7月18日、国連広報センターは、この春まで国連人道問題調整事務所(OCHA)で人事担当官をつとめた澤田泰子さんを招き、キャリア・セミナー第三弾「国連の求める人物像」と題したイベントを開催しました。今回は澤田さんという採用のプロによるグループ・ディスカッションを取り入れた参加型のセミナーとなりました。澤田さんのフレンドリーな人柄もあり、グループ・ディスカッションは大変盛り上がりました。セミナー終了時には、参加者同士がうちとけ、連絡先をお互いに交換し合うなど、大盛況のうちに幕を閉じました。人事・採用に関わった澤田さんのご経験から、国連に求められる人物像だけでなく、多様性あふれるチームの中でリーダーシップを発揮できるグローバルな人物像についてお話を伺うことができました。
■難民、人道問題担当から人事へ
澤田さんはアメリカの大学院卒業後、JPO制度で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、そして翌年国連競争試験を経て国連人道問題調整事務所(OCHA)欧州本部(ジュネーブ)の人道問題担当官として勤務しました。その後OCHA管理部に配属となり、様々な人からキャリアに関する相談を受ける中でコーチングに興味を持ったという澤田さん。今年春からOCHAを休職し、現在はコーチング、リーダーシップ育成の分野で活躍しています。
■「国連で求められる人材」
国連に応募する上で、教育、職務経験、言語といった「Qualification(資質)」は書類専攻においてもちろん重要な要素ですが、面接では「Competencies(能力)」を伝えることが重要となると澤田さんは言います。加えて、変化に適応できること、自らモチベーションや自信を「創る」ことができること、自省し学ぶことができること、自分や相手の個性・強みを活かしチームで働くことができること、リーダーシップを発揮できることなどが、国連では求められます。
また、「Integrity(誠実な人格)、Professionalism(プロ意識)、Respect for Diversity(多様性の尊重)はUN Core Valuesと呼ばれ、国連職員に求められる資質としてとても大切です。これらを体現することができれば、国連のみならず、多様性の中でリーダーシップを発揮できるグローバルな人材として活躍できます」と澤田さんは言います。
■「自分の中のぶれない軸」
国連の中でも特に人道援助や開発援助の分野において、多くの職員は2、3年ごとに新たなポストに応募し、異動します。そのたびになぜ自分はそのポストに応募するのか、そしてなぜ自分がそのポストにふさわしいのかをアピールする必要があります。そのような中で「自分の中のぶれない軸」を持つことが大切であると澤田さんは言います。
順調なキャリアを歩んでいるように見える澤田さん。しかし自分のキャリアについて迷った時期があったと言います。人道問題担当官として数年勤務した後、休職をはさんで人事のポストに就くことになりました。「専門性を持たない分野への配属で当初は戸惑った」と澤田さんは経験を参加者にシェアしてくれました。このように今までとは異なる分野の仕事を任された時でも、「自分の中のぶれない軸」があれば、常に自分のベストを尽くすことができると澤田さんは言います。
「澤田さんのぶれない軸は?」と問われ、「世界平和に貢献したいという思い」と答える澤田さん。「以前は難民や人道問題に直接貢献したいと考えていたが、今はそういう現場で活躍する人を応援したい」と、目的は同じですが力の発揮の仕方が変わったと言います。「子供のことや親のことで、キャリアを考え直さなけばならないこともある」とも。キャリアを形成するにあたって自分のぶれない軸をもつ重要性を改めて考えるよい機会となりました。
■グループ・ディスカッション
「WHAT - 国連を通じて何を実現したいですか?」「WHY - 国連で働くことはどんな意味がありますか?なぜそれをしたいですか?」との澤田さんの問いかけから、グループ・ディスカッションが始まりました。参加者は、なぜ平和に興味があるのか、難民に興味があるのか、農村開発に興味があるのか、それぞれの思いを熱く語りました。ディスカッションの後参加者からは「同じ興味を持つ人と思いを共有することができてよかった」「話してみると意外と同じ悩みを持っていて、相談にのってもらえたり経験をシェアしたりできるよい機会となった」などの感想がありました。澤田さんは最後に、「『これがやりたい』という熱い思いは、周囲に大きなインパクトを与えることができる。今日は言葉に出して人に話すことによって、自分にそして他の人にどうインパクトがあるかを感じて欲しかった」と締めくくりました。
■インターンの感想
国連で働くには専門知識や言語能力はとても重要です。しかしそれだけではなく、困難な状況に直面した時に自分を支える信念や向上心も大切だとこのセミナーを通じて改めて認識しました。「自分の中のぶれない軸」とは何なのか、インターンとして働く私を含め、多くの参加者にとって、自分を見つめなおす貴重な機会になりました。
【関連リンク】
国連職員の声:国際連合人道問題調整事務所(OCHA)ニューヨーク本部人事担当官 澤田泰子さん