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国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

平和な大地を取り戻す

~国際地雷デー記念イベント「映像から考える、地雷のない世界」~

「地雷除去は、平和へとつながる『意思表示』。たとえ砂漠に水を撒くような気の遠くなる作業でも、地雷は一つ取り除けば誰かの命、手足が必ず救われます」と、立教大学教授で難民を助ける会(AAR Japan)理事長の長有紀枝さんは言います。

一日に約10回、世界のどこかで誰かが地雷によって死亡もしくは負傷しています。対人地雷は一度設置されると半永久的に効力を持ち続け、紛争終結後も一般市民に被害を及ぼし、今日も人々を脅かし続けます。4月4日は「地雷に関する啓発及び地雷除去支援のための国際デー 」。この日を記念して、国連広報センター(UNIC)は4月15日、イベント「映像から考える、地雷のない世界」を立教大学で開催しました。

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      2012年当時大学生だった重田竣平監督が製作した「ワンダーランド」は、高山良二さん(NPO法人国際地雷処理・     地域復興支援の会(IMCCD)理事長兼現地代表)の、カンボジアでの活動に密着したもの 

カンボジアで地雷処理活動に奔走する日本人元自衛官の姿を追ったドキュメンタリー映画「ワンダーランド」を観た参加者は、カンボジア・タサエン村の人々が地雷という危険と隣り合わせで生きている姿に、胸をつかれました。タサエンは、のどかで平和な、一見どこにでもある農村。しかし、この地はもともと、カンボジア内戦中、ゲリラ戦の舞台となったジャングルで、未だ多くの地雷が埋められています。農地を耕している最中、現地住民によって発見される地雷。民家のすぐ横で行われる爆破処理。タサエンの人々にとって、地雷は何気ない日常の一部となっているのです。

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      左から、国連広報センター(UNIC)の根本かおる所長、日本地雷処理を支援する会(JMAS)の谷川保行事務局長、     外務省総合外交政策軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課兼通常兵器室の野口泰課長、立教大学の長有紀枝教授

 

日本の力で地雷をなくす

根本かおる国連広報センター(UNIC)所長の司会のもとスタートしたパネルディスカッションでは、日本の地雷除去に対する貢献に注目が集まりました。元自衛官である谷川保行さんは、退官後も日本地雷処理を支援する会(JMAS)事務局長として、地雷処理活動に携わっています。「多くの自衛官がこれまでPKOに参加しています。自衛官として、何かのために尽くしたい。その思い、渇望があります。また、地雷や不発弾は自衛隊でしか扱っていないため、『やっぱりこれは俺たちの仕事だな』という意識があります」

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 UNICの根本かおる所長と日本地雷処理を支援する会(JMAS)の谷川保行事務局長

 外務省通常兵器室長である野口泰さんは、日本政府の地雷廃絶に対する取り組みを説明しました。

オタワ条約(対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約)が締結されてから16年、日本は条約締約国を増やす努力をしてきました。現在、締約国は161カ国に上ります。その成果として、2000年に年間約8000人いた地雷、不発弾による被害者が、2012年の統計では約半分の3600人となっています。」 しかし、オタワ条約がここまで広がった今も、課題は残ると言います。 「アメリカ、ロシア、中国、インド、韓国などの対人地雷大量保有国が未だオタワ条約に入っていません。各国は、安全保障上、地雷を必要としていると主張していることもあり、日本として地域の安定化に貢献しつつ、条約加盟を粘り強く働きかけていきたいと思います」

日本の貢献は、オタワ条約を広めるだけにとどまりません。日本は国連の地雷対策支援信託基金に対する世界一の拠出国(2013年)で、2014年から地雷対策のドナー国会合であるMine Action Support Groupの議長国及び対人地雷禁止条約の除去常設委員会共同議長も務めています。 「資金協力だけでは日本の顔が見えない、というコメントをいただくこともあります。引き続き資金協力で貢献するのみならず、JMASやAARなどの日本のNGOと政府で協力し、『オールジャパン』で地雷除去に取り組み続けていくことが重要となります」

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          外務省総合外交政策軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課兼通常兵器室の野口泰課長(左)と            立教大学の長有紀枝教授(難民を助ける会(AAR)理事長)(右)

 

「教育が自分を変えてくれた」

パネルディスカッションで焦点があてられたもう一つのトピックは、「教育」。難民を助ける会(AAR Japan)がアフガニスタンの女性を対象に用いる教材ビデオ「そっちに行っちゃだめ」は、回避教育の重要性を表すものでした。もともとアフガニスタンでは、男性の被害者が多いため、回避教育も男性をターゲットにしていました。しかし、アフガニスタンでは男性と女性が同じ場にはいられないことも多く、女性に地雷回避のメッセージが伝わりません。また、男性の教育チームが行くと、女性が集まれないといったようなこともあります。そのため、女性のチームを派遣したり、女性対象のビデオを作ったり、といったような取り組みを実施しています。

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 アフガニスタンでの回避教育の様子(Photo: 難民を助ける会(AAR Japan))

回避教育だけではなく、地雷の被害に遭った子どもたち(『サバイバー』とも呼びます)への教育も大切となります。今回は、アフガニスタンから来日していたAARの現地職員の方々にもご来場いただき、原体験をお聞きすることができました。職員の一人である、ナデル・シャーさんは、9歳のときに不発弾被害に遭い、両腕と右目を失いました。しかし、その後英語やパソコンを熱心に学び、いまやAARの有力スタッフとして会計を担当。床に座り、足の指でパソコンを打って作業を行います。 「不発弾や地雷の事故に遭って、そこで人生が終わったと考えるのではなく、教育を通じて可能性を広げることができます。ナデル君も『教育が自分を変えてくれた』と言います」と長さんは強調します。

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 AARアフガニスタン事務所職員のナデル・シャーさん(左)とヤマ・ハカミさん(右)

 

信頼ある、女性デマイナー(地雷除去員)の活躍

今年の地雷デーのテーマは「地雷除去に取り組む女性たち(Women in Mine Action)」。「女性」というトピックについて、谷川さんはJMASでの女性デマイナー(地雷除去員)の活躍をこう語ります。 「カンボジアでは、天はすべて女性が支えている、と言われています。しかし、女性の社会的地位は高くない。これを受けて、JMASは2006年から2013年までに、約100名の女性を雇用してきました。女性の力量に対する評価は、男性のデマイナーと同等、もしくはそれ以上のものです。多くの女性はコンスタントに仕事をし、その充実な仕事ぶりから、信頼性という面において女性は高く評価されています」

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世界各地で活躍する女性デマイナー(Photo: UNMAS)

 

地雷除去は平和への第一歩

「地雷処理だけで終わらせてはいけない」と谷川さんは強調し、平和構築というトピックに議論が広がりました。 「地雷は平和構築、民族和解や経済発展などの妨げになっています。地雷処理に経済的、社会的付加価値を付けなければならないのです。地雷を取り除いた土地に、学校、道路、入植地、ため池、橋、工場などを設置することで、コミュニティの発展と自立を促します。処理跡地利用の一例ですが、日本の100円ショップで売られている、のし袋の裏を見てみてください。Made in Cambodiaと書かれていると思います。これは、カンボジアの地雷処理後に日本企業が建てた工場で作られたものだと考えていただいて、まず間違いありません」

長さんは、「地雷を廃絶することは、平和につながる『意思表示』になる」と語ります。第一に、条約に加入することで、政府はもう地雷を使わない、という意思表示になります。第二に、地雷を埋めた人々が地雷除去のために情報を開示することは、もう戦争はしない、という意思表示になります。第三に、保有国が倉庫に入っている貯蔵地雷を破壊することも、もう地雷は使わない、という意思表示になります。また、退役軍人をデマイナーとして雇用することで、再度紛争が勃発しても、軍隊への復帰を防ぐことができ、紛争予防にもつながるのです。

 

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国連広報センター・インターン(内藤春香)の感想

私はこのイベントに参加するまで、日本が地雷除去活動においてこれほど多大な貢献をしていることを知りませんでした。「地雷というのは遠く離れた紛争地の問題。」そのような認識しか持っていなかった私にとって、日本の取り組みについて具体的に学ぶことができたのは、貴重な経験となりました。

また、以前の私は「地雷廃絶」という言葉を聞くと、防護服に身を包み、探知機を地面にかざす地雷除去員の姿しか想像できませんでした。しかし、「地雷廃絶」のプロセスは、埋蔵されている地雷を物理的に取り除くことだけでは終わりません。国際社会としてオタワ条約を広めて新たな地雷の使用を予防し、市民社会が被害者のエンパワーメントや、次世代への教育活動を行うことも不可欠です。自ら地雷除去員にならずとも、個人個人が様々な関わり方を持ち、地雷のない世界の実現に貢献できるのだと実感しました。