スポーツを切り口に持続可能な開発目標(SDGs)達成にむけた取り組みやアイディアを共有する国連と朝日新聞社とが主催したオンラインイベント「SDG ZONE at TOKYO」シリーズでは、その開幕セッションで「平和と開発のためのスポーツ」をテーマにした議論に登壇。国連の平和オペレーションや人道支援・開発など幅広い分野に従事した経験も基に、スポーツの力が紛争や危機に直面した社会で信頼を醸成したり若者がよりリーダーシップを発揮する手助けをしたりと、コネクターとしてのスポーツの役割について熱く語りました。
更に、ワクチンの供給が進んだとしても、それを現場まで輸送した上で、安全に管理し、接種状況を把握するためには、サプライチェーンの強化が不可欠です。マラウイでは、道路、電力、通信全てが不十分・不安定ですが、日本政府がコールドチェーン(低温物流)の強化を支援しており、UNDPでも保健省と協力して、2Gの携帯通信網でワクチンの温度・在庫管理ができる技術(Electric Health Information Net-work:E-HIN)の展開を進めています。また、UNDPでは、マラウイの有力6大学と協定を結び、日本政府の支援で、産学協力を通じたコロナ対策に不可欠な個人用防護具(PPEs)のマラウイ国内生産を支援しており、あわせて、イノベーション、起業家支援、観光セクターへの支援など、民間経済分野の支援も進めています。
アフリカでは2021年1月1日から、アフリカ大陸自由貿易地域(African Continental Free Trade Area)が発効し、人、モノ、資本の移動をアフリカ大陸で促進する世界最大の自由貿易地域の実現に向けた取り組みが始まりました。しかしながら、先進国を中心にワクチン接種が進み、経済や社会が急速に「ニューノーマル」に移行しようとする一方で、アフリカ・アジアの途上国や低開発国でコロナの感染拡大とともに死者、重症者が増加し、経済・社会活動に支障をきたす状況が続けば、コロナが次第に “Pandemic of Unvaccinated”(ワクチン接種を受けていない人たちのパンデミック)となり、世界で、あるいは各国内で様々な分断と格差が生まれるリスクが懸念されます。世界共通の取り組みであるSDGsの達成が更に遠のく状況にもなりかねません。
他方、コロナ禍はICT、デジタル技術、イノベーションなどによるマラウイ経済・社会の発展の新たな可能性を切り拓くきっかけともなりました。UNDPが支援してきた身分証明書(ナショナルID)プロジェクトでは、マラウイ政府がデジタル技術を活用して1000万人を超えるマラウイの成人全てに身分証明書を発行しました。この身分証明書は、すでに民間銀行の本人確認、パスポートをはじめとする出入国管理、年金や各種補助の不正受給防止、公務員の人員管理など、多様な分野で活用されており、その革新性が評価されて2021年5月に万国通信連合(ITU)のWorld Summit on Information Society(情報社会サミット、通称WSIS)で表彰されました。コロナ禍においては、ワクチン接種の管理とフォローアップに活用されています。さらに、マラウイ国会では、コロナの状況下でも安全に国会審議ができるよう、UNDPの支援でビデオ会議設備を導入し、それをきっかけに、インターネットを利用した「国会TV」を設立して、国会審議の生中継を始めました。
国連三角パートナーシッププログラムは国連が企画を担当し、支援国が資金協力や教官や装備品の提供をして、要員派遣国に対し訓練を実施して質の高いPeacekeeperを育成することを目的として2015年から始まりました。国連、支援国、要員派遣国の3者が協力するユニークな取り組みで、施設分野の訓練を皮切りに医療分野、情報通信分野に訓練分野を拡大しています。PKOのための行動(Action for Peacekeeping 略してA4P)に関する様々な会議や報告書でも国連三角パートナーシッププログラムについて言及されており、認知度が高くなっていることを実感しています。このプログラムには事業の当初から日本政府による資金協力がなされているほか、人的支援として自衛隊から施設や医療の教官が派遣されています。日本のほかにも、施設訓練にはスイスやブラジル、医療訓練にはドイツやベルギー、情報通信分野の訓練にはカナダやデンマーク、フランスなどが教官を派遣しています。また、ベトナム、モロッコ、ケニア、ウガンダなどが訓練施設の提供などを行っており、この国連三角パートナーシッププログラムの輪は大きくなってきています。
WHOは国連の健康に関する専門機関であって、その最高の意思決定機関は194の加盟国代表で構成される世界保健総会です。その世界保健総会が満場一致で採択した世界保健規約[iv]に基づいてWHOが宣言できる最高レベルの警報はPHEIC(Public Health Emergency of International Concern, 公衆衛生上の国際緊急事態宣言)であって、その宣言は2020年1月末にすでに発令されています。この時点ですべての国で緊急対応が取られるべきでした。3月のWHOによるパンデミックという認識の表明は、欧州での、それにイランでの感染爆発により、パンデミック封じ込めがほぼ失敗に終わったとの最初の敗北宣言にほかなりません。
3月7日-12日に京都で第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催されます。会議に向けて、本会議の事務局を務める国連薬物犯罪事務所(UNODC)の3人の邦人職員が、今日のグローバルな犯罪防止や刑事司法分野における課題と、それらに対して国際社会がどのように取り組み、SDGs推進につなげているか、ご紹介します。第3回は、加藤美和さん(国連薬物犯罪事務所(UN Office on Drugs and Crime/UNODC)事業局長)からの寄稿です。
「犯罪」と聞くと、日々ニュースで取り上げられるような犯罪行為を連想されるかもしれませんが、これら各国内の犯罪に加えて、近年では、犯罪行為が国境をまたいで進化し繋がりを強化しながら「事業」として拡張し、法の支配の及ばないところで、たくさんの人々の生活が脅かされ、巨額の利益が創出され、その財源が「腐敗」という犯罪を通して制度をむしばみ、さらなる不正を招いているという構造があります。21世紀の初めの20年は、これらの越境組織犯罪が劇的に増えた時期でもありました。こうした問題の解決には、国境を越えた連携が不可欠であり、それをサポートするのが、私が現在、事業局長として勤務している国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime/UNODC)の仕事です。
一つは、3月8日国際女性デーに行われるWomen’s Empowerment & Advancement of Justiceというスペシャル・イベントです。女性の視点とエンパワメント、夫婦の対等な支え合い、家族の絆などを中心に、西川きよし・ヘレンご夫妻にトークショーに登壇して頂き、また、社会正義の推進に日々具体的に取り組んでいる日本人4名にパネル・ディスカッション形式で、政治、教育、若者の取り組み、国際支援など各分野の視点から、それぞれの思い、そして今求められているアクションについて語って頂きます。公的要職につく方々からのステートメントに加えて、西川きよし・ヘレンご夫妻、そして、日本と世界を変えるために日々具体的な仕事に取り組んでいる多彩なパネリストのみなさんのお話を日本語で発信して頂くことで、本コングレスの中心的参加者である刑事司法・法曹界の専門家のみならず、より広く、ホスト国・日本のみなさんとの対話を深めることを目指しています。
犯罪への対応の再考
もう一つは、3月9日に行われるRethinking Responses to Crimeと題されたイベントです。日本でも有名なマララ・ユサフザイさんと一緒にノーベル賞を受賞されたインドの社会変革活動家のカイラシュ・サティヤルティさんに基調講演を頂き、多くの虐げられた人々や子供が犯罪を犯したり、虐待や犯罪の犠牲者となることの多い現状を捉え、私たちが暮らす21世紀の社会において「犯罪」というものをどう捉え、どうやって社会全体として減らしていくのかというテーマについて、国連内外の最先端の考えを議論します。