国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

「わたしのJPO時代」 (6)

 

「わたしのJPO時代」第6弾として、国連難民高等弁務事務所(UNHCR)ジュネーブ本部 財務・総務局 アシスタント・トレジャラーの上月光さんのお話をお届けします。民間の金融機関などでの経験を活かして活躍される上月さんは、JPOになりたての時代を「時間を忘れて没頭する」時間だったと振り返ります。

 

    UNHCRジュネーブ本部 財務・総務局 アシスタント・トレジャラー 上月光さん

                                                 ~勝負の90日間~

 

                                f:id:UNIC_Tokyo:20150924124454j:plain

                                            UNHCR本部のカフェテリアで同僚と

早稲田大学政治経済学部経済学科卒、日本貿易振興会アジア経済研究所開発スクール修了、ハーバード大学ケネディ行政大学院修士課程修了。UNHCR 本部財務・総務局でトレジャリー(資金・外為)を担当。都市銀行外資コンサルティング会社、外資系銀行、銀行系シンクタンクで勤務後、2004年にJPO として国連難民高等弁務官事務所UNHCR)本部財務・調達局予算課に着任、UNHCR 駐日事務所勤務を経て現職。

 

外務省が毎年行っているJPO試験、知ってはいたけれども国連での仕事と自分のこれまでの職歴との接点がなかなか見つけられず、なんとなくJPO試験から距離を置いているうちに、アメリカの大学院で同窓だった世界各国の友達たちが、私と同じような民間企業での職歴をへてどんどん国連に就職し始めた時期が20代後半の頃でした。

 

20代最後の年に初めて受験したJPO試験に運よく合格し、さてどんな機関でどんな仕事ができるのやら、と不安と期待を抱えながらいたところに、外務省からご提案をいただいたのが、人道支援機関、UNHCRの本部で予算管理をするポジションでした。

 

すでに結婚し子供も生まれ、これから新たに国連でのキャリアを築くにあたり、人道支援という自分にとって未知のフィールドではたしてどこまで実績が残せるのだろと、このJPOのポジションに就くにあたっていろいろと迷うことがありましたが、少なくとも予算管理はこれまで財務関係の仕事を民間企業で続けてきた中で、それなりにどんなことが求められるのか、これまでの経験をどのようにして活かせそうかがイメージできる職種だったこともあり、お受けすることにしました。

 

 f:id:UNIC_Tokyo:20150924124302p:plain

 ミッションで訪れた当時の南スーダン、マラカルにて宿泊したUNMISアムザールキャンプ・PKOインド部隊の方々と

 

UNHCR本部でJPOのポジションに着任してみると、これまでこの部局ではJPOが働いていたことがなく、さて何から始めたらよいものか、当初は戸惑うことばかりでした。当時UNHCRの財務官は日本人の方が務めておられ、どんなことから手をつけたらよいものかとご相談に伺ったところ、矢継ぎ早にあれもこれもとUNHCRの予算編成や組織全体の予算対支出に関する課題を挙げられ、最後には「人はみな、最初の90日間でその人がどれだけできる人か、できない人かを判断するもの。だからこの先の3ヶ月でみんなに認めれもらえる成果を出すように」とはっぱをかけられました。「よし、やってやろうじゃないか」という気持ちになり、がむしゃらにUNHCRの本部各局や各国の事業予算計画や執行状況を読みふけってみました。

 

一通りUNHCR全体の予算の詳細や執行状況を把握したところで、さてどうしたらはじめの90日間に周りから認めてもらえる成果を何かだせるだろうか、と思案してみたものの、そう簡単に見つかるわけもありません。ただ、そんな時、ちょうど自分と同じようにUNHCRに入ったばかりの職員で、何から手をつけたらよいものかと思案している人を発見したのです。その人はUNHCRのテレコム・ITを総括する部局の局長として、民間企業からやってきた人で、以前は某外資系アパレル企業の日本支社に勤めていたこともある方でした。

 

コピールームでたまたま出くわし、片言の日本語を話すので世間話をしているうちに、「新しい会計情報システムを導入するプロジェクトが進行中なのだけど、これまで何にどれだけ資金を使い、予算の未消化分がどれくらいで、これから先のプロジェクト経費をカバーするのに十分な状況なのか、予算の見込み値が甘いのか、判断がつかない」とこぼしたのです。上司の財務官もぜひやってみればとサポートしてくださり、プロジェクト開始時から今日までの予算計画対支出状況の分析や、今後支払いが確実なものをもとに、予算消化率がどのように推移していくかの予測値を複数のシナリオをもとに分析してみました。

 

普段の通常業務の傍ら、もっぱら内職のような形で始めた仕事でしたが、金融コンサルティング会社にいたころに同じようなことを手がけ、ERPとよばれる企業統合会計ソフトの導入も経験していたので、我ながら「痒いところに手が届く」使いやすい分析データが提供できました。その後このシステムはUNHCRの本部と世界中の事務所で導入され、国連機関の中でもERPを活用するさきがけの一つとなりました。今日これなしには仕事が進まないほどの重要なシステムとなったので、JPOの頃に「とにかく何か形になるものを仕上げよう」と試行錯誤した甲斐があったと思っています。

 

f:id:UNIC_Tokyo:20150924124458j:plain

      UNHCRの緊急援助チーム・ERT(Emergency Response Roster)のトレーニングでチームメンバーと

 

若手のうちは、それこそ時間を忘れて仕事に没頭することが大切だと思います。JPOの時期とは、まさにそれを存分にすることが許される貴重な時期だったと思います。結果的に、90日間などの短期間ではすぐに目に見える成果をあげられないことも当然あるでしょう。ただ、これからJPO、そして国際機関の正規職員となることを目指す方々には、それぐらいの意気込みで「時間を忘れて没頭する」時間を、ぜひJPOの数年間にすごされることを期待しています。

デジタル化映像で見る、日本と国連の歩み ~Think Globally, Act Locally~ @東北大学

国連広報センターインターンの飯干ノアです。

 

この度、インターンとしてとても貴重な経験をさせていただきました。普段は広報センターの事務所で業務を行いますが、今回はイベントで登壇するチャンスがあり、9月7日に仙台へ出張しました。日本と国連の関係を記録した貴重な映像がデジタル化されたのを記念して行われたこのイベントは、神戸と仙台に続き、別府(9月15日)、そして最終回は東京(9月18日)にて実施されました。

(映像資料はこちらからアクセスできます→https://www.youtube.com/channel/UCLwR8v_F8Ye7BziAvxz2_eQ

私が参加したパネル・ディスカッションでは、海外でボランティアや留学をした経験に基づいて、お話させていただきました。初めて大勢の方々の前で話したのでとても緊張しましたが、私の経験から確信している、グローバルに考えてローカルで活動することの大切さについて、会場の方々に伝わったのではと実感しました。

  

     f:id:UNIC_Tokyo:20151001160234p:plain

 

パネルディスカッションでは、なぜ自分が国連に興味を持ったのか、そして広報センターのインターンとして日々どのようなことを行っているのかについてお話しました。小学生の時に学校で行われたUNICEF募金を通して貧困が子どもたちにもたらす影響について学んで以来、開発途上国の実態に興味がありました。そして、大学2年次にメキシコのカンクンにある児童養護施設でのボランティアに参加しました。さらに3年次には、アフリカのウガンダへ留学をし、現地の大学に通いながらインターンとして児童養護施設で活動しました。

      

       f:id:UNIC_Tokyo:20151001160311p:plain

 

インターンとして活動する中で、児童養護施設ウガンダ人の男性職員と話をする機会があり、よく日本とウガンダの違いについて話をしました。ある日その職員の方に、「日本には孤児がいますか?ホームレスは?餓死をする人たちは?」と聞かれました。「多くはないけれどいます」と答えると、「自国にも助けを必要としている人たちがいるのに、なぜあなたは他人の国に来て人を助けようと思うのですか?」と聞かれました。その時に、今までグローバルなことには目を向けていたのに、ローカル(日本)のことに目を向けていなかった自分に気づかされました。グローバル化が叫ばれる中で、ローカルなこと、そして自国のことに目を向け、行動していくことの大切さについて、このイベントを通して少しでも参加者の方々に伝わったのでは、と思いました。

 

同パネルディスカッションでは、根本所長がモデレーターを務め、パネリストとして国連国際防災戦略事務局( UNISDR )の松岡由季駐日事務所代表、公益社団法人 Sweet Treat 311 の立花貴代表理事、首相官邸国際広報室参事官補佐の田留章平さん、そして東北大学大学院工学研究科の牧野嶋文泰さんが登壇しました。同じ学生として、東北大学大学院工学研究科の牧野嶋さんの、被災地の経験を今後の防災に活かしていきたいという強い思いに、とても共感しました。私自身も9月下旬から大学院に進学をするので、広報センターでのインターンの経験を活かして、より一層勉学に励みたいと思いました。