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国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)をご存知ですか ~昨年12月14日、筆記試験が実施されました~

皆さま、こんにちは。

国連広報センターの千葉と申します。


昨年12月14日、国連事務局のヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)と呼ばれる職員採用試験(国連人事局主催)の筆記試験(経済分野と情報技術)が外務省国際機関人事センターの支援態勢のもと、国連大学本部ビルのウタントホールを会場にして行われました。

この筆記試験の総監督を務めさせていただきましたことから、せっかくなので、試験当日の様子を含めて、YPPのご案内をさしあげたいと思います。

今まさにYPPを受験しようかと考えていらっしゃる方々、あるいはまったく聞いたことがないけれど、国連事務局での仕事に興味があるという方々に多少なりとも参考にしていただければ幸いです。

(国連広報センターは、YPPに関する特設ウェブページをつくっています。こちらもご利用ください)


YPPとは)

 

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         (United Nations Careersのウェブページ)

 

ヤング・プロフェッショナル・プログラムの正式な英語名称は、Young Professionals Programme(YPP)です。

若く多彩な才能を国連事務局に取り入れるべく、国連職員をめざす32歳以下で高い能力をもつ方々をエントリーレベル(P1、P2)の正規職員として採用することを目的とします。

基本的に、国連では、新入社員を一斉に採用する日本企業とは異なり、欠員が生じたときにその都度、空席公募で職員を採用しますが、YPP試験は定期的に実施されます。

YPPの対象は、自国出身の職員が「地理的配分」で「望ましい職員数の範囲」の下限ラインを下回っている国(underrepresented)と皆無の国(unrepresented)に限定されます。(下記説明参照)

昨年は、日本を含めて、約60か国が対象でした。

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 「地理的配分」と「望ましい職員数の範囲」

国連事務局が高い成果をあげるためには、まずなによりも、誠実性と高い能力をもった人が採用されることが肝要ですが、国連の普遍的な性格から、地理的配分の原則に適切な配慮がなされることもまた必要です。

国連憲章第101条3項には次のように規定されています。


「職員の雇用及び勤務条件の決定に当って最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠実を確保しなければならないことである。職員をなるべく広い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥当な考慮を払わなければならない。」


この国連憲章の条項をもとにして、総会決議などで具体的な事柄が決められてきました。

現在、国連事務局職員の総数は専門職、一般職の職員すべてあわせて、約4万人ですが、そのうち通常予算で賄われる専門職以上の約三千人の職員が地理的配分原則の適用対象とされています。


この約三千人という総枠のなかで、各国は「望ましい職員数の範囲(desirable range)」を設定されており、その範囲の下限ラインを下回る国がYPP対象国となります。

「望ましい職員数の範囲」を設定するシステムは1947年に国連総会決議で採択され、決まりました。1962年まで、算出方法は通常予算に対する各国の分担金のみに依拠しましたが、同年の総会決議により、加盟国への均等割り当てと人口の2つのファクターも加えられました。その後、ファクター間の比重は変化しますが、1987年の総会決議で、全加盟国均等割当(40%)、人口(5%)、分担金(55%)と決められてから変動はありません。これら3要素で算出されるすべてのポスト数を加算したものが中間点。その中間点から上方に15%(上限)、下方に15%(下限)の幅で設定したものが「望ましい職員数の範囲」です。

2016年6月30日現在、自国出身の国連職員が皆無の国(unrepresented)は19か国。下限を下回る国(underrepresented)が42か国、望ましい範囲にある国(within range)が104か国、上限を上回る国(overrepresented)が28か国。

日本の場合、望ましい職員数が167人~226人の範囲で設定されていますが、2016年6月30日現在で78人と、下限ラインの167人を下回り、‘underrepresented’の状態となっています。

(出典:国連文書 A/71/ 323/Add.2、A/71/360、ST/AI/2012/Rev.1など)

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かつて、YPPは、National Competitive Recruitment Examination(NCRE)、いわゆる「競争試験」という名称で呼ばれていました。


NCREは、エントリーレベル(P1、P2)の国連職員の採用を公正な競争を通じておこなうことを目的とし、1970年代から実験的に導入され、その後、1980年に、その実施が義務化されました。

その後、国連が必要とする職員数を超えてもなお新規の合格者が登録され続け、せっかく合格してもずっと待機状態に置かれるだけといった試験と現場のニーズとの調整がうまくはかれない状況などが指摘されたことから、その改善をはかるべく、2011年、NCREはYPPと名称を変えて再出発したのです。

YPPは毎年、対象となった国々から多いときは5万人を記録するほど応募があって倍率が非常に高く、また試験対象となる職能分野も毎年、現場のニーズに応じて変わるといった理由から、その条件がかなり厳しいものとなっていますが、上述のような国の若い方々にとっては、国連の正規職員となるチャンスのひとつであることは間違いありません。

YPPが2011年にスタートしてから5年が過ぎましたが、これまでに4人の日本人が合格。すでに国連職員となった方もいます。

NCREの時代に遡れば、試験に合格し採用された日本人はさらに多くいます。現在、国連平和構築支援事務所次長として活躍する山下真理氏もその1人です。同氏は、2010年から2012年まで当センター所長を務めました。

 
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 (Junior Professional Officer (JPO)派遣制度のご紹介)

 日本人が空席公募やYPPで直接、正規の国連職員として採用されることに困難が指摘されるなかで、日本においては、外務省が日本人の国際機関職員増加を図るため、JPO派遣制度を実施しておられます。

YPP受験者を含め、多くの方々がこのJPO制度に挑んでいます。

JPO制度は、国際機関に勤務を希望する若手邦人を、日本国政府(外務省)が経費負担し、原則2年間国際機関に派遣し、勤務経験を積む機会を提供することにより正規職員への道を開くことを目的としたものです(外務省HPより)。

JPOの派遣先は国連事務局ばかりでなく、ユニセフやUN Womenなど、さまざまです。

JPOは、国連が実施する採用制度ではなく、外務省が実施主体であり、将来、正規職員になれることを保証するものでもありませんが、事務局や諸機関をすべてあわせると、派遣終了後、約7割を超える方々が国連の正規職員として採用され、活躍しておられます。現在では、JPO出身者が、国連諸機関全体の日本人職員に占める割合はとても高くなり、実際、この制度が日本人にとっては国連職員になるための一番の近道になっています。


ご関心のある方は外務省のウェブページからぜひ詳細をご入手ください。


国連広報センターもまた、「わたしのJPO時代」というウェブシリーズを展開するなど、その広報に一役かっているところです。

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YPPのプロセス)


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            (inspiraのログイン登録画面)

 

さて、YPPの応募には、まずは申請登録し、書類選考を受けることになりますが、登録は国連のinspiraという電子プラットフォームから、自分のプロフィール、必要事項など入力します。

応募要件としては、学士以上。職業経験があれば有利ですが、必須要件ではありません。

書類選考を通過すると、その旨の通知を受け、筆記試験に臨むことになります。

昨年12月の試験が、この筆記試験でした。

筆記試験は、所用時間が4時間半。General Paper(一般試験)とSpecialized Paper(専門試験)で構成されます。ほとんどが記述問題。全部で800点満点です。

General Paper(配点は150点)は受験者全員に課される共通問題です。最近は、およそ900ワードのテキストを3分の1の300ワードに要約する問題が出題されているようです。
 

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     (UN Careersのウェブに掲載されたGeneral Paperのサンプル)

 

Specialized Paper(配点は650点)はそれぞれの専門領域の問題。多肢選択問題と作文問題で構成されます。

多肢選択問題は全50問。作文問題は最大で13問まで。その中で、最も多いときで3問目までが長文解答を求められます。

この筆記試験を通過した方だけが面接試験へと進むことになります。

ちなみに 面接試験は200点。したがって、YPP試験全体で1000点満点です。

面接試験に無事合格すると、ロスター登録されることになります。登録の有効期間は2年間に限定されますが、その期間中に、P1あるいはP2レベルという職務階級で、2年間の期限付き雇用契約(fixed-term contract)をオファーされ、採用された場合、2年間の仕事ぶりが十分な評価に値するものであれば、より継続的で安定的な雇用契約(continuing contract)への切り替えが考慮されることになります。

なお、YPPの内容はその改善のため、今後段階的な進化を遂げていくことも予想されるので、留意が必要です。

実際に受験をお考えの方々におかれましては、こまめにYPPのホームページで最新情報をチェックしていただけるとよろしいかと思います。


(試験当日)

 

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           (国連大学本部ビルの正面)


さて、昨年12月の筆記試験当日の様子を少しご案内したいと思います。

この日の朝は雨模様。強い雨など降り出して会場に足を運ぶ受験者の皆さんが濡れなければいいなと心配しましたが、午後は晴れ間が見える天気になりました。

午前中、監督者として手ぬかりがないように、筆記試験実施に関するガイドラインやその他のすべての資料を再度読み込み、筆記試験当日の流れのなかで必要となる作業、そして地震を含めて突発的な事態が起こった場合の対応などを一つひとつていねいに確認します。

午後2時半。準備開始。

外務省の担当者の方や、応援に来られた職員の方々、受付や試験監督をお手伝いいただく方々が全員揃って、打ち合わせをしたり、受付やクロークの設営、ホワイトボードの運び入れなどしたりしているうちに時間が過ぎていきます。国連広報センターからもインターン二名が準備のお手伝いをしました。

試験会場となった国連大学の施設担当の方々や警備の方々もまた、受験者の皆さんに快適な環境で受験していただけるようにと、とても親切に協力してくださいます。

午後4時。受付開始。

受験者の皆さんが到着しはじめ、受付で、受験者本人の身分証明書(写真付き)と受験番号を確認していきます。


受験者の皆さんはそれぞれ受付を済ませ、持ち込みが許された鉛筆、消しゴム、ペンだけを持って会場に入ります。(スマホや携帯電話の持ち込みは不可です。)


午後5時。受付終了。


会場のドアが閉められます。

ここから先は、外務省の担当者の方と、国連大学からお手伝いに来ていただいた方と私の3人が会場内で、試験監督を務めることになります。

 

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       (国連大学本部ビル3階、ウタントホール入口)

 

また、これ以降、試験会場に入った受験者は原則として、トイレに行く以外、会場を出ることはできず、トイレに行くときは、不正を防ぐため、試験監督者の1人が必ず付き添うことになります。

ドアが閉められたことを確認して、総監督の私から受験者の皆さんに注意事項などを説明しはじめます。

受験者リストの一番目にお名前が書かれている方をお呼びして証人となってもらい、問題用紙が入っているグレーの封筒を開封します。

この封筒の中身はニューヨークから届いて開封されるまで、試験監督者を含めて誰も見ることは許されません。

午後5時20分。

注意事項に関する説明が一通り終わり、試験開始です。

受験者の皆さんはまず自分の氏名や受験番号を鉛筆で記入していきます。

氏名や受験番号などの記入と、専門試験の多肢選択問題の解答については、鉛筆(消しゴムも可)を使いますが、その他の問題については、黒色か青色のペンを使って文章を書かなければなりませんし、また修正液などを使うことは許されません。

使用言語はGeneral Paperで英語かフランス語。Specialized Paperでは6つの国連公用語のいずれかひとつを選べます。

時折、こういうことでうっかり間違える受験者がいるということで、注意が必要です。

受付で手渡されたメモ帳はどのように使っても自由で、皆さんは自分の考えを図式化したり、下書きしたりしています。

それにしても、普段コンピュータを使って書くことに慣れた方にとっては、ペンを使って文章を書かなければならないだけでなく、間違えても修正液などの使用が許されないというのはとても厳しく感じられるだろうと思いますが、受験者の皆さんはそうした練習を積んできているのか、すらすらとペンを走らせています。

 

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       (国連大学本部ビル3階、ウタントホール内)

 

最初は長いと思われた4時間半ですが、意外なほど、あっという間に過ぎていくのを感じます。

残り時間30分。

皆さんに終了時刻が迫っていることをお知らせします。

残り時間15分。

最後の声かけ。皆さんのペンを走らせるスピードがアップします。

そして午後10時20分。

試験終了。

早速、解答用紙を集めはじます。それだけでなく、問題用紙、メモ用紙もすべて回収します。これらすべてをニューヨークの国連本部に宛てて送り返さなければなりません。

受験者の解答用紙をすべて回収し終わり、今回の筆記試験の合否結果発表が今年5月上旬であることをお伝えして、受験者解散です。

もう夜も遅く、4時間半に及んだ試験問題との格闘から解放された受験者の皆さんは足早に会場を後にされています。

開封の証人となった方だけは残り、回収した用紙の数を確認し、それら用紙を封筒に密封したことを見届け、私と一緒に封筒に署名してもらいます。

この封筒、そして、その他に問題用紙などを入れこんで密封したパウチ袋を外務省の方にお渡しします。

この夜、パウチ袋は外務省内の安全な場所に厳重に保管され、翌日、ニューヨークに郵送されることになります。

午後11時。

会場の片づけなどが済み、ようやく長い1日が終わり、試験監督を務めた私たちも帰途につきました。

ーーー

そして、試験実施から約1か月。

今あらためて、試験当日を振り返り、なによりも、試験中、地震などで試験が中断したり、受験者の皆さんの集中力が途切れたりするような不測の事態が起こることもなく、無事に試験が実施されたことに安堵し、喜んでおります。

そしてまた、外務省国際機関人事センターのご尽力にも思いを馳せます。

外務省、そして試験会場を提供する国連大学の皆さんのご支援、ご協力があるからこそ、これまでも日本におけるYPP筆記試験の実施が円滑にされてきたのだと思います。

最後になりますが、東京の会場で受験された皆さんから、一人でも多くの方が面接試験、登録、採用へ進まれることをお祈りするとともに、今後、国連職員をめざす日本人の方々が増え、また実際に多くの優秀な方々が採用され、世界を舞台に活躍されることを心より願っています。


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