~イゼルディン・アブエライシュ医師・鎌田實医師・清田明宏UNRWA保健局長~
中東では現在も紛争があちこちでみられますが、パレスチナも例外ではありません。国連は、1948年にパレスチナ難民が発生してから長年にわたって、政治問題の公正かつ恒久的、包括的解決を目指して支援を続けています。
2011年、2人の医師がそれぞれ本を出版しました。1人は、ガザ地区のパレスチナ難民で、イスラエル初のパレスチナ人研修医となったイゼルディン・アブエライシュ医師。難民キャンプでの日々や両国を行き来する際の侮辱的な対応を受け、2009年には娘3人と姪1人をイスラエルによる攻撃で失くしました。それでもアブエライシュ医師はイスラエルを憎まず、両国の平和は必ずやってくると信じています。こうしたアブエライシュ医師の半生は「それでも、私は憎まない(I shall not hate)」で語られています。
一方、日本国内の病院再建や中東などへの医療支援を行っている鎌田實医師は、「アハメドくんのいのちのリレー」という本でパレスチナとイスラエルの平和への願いを綴っています。イスラエル兵によって銃撃され、脳死状態として判断されたパレスチナの少年。その後、少年の臓器はイスラエルの少女へ移植されました。両国が憎しみあう中、憎しみを横に置いて、お互いに感謝しあう、少年の家族と少女の家族の姿がありました。 同時期に「憎まない」という同じ方向を向いた本が出版されたのは偶然ではない、と感じた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は、2人を引き合わせる磁石となりました。そしてこのたび、3人揃っての初対面が実現したのです。2月19日には、中野ZEROホールで3人の講演会が行われ、老若男女約500人が参加し、3人の言葉に耳を傾けていました。
パレスチナの医療問題にさまざまな角度から関わっている3人の医師。「娘が最後の犠牲者になりますように」と、イスラム女性の教育支援団体を設立したアブエライシュ医師、NGOを通してパレスチナ難民の医療支援を行う鎌田医師、UNRWAの職員として保健局を統括する清田保健局長――。国連広報センターのインターンは、講演会の直前に、3人にパレスチナ難民の現状や支援、憎まないことの重要性などを聞きました。その様子を、当ブログで3回にわたってお伝えします。