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国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

わたしのJPO時代(16)

【連載中】<わたしのJPO時代>

「わたしのJPO時代」第16回は、国連フィールド支援担当事務次長付き特別補佐官、伊東孝一さんのお話をお届けしします。JPO試験合格後、外務省からのポスト提示を待たず、自身で就職活動をした伊東さん。当時国連本部に日本人JPOは皆無でしたが、国連本部 政治局アジア太平洋部の政務官ポストを獲得されました。JPO時代の国連本部での経験が、その後のフィールド勤務においても現場と本部の両者の視点を持って仕事を進める基盤になった、と教えて下さいました。

 

 

        国連フィールド支援担当事務次長付き特別補佐官

          伊東 孝一(いとう たかかず) さん

        ~「やる気と体力」で勝負、国連本部でのJPO~        

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      2016年9月、ロンドンにて開催された国連PKO防衛大臣級会合にて(伊東さん提供)

東孝一(いとう たかかず):国連フィールド支援担当事務次長付き特別補佐官。東京外国語大学卒、ロングアイランド大学院社会学修士。富士銀行、国連日本政府代表部勤務を経て、2002年度JPO合格。2003年、UNDPコソボ事務所にて安全保障部門改革担当後、2004年より国連政治局で北東アジア担当。2006年、国連東ティモール統合ミッション政務官、2008年より東ティモール担当事務総長特別代表付き特別補佐官。2012年より現職。

 

 

誤解を恐れずに言い切ると、国際社会より国連に課せられた任務は大きく分けて3つ。国際の平和と安全の推進、経済社会開発、そして人権。僕は、これまで15年近くに渡り、1つ目の国際の平和と安全に関わる仕事を、国連日本政府代表部時代も含めると、ニューヨーク、コソボ、ニューヨーク、東ティモール、ニューヨークと、紛争地の現場と国連本部を行き来しながら続けてきました。

 

多くの人にアドバイスを頂いたり、助けて頂いたりしながら、微力ながらも世界がより平和になるようにと、努力を続けて来られたことは幸せだと感じています。こんな僕の国連キャリアを支えるバックボーンは2つあります。そのうちの大きな一つが、JPO時代の仕事の経験と学びです。

 

JPOは、国連事務局本部で政務官として北東アジア(中国、北朝鮮、韓国、日本、モンゴル)を担当しました。僕がJPO試験を受験した当時、日本の外務省では、JPOは、主に UNDP,UNICEF, WFP, UNHCRといった国連関係機関に派遣し、開発や人道支援に携わらせることを想定していたようでした。JPO試験合格者は、外務省からいくつかポストを提示されるのを待ち、そのうち自分の希望に近いポストを選んで開発途上国に赴任するというのが、当時お決まりのコースでした。僕がJPOを受験した2002年まで、国連本部で勤務する日本人JPOは皆無でしたが、僕自身はUNDPコソボ事務所でフィールドを経験していたこともあり、国連本部で広い視野を身につけた上でまたフィールドに出たいと思いました。そこで、外務省からフィールドポストを宛てがわれるのを待つのではなく、本部での政務ポストを求め、勝手に就職活動をしました。国連本部で知っている人に自分の履歴書を送付し「政務分野でやる気と体力だけはあるJPOを採用したい方を紹介してください」とお願いしてまわりました。そんなメールの一つが、既に国連政治局で活躍されていた邦人女性職員の方の目に止まり、その方の紹介で国連本部政治局アジア太平洋部の政務官ポスト獲得となりました。

 

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アフガニスタン出張中、事務次長についた身辺警護官達と。当日カブールにて自爆テロが2件発生したため、通常3名のところ2名増員。(伊東さん提供)

 

JPO時代は、事務総長をはじめとする国連幹部に提出する北東アジア情勢に関する分析や幹部が各国首脳・外相と会談する際に使用する発言要領、対外的に発出する事務総長声明などをバンバン書いて、最初は上司にバンバンダメ出しされていました。そのうち、なんとかコツが掴め、JPO期間中に、素早く必要な情報を入手・整理・分析して、簡潔にまとめる力がつきました。この経験・学びがあったからこそ、JPO後赴任した東ティモールで、すぐに現地の政治・治安情勢や国連の活動について安保理に提出する事務総長報告の取りまとめをまかせられたり、政治・治安情勢が急激に悪化し、緊迫した状態でも、ある程度落ち着いて仕事が出来るようになったのだと思います。もう8年前の話になりますが、東ティモールの首都ディリで、銃撃戦に巻き込まれそうになったことがありました。朝のジョギング中、浜辺でラモス・ホルタ大統領(当時)を見かけ挨拶している際に銃声が響きはじめました。あとになって分かったのですが、反乱軍の集団が浜辺近くの大統領公邸を襲い、公邸を警護する国軍の兵士らと撃ち合いになっていたのでした。大統領は身辺警護と公邸に戻ろうとし、公邸の門にたどり着く前に複数の銃弾を浴び重傷をおいました。

 

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                反乱軍に襲撃されたグスマン首相の車両(UN Photo)

 

僕は国連の危機管理センターに事態を報告したあと事務所に出向き、そこから数日間は、上司・同僚らと共にほとんど休むことなく、襲撃事件が大規模な暴動・紛争へと繋がらないよう、襲撃を行った反乱軍やその支配下の勢力に影響力を行使できる政治家らへの働きかけ、情報収集・分析、本部そして安保理への報告作りに取り組みました。グスマン首相(当時)の車列も反乱軍に襲撃され、一時はディリの一部市民が国内避難民化する事態となりましたが、大統領は奇跡的にも助かり、首相も軽い怪我で済み、国内避難民もそれぞれのコミュニティーに帰り、 反乱は拡大することなく収束しました。

 

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           ホルタ大統領、銃撃戦でおった重傷の治療を終え帰国(UN Photo)

 

 今の仕事でも、JPO時代に情報分析・文書作成能力を鍛えられたことが役に立っています。国連総会、アフリカ連合のサミット、PKO関連の閣僚級会合などでは、事務次長が一日に何名もの防衛大臣や外務大臣などと連続して会談を行うことがあるのですが、これらの会談用の発言要領やブリーフ資料を限られた時間の中で用意し事務次長をサポートできているのはJPO時代の経験・学びのおかげです。

 

 またJPOを国連本部で行ったことで、各国の国益の対立や足の引っ張りあい、国連内の官僚主義や縄張り争いなど、あまり美しくない政策レベルの国連外交の現実を見てからPKOの現場に出たことも、とても役に立ちました。フィールドにいて、国連本部から、長ったらしくて意味が不明瞭な指示が来た際には、国連部内の調整がうまくいかなかったのだなと推測できたり、国連本部の仕事の仕方や出来ることの限界がある程度分かっているからこそ、本部からの支援をあまり期待せず、余計な指示をもらわないで、ピンポイントで本部の同僚らに動いてもらえるよう公電の出し方・タイミングなどを工夫できました。

 

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   東ティモールで一緒に働いた同僚たちとニューヨークで同窓会。筆者は上段右から2番目(伊東さん提供)

 

逆にしばらくフィールド勤務をしたあと国連本部に戻ると、現場の経験が国連本部での仕事に役立つなと感じることが多々あります。ずっと国連本部にいても現場の視点を持てる優秀な国連職員の方もいますが、僕自身は、残念ながらそのような才能はなく、紛争地でも安保理議場でも、実際に出向いて自分の目で見て、自分の肌で感じないと駄目なようです。今後も本部とフィールド勤務を出来るだけ交互に行っていきたいと思っています。

    

バックボーン、2つ目は、ワーク・ライフ・バランスに繋がるのですが、トライアスロンです。仕事は大事ですが、仕事ばかりしていても駄目。学生時代からJPO時代までは、飲みにばかり行ってましたが、JPO後ぐらいからはトライアスロンやマラソンにはまり、飲みに行く回数も減り、トレーニングをしたり、レースに出ることを、仕事の良い息抜きにしています。トライアスロンでは、ここ数年、アイアンマン・レースと呼ばれる3.8キロ泳いで、180キロ自転車に乗ったあと42.2.キロ走るレースに一年に一度出るようにしています。アイアンマンのレースに出ている間は10時間以上、食事もせずトイレにも行かず運動し続け、極限まで自分を追い込みます。ゴールした時の達成感は何ものにも代え難いものがあり、間違いなく仕事にも良い影響を与えています。ランニング中に、ふと煮詰まっていた仕事の案件の突破口が見えたり、解決策が思い浮かぶことがありますし、仕事が忙しくて大変な時があっても、アイアンマンに比べたら楽だよなと思うことが出来ます。アイアンマンレース出場は、妻との夏休み旅行も兼ねているので、一石三鳥です。

 

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             アイアンマン・レース無事完走(伊東さん提供)

 

僕の国連キャリアにとって、JPO時代の経験と学び、そしてJPO後にはまったトライアスロンが、大事なバックボーンとなっています。トライアスロンに限らず、仕事以外でも何か自分が夢中になって楽しめることや、大切な人との時間があると、より仕事に打ち込めるのではないかと思います。国連を目指される方には是非JPO受験と、ご自身にとってのトライアスロンを見つけられることをお勧めします!