読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

女性のエンパワーメントが世界を変える (2)

 

 

       映画界における女性の活躍 

     ~野上照代さんと斉藤綾子教授に聞く~

 

国連広報センターは、日本唯一の国際女性映画祭である「あいち国際女性映画祭」と連携し、9月1日から6日までの同映画祭で、様々な企画を行います。

黒澤明監督の作品のスタッフとして半世紀近く支え、同映画祭に運営委員として初回から関わってこられた野上照代さんと、同映画祭コーディネーターで、映画におけるジェンダーを専門とされる明治学院大学斉藤綾子教授にお話を伺いました。

 

聞き手:根本かおる国連広報センター所長

 

あいち国際女性映画祭20回目を迎えて

 

Q:野上さんは、どのようなことがきっかけで「あいち国際女性映画祭」に携わることになったのですか?

              

野上(以下N):愛知県庁で働いていらっしゃった大野さんという方が、黒澤明監督の『生きる』という映画に感銘を受け、映画監督の大島渚さんを顧問に愛知で映画祭を開く企画をしたのがこの映画祭の始まりです。私は、大野さんと同郷出身の映画関係者の方の紹介で、この映画祭に携らせて頂きました。

 

            f:id:UNIC_Tokyo:20150713155659j:plain

                 野上照代さん

 

Q:あいち国際女性映画祭は、今年で第20回となります。この20年の中で、特に印象に残っている作品、監督などはいらっしゃいますか?

 

N:羽田澄子さんのドキュメンタリー映画や、厳しい女を厳しく見ることで知られている中国のニン・イン(寧瀛)などが印象に残っています。また、香港のアン・ホイ(許鞍華)は女性、男性関係なく、純粋に監督として優秀だと思います。

 

Q:映画祭というのは、映画を愛する人たちが年に一度集まって交流できる大変貴重な場だと思います。そのような場所を20年、特に女性の映画関係者に提供なさってきたわけですが、ここまで来る上でご苦労、あるいは印象深い思い出などはありますか?

 

N:エピソードというまでのものはないのですが、映画祭という場での色々な国の監督達との交流、また様々な人々が映画製作に携わっていることを知るのは面白かったですね。20年経ちますと、イラクなど情勢が一変して映画が作れない国などもありますから、そのような現状があるからこそそれらを反映した映画をつくることに意味があるのだと思います。    

 

黒澤映画のスクリプターとしてのやりがい

 

Q:野上さんがスクリプターとして黒澤映画に携われた間、女性ならではの苦労などはありましたか?

 

N:そのころは映画界で働く女性が少なかったため、むしろ女性として何かと気遣ってもらったり、得をした部分が多かったかもしれません。今の時代では、機材が軽くなったこともあってか女性でもカメラをかついだり、コードを引いたりなど、かつて男性が担当していた仕事をしているので、平等な形になっているのではないでしょうか。

 

Q: 黒澤明監督は、野上さんに対してどのような期待をされていたと思いますか?あるいは、それをにじませるような出来事はありましたか?

 

N:期待なんてとんでもないです(笑)。ただ、黒澤監督の撮影方法は独特で、複数のキャメラで撮った後で編集するというやり方でしたから、編集はとても大変でした。しかし、監督の頭の中には全て映像が出来上がっているので、編集でその形に仕上げていく作業は最も重要でした。その重要性が判るだけに責任はありましたし、大変やりがいがありました。

 

              f:id:UNIC_Tokyo:20150713163550j:plain

                  根本かおる所長

 

Q:今では、日本の映画界でずいぶんと女性の映画監督も増えてきましたね。

 

N:女性をとりまく環境は前に比べてとても良くなったと思います。機材が軽くなったためか、撮影現場にも女性の数が増えましたね。私が働いていた頃は、女性スタッフは記録係、付き人、ヘアメイク、衣装係などに限られていました。

 

Q:国連は以前、アメリカの女優ジーナ・デイビスの主宰する『メディアにおけるジェンダー』研究所と連携して、主要国の映画での女性主人公や女性登場人物に関する調査[1]を行ったのですが、女性はセリフのある登場人物の3分の1、そして映画産業で働く人々の4分の1以下しか占めていないという、大変残念な実態があらわになりました。日本の状況はどのようなものなのでしょうか?

 

斉藤(以下S ): 日本では同様の調査をしていないので、はっきりとはいえませんが、少なくとも日本の場合はハリウッドに比べて女性の登場人物などは比較的多いほうだと思います。ハリウッドの場合、世界マーケットに向けて大作アクションを作ることが主流のため、どうしても男性中心になってしまい、ギャラや待遇などにおいても男優と女優で不平等が生じる問題があります。また業界のトップが男性中心だということは日米同じような状況だと思いますが、邦画の場合は女優の存在はいまだに重要なものだと思います。とはいえ、メディア業界全体としたら、他業界と同じく女性の地位はまだまだ低いでしょう。

 

N:日本の場合は、テレビに出演している若いタレント女優の露出が映画界にも影響しているのではないでしょうか。これは、あくまで個人的な意見ですが、彼女達のイメージや役柄は男性の業界関係者によって大方決められているような気がします。

                                                                        

Q:日本の女優や女性芸能人は、男性の好みや固定概念に合った役柄を担わされたり、投影させられているということでしょうか?

 

S:そういう役柄もありますし、あるいはそれらの固定概念などに反抗しているものもあると思います。また、今ハリウッドで大きな問題になっているのは、女優達は40歳をすぎると大幅に仕事が減ってしまうことです。年齢を重ねても第一線で活躍しているのは、メリル・ストリープなどほんの一握りなので、この問題に対して多くの女優たちが声を上げています。

 

        f:id:UNIC_Tokyo:20150819100240j:plain

      あいち国際女性映画祭2014 オープニングレセプションにて、花束を持つ招待監督達

 

N:映画製作は必然的に、興行成績を第一に考えなければならないので、もし女性の役柄が男性主観で決められているのであれば、どうしても若い女優に需要が傾いてしまいますね。

            

 

             f:id:UNIC_Tokyo:20150713160857j:plain

                 斉藤綾子教授

 

S:スタジオ映画(撮影所)の時代は、決まった数の映画を製作して劇場に持っていくノルマがあったので、それが男性受け、女性受け、または家族向けなど様々なジャンルの映画をつくる必要性ある程度につながっていたんです。しかし、野上さんのおっしゃる通り、ハリウッドでは映画の興行収入が一番重要視されています。それに比べると、ヨーロッパではカトリーヌ・ドゥヌーヴのような年齢が高い俳優や女優がロマンチックな役柄を演じる映画が作られています。そのため、イギリスやヨーロッパで制作された老年の恋をテーマにした映画がアメリカでヒットするという例もありますね。

 

もっと女性が活躍できる映画界に

Q:過去に映画祭に参加なさった方で、現在大活躍されている方はいらっしゃいますか?また、映画界で特に女性が活躍している分野などはありますか?

 

S:日本の監督で言いますと、河瀬直美さんではないでしょうか。彼女は、小さなドキュメンタリー映画から着々とキャリアを積み、「あいち国際女性映画祭」も応援しました。

また、最近ですと、天野千尋さんが2012年にショートフィルム部門で準グランプリを取り、今年は彼女の長編映画を上映するので、今後もショートフィルムの監督の中から若い有力な方々が出てくることもあると思います。

女性の活躍分野に関して言いますと、最近では西川美和、呉美保、タナダユキ荻上直子など商業映画で活躍する女性もいますが、監督業とは別に、岩波ホール高野悦子さんに代表されるように、多くの女性たちが映画の宣伝や配給のスタッフとして日本映画界を支えています。そのような意味では、映画界は女性が大いに活躍できる場だと思います。

ただ、トップの人たちがなかなか変わらないことが、女性の映画界での活躍の促進に影響を及ぼしているのかもしれません。しかし、ハリウッドでもポストフェミニズムなど、フェミニズムが語られないときに多くの女優たちが声を上げているので、そこが女性の映画界での地位改善につながっているのだと思います。

         f:id:UNIC_Tokyo:20150819100328j:plain

      あいち国際女性映画祭2014の合同記者会見。 左から斉藤教授、野上さん   

 

N:私は、映画を作るという技術面において、最初から女性と男性は別にするべきではないと思います。確かに、男女の生物学的な意味合いで得意分野が違うこともありますが、少なくとも映画製作や監督業において、性別によって能力を区別する必要はないと思うのです。逆に言うと、女性だからといって無理に特別扱いする必要もありません。最近では監督業に限らず、映画界での女性の活躍も目立ってきており、ジェンダーの差もあまり見受けられなくなっているように感じます。これからも、本当の意味での男女平等が推進されれば良いと思っています。

 

         f:id:UNIC_Tokyo:20150713162439j:plain

         野上さん(中央)、斉藤教授(左)にインタビューする根本所長(右)

 

[1] 2014年9月22日、『メディアにおけるジェンダー』研究所は、UN Women、ロックフェラー財団と連携して、史上初めて映画のジェンダーイメージ研究の結果を発表し、映画界の誤ったジェンダーのステレオタイプが浮き彫りになった。

参考URL:UNウィメン日本協会 http://www.unwomen-nc.jp/

『映画に描かれた女性のイメージとは』

http://www.unwomen-nc.jp/3290

『女優ジーナ・デービスはスクリーンに描かれる女性像の改善に取り組んでいます』http://www.unwomen-nc.jp/3809

 

 

 

 

 

 

 

 

 f:id:UNIC_Tokyo:20150819101010j:plain

                         

あいち国際女性映画祭

2015年9月1日(火)-9月6日(日)

世界各国の女性監督による作品、女性に注目した作品を集めた、国内唯一の国際女性映画祭「あいち国際女性映画祭2015」を開催します。日本初公開9作品、愛知初公開12作品を含む全31作品を上映します。

今年は20回記念の特別企画として、女優の吉永小百合さんや原田美枝子さんをお招きした特別トークイベント、国連広報センターとの連携による“女性大使ミーティング”の他、新たに長編フィルム部門を加えた“フィルム・コンペティション”などを実施します。また、20回目を記念して、ASEAN地域を中心としたアジア7カ国の映画を上映するプログラム「アジア・ムービー インパクト」の創設などを盛り込み、一層力の入った映画祭となります。

その他、海外作品の女優や監督を、ゲストとして多数招聘します。

多くの方々にご来場いただき、映画を楽しみながら、男女共同参画意識を高めていただきたいと思います。  

 

映画祭URLはこちらから:あいち国際女性映画祭2015 - ホーム