国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

TICAD7リレーエッセー"国連・アフリカ・日本をつな情熱"(26)

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が2019年8月28-30日、横浜市で開催されます。日本では6年ぶりとなるTICADに向けて、国連広報センターはアフリカを任地に、あるいはアフリカと深く結びついた活動に日々携わっている日本人国連職員らに呼びかけ、リレーエッセーをお届けしていきます。

 

取り上げる国も活動の分野も様々で、シリーズがアフリカの多様性、そして幅広い国連の活動を知るきっかけになることを願っています。第26回は、国連ハビタット ケニア本部に勤務する寺田裕佳さんです。

 

第26回 国連ハビタット 

寺田裕佳さん

~職員として支援の意義を改めて知ったカロベイエイ住居区開発~

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コーネル大学にて建築学を終了後、コロンビア大学院にて建築都市デザイン修士号を取得。ニューヨーク市都市デザイン科で、ニューヨークの都市開発に関与し、その後日本の民間企業にて土地区画整理事業に従事した後、JPOとして国連ハビタット本部に2014年に参加。現在は、プログラムマネージメントオフィサーとして都市開発の観点から、ケニアウガンダなどでの難民と住民に対する支援事業を主に担当。

 

私が初めてアフリカの地を踏んだのは、国連ハビタット本部のあるケニア・ナイロビにJPOとして着任した2014年3月でした。それまで先進国で都市関連の仕事をしてきた私にとっては、すべてが驚きの連続でした。本部勤務でありながら、与えられた仕事はケニア政府の都市計画を新たに作る事業のサポート。すでに政府と雇われたコンサルタント会社での都市計画事業のチーム編成が整い、取り組みが始まっていたこともあり、当初は国連ハビタットが新たにチームに加わる意義を理解してもらえず、重要な会議日程などの情報などの入手にとても苦労したのを今でも記憶しています。気軽に会話ができるようになるまで何度も政府関係者に直接会いに行ったり、会議での発言やワークショップを通して都市の専門家が集まる機関として、事業の質を確保するために必要なサポートであると理解してもらい、信頼関係を作り上げていきました。しかし、その下地があったからこそ、今からお話しするカロベイエイでの地域計画のプロジェクトが非常にうまくいったのだと思っています。

 

国連ハビタットは持続可能な都市の発展を目指す国連機関です。アフリカ、ケニアに総本部があり、全世界、特に途上国における持続可能な都市を推進し、急速な都市化への対応ができるよう各国政府をサポートしています。

 

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©UN-Habitat

 

2016年より、日本政府支援を得て行っている国連ハビタットが関わるカロベイエイ居住区域は、ケニア北部にあるカクマ難民キャンプのそばに位置し、南スーダンとの国境から約70kmの場所に位置します。元々は、1992年の開設以降拡張しつづけ許容人数を大きく上回ったカクマ難民キャンプの密集化の緩和のために、トルカナ県政府より提供されたのが始まりです。政府からの土地を提供する際の条件が、従来のような、難民のみに着目した難民キャンプの設立ではなく、地元住民も考慮した持続可能な都市に根差した、難民・地域住民 統合型の居住区です。

 

大半の人々が遊牧生活をしているトルカナ県では、教育レベルも小学校に行っていない人々も多く、様々な事業が進められる中で地元住民の多くが開発から取り残されているのが現状でした。事実、私が初めてトルカナ県に行きカロベイエイ地域の方に事業説明をした際、住民の方々の要求は非常にシンプルでした。「水が足りないから水をください」。 土地は我々の土地だから水と引き換えにあげるといった内容でした。

 

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難民の方々に対して、住んでいる場所や周辺がどのように開発されていっているかを説明する筆者

 

開発が地域にもたらす影響は、非常に大きいものです。うまく管理すれば地元住民も大きな利益を得られ、WIN-WINな状態が作れる。しかし、現状では、地元住民が情報共有されていても、それを理解できないばかりに仕事のチャンスを逃していたり、公共サービスの提供をきちんと受けられていないことがよくあります。地元住民が保有する資産価値をきちんと理解できず、知識がないために損をしている現状に衝撃を受けたものです。こうした現状のギャップを埋めるのが、我々国連ハビタットの仕事なのだと、その時改めて気を引き締めたのを覚えています。

 

難民・地域住民 統合型の居住区ができることで、どのように彼らの生活に影響が出るのか、そしてその影響を良い方向に持っていくために何ができるのか、現在の彼らの生活の向上に向けて何ができるかなど、事細かに議論しました。さらに、難民の方も交え、地元の方々が地図が読めるようになり、都市計画とはなにかを理解できるようになるまで何度も会議を開催しました。居住区の面積は同じでも、形が変わったことを説明するのに、折り紙を使ったのも今ではよい思い出です。

 

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作成した居住地図を使い、実際の施設の場所と距離や住戸の位置の把握を地図上で理解できるようにトレーニン

 

居住区ができることで新たにできる生きる上での選択肢が、難民そして地元住民ともにできるだけよいものとなるよう、そして政府がそれを主導していけるよう、事業を推進し今日に至ります。今は、日本の技術を使った持続可能な開発に向け、株式会社LIXILが開発した持続可能な衛生ソリューション「グリーントイレシステム」や、建築家の坂茂氏による住戸デザイン提供をはじめ、様々な企業等から具体的な技術をご提案いただき実施しています。

 

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坂茂建築家チームと国連ハビタットのチームの写真。坂氏デザインによる住居を背景にして。この住居には、株式会社LIXILの技術を使ったトイレも導入

 

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カロベイエイ居住区に作った坂茂氏デザインを基にした、国連ハビタットパイロットシェルター

 

はじめは緊急支援状況が続き、人道支援の方法とのやり方の違いや緊急性が重要視されないなど、なかなかフィールドでのサポート体制が整いませんでした。また、地域政府との連携体制の確立に苦戦もしましたが、根気強く国連ハビタットなりのやり方で支援を続けることで、国連ハビタットが緊急支援のときから入っていく意義や重要性を認めてもらえるようになりました。そして今ではカロベイエイは、人道支援と開発が融合された支援が実施されたケースとして、取り上げられるようになりました。

 

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国連ハビタットとして、すべての人々がアクセスできる公共空間を促進しており、難民居住区域としては、珍しく、フェンスなどに囲まれず子どもたちが気軽に遊べる場所を、作りました。実際に、難民の子どもと、地元住民の子どもが混じって遊んでいます

 

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難民と地元住民の両方に自らの手で居住区に街灯が作れるようトレーニングしました

 

多様な分野の国連及びその他国際機関がそれぞれの強みを生かし実施されていったこの居住区計画、そしてその施工に関われたことで、様々なことを学びそして、改めて私の所属する国連ハビタットの意義を再確認し、職員として今後も開発から生まれる格差問題に取り組んで行きたいと思います。