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パレスチナのガザで活動する若手女性起業家とジェンダーやビジネスについて語らう

9月6日、ガザの若手女性起業家のマジド・マシュハラウィさんが国連広報センターを訪問しました。ジャパン・ガザ・イノベーション・チャレンジ ( Japan Gaza Innovation Challenge )が主催するビジネスコンテストで2016年に優勝、環境に優しい建設用ブロックを開発・販売する「Green Cake」という会社の設立、家庭用の太陽光発電機器を提供する「SunBox」の共同設立など、マジドさんは実業家として目覚しい活動をしています。今回、国連広報センターインターンの王郁涵、倉島美保、大上実、呂揚の4名が、マジドさんと、ガザの現状、ジェンダー問題、ビジネスなど、様々なテーマについて意見交換を行いました。

 

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マジドさん(右から3番目)と写真撮影@国連広報センター

 

~インタビュー~

インターン(以下I):マジドさんがビジネスを始めたきっかけは?

マジド(以下M):ガザでは、爆弾によって人の命が奪われ、街が破壊されている現状があります。実際に、爆弾が窓に投げ入れられて、人の命が奪われる姿を目の当たりにしたこともあります。その時、何かを変えていかなければならないと感じ、どうすれば変えることができるのかを考え続け、ボランティアに参加しました。土木工学を専門に勉強した経験を活かして、紛争によって破壊されたガザの建物の跡地から取り出した焼却灰を利用して、新種ブロック「Green Cake」を考案しました。

 

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2014年の紛争で崩壊したガザの街
©UN Photo/Shareef Sarhan

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新種ブロックGreen Cake製造の一コマ
©Green Cake

 

I:会社経営で苦労することはありますか?

M:経営は本当に難しいです。「SunBox」という会社には多国籍の人が働いており、彼らが満足して仕事ができるためにはどうすれば良いか、また、仕事に対して積極的に取り組めるようにするにはどうすれば良いかをいつも考えています。いまは資金調達よりも人材育成に焦点を当てています。会社経営をしていて、人をマネジメントすることの難しさを感じました。

 

I:ガザの現状はどうなっていますか?

M:良い部分と悪い部分があります。ガザの大学就学率は中東で最も高く、ほぼすべての子どもが学校に通っています。一方で、卒業後の進路が不安定で将来に希望が持てず、これから先の将来を考える機会が与えられていないことが問題です。問題の原因は紛争です。産業が破壊され、経済が停滞しているため、十分な雇用を生み出せず、失業率が高まっています。特に女性の失業率は約6割、若年層では8割に達していると言われています。

 また、ガザでは社会参加が制限されることがあります。ガザでは、多くの女性は若く結婚して家庭に入ることを期待されており、就職先を探すのは至難の業です。女性に限らず、能力ある若者はたくさんいます。専門知識やスキルを持ち、才能溢れる人が大勢にいるのに、それを活かすチャンスがありません。女性でありながらエンジニアでもある私は、このような状況に本当にフラストレーションを感じます。だからこそ、自ら起業をして、ガザの人々に希望のある未来を作っていきたいと思っています。

 

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マジドさんにインタビューをするインターン

 

I:成功までの経緯は?

M:大学4年生のときに、「Green Cake」のアイデアが浮びました。アイデアを形にするため、リサーチして資料をたくさん作りました。ビジネスプランやキャッシュフロー計算書を作りましたが、教授に見せたら、「なんだこれは!」と資料を跳ね返されたこともありました。大学生活では苦い思い出も少なくなかったですね。

 初めは、ビジネスについて何もわかりませんでした。ビジネスのやり方を学ぶためにアメリカへ行き、MIT Enterprise Forum, Pan Arab Region主催のアラブ・スタートアップ・コンペティション(Arab Startup Competition)に参加しました。そこでは、MITの教授や2億円を稼いだ起業家と出会い、「ビジネスってなんて壮大な世界なんだ!」と触発されました。そして、私も「SunBox」を始めたのです。クラウドファンディングで資金調達し、「Green Cake」では9人、「SunBox」では10人を雇いました。そこからビジネスは進んでいきました。

 

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MIT Enterprise Forum, Pan Arab Region主催のアラブ・スタートアップ・コンペティション社会起業家部門2位を勝ち取ったマジドさん
©Majd Mashharawi

 

I:ガザの女性はどのような立場に置かれているのですか?

M:ガザの社会は保守的な側面があり、女性は若くして家庭に入らなければいけないケースがあります。実際に、結婚問題を抱えていた女性メンバーは私たちのプロジェクトから身を退き、ある時期から連絡が取れなくなりました。私が思うに、彼女の結婚が少なからず関係していたと思っています。若く、夢と才能にあふれた女性の多くが、大学在学中に親が決めた相手と無理やり結婚させられるケースもあります。結婚後、大学に行くことはもちろん、夫の許可を貰わないと外出ができない女性も存在します。まるで箱のような場所で暮らしている女性がたくさんいるのです。

 

I:世界中の女性へのメッセージをお願いします。

M:自由以上のものは必要なく、自由であることに感謝することです。才能を持っているなら、それを正しいことのために使う方法を考えるのです。自分自身の個性を追求し、一人の独立した人間として生きていくことが大切です。経済的自由さえあれば、社会的圧力のもとで生きなくとも、生活する力を得ることができます。他人にコントロールされないために、希望を持って前へ進める力強い人間をめざしてもらいたいと思います。みんなで力を合わせて、自分が主役である人生にしていきましょう。

 

I:若い起業家へのメッセージをお願いします。

M:ビジネスで何よりも大事なのは、人と人とのネットワークを築くことです。資金や資本を調達する唯一の方法はすべて、人と人とのつながりから生まれます。ビジネスを始める前に、だれがサポートしてくれるのか、どれくらいの人が共感してくれるのかという観点を持つことが大切です。メンター・コーチ・アドバイザーといったサポーターを見つけることが、ビジネスの成功に繋がっていきます。

 

インターンの感想~

 貴重な経験を共有してくれたマジドさん、インターン一同感謝しています。本当にありがとうございました。ジェンダーの課題やビジネスの壁に何度もぶつかりながらも、様々な挑戦をして乗り越えていったマジドさんの前向きな姿勢や、活き活きとビジネスを語る姿に多くの刺激を受けました。

 また、自分で自分の限界を決めることなく行動を起こし、ガザを良い方向に変えようとするマジドさんから、強い責任感を感じました。私たちインターンにとって、今回お会いしたことは新たに多くのことを考えるきっかけとなりましたし、何か自分も行動したいという思いに駆られました。マジドさん、今後のご活躍を応援しています。

 

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マジドさん(一番左)と語り合う国連広報センターのインターンたち

 

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