国連広報センター所長の根本です。SDGsの実施は、思いや関心を持った個人や組織が傍観者ではなく、プレーヤーとして参画できるという点で画期的だとかねがね感じています。国連で採択された文書にありがちな「神棚に祭る」ものではなく、「自分事化して使いこなす」ことが求められる、みんなのための世界目標だからこそ、理性を越えた、感情に訴えるワクワク感や、ワザワザではなくついつい実践してしまう楽しさ・手軽さなどが大切だと思います。
例えば、昨年の沖縄の「島ぜんぶでおーきな祭」を皮切りに大規模イベントの会場で吉本興業が実施している「そうだ!どんどんがんばろう!」スタンプラリーがあります。頭文字を並べるとSDGになるこのスタンプラリーは、人気芸人の顔をあしらったゴールごとのスタンプを台紙に17個全部集めると、景品がもらえるというもので、昨年4月の開始以来、これまでに4万人の子どもや家族連れが楽しみながらSDGsに触れる機会になりました。
同社が企画・運営を担う「第5回京都国際映画祭~映画もアートもその他もぜんぶ」(10月11日―14日)でもこのスタンプラリーは大人気で、好天に恵まれたおかげで5000人が参加。
京都国際映画祭は「映画もアートもその他もぜんぶ」と謳うだけあって、映画にとどまらずコンテンツが盛りだくさんのお祭りで、その多くにSDGsが盛り込まれていました。
映画祭2日目の祇園花月は「SDGs花月」と銘打って、木村祐一監督のドキュメンタリー作品「ワレワレハワラワレタイ~ウケたら、うれしい。それだけや。」上映と上映後のオール阪神・巨人をまじえたスペシャルトーク、観客にSDGsを2つ選んでもらって即興でネタに入れてバトルする「SDGs-1グランプリ」(トレンディエンジェル、かまいたち、横澤夏子、チョコレートプラネット、ノンスタイル)、そして「SDGs新喜劇」(川畑泰史、すっちー、酒井藍の3座長が勢ぞろい)と、それは豪華な内容でした。
即興でのネタ作りということでお笑い芸人の皆さんが普段は見せない真剣な表情を垣間見ることができましたし、昨年のSDGs-1グランプリから一歩踏み込んだ内容的な深まりがあり、手ごたえを感じました。2年連続で優勝に輝いたノンスタイルには、国連グッズを賞品として差し上げ、国連広報センターのツイートで気に入ったものがあったらリツイートしてほしいと発信への協力をお願いしました。
また、今年の「SDGs花月」は何と言っても、お客さんサービスが手厚かったですね。SDGsビンゴの要素を取り入れ、早くビンゴを達成した人は新喜劇出演者と記念撮影の機会が!観客の皆さんにとっても忘れられない思い出になったことでしょう。
さらに今年は、笑いや新喜劇のネタのみならず、脱出ゲームやロボット「ペッパー」の子ども向けプログラミングワークショップのシナリオにもSDGsを盛り込み、身近なものとして大人も子どもも参加者を巻き込む可能性を示してくれました。
ニューヨークの国連本部から広報局でエンターテインメント業界との連携を担当するジェフ・ブレーズ課長が参加。「ここまでSDGsを包括的に発信している映画祭は例がない」と感嘆の声を上げていました。
映画祭のセレモニーの挨拶の中で、門川大作京都市長が自然な流れでSDGsについて触れていたのも、昨年との違いとして印象に残りました。SDGsをより多くの人々に自分事化してもらえるといいなあと感じています。