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国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

シリーズ「今日、そして明日のいのちを救うために ― 世界人道サミット 5月開催」(9)

f:id:UNIC_Tokyo:20160412105214j:plainシリーズ第9回は、特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR)理事長・立教大学大学院教授の長有紀枝(おさ ゆきえ)さんの話をお伝えします。認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)の理事も務められる長さんに、日本人が問われている人道支援についてご寄稿いただきました。日本は、世界で2番目に国連の通常予算への拠出金が多く、開発・人道の分野で世界有数のドナー国ですが、一方で、日本の人道支援には改善すべき問題点も多くあると、長さんは指摘します。

 

 第9回 特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR)理事長・立教大学大学院教授

             長有紀枝(おさ ゆきえ)さん

       ~世界人道サミットが私たち日本人に問いかけること~ 

            f:id:UNIC_Tokyo:20100219120829j:plain

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。1990年よりAARにてボランティアを開始、1991年よりAARの専従職員となる。旧ユーゴスラビア駐在代表、常務理事・事務局次長を経て、専務理事・事務局長(00-03年)。この間紛争下の緊急人道支援や、地雷対策、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の地雷廃絶活動に携わる。2003年にAARを退職後、2004年より東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム博士課程に在籍し、2007年博士号取得。2006年7月より2011年3月まで認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)共同代表理事。現在同理事。2008年7月よりAAR理事長。2009年4月より2010年3月まで立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。2010年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・立教大学社会学部専任教授。

 

 

5月23-24日の両日、トルコのイスタンブールで「世界人道サミット」が開催されます。日本人にとって今年2016年は、例年にも増して国際社会との関係を意識する年。国連安全保障理事会に、日本は2009~10年末の任期以来5年ぶりに非常任理事国として復帰しました。加盟国最多の11期目になります。また人道サミット直後の5月26-27日には、日本が議長国となり、伊勢志摩G7サミットが開催されます。私たち日本人はこの機会をどうとらえるべきでしょうか。世界規模の紛争が常態化し、難民問題も空前の規模に拡大している現在、国際社会の中の日本の立ち位置、責務を改めて考える機会にすべきではないかと考えます。

 

私は、国際協力NGO・難民を助ける会(AAR Japan)の理事長として、また、NGO、経済界、日本政府が協力・連携して、日本のNGOによる緊急人道支援を支える仕組みであるジャパン・プラットフォーム(JPF)の共同代表理事(2006~2011)や理事(2011~)として、日本の市民社会の一員として、国内外の緊急人道支援に携わってきました。その立場から、この原稿では世界人道サミットと日本の人道支援のかかわりを考えていきたいと思います。

 

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JPFのインド洋津波緊急支援のモニタリングで訪れた、インド・タミルナド州で。津波を乗り越え無事に誕生し、「ツナミちゃん」という名前がついた赤ちゃんと。

 

日本の人道支援NGOを取り巻く2つの課題

難民を助ける会(AAR)創設から37年目、ジャパン・プラットフォームも設立から15年が経過しました。日本のNGO人道支援を取り巻く環境はこれら2つの組織の創設時と比べて格段に整備されてきています。

 

しかし、今日の、ますます深刻化し、常態化する世界の人道危機を考える時、規模は縮小したとはいえ、引き続き国連の通常予算への拠出金世界第2位の国、開発・人道の分野で世界有数のドナー国のNGOとしては、あまりに不釣り合いな、残念な現状も存在します。私たちNGOがまだまだ力不足であることもその一因ではありますが、同様に大きな課題として(1)自然災害への高い関心と対照的な紛争地への低い関心(あるいは紛争地への支援を控えようとする力学)、(2)国際基準から外れた安全基準の2つを挙げることができます。

 

私は、今回の人道サミットが、そうした課題を乗り越える、とまではいかずとも、少しでも改善できる機会となることを強く期待しています。

 

1)災害支援から紛争起因の人道支援

「困った時はお互いさま」。37年前、難民を助ける会の設立に際し、創設者の相馬雪香が広く呼びかけた言葉です。過去20年間、日本のNGOによる人道支援に携わってきましたが、明らかに一般の方々の関心が高まってきたことは実感します。

 

その一方で、一向に変化がない、あるいは第二次世界大戦を経験した人が少なくなる昨今、20年前より状況が悪くなっていると感じることもあります。日本人の関心が、地震津波、サイクロンといった、まさに他人事ではない、大規模な自然災害では大きく高まり、日本人の「人道的関心」や想像力が、余すところなく発揮され、それにより募金の額も増えるのに対して、紛争に起因した人道危機に際しては、反応が大きく鈍るという事実です。これには日本での国際ニュースの少なさも関係しているとは思います。

 

JPFの代表理事として、多くの企業を訪問させていただいた際の経験ですが、自然災害に際しては、発災後きわめて迅速に、大変ありがたいご寄付をくださる企業の方々が、紛争起因の人道危機に際しては、担当者の方は深い理解を示してくださりつつも、「紛争起因の人道危機を支援することに、株主、お客さま、従業員、役員といったステークホルダーの理解が得られない」という趣旨のことを口にされます。「自然災害に際しては、被災者は100%被害者だという認識があり、その支援に反対する人はいない。他方で紛争は自業自得、という感もある。紛争地の難民問題に支援を行うと、自社が政治的と見られる懸念がある」とおっしゃられた方もいます。そしてこれは経済界のみならず、日本全体の傾向でもあるように思います。

 

紛争に起因する危機との距離感。これはもしかしたらシリア難民をはじめとする、難民の受け入れに対して消極的な世論と重なる部分があるのかもしれません。日本人が国際社会の一員として、「名誉ある地位を占め」(日本国憲法前文)、しかるべき国際貢献をしていこうという今こそ解決すべき問題であるように思います。そして人道サミットで議論される課題が、あるいは人道サミットの開催そのものが、こうした傾向を考え直すきっかけになればと思います。

 

2)邦人に対する安全管理の改善

自国の民や同朋を最優先する姿勢は、民主主義国家であればどこの政府も同じです。しかし、現在の日本政府の日本のNGOに対する姿勢は、開発や人道援助分野に多大な貢献をしている先進ドナー諸国のいずれの国とも異なるものです。

 

現在、日本の人道支援NGOに対しては、国連機関や国際機関、他国のNGOが活動している地域であっても、日本政府が退避勧告を出した危険地へは日本のNGOの立ち入りを許可しないという政策がとられています。一般の旅行者と同様の制限が、人道支援を職業とする専門家の集団にも課せられているのです。他方で、国連・国際機関、外国のNGOで働く日本人にはこうした制限は課されていません。日本のNGOに所属する日本人については保護の名目で活動を制限するというこうした姿勢は、人間の命を守るという意味での「人権思想」とは全く異質のものであるように感じます。現に、「人権思想」が根強い欧州、特に北欧の国々では、危険地に自国のNGOを行かせないのではなく、危険地で、いかにNGOが自らの身を守りながら受益者の命を守る活動ができるかという観点から、自国・他国を問わずNGO全般の安全対策に多大な財政支援を行っているからです。

 

危険地での人道支援や難民支援活動に対しては、「日本は国連機関や国際機関にカネだけ出していればよい(その「カネ」・拠出金とて、大きく減額されていますが)」、「日本人は、危険なところに行く必要はない。危険地での人道支援活動は、国連機関や外国人に任せておけばよい」という姿勢では、世界の中の、日本の責任が果たせるでしょうか。

 

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AARがトルコ国境で運営する、シリア難民のためのコミュニティ・センター開所式にて。シリア難民と近隣のトルコの子どもたちと。


もはや日本は一国では生きていけません。東アジアの小さな島国に住む私たちは、石油やガスといったエネルギー、食糧は言うまでもなく、海外から輸入される、おびただしい物資や情報の上に、今の私たち日本人の豊かな日々の暮らしがあります。

 

日本は、この1月から国連安全保障理事会非常任理事国を務めています。また国連憲章の改正や国連改革に注力し、日本の常任理事国入りを目指す方々もおられます。そのような、国際社会の中でしかるべき地位を占めようとする国が、国際の平和と安全に寄与しようという日本の市民の組織・NGOの活動に、ひいては、国際社会の人道支援そのものに、どのように向き合うのか、この世界人道サミットがそれを再考する機会になることを願っています。

 

関連リンク:

特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)

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