国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

紛争体験者の言葉の重み

所長の根本です。

国連ではパワフルな女性のリーダーに事欠きません。11月18日から25日までの日程で日本を訪問した、紛争下の性的暴力担当のザイナブ・ハワ・バングーラ国連事務総長特別代表もその一人です。

f:id:UNIC_Tokyo:20131125091939j:plain UN Photo/Tobin Jones

西アフリカのシエラレオネ出身で、母国の閣僚だった時に日本を訪問した経験がある上、紛争下の性的暴力担当特別代表の事務所が、日本が非常任理事国だった頃に安全保障理事会で採択された決議に基づいて生まれた組織だけに、とてもリラックスした様子が印象的でした。                                                                                                                 f:id:UNIC_Tokyo:20131125091959j:plain UN Photo/Evan Schneider

 安倍首相や岸田外相をはじめ、大勢の政治リーダーや市民社会の代表たちと精力的に会談し、日本の協力と貢献を求めました。安倍首相は9月の国連総会での演説で「女性」を柱に置き、紛争下の女性に対する暴力の廃絶を含む3つの分野で今後3年間で30億ドル超のODAを実施すると表明しています。それだけに、安倍首相とバングーラ特別代表は,紛争下の性的暴力への対応の強化に向けて、一層連携を密にしていくことを確認しました。

f:id:UNIC_Tokyo:20131125115430j:plainPhoto/UNIC Tokyo

バングーラ特別代表には6つの優先課題があります。1)加害者を処罰する、2)医療面や自立を支える支援サービスを提供する、3)政治的コミットメントを引き出す、4)調整する、5)「戦争の手段」としての性的暴力について認知を広げる、そして6)当事国自身のオーナーシップを促す、の6つのプライオリティーです。

f:id:UNIC_Tokyo:20131125092010j:plain Photo/UNIC Tokyo

私は記者会見や市民社会の代表たちとの意見交換などでご一緒しましたが、出だしは大変穏やかな口調で始まりながらも、ソマリアやコンゴ民主共和国などの紛争地域で出会った女性や少女たちの苦しみに話が及ぶと、自然と声が熱を帯び、力が入るのが印象的でした。「レイプは、コストのかからない『戦争の手段』です。強姦は、決して『まだましな罪悪(lesser evil)ではありません。『彼らは私を殺さずして、命を奪いました。レイプされて、私は死んだも同然です』と語った女性の言葉が忘れられません」と訴えます。

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私がこだわったのは、国連諸機関の代表たちがバングーラ特別代表から戦略と課題について直接ブリーフィングを受ける機会を設けることで、訪日の最終日に実現しました。と言うのも、多くの国連機関が紛争下の性的暴力について優先課題として取り組んでいるからです。

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彼女のオフィスが、UNウィメン国連PKO局国連開発計画国連人権高等弁務官事務所国連人道問題調整事務所国連人口基金ユニセフ国連難民高等弁務官事務所などの国連の組織と綿密に調整しながら各国から政治的なコミットメントを引き出しているかを、具体例を挙げながら説明してくれました。

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印象に残ったのは、会も終わりに差し掛かった頃、バングーラ特別代表がふと漏らした言葉でした。「シエラレオネの紛争で、私は難民になった経験があります。遺体を運んで集団墓地に埋めるという体験もしました。紛争下で生きるということを私は知っています」その言葉には、1991年から2002年まで続いたシエラレオネの内戦で苦しんだ当事者だからこそ言える重みがあり、バングーラ特別代表の情熱の拠り所が少しわかったような気がしました。                                                                                                 

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駐日国連機関の関係者と国連広報センターのスタッフとインターンたちと一緒に記念撮影をしました。写真でみんなが手をクロスさせているのは、”Stop Rape in War(戦争でのレイプをやめさせよう)”のサインです!

関連映像:ザイナブ・バングーラ紛争下の性的暴力担当事務総長特別代表へのインタビュー