国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

TICAD7リレーエッセー “国連・アフリカ・日本をつなぐ情熱”(30)最終回

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が2019年8月28-30日、横浜市で開催されます。日本では6年ぶりとなるTICADに向けて、国連広報センターはアフリカを任地に、あるいはアフリカと深く結びついた活動に日々携わっている日本人国連職員らに呼びかけ、リレーエッセーをお届けしていきます。

 

取り上げる国も活動の分野も様々で、シリーズがアフリカの多様性、そして幅広い国連の活動を知るきっかけになることを願っています。最終回となる第30回は、国連開発計画(UNDP)マラウイ常駐代表の小松原茂樹さんです。

 

第30回 国連開発計画(UNDP)

小松原茂樹さん


~世界とアフリカの橋渡しとして:TICAD7に寄せて~

f:id:UNIC_Tokyo:20190809142101p:plain

徳島県生まれ。東京外国語大学卒業後、ロンドンスクールオブエコノミクス大学院で経済学修士号(国際関係論)を取得。(社)経済団体連合会事務局、OECD経済協力開発機構)民間産業 諮問委員会(BIAC)事務局出向を経て 2002 年より国連開発計画(UNDP)に勤務。本部アフリカ局カントリーアドバイザー、ガーナ常駐副代表, 本部アフリカ局TICADプログラムアドバイザー等を歴任、2019年6月より現職 © UNDP Malawi

 

TICAD7が8月28日から横浜で開催されます。私は2011年3月から今年の6月に国連開発計画常駐代表としてマラウイに赴任するまで、ニューヨークUNDP本部のアフリカ局でTICADプログラムアドバイザーとして日本、世銀、国連事務局、アフリカ連合委員会の関係者とTICADプロセスの運営に携わって来ました。

 

TICADは1993年に第一回のサミットが東京で開かれた時から、日本政府、国連(UNDPを含む)、Global Coalition for Africaの三者共催というユニークな国際会議でした。その後TICAD ⅡからUNDPが共催者として独立し、TICAD ⅢでGCAに代わって世銀が共催者となり、TICAD Vからはアフリカ連合委員会が共催者に加わって現在の5者共催となりました。日本と国際機関が一緒に議論をして課題を設定し、幅広い関係者の参加を得てサミットや閣僚会合を開催することで、時代を先取りする政策課題を発信し、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップという開発の基本となる潮流を作ってきました。

 

2013年に横浜で開催されたTICAD Vではガーナのマハマ大統領(当時)が「アフリカの人はサッカーが大好きだが、それ以上に我々はTICADが好きだ。サッカーのワールドカップは4年毎だが、TICADではもっと頻繁に会いたい、ぜひアフリカに来てほしい」と首脳の笑いを誘いながらTICADの重要さを訴え、TICADサミットはその後3年間隔で日本とアフリカの交互開催となりました。

 

2016年にケニアのナイロビで開催されたTICAD VIはアフリカ初のTICADサミットとなりました。それまでは5000名規模の国際会合が最大であったナイロビでしたが、ケニア政府、日本政府、UNDPが文字通り一心同体で運営を支えたTICAD VIは、二日間で1万4千人が参加する史上最大のサミットとなりました。初のアフリカ開催とあって、手探りの課題も多く、準備は容易でありませんでしたが、組織を超えて、ホスト国と共催者が共に苦労し、手に汗握り、成功を喜ぶTICADの仕事は、アフリカ開発に従事する日本人国連職員として、日本、国連、アフリカの橋渡しになっている事が実感できる大変幸せな経験でした。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20160825000647j:plain

TICADVIは1993年のTICAD開始以来、初めてアフリカの地で開催されたサミットであり、開催地となったケニア政府は国を挙げて会議の成功に努めた © UNDP Tokyo

 

f:id:UNIC_Tokyo:20160829033930j:plain

TICAD発足以来の共催機関であるUNDPは、ヘレン・クラーク総裁(当時・写真左から3番目)を筆頭に他の共催者(日本政府、世界銀行、国連アフリカ特別顧問室、アフリカ連合委員会)と協力して本会議やテーマ別会合、サイドイベント等の運営にあたった。TICADVIでUNDPを統率したコアチームで深夜の記念写真(左側から4番目が筆者)© UNDP Tokyo

 

TICAD VとTICAD VIを通して、最も顕著だったのは、日本とアフリカのビジネス関係が一気に拡大し、幅広い業界から様々な企業が市場としてのアフリカに進出するようになったことでした。実際に、アフリカに進出した日本企業数は、TICAD IV当時の457社から、TICAD V当時には584社に増え、TICAD VIには3,000人のビジネス関係者が日本から参加しました。最近のデータでは796社がアフリカに進出し、業態も小売、運輸、金融、製造、資源など多岐にわたっています。また、名の知れた企業に加えて若い起業家の方々が数多く市場としてのアフリカに取り組まれるようになったことも大変印象的でした。

 

アフリカがアジアに次ぐ高度経済成長を続け、中産階級や消費文化が現れ、アフリカからも企業家・起業家が輩出する中で、アフリカと世界との関係も大きく変化して来ているように思えます。援助の対象としてのアフリカから、ビジネス、投資、外交、文化など様々な面で世界に貢献し、自分から発信するアフリカに。新しいアフリカを4半世紀にわたり共に創って来たTICADが、どのようなアフリカを目指し、パートナーシップとイノベーションの場としてどう進化・深化していくのか、これからも目が離せません。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20160827200432j:plain

TICADVIが開催された会場前ではケニアの伝統的な音楽・ダンスが披露された © UNDP Tokyo

 

日本とアフリカの関係においても、アフリカの若者のための産業人材育成 イニシアティブ(ABEイニシアティブ)などを通じて、日本企業の働き方や文化を経験してアフリカに戻る人材が着々と増えていることは、お互いを尊重し、お互いに恩恵を得る関係の構築に役立つに違いありません。SDGsなどを背景に、社会や環境と共存共栄するビジネスや投資が注目される中、「三方よし」を始めとして、持続可能なビジネスのあり方を自然に身につけて来た日本のビジネスモデルは、アフリカの発展、世界の発展にとってますます重要になるのではないでしょうか。現在はアフリカへの進出、アフリカへの投資など、アフリカに向かう様々な潮流に注目が集まっていますが、近い将来にアフリカ発の企業家や投資機関がアジアや日本でビジネスや投資をする、というようなこともあながち夢ではないかもしれません。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20160828201524j:plain

UNDPは公式サイドイベントを主催し、アフリカ人間開発報告書2016「アフリカにおけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの促進」を発表。同ローンチ・イベントにはケニアのウフル・ケニヤッタ大統領を含むアフリカの国家元首級参加者14名、日本の岸田文雄外務大臣、北島伸一JICA理事長を含む300名を超えるVIPが参加するTICADVI最大のサイドイベントとなった © UNDP Tokyo

 

TICAD7はTICAD V、TICADケニアに次いで横浜での開催となります。世界の多極化が進み、価値観が多様化するなかで、多くの関係者が一堂に会して議論をし、相互理解を深める事が出来るTICADは、国際社会にとってはますます重要なフォーラムですが、TICADの「里帰り」を機に、日本の様々な方々にとってもアフリカがより身近となり、様々な交流が深まる事を願ってやみません。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20190815140932j:plain

著者はTICADSDGs(持続可能な開発目標)、また国連職員として働くためのキャリア構築について日本国内の大学・高校等にて積極的に講演を実施。2018年は横浜市立大学横浜国立大学一橋大学関西学院大学沖縄国際大学琉球大学、法政大学、東京外国語大学国際教養大学上智大学吉備国際大学創価大学等において講演し、日本の未来を担う若者の国際理解・キャリア形成に貢献した。写真は横浜国立大学での講演の模様 © UNDP Tokyo

  

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)は8月28日ー30日の3日間、横浜市で開催されます。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20190809163628p:plain