国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

「持続可能な開発目標(SDGs)学生フォトコンテスト2018」受賞者へのインターン・インタビュー[第3回]

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授賞式で司会を務める根本国連広報センター所長


“世界の学生がSDGsに関して自分事として捉えるようになればと願っています”——国連広報センター根本所長の言葉です。

今年の国連デー(10月24日)に、国連広報センターと上智大学が主催する「撮ってみよう!身近で見つけた日本のSDGs」学生フォトコンテストの授賞式が行われました。

 

授賞式後に、私たち国連広報センターのインターン5名(王郁涵、倉島美保、河野賢太、Jeremy Luna、大上実)が受賞者12名にインタビューを行い、写真に込めたメッセージや選んだSDGsに対する思いなどを聞き取りました。第3回となるインタビューでは、優秀賞を受賞した千葉優一(ちば ゆういち)さん、入賞の武藤 有紀(むとう ゆき)さん、黒谷ケイト(くろたに けいと)さん、吉田真依(よしだ まい)さんの4名を紹介します。

 

SDGs学生フォトコンテスト2018 本シリーズ)

「持続可能な開発目標(SDGs)学生フォトコンテスト2018」受賞者へのインターン・インタビュー[第1回]

「持続可能な開発目標(SDGs)学生フォトコンテスト2018」受賞者へのインターン・インタビュー[第2回]

 

優秀賞「連鎖する海岸」 千葉 優一(Yuichi Chiba

東京大学農学生命科学研究科修士2

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「海で泳ぎ楽しむこともあるだろうし、食卓に上がる魚を食べることもあれども、陸上に住む僕には、生命の連鎖の中で『海』を感じる機会は少なく、どこか隔たりがあるように感じていた。しかし、初冬の海で捉えた瞬間が、そんな隔たりを打ち壊す。生命のバトンは、確かに海から陸へ繋がれている。陸上の生き物も『海の多様な生命』から多大な恩恵を受けていることを確信した」

関連するSDGs

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千葉さん 栄誉ある優秀賞を受賞でき、光栄に思います。SDGsフォトコンテストに応募したきっかけは、大学院にあります。私は大学院で農学国際(地球規模で深刻化する食料や環境等の国際問題を農学の視点から総合的に考える専攻)を専攻しているため、SDGsSDGsフォトコンテストを知る機会に恵まれています。フォトコンテストは単純に「面白そうだな」と思い応募しました。

ある日の早朝、趣味がサーフィンの母親と海に行きました。そこでは、様々なモノが海岸に漂流していました。漂流物の中にエイが上がっており、周囲にはカラスが群がっていました。その悲惨な光景に驚いたと同時に、環境問題は海の多様性だけでなく陸上の生物にも影響を与えていることに気づきました。

 

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千葉さん(左)とプレゼンターの上智大学水島宏明教授

 

撮影で苦労したことは2点あります。1点目は、受け手にインパクトを与えられるような構図になるよう、アングルを調整したことです。2点目は色の調整です。朝にこの写真を撮ったのですが、朝のフレッシュさ・爽涼感を伝えられるように、色味の調整に気を配りました。

 

私の作品は海と大地の調和について焦点を当てていますが、また同時に、自然と開発の調和の必要性も示唆しています。私見ではありますが、私は自然を“ハード”、人間社会を“ソフト”と捉えています。人間はどちらの両極にも寄ってはならず、すなはち“自然(ハード)”と“人間社会(ソフト)”の間に立つ必要があるのかもしれません。私の作品を見た人に環境について改めて考えられるような機会を提供することができて嬉しく思います。

 

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千葉さん(右)にインタビューするインターン河野

 

私は14番(海の豊かさを守ろう)や15番(陸の豊かさも守ろう)のほかに、5番(ジェンダー平等を実現しよう)のSDGsゴールに関心を寄せています。ジェンダーに関心を持ったきっかけはいくつかありますが、学部時代に所属していた国際基督教大学LGBT教育に力を注いでいたことが大きかったと思います。このことに端を発して、「女は家で育児、男は外で仕事」といった考え方に疑問を抱くようになり、全ての人が多様な生き方を送っても良いのではないかと考えています。

 

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左から武藤さん、吉田さん、黒谷ケイトさんに同時インタビューするインターン倉島

 

入賞「過去と現在と未来と」 武藤 有紀 Yuki Muto

上智大学総合グローバル学部1

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「東京の日本橋は過去である神社が存在し、また未来的な高層ビルも立ち並んでいます。住みやすい街づくりのおかげでその中に現在の私たちが存在しています。これこそ持続可能な開発目標の11番に当てはまるのではないのでしょうか」

関連するSDGs

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武藤さん 作品の場所は、日本橋です。家族と遊びに行ったときに写真を撮りました。あまり日本橋を訪れる機会はありませんでしたが、高層ビル・神社・訪日外国人との調和が美しく、思わずスマホのシャッターを切りました。写真を撮るとき、自分の目線と同じ高さでシャッターを切ることが一般的な方法ですが、この写真はあえて下から撮ることで目線を変え、いつもとは違う視点から見えるように撮ってみました。SDGsは日々の生活における多くの場面と繋がりを持っています。少し違った角度から日常の生活を見るだけでも、新しいものが沢山見えてきます。私たちが「今」を見直し、未来を創造する1つのツールになりうるのではないかと考えています。

 

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武藤さん(左)とプレゼンターの(株)ニコン経営戦略本部の関CSR推進部長


私が関心を寄せているSDGsのゴールは4番(質の高い教育をみんなに)です。日本は豊かな国で教育の水準が高い一方、言語の問題があります。海外から日本へ移住した人々に対して、日本人と同様の教育を提供できているかという点について疑問を持っており、このゴールに関心を持ち続けています。

 

入賞「THE METRO ꞱƆⱯɹꞱSq∀ (都市の抽象画)」 黒谷ケイト( FORTALEZA KATE ANGELU

[フィリピン] 東京都立国際高等学校2

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「都市生活は複雑であるものの、その中に美しさもある。私にとっては、賑わっている都市というものは持続可能なコミュニティーや経済成長を如実に反映する」

関連するSDGs

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黒谷さん 作品にある景色は明治神宮前の東急プラザ表参道・原宿の建物です。建物のデザインや構成に感動し、シャッターを切りました。原宿や表参道は本当に多くの人が歩いており、人混みの中で撮影するのに苦労しました。しかし、街を行き交う人、働いている人、ビルなどが建物に反射され、忙しい東京や充実した都市生活を写し出すことができて良かったです。来日した時、空が隠れてしまうほど超高層ビルが立ち並ぶ東京を見て、私が育った街とは全く異なっていることに気が付きました。私の作品を見る世界中の学生に、SDGsの大切さを知ってもらい、より持続可能な都市の実現に向けて一緒に取り組んでいけることを願っています。

 

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黒谷さん(左)とプレゼンターである朝日新聞マーケティング本部の石田本部長

 

SDGsを知ったきっかけは、群馬県で環境を学ぶイベントです。そのイベントでSDGsが紹介されていました。また、学校ではSDGsの勉強会が開催されることもあるので、SDGsを学ぶ機会は多いです。私はSDGsのゴール3番(すべての人に健康と福祉を)に関心があります。特に日本の医療制度に感動しており、医療費が3割で済む日本は素晴らしい国だなと思っています。また、私の作品にはゴール8番(働きがいも経済成長も)が含まれています。今後、労働環境や雇用問題への改善が更に求められる社会になっていくと思います。私がメッセージとして伝えたいことは、SDGsは具体的・特定的なものではなく、抽象的なものも多く含まれているのではないかということです。

 

入賞「どちらを選びますか」 吉田 真依 (Mai Yoshida)

岡山県立瀬戸高等学校2

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SDGsの基盤は環境です。そこで、SDGs7番(クリーンなエネルギーをみんなに)と15番(陸の豊かさも守ろう)どちらが、この山にとっての、今後の地球にとってのためになりますか?人間文明の持続と地球環境の持続どちらが大切ですか?高校生の自分にできることは、この2つの問題を世界へ向けて発信することです」

関連するSDGs

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吉田さん 雲一つないすっきりとした日に、再生可能エネルギーとそれを見つめる私を写した写真を撮りました。地球に優しいエネルギーの生産を謳いながら、山を削ることが果たして地球にとって良いことなのでしょうか。地球に優しいエネルギーの生産と環境保全の両方を実現できるために今後何ができるのかを考える機会になれば嬉しく思います。

私の住む岡山市は「SDGs未来都市」に選ばれており、所属する高校がSDGsの教育に力を入れて取り組んでいます。先生方から、「SDGsは“包括的”なものであり、様々な知識や技術を持った人が結集して、身近な問題を解決していく」ということを教わりました。私が関心を寄せているSDGsのゴールは、14番(海の豊かさを守ろう)です。海と私たちのつながりはとても強いと感じています。

 

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吉田さん(左)とプレゼンターである国連広報センターの広報官妹尾


 以上、受賞者4名からのメッセージでした。

「今回は日本国内で撮った写真のみを対象としたにもかかわらず、これほど高いレベルの作品が数多く集ったことには驚きを隠せません。作品には、SDGs達成に向けた熱意が凝縮され、その意気込みに心を打たれました」と、審査委員長のレスリー・キー氏も評しています。

 

SDGsフォトコンテストを通して私たちインターンは、SDGsに対して熱い情熱を持った学生が多くいることに感銘を受け、フォトコンテスト運営に携われたことにやりがいを感じました。また、SDGsの認知度が向上し、地球規模の問題解決に向けてより多くの人たちが行動していける未来を期待しています。

 


Do you know all 17 SDGs?

 

2018年度SDGs学生フォトコンテスト概要

審査員

レスリー・キー (写真家 審査委員長)

・ 大野 明  (朝日新聞東京本社 映像報道部長) 

・ 水島 宏明 (上智大学 文学部新聞学科教授)

・ 根本 かおる (国連広報センター所長)

 

特別協力

ゲッティイメージズジャパン、株式会社ニコン、株式会社ニコンイメージングジャパン

 

後援

外務省、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、独立行政法人 国際協力機構(JICA)、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク

 

協力

株式会社シグマ、吉本興業株式会社

 

メディアパートナー

朝日新聞社

 

 

 

 

 

 

 

「持続可能な開発目標(SDGs)学生フォトコンテスト2018」受賞者へのインターン・インタビュー[第2回]

 

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表彰式に出席した14名の受賞者を囲んで、協力して下さった方々と。

今年の国連デー(10月24日)に、国連広報センターと上智大学が主催する「撮ってみよう!身近で見つけた日本のSDGs」学生フォトコンテストの授賞式が行われました。

 

授賞式後に、私たち国連広報センターのインターン5名(王郁涵、倉島美保、河野賢太、Jeremy Luna、大上実)が受賞者12名にインタビューを行い、写真に込めたメッセージや選んだSDGsに対する思いなどを聞き取りました。第2回となるインタビューでは、優秀賞を受賞した阪元 周(さかもと あまね)さんと久保田 友宏(くぼた ともひろ)さん、入賞の桑原 豊(くわはら ゆたか)さんと池田匠(いけだ たくみ)さんの4名を紹介します。

 

(本シリーズの第1回はこちらを参照してください)

 

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「持続可能な開発目標(SDGs)学生フォトコンテスト2018」受賞者へのインターン・インタビュー[第1回]

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 今年の国連デー(10月24日)に、国連広報センターと上智大学が主催する「撮ってみよう!身近で見つけた日本のSDGs」学生フォトコンテストの授賞式が行われました。今年で3度目となるSDGs学生フォトコンテストは、大学生、短大生、大学院生、専門学校生に加えて高校生も対象となり、600近くの作品が集まりました。なんと高校生は371名の総応募者の約6割に上りました。

授賞式後に、私たち国連広報センターのインターン5名(王郁涵、倉島美保、河野賢太、Jeremy Luna、大上実)が受賞者12名にインタビューを行い、写真に込めたメッセージや選んだSDGsに対する思いなどを聞き取りました。その結果を3回に分けて、皆様にお伝えしていきます。第1回となるインタビューでは、大賞(外務大臣賞)を受賞した星野雄飛(ほしの ゆうと)さん、入賞の渡部博明(わたなべ ひろあき)さん、菊池拓未(きくち たくみ)さん、欧紹焜(おう しょうこん)さんの4名を紹介します。

 

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集合写真 (前列)左より甲木外務省国際協力局地球規模課題総括課長、根本国連広報センター所長、阪元さん、久保田さん、星野さん、千葉さん、曄道上智大学学長、大野朝日新聞社映像報道部長、宮本ゲッティ―イメージズジャパン(株)マーケティングシニアマネージャー、関(株)ニコン経営戦略本部CSR推進部長 (後列)左より上智大学総合グローバル学部 植木教授、株式会社シグママーケティング部 青木さん、武藤さん、渡部さん、欧さん、黒谷さん、桑原さん、菊池さん、池田さん、吉田さん、朝日新聞社マーケティング本部 石田本部長、ゲッティ―イメージズジャパン(株)の党マーケティングマネージャー

 

大賞(外務大臣賞)「不調和」 星野 雄飛 (Yuto Hoshino)

上智大学文学部新聞学科2

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「海に打ち上げられたスーパーのカゴ。人類の歴史よりも長い時間をかけてやってきた宇宙からの光とダイナミックな流星を借景に恐ろしいほどの存在感を醸し出すプラスチック。この不調和な地球の現状を普段から見つめている風景写真の視点から考え直してみた」

 関連するSDGs

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星野さん まず、栄誉ある大賞(外務省大臣賞)を受賞でき、とても嬉しく思います。SDGsフォトコンテストを知ったきっかけは、上智大学掲示板に貼っているポスターを見て知りました。昨年度は入賞できなかったので、本当に嬉しいです。普段は風景写真を撮る機会が多く、流星群と天の川の写真を撮るために、友達とレンタカーを利用して長崎まで旅行しました。浜辺で打ち上げられたプラスチックのゴミを見たとき、「これだ!」とSDGsのことを思い出しシャッターを切りました。

 

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星野雄飛さん(左)とプレゼンターの外務省の鈴木地球規模課題審議官(右)@授賞式

 

苦労したことは、流星をベストなタイミングで撮ることです。流星を撮るのにシャッターを10秒ほど切りました。流れ星というと“願い事”ですが、必死にシャッターを切っていたので、願い事をする余裕はありませんでした(笑)。真夜中の海に打ち上げられたスーパーのカゴを見つけたとき、宇宙からの光と街灯に照らされたプラスチックが本来存在しない場所にある不自然さを感じました。風景写真において、ゴミなどはフレームアウトする(画面から取り除く)ことが定石ですが、それを入れ込むことこそが自然環境を直視した表現だと考え、含めました。

 

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星野雄飛さん(右)にインタビューするインターン 大上

 

私が関心を寄せているSDGsのゴールは、14番(海の豊かさを守ろう)の環境問題です。プラスチックごみによる環境汚染問題が話題になっていますが、地球に悪影響を及ぼす製品をいかに日常的でないものにしていくかが私たちの課題だと思っています。

 

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プラスチック汚染―インフォグラフィクス―©国連広報センター 詳しくはこちら:http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/beat_plastic_pollution/

 

また、11番(住み続けられるまちづくりを)に関する写真を応募しましたが、入賞できませんでした。将来は地方創生に携わりたいという思いがあり、みんなが住みやすい街づくりに貢献していきたいです。写真を通して街の魅力を伝えていくような仕事があればいいですね。作品の見どころは、流れ星や天の川といった壮大な宇宙の美しさです。また、それらとは不調和にあるスーパーのカゴから、地球の現状を一歩踏み込んで考えてもらえると幸いです。

 


プラスチックの海©国連広報センター

 

入賞 「芽生え」 渡部 博明 (Hiroaki Watanabe)

和歌山県立医科大学医学部6年

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「樹齢千年を超える屋久杉が多く茂る屋久島。多種多様の苔とともに新たな命が芽生えている。新たな命は、未来を覗く窓となる。豊かな自然はまだまだある。環境破壊だ、温暖化だ。どこか他人事なのは、身近なはずの自然を、まだ身近に感じれていないからではないだろうか。今あるものを大切にしたい」

関連するSDGs

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渡部さん 撮影場所は、もののけ姫の舞台となった「屋久島白谷雲水峡」で、ガイド付きハイキングをしていた際に見かけた光景です。人間は屋久島の自然に手を付けてはいけない決まりがあります。人の手から隔離された場所では、腐った木に苔が生え、そこに新たな命が芽生えます。自然はゆっくり、命を繋いでいく瞬間を目の当たりにしました。

 

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渡部さん(右から2番目)の作品を講評する審査員の大野 朝日新聞社映像報道部長(右)

 

SDGsとの出会いは、大学での公衆衛生の講義でSDGs について紹介されたときでした。SDGsの学びを深める中で、環境問題に強い関心を持ち始めました。環境問題を負の側面から取り上げられる機会が多くなってきていますが、人間と自然が共存していける社会ができるといいなと思いを込めて今回のコンテストに応募しました。

 

SDGs のゴール3番(すべての人に健康と福祉を)に関心があります。医療系に携わっているので、医師として貢献していきたいです。今回のフォトコンテストのおかげで、14番(海の豊かさを守ろう)と15番(陸の豊かさも守ろう)にも、強い関心を持つようになりました。人が作った社会に生かされるのではなく、自然とともに生きる未来を目指して、SDGsを私自身も実行していきます。

 

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渡部博明さん(左)とプレゼンターのゲッティ―イメージズジャパン(株)の宮本マーケティングシニアマネージャー(右)@授賞式

 

入賞 「何故あなたはそこにいて、何故私はあなたを見ているのだろう。」  菊池 拓未 (Takumi Kikuchi)

北海道稚内高等学校3

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「人間慣れしたキツネが餌を求めてか、私に近寄って来た。しばらくして何も得るものが無いと悟ったのか、道路の真ん中で退屈そうに座り込み、私を一瞥した」

関連するSDGs

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 菊池さん 高校では写真部に所属し、普段から写真を撮っています。今回の作品は、コンセプトを事前に決めて撮影に取り掛かった写真です。しっかりと準備して撮った写真が評価されて嬉しく思います。作品にあるキタキツネのように、多くの野生動物を写真に収めてきました。というのも、日本の最北に位置する北海道稚内市が私の地元であり、毎日野生動物を見る機会があるからです。市内には、大きな角を生やしたエゾシカが歩き回っており、とても自然豊かな環境で暮らしています。

 

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菊池さん(左)の作品を講評する審査員の大野さん(右)

 

野生動物の写真を撮っていると、多くの気づきがあります。動物を観察していると、それぞれの仕草や動きに違いがあり、彼らが個性を持っていることに気づきました。つまり、人に個性があるように、動物にも個性があるのです。人間も動物も公平であり、尊く、それぞれが輝いています。今回の写真では、キタキツネがジッとこちらを見ている瞬間を撮影したもので、何か意思のようなものを感じました。

 

フォトコンテストに参加して、SDGsを知りました。特に、14番(海の豊かさを守ろう)と15番(陸の豊かさも守ろう)に共感しました。私自身がそうであったように、作品を通して、多くの人々にSDGsに関する環境問題について関心を寄せてもらえるといいですね。

 

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左から国連広報センターのスタッフ 日下部、菊池拓未さん、インターン 大上

 

入賞 「川中の空」  紹焜 (オウ ショウコン)

[中国]九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻1

 

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「-青い空・白い雲・静かな川・楽しい鴨-自然のバランスの表現です」

関連するSDGs

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 欧さん 見やすさと構図を意識して写真を撮りました。しかし、特に苦労はありませんでした。私はいつも携帯を使って写真を撮っており、日々の暮らしで「きれいだなあ」「落ち着くなあ」と感じた景色をカメラに収めています。写真にある綺麗な川は、ビルが立ち並ぶ街の中にありました。静かな川で楽しそうに泳ぐ鴨たちを見ていると、忙しい日常のストレスから解放されます。そんな心休まる風景をカメラに収めるように心がけました。

 

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欧さん(左)の作品を講評する審査員の大野さん(右)

 

関心を寄せているSDGsは、ゴール11番(住み続けられるまちづくりを)です。ビルや建物ばかりの都会で暮らしていると、自然を感じるのは簡単ではありません。日々の仕事や勉強など、現代人は様々な理由でストレスを溜めています。そうした日々の疲れを癒すために、自然に触れることが効果的だと私は考えています。都会に住んでいる人の多くはどこかで窮屈さを感じているかもしれませんが、日常のふとした瞬間に自然を感じられるような街があればすごく良いですね。私が中国から日本へ来たとき、日本の美しい四季と荘厳なビルのバランスに感動しました。私の作品を見て、日本の美しい風景を守っていかなければならないと感じてもらえると嬉しいです。

 

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欧さん(右)にインタビューするインターン

 

以上、4名の受賞者からのメッセージでした。

第2弾もお楽しみに!

 

受賞作品と授賞式の詳細はこちら:http://www.unic.or.jp/news_press/info/30802/

 

国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本【連載No.6】

国連ガイドツアーでSDGsの啓発促進

 

みなさま、こんにちは。国連広報センターの千葉です。

 

これまで5回にわたって、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)を起点に、ニューヨークで日本の取り組みを発信していたイベントやSDGs達成のために汗をかく日本人の方々をご紹介してまいりました。

 

本連載はこれが最終回となります。

 

最後にお届けするのは、私が国連本部で参加したガイドツアーの体験報告と、ツアーのコーディネーターを務める日本人国連職員、中野舞子さんのインタビューです。

 

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国連ガイドツアーのホームページ
  https://visit.un.org/

 

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国連ガイドツアーのQRコード
アプリで開けます
https://visit.un.org/content/discover

 

ガイドツアーの朝

 

私が国連ガイドツアーに参加したのは帰国日の朝でした。

 

当日朝早く、ホテルでチェックアウトの手続きを済ませ、時間的なゆとりをもって国連本部に到着。

 

国連総会ビル入り口付近に置かれ、出張中、毎日、その前を歩いて通り過ぎていた屋外展示のブロンズ彫刻があらためて目にとまります。銃身の先を結んで発砲できないようにした拳銃のモニュメントです。

 

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ルクセンブルクからの寄贈モニュメント
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

このアート作品の前を通り過ぎて、国連総会ビルに入ると、国連職員としてグラウンド・パスを与えられていた私は会議棟(1階)まで足を延ばし、大きな窓越しにイースト・リバーと対岸のロングアイランド・シティーを臨むイースト・ラウンジで、ツアーの開始時刻を待つことにしました。

 

そこは、国連加盟国の政府代表団のための休憩の場であり、舞台裏の交渉の場です。早朝の時間帯だったので、まだ人影はありませんでした。

 

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朝日が川面に映えるイースト・リバー
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

眼前を静かに流れるイースト・リバーを眺めていると、本連載の第2回でご紹介した日本政府代表部の岸守さんをはじめ、ニューヨークでお世話になった方々、事前の準備でいろいろと助けていただいた方々、そして職場の上司や同僚たちの顔が思い浮かびました。

 

そうした多くの人の支えがなければ、私のニューヨーク出張と取材活動は不可能でした。あらためて、そのことを思い、お世話になったすべての人への感謝の気持ちを心に深く刻みつけたあと、ツアー開始時刻に間に合うよう国連総会ビル内のツアー集合場所へと移動しました。

 

ガイドツアー開始

 

ツアー集合場所に指定されたインフォメーション・デスクの付近には、私が予約したツアーより、ひとつ前のツアーのグループが集合し、まさに出発しようとしているところでした。

 

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インフォメーション・デスク
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

私が予約したのは日本語で行われるガイドツアーです。

 

親子で一緒にご参加の方を含めて、全員で10人ほどの方々が集まっていました。

 

午前9:45分。

 

私たちのツアーを担当するガイドの荒木絵美さんが迎えに来てくれました。

 

いよいよ出発です。

 

会議棟に移動し、エスカレーターで2階にあがります。

 

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会議棟を2階へと上がる
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

右手には、日本国際連合協会が国連に寄贈した平和の鐘が見えます。

 

 

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国際平和デー(9月21日)に平和の鐘をつく国連事務総長
©UN Photo/Eskinder Debebe


荒木さんは最初に国連の主要機関やその活動の概要などを紹介したあと、私たちを誘導して、施設内のいろいろなところを案内してくれました。

 

 

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国連の活動概要を紹介する荒木さん
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

そのいくつかを簡単にご紹介します。

 

ツアーの見所のひとつは、会議棟2階にある安保理議場でした。

 

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安保理議場で、ガイドの荒木さんの説明を聞く
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

安保理の場合、会合が開催されていると、見学をすることができないそうですが、幸運なことに、この日、安保理会合の予定はなく、議場の見学が許されました。私たちは傍聴席に座り、馬蹄形のテーブルとノルウェー人画家ペール・クローグ作の大きな壁画を前に、荒木さんの説明に耳を傾けました。

 

会議棟の同じ階で、経済社会理事会や信託統治理事会の議場も見学しました。それぞれの議場では、経済社会理事会の閣僚会合、政策対話が開催されていたことから、議場傍聴席のうしろを足早に通り抜ける見学となりましたが、国連会議の臨場感を味わえました。

 

経済社会理事会議場は前々日にHLPFのスペシャル・イベントとして、本連載の第1回第3回でご紹介したビジネス・フォーラムが開かれていたところです。経団連の二宮さんが日本企業のSDGsへの取り組みを発表していらっしゃったことを思い出しました。

 

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ちなみに、この日の午後、経済社会理事会の閣僚会合では、HLPFで前日に採択された閣僚宣言(第1回ブログ)が投票に付されました。投票の結果、同宣言は賛成46、反対1(米国)、棄権0で採択されました。HLPFの3日間の閣僚会合(16日―18日)は経済社会理事会のハイレベル会合(16日―19日)の一部として開催されていることから、HLPFで採択された閣僚宣言はこうして経済社会理事会に送付され、同理事会の閣僚宣言としても採択されるのです。

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総会ビルで、総会議場も見学しました。

 

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国連総会議場
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

総会議場は、まさに持続可能な開発目標(SDGs)が国連加盟国の全会一致で採択されたところです。前回のブログでご紹介した国連広報局の須賀さんは、この議場でSDGs採択の場面を見届け、プレスオフィサーとして国連発出の記事を書かれたのです。

 

ツアーでは、会議場ばかりでなく、その他にも、施設内の歴史的なモニュメントや寄贈品などもたくさん見せてもらいました。

 

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ノーベル平和賞とメダル
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba


その中には、2001年に故・アナン事務総長と国連に授与されたノーベル平和賞とメダルもありました。展示されているものが実物であることを荒木さんから案内されると、思わず、みんなで目を凝らして展示ケースの中を覗き込みました。

 

また、長崎に投下された原爆で被爆した聖アグネスの立像が原爆のきのこ雲の写真を背に設置されていました。立像の背中は爆風の熱で痛々しく焼けただれていました。

 

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聖アグネスの立像
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

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聖アグネス像の立像(背中)
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba


今年8月、グテーレス国連事務総長が長崎での平和祈念式典に出席するため訪日しましたが、滞在中、浦上天主堂にも足を運び、国連本部に寄贈されたことを光栄に思う、と事務総長自らツイッターに綴ったのがこの立像のことでした。

 

ツアーには、持続可能な開発目標(SDGs)に関する案内もしっかり組み込まれていました。

 

広い廊下を歩いていると、途中で、大型液晶ディスプレイが設置されていて、ガイドがSDGsのロゴやビデオを映し出して説明できるようにしてあります。

 

荒木さんはそこで立ち止まり、ディスプレイを使いながら、2030年の未来の地球と命を紡ぐすべての人々へと思いを馳せ、SDGsを自分事として考える大切さを訴えていました。

 

私たちのグループで誰よりも熱心に荒木さんの説明に耳を傾けていたのは、東京からご両親と一緒にガイドツアーに参加した小学生の松江恵都(ケイト)さんと弟の万里(バンリ)くんでした。

 

いつの間にか自然に二人の周りにツアー参加者の皆さんの輪ができました。

 

参加者のみなさんが二人にやさしい眼差しを向けていました。

 

私は思わず、カメラのシャッターボタンを押して、その時間を写真におさめました。

 

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SDGsの説明を聞く
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

ツアーはあたたかなぬくもりを感じさせながら、私たちに地球の現状と未来への視点を与えてくれました。

 

ツアーが終わり、私は荒木さんに感謝を申し上げたあと、このツアーを組んでくださった中野さんとのお約束の場所へと向かいました。

 

 ツアー中にケイトさんとバンリ君のご家族と連絡先を交換していた私は、帰国後、お父様にツアー中の写真をお送りしたところ、お父様は、近況を知らせてくださいました。とても勇気づけられる内容でしたので、ご紹介します。

 

「・・ツアー参加のあと、世界の中で起きている様々な問題とこれからの未来、SDGsの意義と重要性について子供と話し合いをすることができました。自分たちが暮らす地域社会だけに限らず、世界の国々、地球に視野を広げて、自分が何をできるのかを考える良い機会になりました。・・あれからケイトは、Goal 5(ジェンダー平等を実現しよう)に興味を持ちました。女性の持つ可能性と影響力をもっと世の中に広げていきたい、と言っています。バンリは Goal2(飢餓をゼロに)に興味を持ちました。僕は食べ物を粗末にしない、残さないようにする、と言っています・・」

 

 

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 コーディネーター 中野さんのインタビュー

 

中野さんのお話を伺ったのは総会ビルの地下1階のオープンな喫茶スペースでした。そこには、国連グッズや国連切手の販売店やブックショップが並んでおり、奥のほうには、ツアーガイドの皆さんの控室があります。

 

中野さんは明るく気さくな雰囲気の方でした。チャレンジ精神に富み、人一倍努力家であることもそのお話から伝わってきました。

 

 

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中野さん、総会ビル地下一階で
©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

コーディネーターの中野さんのお仕事はツアーの予約受付から、日程調整、担当ガイドの割り当て、そして苦情処理まで、ツアー全体のコーディネートをすることです。

 

現在、ガイドツアーはさまざまな国籍のガイド約20人によって、6つの国連公用語と、日本語、韓国語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語などで行われているそうですが、中野さんは他の3人のコーディネーターとともに、日々、日本語だけでなく、そうしたすべての言語のガイドツアーの調整管理を担っていらっしゃるのです。

 

ちなみに、日本語ガイドツアーは現在、この日私たちのツアーを担当してくださった荒木さんと、もうひとり、松浦さんという方の二人体制で行っているそうです。

 

中野さんは2016年12月に国連に入り、以降、2017年10月までの約1年間、ツアーガイドを務めたあと、コーディネーターになられましたが、今でも、ガイドの人数が足りない場面などでは、ご自身もガイドの制服に袖を通すことがあるということです。

 

中野さんは、今のガイドの制服が新しいデザインで、エリ・タハリという有名なデザイナーがつくったことを教えてくださいました。昨年9月の国連総会で世界各国の指導者による一般討論が行われるのを前に、その制服を披露するファッションショーが開かれ、大々的にメディアに取り上げられて話題を呼んだそうです。そのときは、中野さんもまだガイドだったことから、他のガイドたちと一緒に新しいデザインの制服を着て、このファッションショーに参加されたということでした。

 

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2017年9月のファッションショー開催後に
日本、中国、韓国のガイドたちで記念撮影(右端が中野さん)
©Maiko Nakano


私は、ガイドツアーがSDGsを組み込んでいることについて、ガイドの皆さんがどう思っているのかを聞いてみました。中野さんはまず、ツアーが国連の三つの柱(平和と安全、開発、人権)でバランスよく構成されていることを述べたうえで、SDGsはその三つをつなぐ説明を容易にしていると強調していました。そして、ガイドとしては、何よりも、世界には今、国連ですべての加盟国が合意して決めた共通の目標があるんだということを説明できることが嬉しい、SDGsがあるのとないのとではツアーのもつ説得力がまったく違うと思う、とおっしゃっておられました。実際、ガイドの皆さんはツアーのなかでSDGsの説明にもっとも力が入るそうです。

 

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ツアーガイドの控室で
©Maiko Nakano

 

いろいろな国の出身のツアーガイドたちがともに協力し、さまざまな国から国連を訪れるひとたちにマルティラテラリズムを体現する国連とSDGsを説明して、インパクトを与える。そのことをガイドの皆さんは大きな喜びとし、誇らしく思っていらっしゃるのです。

 

「ニューヨークを訪れた日本人の方々にはぜひ、国連本部のツアーに参加していただきたいと思います。日本人のガイドの数は限られていますが、ご希望があれば、可能な限り、日本語ツアーを設定します」と中野さんはおっしゃっていました。私は、ニューヨーク国連本部のガイドツアーのコーディネーターを中野さんのような日本人国連職員が務めていることは日本人にとって、とてもラッキーなことだと思いました。

 

最後に、私は、普段とても明るい中野さんがくじけそうになったときに、どのように自分を奮いたたせているのかをお聞きしてみました。

 

中野さんは自分が力を得てきたという一編の詩を教えてくださいました。

 

中野さんが小学校六年生のときに学校で習ってから、自宅の勉強部屋の壁に貼って、心が弱くなったり、折れそうになったりしたときに、口ずさんでは自分を励ましてこられたそうです。

 

それは、武者小路実篤の詩でした。

 

「やればできる」 武者小路実篤

 

 できる できる

真剣になれば できる

 

できないと思えば できない

できると思えば できる

 

どこまでも 積極的に

できることは できると信じ

永遠に自分は 進歩したい

 

できる できる

かならず できる

 

 中野さんは今でも、くじけそうになったときには、この詩を口ずさみ、元気を取り戻し、目標に向かって、また明るく歩みはじめるのだそうです。 

 

中野さんが教えてくださった一編の詩は私にとって、東京に持ち帰る最高のお土産になりました。 

 

中野さんにふかくお礼を申し上げて、インタビューを終えました。

 

 これでニューヨーク滞在中に私が計画したすべての取材が終わりました。

 

 国連総会ビルを出て歩いていると、弾を撃たない拳銃のブロンズ彫刻がこの日の朝に見た姿とは逆向きの姿で目にとまりました。 

 

モニュメントは素材のブロンズの色を背景の木々の葉の鮮やかな深緑にやさしく溶け込ませ、後方左の金色に輝く地球のオブジェとともに、まるで新しいメッセージを発しているように見えました。 

 

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©UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba

 

-武器をつくり使ってきた人間は、武器を捨て、平和な社会をつくることもできるはず。 

 

-自然を傷つけてきた人間は、自然を治癒して、持続可能な社会を築くこともできるはず。

 

 風景と一体化して、そう語っているように見えました。

 

できる できる

かならず できる 

 

後景の木々の葉をやさしく揺らす風のなかに、ガイドツアーのコーディネーターを務める中野さんの口ずさむ詩の一節もまた聞こえたような気がしました。 

 

(了)

 

 

 

 (連載ブログ 国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本)

第5回 ~ SDGsを舞台裏で支える日本人国連職員たち 
第4回 ~ HLPFでの日本の市民社会の情報発信、そしてインタビュー
第3回 ~ HLPFでの日本企業、経団連の情報発信について
第2回 ~ HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー
第1回 ~ ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム   

SDGsの広まりを京都で実感!

国連広報センター所長の根本です。SDGsの実施は、思いや関心を持った個人や組織が傍観者ではなく、プレーヤーとして参画できるという点で画期的だとかねがね感じています。国連で採択された文書にありがちな「神棚に祭る」ものではなく、「自分事化して使いこなす」ことが求められる、みんなのための世界目標だからこそ、理性を越えた、感情に訴えるワクワク感や、ワザワザではなくついつい実践してしまう楽しさ・手軽さなどが大切だと思います。 

  

例えば、昨年の沖縄の「島ぜんぶでおーきな祭」を皮切りに大規模イベントの会場で吉本興業が実施している「そうだ!どんどんがんばろう!」スタンプラリーがあります。頭文字を並べるとSDGになるこのスタンプラリーは、人気芸人の顔をあしらったゴールごとのスタンプを台紙に17個全部集めると、景品がもらえるというもので、昨年4月の開始以来、これまでに4万人の子どもや家族連れが楽しみながらSDGsに触れる機会になりました。

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京都国際映画祭開催期間中、岡崎公園で実施されたスタンプラリー UNIC Tokyo/Takashi Okano

同社が企画・運営を担う「第5回京都国際映画祭~映画もアートもその他もぜんぶ」(10月11日―14日)でもこのスタンプラリーは大人気で、好天に恵まれたおかげで5000人が参加。

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京都西本願寺でのオープニングセレモニーを前に参加者とともに記念撮影 UNIC Tokyo/Takashi Okano

京都国際映画祭は「映画もアートもその他もぜんぶ」と謳うだけあって、映画にとどまらずコンテンツが盛りだくさんのお祭りで、その多くにSDGsが盛り込まれていました。

映画祭2日目の祇園花月は「SDGs花月」と銘打って、木村祐一監督のドキュメンタリー作品「ワレワレハワラワレタイ~ウケたら、うれしい。それだけや。」上映と上映後のオール阪神・巨人をまじえたスペシャルトーク、観客にSDGsを2つ選んでもらって即興でネタに入れてバトルする「SDGs-1グランプリ」(トレンディエンジェルかまいたち横澤夏子、チョコレートプラネット、ノンスタイル)、そして「SDGs新喜劇」(川畑泰史、すっちー、酒井藍の3座長が勢ぞろい)と、それは豪華な内容でした。

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映画「ワレワレハワラワレタイ ウケたら、うれしい。それだけや。オール阪神・巨人宮川大助・花子 編」上映後のスペシャトーク UNIC Tokyo/Takashi Okano

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SDGs‐1グランプリ:ゲストとして登壇する国連広報センター 根本かおる所長 UNIC Tokyo/Takashi Okano

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SDGs吉本新喜劇のみなさんと共に壇上でコメントを述べる根本かおる所長 UNIC Tokyo/Takashi Okano

即興でのネタ作りということでお笑い芸人の皆さんが普段は見せない真剣な表情を垣間見ることができましたし、昨年のSDGs-1グランプリから一歩踏み込んだ内容的な深まりがあり、手ごたえを感じました。2年連続で優勝に輝いたノンスタイルには、国連グッズを賞品として差し上げ、国連広報センターのツイートで気に入ったものがあったらリツイートしてほしいと発信への協力をお願いしました。

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SDGs1グランプリで2連覇を達成したNON STYLE UNIC Tokyo/Takashi Okano

また、今年の「SDGs花月」は何と言っても、お客さんサービスが手厚かったですね。SDGsビンゴの要素を取り入れ、早くビンゴを達成した人は新喜劇出演者と記念撮影の機会が!観客の皆さんにとっても忘れられない思い出になったことでしょう。

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SDGsビンゴで盛り上がる会場 UNIC Tokyo/Takashi Okano

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ビンゴ達成の観客、新喜劇出演者の方々と共に記念撮影 UNIC Tokyo/Takashi Okano

さらに今年は、笑いや新喜劇のネタのみならず、脱出ゲームやロボット「ペッパー」の子ども向けプログラミングワークショップのシナリオにもSDGsを盛り込み、身近なものとして大人も子どもも参加者を巻き込む可能性を示してくれました。

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10月13日(土)『京都国際映画祭2018』とのコラボレーション企画として「異言語脱出ゲーム~淳風大学からの卒業 SDGsバージョン~」が元・淳風小学校にて開催。UNIC Tokyo/Takashi Okano

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異言語脱出ゲームに参加するジェフ・ブレーズ課長 UNIC Tokyo/Takashi Okano

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ゲームの参加者とともに記念撮影 UNIC Tokyo/Takashi Okano

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10月14日(日)、イオンモールKYOTO Kotoホールにて、『SoftBank Robotics presents Pepper プログラミング特別教室 for SDGs』が開催。 UNIC Tokyo/Takashi Okano

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プログラミングの成果を発表する参加者 UNIC Tokyo/Takashi Okano

ニューヨークの国連本部から広報局でエンターテインメント業界との連携を担当するジェフ・ブレーズ課長が参加。「ここまでSDGsを包括的に発信している映画祭は例がない」と感嘆の声を上げていました。

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ワークショップ参加者の児童に感想を聞くジェフ・ブレーズ課長 UNIC Tokyo/Takashi Okano

映画祭のセレモニーの挨拶の中で、門川大作京都市長が自然な流れでSDGsについて触れていたのも、昨年との違いとして印象に残りました。SDGsをより多くの人々に自分事化してもらえるといいなあと感じています。 

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岡崎公園門川大作京都市長とともに UNIC Tokyo/Takashi Okano




国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本【連載No.5】

      SDGsを舞台裏で支える日本人国連職員たち 

 

みなさま、こんにちは。国連広報センターの千葉です。

 

今年7月にニューヨークに出張し取材したハイレベル政治フォーラム(HLPF)を起点にして、ブログを綴らせていただいております。

 

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©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

今回は、私がニューヨークでインタビューした、SDGs達成の取り組みを舞台裏で支えていらっしゃる日本人国連職員の方々をご紹介したいと思います。

 

ご紹介するのは3人です。

 

1人目は、JPOとしてユニセフの水と衛生のセクションに勤務する松橋明裕子さん、2人目は、国連広報局のベテラン職員である須賀正義さん、そして3人目が、日本の総務省からの出向で国連経済社会局のSDGsモニタリング・ユニットで働く小川友彬さんです。

 

3人の方々の出身職業はそれぞれ、看護師、新聞記者、統計専門家で、所属機関、その活動もまったく異なります。でも、お話を伺ってみると、人道支援、統計、広報という仕事はSDGsのもとにともにつながり、その達成に向かう世界の国々の歩みを舞台裏で、それぞれの側面から支えていることをつよく感じました。

 

ユニセフで支える 松橋明裕子さん

 

まずは、松橋さんから。

 

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©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba


出張前に外務省国際機関人事センターにご相談したところ、「ちょうど今年のHLPFでレビューの対象となったSDGsのゴール6「安全な水とトイレをみんなに」の分野でJPO*として貢献する方がいらっしゃるということで、ユニセフで働く松橋さんをご紹介いただきました。

 

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*JPO(Junior Professional Officer)派遣制度とは、将来的に国際機関で正規職員として勤務することを志望する若手邦人を対象に外務省が実施している制度です。日本政府が派遣にかかる経費を負担して一定期間(原則2年間)各国際機関に職員として派遣して知識・経験を積む機会を提供し,派遣期間終了後に正規職員としての採用につなげるものです ⇒ シリーズ「わたしのJPO時代」をあわせてご覧ください。

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インタビューの依頼を快くお引き受けいただいた松橋さんが勤務するユニセフ本部の建物、ユニセフハウスは、国連本部ビルから急ぎ足だったら10分ほどのところです。

 

一部改修中のユニセフハウスを訪れると、建物は広い通りに面していましたが、入り口は通りから少し奥まったところにありました。受付のスタッフに松橋さんと面会の約束があることを伝えてしばらくお待ちしていると、松橋さんが迎えに来てくださいました。

 

松橋さんは品がある芯の強さとやさしさをあわせもつ雰囲気の魅力的な方でした。

 

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©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

水と衛生(WASH)のセクションのフロアーにご案内いただき、お話を伺いました。

 

松橋さんは、ニューヨークで、WASHセクションのなかで人道チームに所属し、WASHセクターの人道支援を改善することと人道危機が起きた際のショックを和らげるためのWASHの開発分野へのアドボカシーを担当していらっしゃることを説明してくださいました。

 

松橋さんは、2016年4月から2018年4月まではエチオピアの事務所で働いていらっしゃったそうです。

 

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©UNICEF Ethiopia
2016
Mersha

 エチオピアは干ばつが何年も続いたり、民族間紛争で国内避難民が多数発生したり、コレラ感染が長期に蔓延したりして支援は困難なものである一方で、支援予算の規模は大きく、その使途については政府の意思も強く、援助機関との調整が難しかったけれど、それだけに、やりがいのある仕事だったと松橋さんは振り返られました。

 

現在、人道支援は、教育、水と衛生、シェルター、栄養、保健などセクターごとに国連諸機やNGOsが協働し、重複をなくし効率を高める調整をはかるクラスター・アプローチというしくみで行われていることを松橋さんはご説明くださいました。各クラスターではそれぞれ主導機関が決まっていて、WASHの分野でいえば、ユニセフが主導機関を務めています。そのため、松橋さんはエチオピアでもこの分野での援助がもっとも効果を生むよう、現地国政府、国連機関やNGOなどの調整にあたっておられたのです。

 

ちなみに、このクラスター・アプローチという援助のありかたは2005年、スーダンダルフールにおける人道対応のレビューに基づく人道活動の主要な改革の一環として導入されたものです。それを決めたのはIASC=Inter-Agency Standing Committee。さらに遡っていえば、このIASCは1991年12月採択の国連総会決議46/182を受けて、1992年6月に設置され、それ以降、緊急援助調整官のリーダーシップのもと、機関間調整のための第一義的なメカニズムとなっています。松橋さんのお話には、このIASCという言葉が何回も出てきました。

 

こうして、松橋さんはユニセフに勤務しているものの、ユニセフがWASHの主導機関であることから、ユニセフのミッションのことばかりを考えるのではなくて、WASHのセクター全体としての成功を考えておられるのです。

             

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 「ユニセフとして、子どもと女性に水と衛生を届けることはもちろん大切ですが、さらに、政府やその他の援助諸機関、ドナーと一緒になって、WASHをどこまで成功させることができるのかを考えていなければなりません。ユニセフだけでは、WASHは成功しません。WASHのセクターとして活動を調整しながら、そして、みんなでSDGsという同じゴールに向かうなかで具体的な成果をおさめることが大切なのです。」

 

ユニセフで働く松橋さんが繰り返し、共通のゴールということをおっしゃっていることが印象的でした。

 

最後に、松橋さんはご自身が国連で働きたいと思ったきっかけは、中学生のときに見たあるテレビのドキュメンタリー番組であることを教えてくださいました。それはまさに援助物資が届くべきところに届いていないことについての特集だったそうですが、その番組を見た松橋さんは、途上国で窮状にある人たちへの思いとともに、「なぜ?」という素朴な疑問が心から離れなかったそうです。そして、いつか途上国で、支援を必要とする人に物資が確実に届くような援助をしたいというつよい思いをもったのだそうです。その後、松橋さんは看護大学に通い、いったん看護師になりますが、10代のときの思いを捨てられず、青年海外協力隊に参加してマダガスカルで援助活動に携わります。そして、公衆衛生を専門的に学ぶために海外の大学院に進学。そして、資格要件が揃って、JPOに応募されました。そして今、中学生のときに疑問をもった援助が届くべきところに届かないということがないようにするため働いていらっしゃるのです。松橋さんのお話を伺っていると、あらためて、若いころに純粋に抱く素朴な疑問や夢はそのひとの生き方を決定づけ、そのひとをつくる大切な原動力になるのだということをつよく思いました。

 

広報で支える 須賀正義さん

 

松橋さんのインタビューを終えユニセフハウスを出た私が次に向かったのは、国連事務局ビルでした。

 

同ビルの11階にある国連広報局(DPI)のニュース・メディア部ニュース・コンテンツ課で勤務する須賀正義さんをお訪ねしました。

 

須賀さんはとても温厚なお人柄で、柔和な笑顔が素敵な方でした。

 

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©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba


須賀さんは好奇心いっぱいの私にオフィスを案内してくださいました。

 

映像を撮影したり、編集したりするスペースも見せていただき、ニュース・コンテンツ課が、国連発出ニュースのコンテンツであるテキストをはじめ、オーディオ(ラジオ)、ビデオ、写真、インフォグラフィクスなどを多様なメディアで制作している部署であることがよくわかりました。

 

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国連広報局の撮影スタジオ
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

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視聴覚編集室
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

「ホットデスキング」(複数の職員が机やコンピューターを共有するシステム)が導入されたオフィスで須賀さんの同僚たちがコンテンツづくりに勤しんでいる様子も見せていただきました。

 

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ホットデスキングのオフィス
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

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ダブルスクリーンのPCで作業する須賀さん
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

11階のフロアーには職員共用のキッチンスペースもあって、そこで職員たちは食事をしたり、休憩したりすることができるようになっていました。その場所で、須賀さんにお話しを伺いました。

 

須賀さんは、ニュース・コンテンツ課に8か国語の言語チームがあり、ご自身が英語チームに所属して、UN News の英文記事を執筆していることをくわしく説明してくださいました。

 

毎日、複数の英文記事を書くという須賀さんですが、最近は、一日に一つはSDGsの関係の記事が含まれているとおっしゃっていました。

 

私がお訪ねした日も、午前中にSDGsに関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)のスペシャルイベントとしてビジネスフォーラムが開催されていたことから、少し前にその記事を一本書きあげたところだったそうです。

 

須賀さんにとって、最大の課題はいつでも、難しいことをできる限りわかりやすく伝える、ということです。難しいことについて書こうとしたら、その背景を知らないひとにもわかるように書かなければいけない、でも、それは口で言うほどやさしいことではなくて、たとえば、SDGsにしても、考えてみれば、持続可能な開発、sustainable developmentという言葉自体が難しい概念で、SDGsのニュースをわかりやすく伝えるつもりなら、面倒でもそこのところから考える必要がある、ということを須賀さんは話してくださいました。

 

須賀さんはまた、記事の与えるインパクトということについても考えておられました。現在、解析ツールなどを利用して、ウェブページやSNSのアクセス数値はわかるようになっているけれど、ほんとうに大切なことは、深いところで読者の行動変容をもたらすインパクトを記事が与えられたのかということ、アクセスの数値が高いことは重要であるものの、記事を書く人間としては、それだけで安易に満足することがあってはならないということです。

 

そして、須賀さんが執筆された、世界津波の日(11月5日)に関する記事のことに話が及びました。

 

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UN Newsのウェブページ
“FEATURE: Feudal-era Japanese village leader stands as beacon for tsunami education”

 

この記事は国連広報センターからのアプローチで始まり、さまざまなパートナーの協力を結集してつくられた記事という意味で良い評価を受けたとのこと。でも何よりも大切なのは、それが読者の行動変容を促したかどうかということ、こうした記事を読んだ方がそれをきっかけにして、津波に備えた訓練の大切さを考えて避難場所を確認したり、家族で話し合ったり、地域の訓練に参加したり、実施したりするなどしたときに初めて、その記事はインパクトがあったということがいえるのだと思う、と話してくださいました。須賀さんは、あくまでも謙虚に、真摯に、記事を書くということに向き合っていらっしゃいました。

 

そんな須賀さんにとって、SDGsは特別なものだそうです。

 

2015年9月25日にSDGsが国連総会で採択されたとき、須賀さんはまさにその場にいて、プレスオフィサーとして、SDGs採択に関する記事を書かれたのです。そして、須賀さんが定年(65歳)を迎えるのは2029年9月27日。つまり、須賀さんが国連を離れた翌年にSDGsは達成期限の年を迎えます。国連職員として、SDGsの最後の年を見届けることはできないけれど、その前年までSDGsとともに過ごすということ、自分にとってSDGsは、運命共同体のような存在なのです、と須賀さんは感慨深そうにおっしゃっていました。

 

須賀さんのご経験についてもっと知りたい方は、須賀さんが以前、国連広報センターに寄稿された記事もあわせてお読みください。⇒「国連広報局のプレスオフィサー須賀 正義 さん」(注:取材時のお役職名は、マルティメディア・プロデューサーです)

 

統計で支える 小川友彬さん

 

最後にご紹介するのは、小川さんです。

 

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国連統計部のオフィスで
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba

 

小川さんは、総務省から出向という形で国連に派遣された方です。実は、小川さんは現時点で、すでに一年間の任期(昨年9月ー今年8月)を終え、東京に帰任されていますが、7月にはまだ国連で統計部のSDGsモニタリングセクションで、持続可能な開発目標(SDGs)の232の指標(indicators)*の利用に関して、担当国際機関との調整を行ったり、各国政府向けのガイダンスを提供したりしておられました。出向中の小川さんにくわしいお話をお伺いしたく、オフィスをお訪ねしました。

 

(注:小川さんがニューヨークを離れた後、総務省から別の方が着任しておられます)

 

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* 2015年に国連総会で採択された「私たちの世界を変容する:持続可能な世界のための2030アジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development, A/RES/70/1)」と題する決議が打ち出したSDGsの17の目標と169のターゲットには、その進捗状況をはかるため、200を超える指標がつくられています。それらは上記決議とは別に、SDG指標に関する機関間専門家グループ(IAEG-SDGs = Inter-Agency and Expert Group on Sustainable Development Goal Indicators)によって「グローバル・インディケーター・フレームワーク」として策定され、統計委員会を通して、国連総会で承認されました(A/RES/71/313, Annex、2017年7月)。169のターゲットの指標をすべて数えると244件ですが、複数のターゲットにまたがり重複するものを除くと、その数は232件となります。

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お忙しい小川さんでしたが、その日時だったら時間を空けていただけるということでオフィスをお訪ねしたのは、松橋さんと須賀さんをインタビューした翌日の夜です。この日はHLPF最終日で、私は夕方から環境省のサイドイベントに出席していましたが、それを早めに抜け出して、小川さんのオフィスが入るOne UN Plazaへと向かいました。国連本部からファースト・アベニューを挟んで向かい側の建物です。ニューヨークの夜はかなり遅くなっても日が落ちずに明るいとは聞いていましたが、もう午後7時半を回ろうかという時間帯にもかかわらず、街はほんとうに昼間のようでした。小川さんは就業時間外にもかかわらず私を快くお迎えくださいました。仕事場を案内していただいたり、写真など撮らせていただいたりしたあと、オフィスに近いこじんまりしたレストランに場所を移し、食事をしながら、ゆっくりお話を伺いしました。

 

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右の建物がOne UN Plaza、左はChurch Center
©UNIC Tokyo Kiyoshi Chiba


数学をこよなく愛し東大大学院で解析学微分方程式を研究したという小川さんは穏やかでさわやかな正義感を感じさせる雰囲気の方でした。

 

冒頭にご紹介したとおり、小川さんのお仕事はSDGsの指標に関する担当国際機関との調整や各国政府向けのガイダンス提供です。

 

SDGs自体、法的拘束力を有するものではないように、その指標もまたmandatory(義務)のものではなく、それぞれの国の自発性に任されていますが、各国があまりにも逸脱した指標を使っていると、SDGsのグローバルな進捗状況をはかることが難しくなり、その達成も危うくなることから、国連としては各国に前述のフレームワークの利用を奨励し、国連統計部がその調整やガイダンスの仕事を担っているのです。途上国の統計に関する能力開発支援はそれ自体がSDGsの目標17になります。小川さんは自らのお仕事について、ていねいに説明してくださいました。

                                    

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各国におけるSDGsの進捗状況はこうして指標ごとに集められ、公開されていますが、そこにはあまりにもショッキングな数字を見つけることになるかもしれません。たとえば、SDGsの一丁目一番地ともいえる指標1.1.1の「性別、年齢、雇用形態、地理的な場所などでみた、国際貧困ライン(1.9ドル)未満で暮らす人の割合」について、各国の状況をみてみると、その割合が高い国がたくさんありますが、そのなかでも、マダガスカルという国の割合は非常に高く、70%です。国民の7割近い人々が1日1.9ドル未満で暮らしているという状況は日本人にとって想像するのはなかなか難しいことですが、統計はその現実を私たちに容赦なく突き付けます。小川さんは指標があるからこそ、そうした統計が収集される、と指標の意義を強調しておられました。

 

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持続可能な開発目標(SDGs)指標のウェブページ
https://unstats.un.org/sdgs/



また、小川さんは、SDGsのターゲットに含まれる包摂的(inclusive)、強靭な(resilient)、持続可能性(sustainability)などの言葉が、指標にどのように落とし込まれているのかをみることの大切さを繰り返し述べておられました。

 

日本で一般の方々が指標まで見ることはないかもしれないけれど、たとえばゴール3(すべての人に健康と福祉を)の下の指標には、重大な感染症ばかりでなく、精神疾患や自殺など、先進国の課題も指標に落とし込まれていることはもっと認知されるべきだと思います、と小川さんはおっしゃっておられました。

 

また一方、指標と一口に言っても、SDGsの指標にはアウトカムとアウトプットという性格が違う指標が混在しており、たとえば、環境関係でアウトカムといえば、二酸化炭素の濃度となるところ、SDGsのゴール13(気候変動に具体的な対策を)のすべての指標は温暖化対策を講じている国の数など、アウトプットと呼ぶべきものであり、そうした国の数が増えることはアウトカムを生むための重要な条件ではあるものの、それが即、地球環境が良くなっていることを示す数値ではないということなど、それぞれの具体的な指標について冷徹に認識してこそ、SDGsの達成に向けた努力を考えることができるはずです、と指摘しておられました。

 

小川さんのお話しはとても興味深く、あっという間にときが過ぎました。普段あまりスポットライトを浴びることがない統計、SDGs指標の大切さがよくわかりました。SDGsはさまざまな条約や行動計画などが打ち出している個別の目標やターゲットを17の目標と169のターゲットにまとめて「見える化」しましたが、それらの達成に向けた努力の成果と現状を「見える化」するのは指標とそれをもとに収集されるデータなのです。小川さんのお話しを伺って、そのことをふかく認識しました。時計をみると、その針は、夜10時をとうに回っていました。平日の夜、こんなに遅くまで、お時間を割いていただいた小川さんに心からお礼を申し上げました。

 

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私がインタビューした3人の日本人国連職員の皆さんは所属先も仕事の内容も異なる方々でしたが、最初に綴らせていただいたように、ユニセフでWASHの活動調整を行うJPO職員の松橋さんも、国連ニュースの記事を書いてSDGsの啓発促進を担う広報職員の須賀さんも、統計のプロとして指標に関する仕事に携わる政府出向職員の小川さんもそれぞれ、他国出身の職員と一緒になってSDGsの目標の達成に向かって働いていらっしゃいました。多国間主義を体現する国連という場で、人類共通のゴールのために働くことで得られる喜びを皆さんからつよく感じました。

 

私のニューヨークの公式出張期間は、小川さんをインタビューした日で終わりました。本来はこの日の便に乗って日本に戻らねばなりませんでしたが、私にはどうしても国連本部で参加したいプログラムがありました。訓練を受けた若いガイドたちが国連本部を案内してくれるツアーです。私はもう一日、ニューヨークでの滞在を私費で伸ばして、翌日の午前中にツアーを予約して参加することにしました。皆さんはご存知でしたでしょうか。日本語ガイドツアーがあること、日本人職員がガイドおよびコーディネーターを務め支えていることを。ツアーに参加してみると、そこでは、SDGsの啓発促進も行われていました。私はコーディネーターを務める日本人職員の方にお話しを伺ってみました・・・。

 

次回は本連載ブログの最終回、どうぞお楽しみに。

(連載ブログ 国連ハイレベル政治フォーラム×SDGs×日本)

第6回 ~ 国連ガイドツアーでSDGsの啓発促進
第4回 ~ HLPFでの日本の市民社会の情報発信、そしてインタビュー
第3回 ~ HLPFでの日本企業、経団連の情報発信について
第2回 ~ HLPFでの日本政府の情報発信取材と星野大使インタビュー
第1回 ~ ニューヨーク国連本部でみたハイレベル政治フォーラム

 

                            

笑いの力でSDGs普及啓発を -「世界に受けた」と手ごたえ

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国連広報センターの根本かおるです。8月22・23日にニューヨークの国連本部で開催された「第67回 国連広報局/NGO会議」の場で、吉本興業電通SDGs市民社会ネットワークの方々と一緒に、日本で様々な分野のアクターが連携してSDGsの発信に協働で取り組んでいる事例について発表する機会がありました。世界から集まった聴衆から多くの反響があり、自分たちが日本で行っていることが世界でも通用するということに手ごたえを感じた次第です。

あまたある国連の会議の中でも、この国連広報局/NGO会議は市民社会の代表や若者らが主役で、参加者のみならず、会議の企画・運営やスピーカーも非政府の人々が中心に担っています。

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UN Photo/Loey Felipe

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UN Photo/Loey Felipe

 それだけに会議の雰囲気も柔らかく、好感が持てました。朝のウォーミングアップとしてヒップホップのセッションもあったほどです! 


            

最初の発表は会議2日目の午前の全体会合。定員700名程度の部屋は満席、かつ会議の模様がストリーミング中継され、アーカイブにも残るという場でした。

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UN Photo/Mark Garten

   

登壇者左から国連広報局アウトリーチ部 ジェフリー・ブレース課長、吉本興業 羽根田みやび執行役員電通 國枝礼子ディレクター、国連広報センター 根本かおる所長 

電通は吉本とのパートナーシップに加えて、社としてこの春実施したSDGsに関する生活者意識調査をもとに、現況と今後の課題と可能性を浮き彫りにするとともに、職員や役員、社を越えてクライアントに対して行っているSDGs研修・ワークショップについて紹介しました。会場に大きなインパクトを残し、終了後も多くの方々が感想を伝えたり、コンタクト先の交換などのために私たちに駆け寄ってくれました。  

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発表後、中国メディアのインタビューに答える吉本興業 羽根田執行役員(UNIC Tokyo/Kaoru Nemoto)

そして2日目午後には、吉本興業電通SDGsに取り組むNGONPOの中間支援組織である「SDGs市民社会ネットワーク」の黒田かをり代表理事を加え、エンターテインメント企業・広告会社・市民社会によるワークショップを私の司会進行で行いました。

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「Japan, Asia and Beyond: How an Ad Agency, the Entertainment Industry and Civil Society Are Promoting SDGs to Communities and Businesses (日本、アジア、そしてその先へ:広告会社、エンターテインメント業界そして市民社会による、地域とビジネス界へのSDGsの広め方)」をテーマにワークショップを開催

全体会合では10分でしか紹介できなかった内容をさらに深く掘り下げ、吉本のSDGsに関する地方自治体との連携や「アジアに住みます芸人プロジェクト」を通じたアジア展開、カンヌ広告賞での「SDG Lions」部門新設など最近の広告業界の動向などに言及。

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画面右からSDGs市民社会ネットワーク 黒田かをり代表理事電通 國枝礼子ディレクター、電通 水越悠輔シニア・アカウント・マネージャー、吉本興業 経営戦略室 B・ジャヤティラカ氏、吉本興業 生沼教行チーフプロデューサー、国連広報センター 根本かおる所長(写真提供:吉本興業

さらに、「誰一人取り残さない」というSDGsの大原則を重視して活動を行うNGONPOが発信や人々の巻き込みの面で感じている課題をメディアや広告企業との連携でいかに克服しているか、また、広告ガイドラインの策定の過程で市民社会の立場から緊張感を持ってどのような注意喚起を行ってきたかなどについて、最近の事例を交えて発表を行いました。(会場での発表資料(プレゼンテーション)はこちら

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『フューチャーランナーズ ~17の未来~』を会場で紹介

このワークショップでは、日本国内でSDGs実施に奔走する市民社会や地域のリーダーたちを取り上げたフジテレビの番組シリーズ『フューチャーランナーズ~17の未来~』の英語版も上映され、大きな拍手が巻き起こり、国境を越えて共感を喚起することのできる映像の力をあらためて感じた次第です。スクリーンを観ながらうなずく参加者の姿が印象的でした。

吉本興業電通SDGs市民社会ネットワークの方々はいずれも、今回の会議での発表についてそれぞれに手ごたえを感じていらっしゃいました。吉本興業の羽根田さんは「私たちの抱える芸人たちの取り組みが世界にも受けた、評価していただけたことはとても嬉しい」、電通の國枝さんは「国連で民間企業がこのように発表できること自体が驚きだったし、自分たちの取り組みを世界と共有できた意義は大きい」、SDGs市民社会ネットワークの黒田さんは「日本の市民社会として国連の会議のサイドイベントを企画しても、今回のように国連本部の中の大きな会議室で多くの方々を対象に話せることはまずない。国連広報局/NGO会議の存在を日本の市民社会に広く伝えたい」と語っています。

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今回の会議に参加した日本チームと共に(UNIC Tokyo/Kaoru Nemoto)

実を言うとこの私にとっても、ニューヨークの国連本部の会議で発表するのは初めてのことで、パートナー団体の方々をお連れしていることもあって、緊張の伴うものでもありましたが、結果として大きな成果につながる会議出席となり、努力した甲斐を感じると同時にほっとしています。会議全体の内容も、国連憲章の前文の最初にある「われら人民」にふさわしく、市民一人ひとりの力に訴えかける、大変力強い内容でした。2019年の第68回国連広報局/NGO会議はアメリカ・ユタ州の州都ソルトレイクシティーでの開催になります。いつか日本開催が実現できれば、と小さな野望を抱きました。

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NYで活動するライブリズムパフォーマンスグループ「COBU」が閉会式で演奏を披露(UNIC Tokyo/Kaoru Nemoto)