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国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

障害者とともに歩む社会

イベント

広報官の妹尾です。

毎年12月は人権に関する国連で定めされた国際デーが続きます。主なものだけでも12月3日の「国際障害者デー」、その1週間後の10日の「人権デー」、そして18日の「国際移住者デー」。今年は「国際障害者デー」から「人権デー」にかけて、障害者の権利にまつわるストーリーをウェブで数回に分けて紹介しました。http://www.unic.or.jp/activities/humanrights/hr_day_2013/ プロ車いすテニスプレーヤー、障害を持ちながら働いていらっしゃる人々、障害者雇用に熱心に取り組む企業、そして支援側の人々にご登場いただき、異なる視点から興味深いお話を伺うことができました。ストーリー全体を通して、障害者が参加できる社会を作っていくには、まずは私たち一人ひとりの心の扉が開いている必要がある、ということを強く感じました。ここでは、そのハイライトをご紹介します。(全文は以下をご覧ください。) 

http://www.unic.or.jp/activities/humanrights/hr_day_2013/

 

車いすテニスで、障害者の未来を明るく照らす


「車いすでプレイするということは、決してすごいことでも偉いことでもなくて、皆さんがスポーツを始めるのと同じ気持ちなんです」 -国枝慎吾(くにえだ しんご)さん(プロ車いすテニスプレーヤー)


障害者と社会の「意識のずれ」をなくすことが、2020年東京オリンピックパラリンピックの成功につながるという言葉が印象的でした。その年まであと7年、いかに障害者に対する固定観念を打ち破ることができるか、いかに社会全体の意識改革ができるか、それが東京大会を成功させる鍵だと国枝さんはおっしゃっています。インタビューは、国枝さんが初めて車いすテニスのレッスンを受け、今も練習の拠点とする吉田記念テニス研修センター(千葉県柏市)で行いました。

 

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今年9月に行われた全米オープンテニスで戦う国枝さん
  

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国枝さん、スポンサーのユニクロの企画で石巻市釜小学校での交流会に参加

 

 

持てる力を活かして働く ― きらりと光る技能


「自分が一番好きな補正の仕事で、上手く出来てほめられた時は本当にうれしかったです。ずっとこの仕事を続けていけるように、がんばります」-尾形勇旗(おがた ゆうき)さん(知的障害。ユニクロ社員)


尾形さんは、障害者高等技術専門学校で洋裁を学んだ後、株式会社ファーストリテイリングに入社し、実習を経て約4年前からユニクロ東京ドームシティラクーア店でお仕事をなさっています。朝8時に出勤すると、開店前の清掃や品出し、商品整理を行います。得意とする裾上げなどの補正の仕事では、新人スタッフの良いお手本となっています。2008年には、障害を持つ人々が職業技能を競い合う祭典「アビリンピック(全国障害者技能競技大会)」に出場し、得意のミシンで見事、金賞を受賞、翌年日本代表として参加した韓国・ソウル開催の「国際アビリンピック」では銀メダルを獲得しました。

 

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補正業務に取り組む尾形さん(ユニクロ東京ドームシティラクーア店にて)

 

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2009年9月の国際アビリンピックにて銀メダルを獲得(韓国・ソウル)

 

 

持てる力を活かして働く ― IT業界の荒波の中で


「障害とうまく付き合いながら、最大限に自分の力を発揮して、将来は会社からもっと信頼される存在になっていきたいと思っています」-岸本雅樹(きしもと まさき)さん(車いすで勤務。ヤフー社員)


岸本さん自身、特別扱いをされたくない、他の人と一緒の土俵で仕事をしたいという思いを胸に就職活動をし、あえて変化のあるIT業界に飛び込んだそうです。勤務先のヤフー本社内では、障害者の方々が最大限のパフォーマンスを発揮できるようサポート体制は整っています。けれども「会社では障害者を特別視していません」と、競争の激しい業界で働く人の覚悟が伝わってくるお話を伺うことができました。

 

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「人事の仕事には社員のモチベーションや組織全体に対する大きな影響力があります」岸本さん(ヤフー本社)

 

 

日本の企業に広めたい「心のバリアフリー」


「障害をできないことの理由にしないのが大切です。それぞれの能力を見極め、伸ばしていくために『適材適所』というポリシーを持っています」-箕輪優子(みのわ ゆうこ)さん(横河電機


障害者雇用に熱心な企業、横河電機の職員、箕輪さんにお話を伺いました。1998年7月に知的障害者も雇用義務制度の対象とする法改正がなされたことをきっかけに、横河電機知的障害者を積極的に雇用することができるよう特例子会社「横河ファウンドリー」を1999年に設立しました。箕輪さんは社内で「横河ファウンドリー」設立を提案した中心人物です。なんと横河ファウンドリーは、設立後3年も経たない内に経営黒字化を達成し、知的障害や発達障害のある人々の力を活かす企業経営の成功例として広く知られるようになりました。現在、この会社の業務は、知的障害や発達障害のある社員24名、知的障害と聴覚障害の重複障害のある社員1名が担い、主に名刺、ゴム印、銘板(製品に貼るラベル)の作成、パソコンでのデータ入力、書類の発送代行などを担当しています。

 

実は、横河電機には数年前から国連と接点があります。2009年1月、国連グローバル・コンパクト(主に民間企業が、国連の提唱する人権・労働・環境・腐敗防止に関する10原則への支持を表明するイニシアチブ http://www.unglobalcompact.org/)に参加しているのです。箕輪さんに加えて、千島由芽乃(ちしま ゆめの)さん(横河ファウンドリー 知的障害)と齊藤一(さいとう はじめ)さん(横河電機 聴覚障害)にも職場でお話を伺うことができました。積極的な障害者雇用によって、障害の有無に関わらず、すべての社員の働く意欲が上がっていることが強く感じられました。社員一人ひとりが障害について正しく理解し、障害者と共に成長し続けようとする姿勢と環境がそこにあります。働く人に生きがいを与えられるこのような積極的な障害者雇用が、日本中の企業にもっと広まりますように!

 

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特例子会社「横河ファウンドリー」設立の中心メンバー、箕輪さん。
現在は横河電機CSR部に所属

 

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パソコンでの業務に取り組む千島さん(横河ファウンドリーにて)

 

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職場の同僚と、筆談で打ち合わせを行う齊藤さん(右)(横河電機にて)

 

 

「手話は言語」で、社会が変わる - 鳥取県の挑戦


「議論を戦わせる中で、手話に対する理解が深まっていきました。鳥取県の取り組みが、国内に着実に広まっていると感じています」-平井伸治(ひらい しんじ) 鳥取県知事


今年10月、鳥取県では全国初の画期的な条例である手話言語条例が制定されました。条例は手話を独自の言語とみなし、手話を普及させて使いやすい環境を整備する責務が県と市町村の側にあると明記しています。こうした動きは少しずつではありますが、他の自治体にも広がりつつあります。北海道石狩市もその一歩を踏み出しました。2014年の「手話基本条例」の施行を目指して準備を進めています。日本の先駆けとなった鳥取県の取り組みが、今後さらに広まっていくことが期待されます。

 

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鳥取県立鳥取ろう学校での学習風景

 

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報告会にて石狩市の取り組みを紹介する田岡克介(たおか かつすけ) 同市長(2013年11月 東京)

 

 

日本手話を「選択必須言語」に


「手話を学ぶことで、社会が決して単一の生活習慣、文化、世界認識で染まっているのではなく、豊かな多様性があるのだということを知ってもらいたいですね」 - 松岡克尚(まつおか かつひさ) 教授(関西学院大学


関西学院大学人間福祉学部では、学部が開設された2008年から、日本手話を選択必須の言語科目として導入しています。大学としてはあまり例がない中での導入ですが、同学部のポリシーである「包括性」と「多様性」という理念と合わせて、障害者権利条約が手話を言語として位置づけたことも背景にあります。この学部の中心人物、松岡克尚教授によると、手話を通して自分たちの視野が広がった、と学生さんたちが異口同音におっしゃっているそうです。学生さんたちの今後に期待します。

 

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 専門科目として開講されている、日本手話の授業の様子(関西学院大学にて)

 

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学生たちに講義を行う松岡先生(関西学院大学にて)

 

 

DAISYをもっと多くの障害者のもとへ


「最初に何かを設計するときから障害者も参加して、アクセシビリティに配慮していくことで、環境も大きく変わっていくんじゃないかと思います」- 河村宏(かわむら ひろし)さん(特定非営利法人 支援技術開発機構)


河村さんは、障害者の生活向上に一役買っているアクセシブルな情報システムDAISY(デイジー)を広めています。DAISYとは、Digital Accessible Information Systemの略で、日本では「アクセシブルな情報システム」と訳され、音声にテキストおよび画像をシンクロ(同期)させることができるため、ユーザーは音声を聞きながらハイライトされたテキストを読み、同じ画面上で絵を見ることもできます。実はこのシステム、日本がその誕生と開発に大きく関わっています。

 

北海道・浦河町にある精神障害を抱える人々を中心にした互助団体「社会福祉法人浦河べてるの家」の防災活動にもDAISYが使われています。べてるの家がある浦河町は、海岸線に位置しているため、地震の多い場所として知られており、津波の心配もあります。そこで河村さんの協力を得て、障害のある人たちがDAISYを用いて自分達で防災マニュアルを作ったのです。日本の貢献によって発展してきたDAISY。今後、日本だけでなく世界でもっと当たり前のものになり、障害を持つ人々を含む、すべての人が暮らしやすい社会がぐっと近づいてくることが期待されます。

 

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このDAISY(Digital Accessible Information System)のプログラムは、今年の国連総会(2013年9月23日)の「障害と開発に関するハイレベル会合」において使用されました

 

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べてるの家の人々が参加して、夜間に行われた避難訓練(北海道・浦河町

 

 

東日本大震災で被災した障害者への支援


「これからは、障害を障害と感じなくなるような新しい社会モデルが必要とされています」-株木孝尚(かぶき たかなお)さん(JDF宮城事務局長)


東日本大震災では、宮城県の健常者の死亡率に対する障害者の死亡率は2.5倍でした。障害者の方には、災害・緊急時に情報が伝わりにくく、避難そのものも困難を極めることが少なくありません。そして、たとえ大きな災害を生き延びて仮設住宅へ入っても、「てすり」、「インターフォン」、「スロープ」などが無いため、障害者の方はとても苦労しています。このような実態を宮城県の被災地で活動する株木さんから伺いました。株木さんは、東日本大震災の被災地で仮設住宅に暮らす障害者を個別に訪問し、彼らのニーズにきめ細かに対応しています。株木さんの日々の活動に、忘れかけていた人のやさしさを感じました。

 

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仮設住宅に暮らす障害者を訪問する株木さん。
中央奥にはインターフォンも設置されています(宮城県女川町)

 

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 仙石線 矢本駅のスロープ(宮城県東松島市)

 

取材を終えて:

「障害者の社会参加には、様々な壁が立ちはだかっています。。。(私は)それらの壁を取り払って扉を開き、障害を持つすべての人々に機会を与えるよう呼びかけます」、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、今年12月3日の「国際障害者デー」に際してこう述べています。障害者の人口は、世界人口の約15%にあたる10億人に上り、もはや障害者は世界最大のマイノリティです。そして、嬉しいことに日本でも障害者の権利について動きがありました。12月4日、「障害者権利条約」が参議院本会議で全会一致で承認され、日本も正式に条約を批准することになったのです。

インタビューを通じて出会うことができた方々の前向きで心温まる言葉は、本企画を担当した私自身、そして何よりも国連広報センターのインターンたちにとって、これからもずっと大切な宝となることは間違いありません。改めて、ご協力いただいた方々に感謝を申し上げます。