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平和を創る女性たち PKOに求められる女性要員の活躍 ~中満 泉 PKO局 アジア・中東部長~

国連平和維持要員の国際デー」特集第2弾は、国連平和維持活動(PKO)局の中満泉 アジア・中東部長です。PKOの現場において、ますます女性幹部の登用が求められている理由と、彼女たちが果たす具体的な役割についてお聞きしました。

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アフガニスタンのフィールドにて、
護衛のグルカ兵と筆者(写真中央)


PKO史上初の女性軍事司令官が誕生

「今日、私たちはまた一つガラスの天井を打ち砕くことになった」。2014年5月14日、潘国連事務総長ノルウェーのクリスティン・ルンド陸軍少将を国連キプロス平和維持軍(UNFICYP)の軍事部門司令官に任命すると発表した。ちなみにUNFICYPではトップの事務総長特別代表(SRSG)も女性である。現在5つのミッションで文民の女性のSRSG がいるが、今年8月に就任する予定のルンド少将がPKO史上初の女性軍事司令官ということになる。実は数年前から、女性の軍事司令官を任命するために、国連はかなり積極的に加盟国に働きかけてきた。文民、警察、軍事部門にかかわらず、PKOミッションの女性幹部増強に国連が努力を重ねるのはなぜなのだろうか。 答えは実に簡単である。PKOの現場で多くの女性職員、しかも幹部の存在がなければ効果的に活動できないという明らかなオペレーショナル・ニーズが存在するからだ。ではこのニーズとはいかなるものなのか? 二つの側面から読み解いてみたい。


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PKO史上初の女性軍事司令官となる
クリスティン・ルンド陸軍少将(左)と
潘基文国連事務総長   ©UN Photo / Mark Garten


■女性PKO要員だからこそ理解できる現地女性のニーズ

一つ目は、このエッセー・シリーズのタイトルにもあるように、戦争で傷ついた女性たちに寄り添い、彼女たちを保護し支援していくことは、今日のPKOミッションの大きな役割の一つであるということ。女性と女児を紛争時の性暴力の危険から保護し、特別なケアをするための女性保護官ポストを新たに創設するといった近年の努力からも見られるように、紛争下で特に犠牲となりやすい市民を保護することこそが安全保障理事会PKOミッションの派遣を決定する理由の一つとなった、といっても過言ではないだろう。コンゴ東部やダルフールといったPKOミッションに派遣される軍事要員は、女性を性暴力から守るための特別訓練さえ受けるようになった。女性PKO要員が数多くいればいるほど、保護の対象者である現地女性と直接のコミュニケーションも可能になるわけであり、活動がより円滑に行われることは容易に想像できると思う。

保護活動以外の分野でも、きめ細かく女性のニーズを掘り起こしてPKOミッションがこれに対応することが必要となってきている。たとえばDDR武装解除・動員解除・社会復帰)の分野。2000年代半ばまでは、PKOミッションのDDR分野での支援は基本的にほぼ全員が男性である「戦闘員」に限られていた。しかし、現実には紛争地の軍事組織には調理など様々な雑務を担う多くの女性要員がいる。武器を持って戦った「戦闘員」ではなかった彼女たちは、国連PKODDR 支援プログラムの対象外になってしまったというわけであり、国連側に女性のニーズを把握できる人間が幹部レベルを含め存在していることの重要性が理解できると思う。

 

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(左)コンゴ東部にて。コンゴ国軍の司令官と、紛争中に女性を保護することの重要性について話す筆者(写真右から2人目)

(右)南アフリカ軍のウェンディー・シャープ少尉と。このヘリコプターのパイロットである彼女の操縦により、コンゴ東部の視察は円滑に行われた


■弱者ではなく、社会変革を推進するパワーとなりうる女性たち

二つ目の側面として、女性を紛争の犠牲者や弱者として見る上記の視点ではなく、紛争後の平和構築の重要な担い手として見る視座を強調したい。女性グループがしばしば紛争後のコミュニティにおいて、平和的な社会変革を推し進め、紛争の再発を予防する役割を果たしうることはこれまでの経験でも明らかになっている。国連PKOミッションが女性のエンパワーメントや政治参加を促進する支援活動を行うのは、それが「政治的に正しいから」ということだけではなく、こういった現地の女性たちの持つパワーを平和維持と平和構築に最大限生かす必要があるからなのだ。

PKOミッションが派遣されている間に憲法改正作業が行われた国々では、憲法に男女平等条項を挿入することに成功しているし、東ティモールアフガニスタンシエラレオネコートジボワールリベリアなど多くの国で、PKO支援下での選挙で女性議員を数多く誕生させている。議会に女性のクオータ(議席割当)制度を成立させた国も少なくない。このように、PKOミッションは女性のエンパワーメントのための制度改革には一定の成功を収めていると言える。もちろん、女性グループや女性議員たちの能力を向上させ、彼女たちがその国で変革への実質的パワーとなっていくようにさらに行うべきことは数多くあるだろう。女性のニーズは女性たち自らが守っていける社会になるように紛争後の平和構築を支援していくのが、PKOミッションの役割なのである。

 

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ハイチにて。
武装した女性警官が、子どもに手を差し伸べながら見せる
一瞬の微笑みに、思わず空気が和んだ   ©UN Photo / Marco Dormino


■現地の女性に希望を与えるPKO女性幹部の活躍

なぜ国連ミッションに多くの女性職員や女性幹部が必要なのか、これでおわかりになるだろう。単に現地女性のニーズがわかりやすいようにという理由で、女性職員や幹部の存在が必要なのではない。長く困難な平和構築の途上にある国々でのPKOミッションとは、その国の人々の良きパートナーであり、またロールモデルでもある。国連ミッションの様々な分野、特に幹部レベルで女性が活躍することは、現地の女性に可能性と希望を与えることにもなるのだ。東ティモールでは、PKOミッションの努力によって女性警官の比率が20%になり、国防軍でも女性要員が8%いる。リベリアでも女性警官の比率が2006年の11%から2010年には15%になった。これは、同国に派遣されていたインドの警察部隊が全員女性で構成されていたことが、現地の女性たちに大きなインスピレーションを与えた結果だ。

 

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リベリアに派遣されたインド女性武装警察部隊

 

女性を単なる「弱者」として扱うのはもうやめよう。私たちは大きな力と、可能性を持っていることを確信してともに平和を創っていこうではないか。

 

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シリアのゴラン高原にて、防弾ジャケットを身に着けた
平和維持要員のメンバーと。
こうした現場にも女性要員が赴任している(写真左から4人目が筆者)

 

【参考リンク】

ジェンダーと平和維持活動 | 国連広報センター