを達成していくために、東京2020大会などの大舞台を活用させて頂きながら、日本から世界に対してこの重要性を発信していきたい。そして今夏には、本取り組みをレガシーとすべく、ASICS REBORN WEAR PROJECTと同様にウェアをリサイクルしたシューズを一般のお客様に提供していきたいと考えており、製品を買ったお客様がこの循環型社会の形成に貢献していただくという輪をどんどん広げていきたいと考えております」

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パートナーやお客様と一丸になってサステナビリティ貢献への展望を見据える増田さん ©️UNIC Tokyo

 

『天気の子』新海誠監督に聞く~天気をモチーフにした大ヒット作品、気候変動から受けた衝撃とエンタメにできること~

 

2019年夏に日本で劇場公開され、その後世界各地で上映中の映画『天気の子』は、天気が大きなモチーフになっています。この作品に命を吹き込んだ新海誠(しんかい・まこと)監督は、自分自身の実感や時代の気分としての「天気」が出発点だったと振り返ります。

 

「映画を作るにあたって、今の観客が何を見たいかをまず考えます。そして今、日本人が気にしているのは何かと考えたときに、天気かな、と。気候変動のこともあるけれど、それ以前に天気は僕たちにものすごく密接に関わっていて、気分を左右する大きな要因ですよね。天気は万人に関係していると考え始めたのが作品づくりの起点でした」

 

あらすじ

天候の調和が狂っていく時代に、離島から東京に家出してきた男子高校生の帆高(ほだか)。しかし、生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事はオカルト雑誌のライター業だった。連日雨が降り続ける中、祈るだけで晴れにすることができる不思議な力を持つ少女・陽菜(ひな)と出会う。ある事情を抱えて弟とふたりだけで暮らす陽菜に惹かれていく帆高。2人は運命に翻弄されながらも、自らの生き方を選択する。

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祈るだけで天気を晴れにすることができる不思議な力を持つ少女・陽菜 ©2019「天気の子」製作委員会

 

新海監督は『天気の子』が気候危機そのものをテーマにした作品ではなく、あくまでも本質的には“ボーイ・ミーツ・ガール”の物語だと断りながらも、気候は非常に重要なインスピレーションの源だと強調します。

 

「現実の実感として、夏が来るたびに雨量は確実に増えている、豪雨災害が増えていることを日本の観客は共有しているはずだという認識で、世界設定を作っています。でもその中に啓発的な意図は込めていませんし、むしろ『気候変動』や『温暖化』という言葉は注意深く取り除いていきました。『啓蒙してやろう』『正しい思想を教えてやろう』というような説教的な態度は、観客には敏感に察知されてしまうものです。それによって映画が避けられてしまうような事態は防ぎたかったんです。それでも気候危機や温暖化に関する何らかのメッセージは読み取ることが可能なようには作っていますが、人によって読み取る人もいれば気づかない人もいると思います」

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帆高と陽菜は天候の調和が狂っていく時代の中で運命に翻弄されていく ©2019「天気の子」製作委員会

 

日本国内、そして海外で観客やマスコミと接する機会の多かった新海監督にとって、国によって反応が鮮やかに異なることは印象的なことの一つです。

 

「日本の観客について言うと、気候変動を連想する人はほとんどいなかったような気がします。上映後のティーチインでも、日本の観客から環境問題について聞かれることはほとんどありませんでした。日本のメディアもそういう場ではないと思っているのか、(気候変動について)聞いてきませんね。ところが、アメリカ、イギリスやフランスなどのヨーロッパ、そしてインドでは、ジャーナリストが尋ねることのメインはほぼ気候変動。観客の感想も、ジャーナリストの態度とある程度比例しているように感じました。例えばヨーロッパでは、エココンシャス(環境配慮型)ではない企業の製品は消費者から選んでもらえなくなってきているという現状があると思います。そういう国では、観客が映画から読み取るメッセージも必然的に変わってきますよね。日本の観客はこの映画と温暖化を結び付けて考える人はほとんどいなかったようで、そこはやはり国ごとの事情を反映しているのだと思います」

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新海監督は公開に合わせて世界各地を精力的に飛び回ってきた ©UNIC Tokyo

 

それはなぜなのか。新海監督なりに分析していただきました。

 

「今の温暖化がこれほどはっきりと目に見える形で危機的状況を及ぼす以前から、日本は他の国と比べて自然災害がとても多い国でした。だから良くも悪くも、環境の変化に過剰適応してしまっていると感じます。人間にはとても自然をコントロールできない、自然にはかなわないという感覚が、僕たち日本人のベースにはあるのではないでしょうか。それはある種の逞しさやしなやかさであると同時に、どこか諦念のようにも感じます。日本人の謙虚さでもあるかもしれません。しかしその感覚は、気候危機への明確なアクションが求められている現状では、マイナスに作用してしまっているのかもしれませんね」

 

「昨年の夏から秋にかけての台風は日本に大きな被害をもたらし、一部の観客からは “『天気の子』はまるで現状を予言していたかのようだ” という反応もありました。でも台風の報道はあっても、そもそもなぜこれほど台風が巨大化しているのかという報道はあまりされません。日本の観客の多くがこの映画から温暖化を連想しないということと、台風の原因に温暖化があることに思いが至らないということは、根本は同じだと思います」

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作品では大雨のシーンの迫力に圧倒される ©2019「天気の子」製作委員会

 

新海監督の話は、10代の気候活動家であるスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん、そして日本の若者が置かれている状況にも及びました。

 

「気候変動はそもそも世代(間)の問題を浮き彫りにする課題ですよね。グレタさんが怒っているのもそこ。グレタさんの行動を見て、気候危機に対して10代が運動を起こすというのは、彼らにできる唯一の政治参加がそれなのだという印象を受けています。自分たちの行く末を真剣に考えたときに、今これをやらないと自分に跳ね返ってくるという実感があるからこそのアクション。なんて冷静で合理的な行動ができるんだろうと思います。同時に、日本の観客の意識が気候変動にほとんど向かないのも、無理もないことなのではないかと思います。彼らも僕たちも、余裕がないんです。ほとんどの普通の人は目の前の日々をクリアすることで精一杯で、10年・20年後の滅びが約束されていたとしても、そこに立ち向かうことはなかなかできない。人間の持っているお金とか余暇は限られていて、特に若い世代の人たちの持ち分が減っていっているというのが実情だと思います」

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話は比較文化論にまで発展。時間を忘れて盛り上がった ©UNIC Tokyo

 

メインのテーマにこそしてはいませんが、『天気の子』は若年層の貧困や閉塞感というものがモチーフに描き込まれています。

 

「例えば昨年公開されて大ヒットした『ジョーカー』など、最近は社会階層の二分化をテーマにした映画が増えています。『天気の子』も、主人公2人は『貧困層』です。今みんなに共感を持ってもらえるキャラクターを考えたら自然とそうなりました。(昨年カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した)韓国の『パラサイト』も同じ。同じ時代に同様のテーマが扱われるのはある意味で当然のことです。今自分が気になっていることをテーマにしようとすると、時代は自ずと作品に写るものだと思っています」

 

『天気の子』の英語タイトルは『Weathering With You』。Weatherには天気と並んで「乗り越える」という意味があります。迫りくる気候危機に代表される不透明な時代をともに乗り越えるために、エンターテインメントには何ができるのでしょうか?

 

「時間やお金が限られた中で映画館に来てもらうためには、相応の戦略と努力が必要です。ち密な画を描いてスクリーン映えする映像を作り、深く感情を揺さぶる音楽を生み出し、誰にどう届けるべきかという広報のあり方をひたすらに考えて、何とか形にしていきます」

 

「映画を作ることは経済活動ではありますが、それによって少しだけでも世界が良くなってほしいという願いを、僕たち作り手は共有していると思います。でも、大上段に正義を説くような作品では観客には届きません。それでも、観客は単純に楽しみたいだけではなくて、何らかの衝撃を受けたい、人生や世界観が変えられてしまうような何かを観たいはずだと思うんです。人々の時間とお金と関心は限られていて、映画も環境問題(への取り組み)も、ソーシャルゲームSNSも、皆でその限られたものを取り合っているわけです。ですからそれら全てに、せめて善良なもの、人々を幸せにするものが少しでも含まれているといいなと願っています。僕たちも、そういう気持ちで映画を作っています。(『天気の子』の)根底には気候危機から受けた衝撃もあることを観客に知ってもらえたら、とても嬉しいです」

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エンタメと社会課題の接点について熱く語り合った新海誠監督(左)と国連広報センターの根本かおる所長(右) ©UNIC Tokyo

 

静岡の高校生たちのSDGs達成にむけたアクション:若者たちこそが世界を変える

2018年にSDGs未来都市に選定され、「SDGsを自分事に」と市民巻き込み型の啓発活動を推進してきた静岡市。今年1月を通して「SDGs Month」との名のもとに様々な啓発活動をラインアップ。1月11日には「SDGs Collection」としてステージあり、地元団体・企業・大学・高校のブースあり、サステナビリティに配慮した地元物産の販売あり、という大規模なイベントが開催され、国連広報センターの所長の根本と広報官の佐藤も足を運びました。

特に地元の高校生たちが学校の授業で、生徒会で、部活動を通じてSDGsを深く学び、自分たちが地域の課題の解決にどう貢献できるか積極的に関わり、ブース展示などでエネルギッシュに発表する様子に励まされました。

 

「タケアカリ」で竹林を守り、地元を盛り上げる

 

城南静岡高等学校・地域貢献部の生徒たちは、山間部の竹林が手入れがなされず地滑りなどを起こしやすくなっている問題に対して、「放任竹林」の竹を切り出してスタイリッシュな「タケアカリ」を作るプロジェクトを「アカリノワ」と連携して進めています。生徒たちが作った竹灯篭は、久能山東照宮や伊東温泉のイルミネーション・イベントに使われ、地元の活性化につながっています。

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城南静岡高等学校・地域貢献部の生徒から説明を受ける根本所長(左) ©UNIC Tokyo

 生徒たちは、活動のやりがいについて「厄介者になっている竹が美しいアート作品に生まれ変わり、作品を見ていただいた方の笑顔を見ると頑張ってよかったと感じます」と語ります。

 

また、活動とSGDsを結びつけることで、活動に対して新たな見方ができるようになったといいます。

「私たちが行ってきた活動は放任竹林という環境問題に対する取り組みだけだと思っていました。今回、SDGsについて学び、SGDsの視点から自分たちの活動を考えると環境問題だけでなくタケアカリを展示することで地域経済の活性化を促すことができ、これにより地域住民の方々に貢献できることを理解しました」

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城南静岡高等学校の文化祭にてタケアカリを展示 提供:城南静岡高等学校・地域貢献部

 

地域の人々と連携してオリジナル商品を開発

 

「『つながる』ことで人は元気になる」。これは静岡県立藤枝北高等学校の食品サイエンス部の生徒たちのモットーです。農家や食品会社と連携して、「米の花を紡ぐ物語」つまり糀(こうじ)にこだわって商品開発を進めてきました。静岡県浜松市北部の山間の町・水窪町と連携して、発酵・雑穀・ジビエを活かした食などを開発すると同時に、高校生たちが先生役となって醤油・酢・糀化粧水・発酵料理づくりなどの「発酵体験フルコース」を提供しています。

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生徒が作ったこだわりの糀を使用した試食品 ©UNIC Tokyo

 生徒たちは顔を輝かせながら自分たちの「天然糀菌」について愛情たっぷりの解説をしてくれました。食品サイエンス部の部長の望月香里さんは、活動のやりがいの1つとして「多くの人との出会いです。この活動をしていなければ、出会っていない方ばかりです。町を歩いていて声を掛けてもらったりすると、とても嬉しいです」と語ります。SDGsについては「将来のことを考えると、誰もがやらなくてはいけないことですので、多くの方にSDGsに対しての行動をとってほしいと思います」と話しました。

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藤枝北高等学校の生徒たちと話す国連広報センターの根本所長(右) ©UNIC Tokyo

 

今回お伺いした「SDGs Collection」では、生徒たちがSDGsを知ることにとどまらず、課題解決のアクションに乗り出している姿に、SDGsを広く一般に普及浸透する活動をしてきた者として大きな手ごたえを感じました。

ー日本におけるSDGsの広まりを実感:国連グローバル・コミュニケーション局 戦略コミュニケーション部長訪日を振り返って―

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SDGメディア・コンパクト出席者の集合写真 ©UNIC Tokyo

2019年12月5日に東京ビッグサイト東京国際展示場)で開催された日経SDGsフォーラムシンポジウム(日本経済新聞社日経BP主催)で基調講演するため、ニューヨークの国連本部からセダ・プムピャンスカヤ 国連グローバル・コミュニケーション局 戦略コミュニケーション部長が日本を訪問しました。

シンポジウムでの登壇に加え、プムピャンスカヤ 部長は様々なパートナー達と面会し、日本におけるSDGsの目標達成のための更なるパートナーシップ強化の重要性を強調しました。

 

次の10年に向けて:民間セクターへの呼びかけ

日経SDGsフォーラムシンポジウムにおいて、国連広報センターの根本かおる所長の挨拶後に登壇したプムピャンスカヤ 部長は、今日世界は気候変動やジェンダーの不平等など様々な課題に直面しており、このままでは2030年にSDGsを達成できる見込みは薄いと警鐘を鳴らしました。そして来年2020年の国連創設75周年に向けて、今年9月にニューヨークで開催されたSDGサミットでアントニオ・グテーレス国連事務総長SDGs達成に向けた行動と遂行の10年を呼びかけた演説と共に、多国間主義が危機にさらされている中で、世界がより団結して取り組む必要があると訴えました。

またSDGsの認知度を向上するために主要な報道機関の協力を促すSDGメディア・コンパクトやSDGs達成に向けた民間資金動員拡大のためのGlobal Investors for Sustainable Development alliance(GISD)といった国連によるネットワークを紹介しながら、民間セクターとのパートナーシップの重要性を強調しました。

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日経SDGsフォーラムで登壇するプムピャンスカヤ部長 提供:日本経済新聞社

 

日本のSDGs関連活動の視察

訪日中、プムピャンスカヤ 部長は日本社会におけるSDGsの浸透度を視察しました。到着直後には、国連広報センターの職員と共にJR山手線のSDGsラッピングトレインに乗車し、人々の日々の生活でSDGsに触れる機会が多くなっていることに感銘を受けていました。

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JR山手線のSDGsラッピングトレインを視察するプムピャンスカヤ 部長 ©UNIC Tokyo

また日経SDGsフォーラムが開かれた東京ビッグサイトでは環境配慮型製品・サービスの展示会「エコプロ2019」にも訪問。企業や学校、NGO自治体など日本の様々な組織によるサステナビリティSDGs達成に向けた取り組みを学びました。

12月5日から12月7日の3日間で合計147,653人が来場したこの展示会には、国連広報センターも国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所と共同でブースを出展しました。本ブースでは、SDGsに関する2019年の報告書パネルの展示や各種資料の配布、個々人のSDGsへの認知・取り組みに関するアンケート(MY WORLD  2030を行いました。国連広報センターからはインターンがブースで来場者に対応し、足を運んで頂いた方々から国連に対する意見や各企業・団体のSDGsへの取り組みを直接お聞きすることができました。

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エコプロ2019を視察する(左から)ヤ―ノシュ・ティソフスキー 国連グローバル・コミュニケーション局 広報センター・サービス部門長、マルチナ・ドンロン 国連グローバル・コミュニケーション局 持続可能な開発担当チーフ、プムピャンスカヤ部長、国連広報センター(UNIC)根本かおる所長(上段)と国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所と共同で出展した国連広報センター(UNIC)のブース(下段) ©UNIC Tokyo

他ブースでも、食品ロス、ファッションチャレンジ、海洋プラスチック問題などホットな課題への各取り組みが紹介され、SDGsに対する機運の高まりを感じました。

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エコプロ2019 会場の様子(左上)、NECのAIによる食品ロスサービス(左下)、立命館大学の空気砲の原理を応用した省エネエアコン(右上)、アーバンリサーチの廃棄衣料のアップサイクルブランド「commpost(コンポスト)」(右下) ©UNIC Tokyo

 

日本のパートナー達との懇談会

12月4日と5日には、国連大学本部ビルにおいて、SDGメディア・コンパクトおよびSDGsを達成するために国連と学術研究機関の連携を強化する国連アカデミック・インパクト(UNAI)との懇談会がそれぞれ開催され、プムピャンスカヤ 部長がSDGsの目標達成におけるメディアとアカデミアの役割の重要性を述べました。

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国連アカデミック・インパクト(UNAI)との懇談会で登壇するプムピャンスカヤ 部長 ©UNIC Tokyo

SDGメディア・コンパクトとの懇談会では、マルチナ・ドンロン 国連グローバル・コミュニケーション局 持続可能な開発担当チーフが、SDGs達成においてメディアが持つリソースやクリエイティビティ、影響力等を活用する機会として2018年に始動したSDGメディア・コンパクトへの期待を述べました。またメディアと国連の更なる連携強化の機会の一つとして、国連総会に設けられた実況インタビューやパネルディスカッションを行うスペースであるSDGsメディアゾーンを紹介しました。参加メディアからはSDGsへの自社媒体での取り組み内容が紹介され、参加者とプムピャンスカヤ 部長やドンロン持続可能な開発担当チーフの間だけではなく、参加者同士で活発的な意見交換が行われました。

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SDGメディア・コンパクトとの懇談会で登壇するドンロン持続可能な開発担当チーフ(上段)とQ&Aセッションの様子(下段) ©UNIC Tokyo

国連アカデミック・インパクトとの懇談会では、ヤーノシュ・ティソフスキ ー国連グローバル・コミュニケーション局 広報センター・サービス部門長が来年10周年を迎えるUNAIの今後の発展性を紹介しました。これまで、UNAIは学術機関にとって国連システムと直接連携できるプラットフォームでした。今後は更に就業前の世代に世界の優先課題を伝える機会を作ったり、UNAIのメンバー間での関係強化、また若い世代と双方的なやり取りを増やしていくことも可能だと紹介しました。出席者からは、SDGs達成のために各大学で取り組んでいること、学術機関間でのグローバルなパートナーシップの可能性についての質問があり、様々な角度から議論が行われました。

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国連アカデミック・インパクト(UNAI)との懇談会で登壇するティソフスキーサービス部門長(上段)と出席者の集合写真(下段) ©UNIC Tokyo

今回の2つの懇談会を通じて、広くSDGs達成に向けたアクションのための各業界関係者の取り組み・意見を伺うことができました。

 

日本の国連諸機関との広報分野強化

また、国連諸機関が広報活動について話し合い、連携強化を図る国連コミュニケーション グループ(UNCG)ミーティングが行われました。プムピャンスカヤ 部長は日本に所在する国連諸機関に対して、2030年のSDGs達成、東京オリンピックパラリンピックや国連75周年など2020年の様々な節目や機会に向け、より多くの人にアクションを起こしてもらえるよう国連の各関係機関同士の協力を呼びかけました。

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国連コミュニケーション グループ ミーティングの様子 ©UNIC Tokyo

 

プムピャンスカヤ 部長の訪日を振り返って

今回の日本訪問において、プムピャンスカヤ 部長は日本においてもSDGsへの理解は確実に浸透してきてはいるものの、国連が掲げる2030年までの目標達成のためには更なる取り組みが必要であると述べました。そしてグローバル・コミュニケーション局として、国連内外のパートナーシップ強化の必要性を幾度も強調しました。

気候変動問題に取り組む若者たち~私たちにも何かできるのか~

気候行動サミットに先立ち、9月21日に国連本部(ニューヨーク)で気候変動対策にテーマに絞った若者による初のサミット「国連ユース気候サミット」が開かれました。

気候行動サミットなどで世界のリーダーたちが温室効果ガス排出削減をはじめとする様々な気候変動の対策を議論する中で、140を超える国と地域から若者が集まったサミットの背景と様子をご紹介します。

 

世界中の若者が気候変動問題に立ち上がる

 

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国連本部で気候ストライキを支持する国連職員とその家族 ©UN Photo/Loey Felipe

若者による気候行動を求める動きは、国連ユース気候サミットの前日(9月20日)にすでに盛り上がり始めていました。気候変動対策の強化を企業や国に訴える「Fridays for Future Global Climate Strike(通称:気候ストライキ)」が欧米やアジア、アフリカなど世界各地で行われたのです。主催グループによると、150ヵ国以上の都市で約400万人が参加しました。また、世界中の2000以上の企業がこの活動に参加する従業員の休みを認め、9月17日より第74回国連総会が開かれていたニューヨーク市も公立学校の生徒が休むことを認めました。

日本では、大阪、京都、名古屋、福岡、札幌などを始めとする26都市で「気候行動マーチ」(日本では気候ストライキを気候行動マーチと呼んでいます)に約5000人が参加しました。東京でも国連大学本部前に約2800人が集まり、「気候は変えず、私たちが変わろう」「地球はみんなのシェアハウス」などと呼びかけながら、若者たちが主導したマーチが行われました。

 

ユース気候サミットでは実際何があったの?

 

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ユース気候サミット議論セッションにて ©UN Photo/Rick Bajornas

ユース気候サミットでは気候変動と闘うことを決意している若手の活動家、イノベーター、起業家たちが集いました。 最初のセッションでは、若者たちが具体的な気候対対策案を世界のリーダー達に向けてプレゼンテーションを行いました。

参加者の多くが、若者たちの積極的な気候行動への参加には「教育」が必要だと訴えました。ウガンダとガーナのチームは「各国政府は、学校の制度に気候教育を取り入れて下さい」と述べ、他のチームからも教育キャンペーンや高等教育機関での気候教育強化を求める意見が続きました。

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ユース気候サミットのオープニングにて©UN Photo/Kim Haughton

アメリカで設立され、現在ヨーロッパやアフリカなど様々な地域に拠点を持つZero Hour という団体を代表して参加した三人の高校生グループは、彼らが展開しているNational Education Campaignを紹介しました。このキャンペーンは、若者が気候変動の原因、影響、対策を学び、自分が得た知識をアンバサダーとして友達や知り合い、自分のコミュニティーに伝え、気候行動の知識を持つ若者を増やしていくというシステムです。現時点で600人のアンバサダーが所属し、一年後には世界中に2000人のアンバサダーを育てる事を目標としています。代表者の一人は、「気候行動への答えは、教育です!」と強く意気込みました。

日本から国連ユース気候サミットに参加した佐藤真弓さんは、「私は気候危機に向けた解決策とは、一直線ではないと気づきました。自然に基づいた解決策、フェミニストのリーダーシップ、スポーツとエンターテインメント、草の根運動、政治的アドボカシーなど、若者たちが気候正義への賛同を集める気候変動対策は、多面的で重なり合う部分を持っていました。」と振り返っています。佐藤さんからの報告やZero Hour を始めとした様々な若者によるプレゼンテーションをぜひご覧ください。

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佐藤真弓さん、国連本部にて © UNIC Tokyo

日本からの参加者、佐藤真弓さんの報告:

blog.unic.or.jp

若者によるプレゼンテーション(英語):

 

個人レベルでできる気候行動

では、わたし達がとれる気候行動とは何がでしょうか?市民による気候行動を促す「ActNow Climate Campaignの一環として、食とファッションに着目した気候行動をご紹介します。

1.フードチャレンジ:食品ロス・廃棄が全世界の排気ガス排出量のおよそ8%も発生させている事実を踏まえ、学校法人服部学園服部栄養専門学校 理事長・校長の服部幸應先生が、冷蔵庫のあまり物を使用した持続可能で気候に配慮した、おいしいレシピを考案してくださいました。

国連広報センターのインターンが服部先生のレシピを再現して、フードチャレンジに挑戦した動画をぜひご覧ください。

・「余った食材でパスタパエリア

・「お掃除トルティージャ


#ActNow #フードチャレンジ:お掃除トルティージャ

他のレシピはこちらから:

www.unic.or.jp

2.ファッションチャレンジ:最近話題の「アップサイクリング」をファッションでどう活かすか、8月に行われたFacebookライブイベントで、たくさんのアイディアや既に実践されている取り組みが紹介されました。そうしたアイディアや取り組みの詳細はこちらから

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登壇者の一人、株式会社ハースト婦人画報社 ELLE Japon 編集長の坂井佳奈子さんが世界の持続的なファッションのトレンドを紹介 ©UNIC

そのほか、広く持続可能な開発目標(SDGs)達成のためにできることを考えたい方は、ぜひ「持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイドも参考にしてください。

ユース気候サミットでは、気候変動への問題意識を訴える若者が世界中から集まっていました。今からでも行動を起こすことは遅くありません。この地球に生きる、私たち一人一人が行動を起こ事に意味があります。これを機に、あなたが取れる気候行動を考えて、ぜひ実際にアクションを取り始めて下さい。

「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」とアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長の訪日を振り返って

皆さんは、11月6日の「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」を、そして戦争や武力紛争が環境に与える影響をご存知でしょうか?

この国際デーを機に、2019年10月に訪日したアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長が東京大学公共政策院で開催された講演会で紹介した、環境に配慮した国連ミッションの現場での施策や、こうした平和と安全を確保する活動で必要とされている人材についてご紹介します。

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講演会「国連平和維持活動: 今日と明日」で登壇するアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長 ©UNIC Tokyo

 

戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デーとは

 

戦争や武力紛争によって犠牲になるのは人だけではありません。あまり知られていませんが、環境も戦争の犠牲となります。軍事的優位性を確保するために、井戸水は汚染され、畑は焼かれ、森林は伐採され、土地には有害物質がまかれ、動物は殺されます。

他方で、平和と安全にかかわる国連の活動においても、環境に負荷がかかってしまうことがあります。国連環境計画(UNEP)の報告によると、2017年に国連平和維持活動や政治的ミッション政治活動、それらの支援活動によって100万トン以上の二酸化炭素が排出されました。そのうち、半分以上が施設から排出されていました。

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南スーダンにて紛争を調停するUNMISSの兵士たち ©UN Photo

 

平和と安全に関わる国連の現場における環境マネジメント

 

こうした負荷を軽減するため、国連は、環境に配慮しながら紛争防止、平和維持そして平和構築に取り組むことに重きを置いています。 

例えば、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は、本部内で太陽光発電を動力源とする電気自動車を使用しています。また、基地にも太陽光発電を導入し、特に情報通信技術サービスの施設ではエネルギーの70%を太陽光発電で補うことで、3か月で4,806キログラムの二酸化炭素の排出量を減らすことに成功しました。

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レバノンのナクーラ(Naqoura)にある太陽光発電を取り入れたUNIFILの施設 ©UN Photo/Pasqual Gorriz

また、水の消費量を削減する試みも積極的に行われています。

例えば、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)では、水が不足している南スーダンでの活動で水を効率的に使用し、水の使用量を減らすための取り組みを行っています。

低水量シャワーヘッド付きのトークン式シャワーを導入することで、シャワーに使われていた水量を50%も減らすことができるようになりました。さらに、太陽光発電で動いたり起動時間を制限したりと工夫がこなされた水処理施設、1万リットルの雨水を集めることができるタンクを導入しています。

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UNMISSによってジュバ(Juba)近くの地域に譲られた水処理施設。15時間のみ稼働させることで、設備の劣化を抑えることにつながる ©UNMISS

国連オペレーション支援局の前身の国連フィールド支援局は、2017年に、平和活動による天然資源利用効率を最大限に高め、人間や社会、生態系に対するそのリスクを最低限に抑えるための新たな戦略を発表しました。SDGsに沿った6か年戦略は、エネルギー、水と廃水、固形廃棄物、より幅広い影響、環境マネジメントシステムという5つの柱に基づき、課題と目標を定めています。詳しくは、こちら

 

カレ事務次長から日本の若者にむけてのメッセージ

 

アトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長は、10月16日に内閣府国際平和協力本部事務局と東京大学公共政策院が共催した「国連平和維持活動: 今日と明日」と題された講演会で、太陽光発電や他の再生可能エネルギーの活用に今後より力を入れていくと語りました。このような技術面でのイノベーションを進めるためには、エンジニアや環境の専門家といった人材が必要とされています。 

カレ事務次長は、日本の若者が国連の平和と安全に関する活動に直接携わるキャリアを形成する方法として、「国連では、私の部局が毎年運営している国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)というものがあり、32歳以下の日本の若者には是非このYPPに応募し、挑戦して欲しいと思います。また私は、日本の方々に2~4年間の短期で、国連ボランティアとして平和維持活動および平和活動における責任のあるポジションに就くことも検討して欲しいと思います。加えて、私は日本政府に対して、将来国連の一員になりうる優秀なジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)を派遣し続けることを推奨します。したがって、平和維持活動に直接的に携わるためには様々な方法があります」と述べました。

また、平和や安全の分野でジェンダー平等を実現する必要性を訴え、より多くの女性の活躍を望んでいることを強調しました。国連平和維持活動の報告によると、平和維持活動にあたる女性の割合は、2019年8月時点で軍事要員では約5%、警察では約15%に過ぎません。

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UNMISSの平和維持活動員 ©UN Photo

さらに、カレ事務次長は日本の若者に向けて、「間接的には、日本の若者は、倫理的なビジネスを実践することによって、国連の目的に貢献することもできます。男女平等問題に取り組んでいる日本の若者は、国連の原則にも貢献しています。直接的・間接的に関わらず、是非より良い世界のために何ができるのかを皆さん方なりに考え続けて頂きたいと思います」と述べました。

カレ事務次長は、1992年に自衛隊カンボジアPKO活動に派遣して以来27年にわたりPKOを通して平和へ貢献している日本人と日本政府へ感謝を繰り返し表明しました。