国連文書情報のコンピュータ化、電子化の試みは、ハマーショルド・ライブラリーの主導で、1960年代半ばから始まっていました。“United Nations Documents Information System (UNDIS)”というものが、コンピュータ化における、国連文書インデックスの最初のシステムでした。その後、その欠点を補い、国連文書以外の蔵書目録を電子化するため、新しい書誌情報システムとして、“United Nations Bibliographic Information System(UNBIS I)”というものが開発されました。当時、このシステムはまだ、国連事務局のIBMメインフレーム・コンピュータ内に存在していました。私はリバイザーという立場で、編集・校閲を担当していましたが、Indexの仕事は手作業で、職員たちがまずはトピックや主題を入力用紙に書いていたことを覚えています。その情報をキーパンチャーがコンピュータに入力していました。今とは隔世の感がありますよね。
情報技術の発展とともに、私たちがインデックスを行った国連の刊行物の書誌情報は紙媒体で印刷されたものから、UNBIS on CD Rom、そしてUNBIS-netへと移っていき、また国連公式文書システム(ODS)という公式文書を入手するためのツールもインターネット上で1992年に立ち上げられ、いろいろな変遷を経て、当初は有料だったものが、その後、無料開放されました。ハマーショルド・ライブラリーで働く私は、そうした動きを時代の変化として肌で感じていました。従来は限られた人たちに利用されるだけだった私たちの仕事の成果が今や、世界の人たちにとって容易にアクセス可能なものになり、お役立ていただけるようになったのは、まさにインターネットの発展の結果です
そうですねえ。もちろん大変なこともいろいろとあることはあったのですが、今思えば、すべてが楽しかったです。ほんとうに国連で働けてよかったと思います。とくに、いろいろな国の人と一緒に働けたことがとても楽しかったです。国連が発行する文書として、”Composition of the Secretariat”というタイトルがついた文書があるのですが、この文書をみると、国連加盟国の193か国のうち、どの国からそれぞれ何人ぐらい、どのレベルで、国連職員として働いている人がいるのか、正確な数字を知ることができます。
いろいろなプロジェクトの実施場面で、ああすればよかった、こうすればよかったと思うことはもちろんたくさんあります。国連で働くという視点で、私が今もっとも思うのは、もっと別なことにもいろいろとチャレンジすればよかったし、それはきっと楽しかっただろうなということです。私はニューヨークの国連事務局でIndexという仕事を専門としてきたのですが、キャリア後半で、ニューヨークを飛び出し、アジア地域などで、研修セミナーを企画、開催する機会がありました。普段はあまりそうしたことはしないのですが、セミナーの統括責任者として、そのための資金集めをしたり、会議の開催国と国連の間で交わす「ホスト国協定(host country agreement)」と呼ばれる文書などをつくったりするところまでやらざるを得ないことになり、慣れないことで苦労はあったのですが、それはそれで新鮮で楽しかったのですね。もっとそういうことにチャレンジすればよかったとほんとうに思います。
上智大学法学部(国際関係法学科)学士、コロンビア大学国際公共政策大学院(人権人道問題)修士、東京大学法学政治学研究科専修コース(国際法)修士。米国留学中に国連人権高等弁務官事務所でインターンをし、帰国後は国際家事事件専門の弁護士としての業務に加えて、国際人権問題、特に女性・子ども・外国人の人権、人権教育の分野で活動。現在はLAWASIA(The Law Association for Asia and the Pacific)家族法及び家族の権利セクション日本代表や、アジア国際法学会日本協会、国際人権法学会、家族<社会と法>学会の理事等を務める。2016年6月、国連子どもの権利委員会委員の選挙で当選、2017年3月委員に就任の予定。
Model United NationsのModelには「まねる」という意味とあわせて、「モデルとなる理想」という意味もあります。立場の異なる相手とどのような形で合意を形成することができるのか、理想を学ぶ場でもあるのです。第10回全日本高校模擬国連大会は、2016年11月12日と13日の2日間の日程で東京・渋谷の国連大学で開催の予定で、優秀者は来年ニューヨークに派遣されることになります。より多くの高校生に、理想に触れてもらいたいと願っています!
野口:TFVに対しては、2013年に私が理事長になった後、初めて1億円近い任意拠出をしていただきました。2014年6月にロンドンで開かれたG7の枠組みでのPSVI(Preventing Sexual Violence Initiative)サミット[1]も政府は全面的にサポートしており、TFVやUN Womenへの拠出なども行っています。